アルティメットエキサイティングファイターズ・外伝 〜覆面の風来坊〜
    〜第3部・第12話 強運と原点回帰1〜
    我が目を疑っている・・・、目の前に訪れた幸運は本当の事なのか・・・。そこに至るまで
   の内情を、数ヶ月前の家族団欒の出来事まで遡る事になる。



    13人の妻達・27人の娘達との団欒を終えた翌日、リュアとリュオに誘われて近所を散歩
   した。今年26歳とは思えない双子は末っ子そのものとも言える。本当に可愛いものだ。

    そんな中、2人が100円均一ショップに赴いている際が発端だった。隣の銀行で夏にも
   行われるサマージャンボ宝くじに目がいった。今の家庭の内情を考えれば全く無縁のものとも
   言えたのだが、この時は何かに惹かれるようにその場に赴いていた。


銀行員「いかがですか?」
ミスターT「宝くじは無縁なんだが・・・。」
銀行員「ご自身の運試しにもなりますよ。」
    娘と同じ年代の制服を纏った女の子が語る。販売促進のアピールだろうが、この時はそれ
   以前に何か別の力に惹かれる感じがしてならなかった。
ミスターT「う〜ん・・・可愛い女の子に頼まれちゃあ断れないわな。分かった、3組貰うよ。」
銀行員「あ・・ありがとうございます。」
   女性ならではの口説き癖で顔を赤くしている銀行員の女の子。俺は身近な連番の宝くじを3つ
   手に取り、財布から10000円取り出して手渡した。1000円のおつりを手渡しながら、
   頭を下げて礼をする彼女。

    そんなやり取りを背後から鋭い視線で睨むはリュアとリュオ。買い物を終えて表に出れば、
   自分達より若い女性に口説き文句を言っているのだ。ヤキモチを妬くには十分だろう。


リュア「なになに〜、宝くじ〜?」
リュオ「お父さんにしては珍しい〜。」
ミスターT「不思議な感じがしたので買ってみただけだけどね。」
リュア「うそうそ、本当は銀行員の女の子に気が引かれたんでしょ〜?」
ミスターT「それを言われると何とも言えないが・・・。」
    宝くじの封筒を見つめ、俺に手渡してくるリュアとリュオ。この購入経緯が銀行員の女の子
   が影響していると勘違いしているようだ。反論したい所だが、一部はそれもあるので素直に
   認めよう。妻達に何と言われるか・・・考えただけで恐ろしいが・・・。

    その後もリュアとリュオに引っ張られ、地元を散策して歩き回った。その際ベストの右の
   ポケットに宝くじをしまう。



    それから数ヵ月後のある日。宝くじを購入した事すら忘れていたという。リュアとリュオに
   指摘されて、メルデュラと共にサーバールームからサマージャンボの当選番号を見遣った。
   そこで驚愕の出来事が起きていたのだ・・・。

メルデュラ「・・・間違いありません、当たってます・・・。」
リュア「すぅごぉ〜いっ!!!」
リュオ「1等賞じゃぁ〜!!!」
    そうである。あの時は端から見れば銀行員の女の子に口説きを入れていたようにも見えた
   宝くじ購入が、見事1等の前後賞合わせて3億円が当たっていたのだ。更には3つ購入した
   連番全てが1等的中により、合計9億円を手にした事になる。これには俺はおろか、身内は
   驚愕して開いた口が塞がらない状態になっている。
ミスターT「何でここで運を使うんだ・・・、もっと使うべき運は沢山あるだろうに・・・。」
メルデュラ「い・・いいじゃないですかっ、素直に喜んでも誰も責めたりはしませんよっ!」
リュア「みんなに報告してくるじぇ〜!」
   言うか否か凄まじい勢いで部屋を飛び出していくリュアとリュオ。メルデュラの方は興奮冷め
   やらぬ雰囲気で、何度も当選番号を再確認している。

    だが俺の中では今後どうするかは既に腹は据わっていた。これ以上の贅沢は本当に無意味に
   等しい。ここは家族の前で改めて語るとしよう。



    食卓の上に置かれた連番の宝くじ。先程当選した9億円の価値がある9つのクジだ。それを
   まるで拝めるが如く見入っている13人の妻達と26人の娘達。その中でヴェアデュラだけは
   俺の傍らで運営の雑務に明け暮れていた。

