アルティメットエキサイティングファイターズ・外伝 〜覆面の風来坊〜
    〜第1部・第12話 心の癒し2〜
    休憩後、再びライディルのサポートに回る。先程よりは慣れてきたが、それでも場の雰囲気
   に飲まれ気味だ。実に気苦労が耐えない・・・。


    先方より周りに慣れだしたお陰で、職員達とのコミュニケーションも取れだした。長官と
   いうトップの位置付けではなく、一般の人物故に普通の会話ができる。

    これを利用して対等な目線での会話を中心に動き回った。役職を除けば1人の人間同士なの
   だから。

    相手を労い敬うのは俺の執念と信念でもある。陰の戦いに徹している彼らを激励するのが、
   今の俺の役目でもあろう。



    その後俺達の任務が終わったのは、午後9時を過ぎた頃だった。当直の職員以外は全員帰宅
   している。その中でもライディルは自宅へ帰らず、ここで過ごしているという。

    最前線での戦いを最も重視する長官か。この姿勢だからこそ、周りに大きく慕われる要素
   なのだろうな。



    俺とシンシアも今夜は泊り掛けだ。まあ1日と言っているから、このぐらいは許容範囲で
   あろう。しかし・・・問題点が1つ・・・。
ライディル「申し訳ない、部屋は1つしか取れなかった。悪いが我慢してくれ。」
   そう、1泊する場所の問題だ。ライディルが近場のホテルを確保してくれたが、何と1部屋
   しかないというのだ。

    そして更に大問題がある。何でこの部屋にベッドが1つしかないのか・・・。普通なら2つ
   あるだろうに・・・。
シンシア「仕方がないですよ、一緒に寝ましょう〜。」
ミスターT「本気で言ってるのかね・・・。」
   俺は現状を目の当たりにして呆然とする。対する彼女の方は屈託のない笑顔で微笑みながら
   語っている。いや、誘っているとも言えるか・・・。勘弁してくれよマジで・・・。



    外で夜食を済ませ、俺達は部屋へと戻った。心身共に疲れ切っているため、物凄い脱力感に
   襲われる。そのまま寝っころがり眠りたいが・・・。
ミスターT「床で寝るからベッド使いな。」
シンシア「風邪引きますから、一緒に使って下さい。」
   この一点張りである。こちらの考えを絶対に通そうとしない。少しは羞じらいというものが
   ないのか・・・。いや、俺だけ変に意識しているだけなのかも知れないが・・・。

    色々と反論したかったが、俺も流石にヘトヘトだ。今はとにかく休もう。明日もまだ任務は
   残っているから。



    俺はベッドの端の方で横になる。堂々と中央で寝ているシンシアが羨ましい限りである。
   俺も一応野郎だ、このシチュエーションは物凄く焦る・・・。彼女の方に背中を向け、心中は
   今までになくドキドキしている・・・。

シンシア「・・・寝ました?」
    いきなり声を掛けられ、飛び上がらんばかりに驚いた。彼女の存在は爆弾そのもの。しかも
   何時爆発してもおかしくないほどだ。
ミスターT「な・・何もしないから、気にせず寝なよ・・・。」
シンシア「・・・本心はそうじゃないでしょうに。」
   爆弾発言を次から次へと・・・。別の部屋が空いていないか探してくるか・・・。物凄く辛い
   事この上ない・・・。


    不意に俺の肩に手が触れる。間違いなくこちらに振り向いている。そして何と背中に抱き
   付いてきた。これは絶対に挑発してる・・・。勘弁してくれ・・・。
シンシア「・・・あったかい・・・。」
   だがその一言で我に帰る。そうか、本当は淋しいのか・・・。22とは言え、幼少の頃から
   親の愛を受けずに生きてきたのだから。変な考えでいた自分を痛烈に恥じる・・・。