    またソファーではナツミAとミツキが寛ぎ、例のプロレスゲームを楽しんでいる。最近は
   彼女達もプロレス好きになっているらしい。


ウィレナ「どうしましょうか・・・。」
リヴュアス「どうもこうも・・・。」
    何も言い出せずにいる女性陣。的中する事すら困難とされる1等。一説によると東京ドーム
   に新聞紙を引き詰め、そこに針を投げ付け当たった文字が1等とされるらしい。つまり確率は
   物凄く低いのだ。更にそれが3つ的中させたのだから、強運中の強運と言えるだろう。
ミスターT「小指の爪の砂、か・・・。」
リュア「何それ〜?」
ミスターT「ネットで見た事がある。人が生まれる確率を示したものらしいよ。インドのガンジス川
      の砂を宇宙と見立てて、そこに小指を挿して砂を掬う。その小指の爪の上に乗った砂が
      人として生まれる確率らしい。」
ディルヴェズLK「私も聞いた事があります。それだけ人として生まれてくる事がどれだけ崇高で
         大切なのかと。」
ミスターT「宝くじの当選は、これより確率は高い方だしな・・・。」
   宝くじを原点として人として生まれる確率を示す、か。不思議な原点回帰である。そしてこの
   資金をどうするかが一段と定まった。

リュオ「ででっ、どうするの?」
    興奮冷めやらぬリュオが声を張って語り掛ける。それに周りの女性陣は凄まじい目線で俺を
   見つめてくる。その眼は俺を取って食おうとしていたあの目線と全く同じである。
ミスターT「何時も裏方で頑張り続けている躯屡聖堕チーム、それとシェヴとディムの孤児院に寄贈
      しようと思う。三島ジェネカン・シェヴィーナ財団・平西財閥・安堂不動産にもね。」
ヴェアデュラ「フフッ、流石お父さん。そう言うと思っていましたよ。もし自分の私利私欲に走ろう
       とでもしたら、ぶん殴ってでも目を覚まさせてやろうと思っていましたけど。」
ミスターT「ハハッ、お前らしいわ。」
   贅沢の極みを既に体感している俺達家族。一夫多妻自体が贅沢の極みであり、それ以外にも
   自分達で十分な幸せを築き上げてきている。これ以上の幸せに何の意味があるのだろうかと。

ヴェアデュラ「まあでも1000万ぐらいは頂いてもバチは当たらないでしょう。私やお父さんを
       除いたみんなに配分して、他は均等よく全額寄付しましょう。」
シンシア「ほ・・本当にそれでいいのですか?」
    信じられないといった表情の13人の妻達。俺をどこまでも溺愛している部分はあるが、
   目の前の巨額に目が眩んでいるのも事実だろう。
ミスターT「前にリュアとリュオが言っていたよね、これ以上の幸せは不幸を招くのではと。それが
      今正にそれだよ。それに最低限の資金さえあれば生きていける。既に俺達には凄まじい
      力が備わっているじゃないか。」
ウィレナ「そ・・それはそうですけど・・・。」
   俺やヴェアデュラの決意に賛同できないでいる13人の妻達。またリュアとリュオも含めた
   26人の娘達も同じく賛同できないでいる。その理由は痛いほど分かるが、それこそ忘恩の
   輩になりかねない事になるだろう。


ミツキ「なるほどわぅねぇ〜。マスターがわた達も呼んだ理由が分かったわぅ。納得できなさそうな
    皆さんを嗜める必要がありそうわぅと。」
ナツミA「私にはそこにある当選したクジは、仲違いを促す絶望と破滅の力にしか見えません。現に
     皆さんの心がマスターの原点回帰から反れているのが分かります。ヴェアさんが同調され
     ない意味も痛いほど理解できますよ。」
    一旦ゲームを中断して、俺の傍へと歩み寄ってくるナツミAとミツキ。呆れた表情で女性陣
   を見遣っている。半ば俺に匹敵する殺気と闘気を出し始めてもいるため、顔を青褪めだして
   いる身内であった。
ミツキ「マスターの英断は正しいわぅ。有り余る力は破滅を導く。それよりも困っている人達や、
    その人達を誠心誠意助け抜いている人達を支えるために使う。少量の資金は残して、後は
    全部寄付するのが正論わぅよ。」
ナツミA「以前ご自宅をリフォームする際に伺いましたが、お母様方は有り余る資金をお持ちだとか
     何とか。使い道を持て余した状態で、息抜きこそマスターと共にある事を望まれている。
     そんな状態なのに、これ以上の力を持とうとするのですか。」
ヴェアデュラ「ミツキさんとナツミAさんの言う通りね。それにお父さんにも何度も言ってるじゃ
       ない。私利私欲に走る事だけはしないでくれと。それと真逆の立場じゃないのよ。」
   最近はヴェアデュラも俺の殺気と闘気を繰り出せるようになっており、それに戦々恐々の周り
   の男性陣や女性陣だった。ナツミAやミツキのそれと相まって、恐怖の三銃士とも言われて
   いる。