シンシア「・・・以前私も孤児だと言いましたよね。今まで愛情というものを知らずに生きて来た。
     でも・・・貴方と会った時、初めて愛情というものを感じた・・・。言い表せない感情に
     戸惑ったんだけど・・・、今はこれが愛だとハッキリ分かる・・・。」
    肩に触れた手が震えている。掛ける言葉が浮かばない。俺が15から20になるまでの間と
   全く同じ感情だ。言い表せない不安と恐怖に駆られ、心では膝を抱えて震えていた。
シンシア「今だけでもいいです・・・私を支えて下さい・・・。」
ミスターT「・・・このままでいいか?」
シンシア「・・・うん・・・ありがとう・・・。」
   何と冷たい応対だ、俺自身でも呆れる。俺は大馬鹿野郎だ。彼女の期待に応じれないのは阿呆
   そのもの。そんな俺を俺自身が許さない。ここも一歩先に踏み出す勇気が必要なんだ。


    寝返りをうち、シンシアと対面する。そのまま彼女を抱き寄せ、頭を胸に抱いた。その行為
   に驚いた様子だが、直ぐに身を委ねてくる。
ミスターT「・・・ごめんな。これが限界だ、これ以上は・・・。」
シンシア「ううん・・・ありがとう・・・本当に優しいね・・・。」
   頭を優しく撫でてあげる。更に背中をポンポンと叩いてあげた。母親が子供を寝かし付ける時
   に行う、落ち着かせる厚意だ。これはヴァルシェヴラーム譲りの癒しの厚意でもある。

    怯えていた彼女は落ち着き、そのまま深い眠りに入っていく。俺も疲れていたため、彼女が
   寝た後に夢の中へと吸い込まれていった。

    これは情けない行動なのか。それとも最大限の行動なのか。恋愛に疎い俺には、どうして
   いいか分からない。経験不足の自分を恥じる、実に情けない・・・。



    携帯の目覚ましが鳴る。徐に手を伸ばしスイッチを切った。時間は既に午前7時を回って
   いる。

    俺の胸の中ではシンシアが寝ている。完全に安堵し切った表情だ。心の底から安らいでいる
   のがよく分かる。彼女が起きるまで、そのままでいてあげよう。


    疲れ切っていたから、一瞬にして時間が過ぎ去っている。シンシアを寝かせて自分も寝て
   から、目覚ましが鳴るまでが本当に一瞬だ。これには驚くしかない。

    しかも寝返りを一切打たずにお互い寄り添って寝ていた。それだけ疲れ切っていたのか。
   普通なら床擦れを起こすのだが・・・、何とも・・・。



シンシア「・・・おはよう。」
    何件かメール受信があり、それを返しながら待つ。携帯を操作する僅かな腕の揺れで、目が
   覚めた様子のシンシア。表情が今までにないほどスッキリしている。
ミスターT「少しは楽になったか?」
シンシア「うん・・・貴方のお陰です。」
   そう言いつつも胸に甘えてくる。エシェラ達よりも年上なのに、この時ばかりはリュリアと
   同じ雰囲気だ。シンシアにも可愛い部分があるんだな。

ミスターT「ライディル氏からメールがあった。朝方にサーベン氏とチェブレ氏が帰ってきたと。
      このまま帰宅してもいいらしい。」
シンシア「なら・・・もう暫く・・・このままでいたいです・・・。」
ミスターT「ハハッ、分かった。おやすみ、お嬢様・・・。」
    俺の言葉に小さく微笑むと、そのまま静かに目を閉じる。再び眠りに入っていくシンシア。
   今だけは甘えさせてあげよう。
   徐に携帯をテーブルに置き、彼女の頭を優しく撫でる。そのまま俺ももう一眠りした。



    それから数時間後、本当に起床する。ホテルを後にすると、遅い朝食を取って帰宅した。
   今度はシンシアに運転してもらい、俺は側車に乗っての帰還だ。側車の乗車もいいものだな。

    嬉しそうに運転している彼女。信号待ちなどで俺と目線が合うと、頬を赤くして視線を前
   へと逃がす。フフッ、可愛いものだ。

    一時の癒しと安らぎを与えられた事に感謝している。頑張らねば・・・。



    ちなみに、帰宅してからは大変だった。エシェラ・ラフィナ・エリシェに質問攻めに遭い、
   落ち着かせるのに苦労した。

    まあシンシアが大人びいている姿を見れば、昨晩何があったのかと疑いたくもなるだろう。
   勘違いして欲しくはないのだが、何とも・・・。


    今後、エシェラ・ラフィナ・エリシェからのより一層の猛撃が予測される。もちろん成長
   したシンシアからも。

    これも俺の宿命なのだろうな・・・。

    第1部・第13話へと続く。

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