シューム「そうね、ミツキちゃん・ナツミAちゃん・ヴェアちゃんの言う通りね。落ち着いて考え
     れば、今まで抱いていた事が無粋に感じられるわ。」
    先に落ち着きを取り戻したシューム。何時も以上に一服をして気を落ち着かせようとして
   いる。まあ原点は据わっているため、上辺だけの私利私欲だろう。
シューム「心に刺さったのがナツミAちゃんの名言よ。仲違いを促す絶望と破滅、それが目の前に
     あるのだから。今さっきマスターが一部を除いた全額を寄付すると言った時、一瞬でも
     何を言い出すんだと思った私が憎いわ。それこそディム母さんに蹴飛ばされるわね。」
ミツキ「その前に・・・わたが思いっ切り蹴飛ばしてあげていたと思うわぅよ。今からお例しになる
    わぅか、渾身の一撃を込めた強烈〜な奴を?」
シューム「うぅっ・・・原点回帰できてよかったわ・・・。」
   ミツキの恐さは身内最強と言われるほどのものである。彼女の本気は計り知れないと誰よりも
   先に気付いたのがシュームである。今の発言に込められた真意を察知し、恐ろしい程に怯えて
   いた。

ナツミA「それと話は別になりますが、安堂不動産に寄付して頂けるのは嬉しい限りです。まだ例の
     回収問題から完全に脱却できていません。少しでも多くの資金があれば助かります。」
ミスターT「そこはエリシェやメアディルの力で何とかなると思うよ。既に大企業連合として運営
      している訳だし。」
ヴェアデュラ「まあこの問題は日本国内だけの話だからねぇ・・・。」
    今も雑務に明け暮れるヴェアデュラが、ノートパソコンの画面を俺達に見せてきた。そこに
   提示された表を見て驚愕した。何と日本の年間の国家予算を超える金額が提示されていた。
   それを窺い知った13人の妻達や26人の娘達は顔を青褪めだしている。目の前の宝くじの
   金額など程遠い金額が提示されている事にだ。
ヴェアデュラ「これが13年前の回収事変と核弾頭事変で起こった被害総額、ざっと80兆円ね。
       三島ジェネカンとシェヴィーナ財団の力を使えば簡単かつ直ぐに返済は可能だけど、
       それじゃあ私達が堕落するだけ。ここはゆっくりとお手伝いしつつ返済していこうと
       思っているわ。」
ナツミA「後は政治にしっかりして貰わないとダメですよね。最近は私利私欲に走る愚者が数多い。
     本当に大切な事を企業などに任せっ切りで、自分達は微温湯に浸かっている状態です。」
ミツキ「蹴飛ばしてやろうわぅかね・・・。」
ミスターT「野郎は愚かだよな・・・。」
   現状は厳しい状態が続いている。ジェリヴァやアビゲイルが招いた企業回収事変から、僅か
   数日の出来事だった核弾頭事変で年間の国家予算に匹敵する被害総額が現れていた。これは
   ヴェアデュラから伺っていたが、改めて表で提示されると驚愕せざろう得ない。


ヴェアデュラ「という訳で宝くじは没収。1000万円ぐらいを除いた全金額はお父さんが述べた
       通り寄付に回します。」
    食卓の中央にあった宝くじを手に取り、ノートパソコンの端に括り付ける。その後も雑務に
   明け暮れるヴェアデュラであった。
リュア「ごめんなさい、お父さん・・・。」
リュオ「目が眩んでしまいました・・・。」
ミスターT「ああ、気にしなくていいよ。俺だってこの現実は今だに信じられない。しかしそれより
      もっと信じられない現状で戦ってきたじゃないか。それに比べれば何でもないさ。」
   今となっては世界中を震撼させた、インフルエンザ事変・企業間抗争事変・核弾頭事変。この
   戦いに微力ながらも携われた事の方が、宝くじ1等の当選よりも遥かに幸運だったのかも知れ
   ない。その渦中に誕生した下の娘達は本当に幸運だろう。

ミツキ「でも残った資金はみんなで山分けわぅよ。偶には新しい服や娯楽などに興じてみたいわぅ。
    このぐらいならバチは当たらないわぅからね。」
ミスターT「そこは賛成だの。この数十年着込んだ一張羅もボロボロに近い。新しくオーダーして
      新着させたいものだわ。」
メルデュラ「あ、では新しいサーバーを数台構築したいのですが。」
シューム「喫茶店のコーヒーメーカーが不調気味でねぇ、新しいのが欲しいわぁ。」
ヴェアデュラ「私もミニクーパーの修理代に少し欲しいわねぇ。」
    低予算の欲望に関してなら直ぐに湧き出てくる女性陣。それはどれも自らの資金面で補える
   程度のものばかりである。言わば宝くじが当たったボーナスという事で、実費になるがそれ
   なりに満喫したいという現れであろう。これには俺も賛同できるわ。

    後半へと続く。

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