アルティメットエキサイティングファイターズ・外伝 〜覆面の風来坊〜
    〜第2部・第13話 大家族2〜
    今日は早めに本店レミセンを切り上げ、家族全員で食卓を囲もうという事になった。部屋は
   3階の俺とヴェアデュラの部屋だ。リビングは建物の中で一番広い。

    夜6時頃に遊園地から帰ってきたヴェアデュラ達。お土産片手に大賑わいだ。保護者同伴と
   してのエシェツは、その後カシスとのデートだという。恋多き年頃は若々しくて羨ましい。


    今夜の食事は鍋物となり、すき焼きとなる。人数からして鍋を4つ用意する状態に・・・。
   これが毎日続くのだ、食費やら何やらは尋常じゃないほどだった・・・。

    見かけによらず食欲が尋常じゃない娘達。あれよあれよと鍋の中身を平らげていった。副食
   としてサンドイッチや野菜サラダ、果てはスパゲティなども用意してある。だがそれら全て
   彼女達の血肉と化していった・・・。


ミスターT「・・・俺の食う分が・・・。」
    常時食事を運んだりを繰り返しているうちに、全ての料理は彼女達の胃袋の中に消えてなく
   なった。これでは完全に山賊だ。食い逃げされたも当然と言えるだろう・・・。
ヴェアデュラ「お父さん、一応取っておきました。」
ミスターT「あ・・ああ・・・すまない。」
   大食いと見せ掛けて、サンドイッチとスパゲティを確保してくれたヴェアデュラ。こういった
   部分はしっかりしているんだよなぁ・・・、嬉しい限りだ・・・。


ミスターT「遊園地は楽しめたかい?」
ヴェアデュラ「はい。皆さん大はしゃぎで喜んでいました。」
    サンドイッチを頬張りながら、昼間の事を聞きだした。彼女が語るには充分楽しめたようで
   ある。しかしまだ11歳という若さなのに、姉的役割を押し付けてしまった事には罪悪感が
   残ってしまう。彼女も遊びたい年頃だっただろうに・・・。
ミスターT「ごめんな、お前だけに保護者を任せてしまって。エシェツに監視役を任せたが、殆ど
      お前に纏め役を頼んでしまったね。」
ヴェアデュラ「気にしないで下さい。お父さんが常日頃から話しているではありませんか。心こそ
       強くあれと。その部分を踏まえれば、恐れるものなど何もありません。」
   流石は俺の娘だ、全て分かっている。遊びも大切だが、妹達の面倒も大切だと。殆ど面倒を
   見る機会が少なかったが、周りがしっかりとした人材へと成長させてくれていた。これにより
   育ての親の6人を凌駕するような肝っ玉が据わった女性へと変化したのである。
ミスターT「お前は誰に対しても誇れる自慢の娘だよ。ありがとう、ヴェアデュラ。」
ヴェアデュラ「お父さん・・・。」
   彼女の頭を優しく撫でると満面の笑顔で応えるヴェアデュラ。地元ではショートカットが印象
   深い女の子として有名である。何よりも覆面の風来坊が育てたという女性として、大変有名
   でもある。そのうち自分も覆面を着けるとか言い出すんじゃないかね・・・。それはそれで
   困りものなのだが・・・。


ラフィヌ「いいよなぁ・・・ヴェア姉さんにはお父さんがいて・・・。」
    ヴェアデュラと和気藹々に食事を取る姿を、羨ましそうに見つめる10人の娘達。エシェラ
   の娘達は公式に実の娘としているが、他の10人は孤児扱いとしている。
   だが実の所は10人とも俺の血が流れている。これを語る時はそう遠くないだろう・・・。
ヴェアデュラ「でも実際に血は繋がっていませんよ。」
エリム「いてくれているだけで幸せです〜。」
ラフィカ「甘えられる人がいるのは羨ましいです。」
メルテュア「私達は孤児で引き取られたので、お父さんの温もりは知りませんし。」
   それぞれの娘達が父親を欲している事を痛烈にアピールする。その言葉を聞くだけで、俺は
   居た堪れなくなる。

シェナ「でもさ・・・お母さんはいるんだよ。それで孤児というのはおかしくない?」
    むむ・・・話の本質に触れだした。エシェラの娘を除く10人の娘達は、孤児として突き
   通している。しかし5人の母親が存在するのは事実、それで孤児と言う現実はおかしすぎる。
メルテュナ「何だか私達の雰囲気が・・・お父さんに似ているのは・・・。」
シェラ「もしかして・・・お母さんの相手って・・・。」
   薄々気付いてきたのだろう、俺が父親だという事に。それはエシェラの娘を除いた10人に
   凄まじい勢いで伝染していく。双子故に考えている事が伝わるのか、それとも父親が全員俺で
   あるから伝わるのか・・・。

    ・・・これはもう・・逃げられないな・・・。



    食事を終えると、徐に頭の覆面を取り除く。それに驚愕した表情を浮かべる13人。彼女達
   には今まで素顔を見せた事がない。今回が初めてという事になる。
   それに・・・真実を話す時だけは、覆面の風来坊の俺ではない方がいい・・・。

ミスターT「・・・今まで騙して悪かった。エシェラとは夫婦という事を公にしているが、他の5人
      とも関係がある。ヴェアとエシェラの娘達もそうだが、10人の父親は俺だよ。」
    どんな結果になってもいい、語る時は来たのだから・・・。それを固唾を飲んで見守る6人
   の妻やリュリア。表情は何時になく堅く重苦しい。

    沈黙が辺りを支配する。10人の娘達には、あまりにも厳しすぎる現実だ。エシェラは公の
   夫婦仲だが、他の5人ともなれば常識を逸脱した事になる。

    これは間違いなく愛想を尽かれるだろう・・・。しかし・・・彼女達を心から愛している
   のは間違いない・・・。



エリア「・・・やっぱり・・小父様がお父様だったのですねっ!」
    沈黙を破ったのはエリシェの娘の妹の発言だ。表情は今まで見た事がないような明るさ。
   それが伝染していくかのように、周りの娘達にも移っていく。
シェナ「やっぱそうだよ、思った通りだよっ!」
シュリナ「赤ちゃんの時に、小父さんの声を何度も聞いた憶えがありましたし。」
メルテュア「小父さんを見て他人とは思えませんでしたから。」
ラフィカ「嬉しい〜っ、お父さぁ〜んっ!」
   真実を知った10人の娘達は感極まって抱き付いてくる。1人や2人ならまだしも、10人
   同時に抱き付いてくる様は脅威そのもの。押し倒され圧し掛かられ、殺されると思うほどだ。

    それでも彼女達の心の内を知って涙が出てくる。俺の最終的な問題、娘達への真実を語ると
   いう最大の難問。それを見事に乗り越えた証拠だ。

    俺は人目を気にせず泣いた。泣きながらも娘達をあやすが、それでも涙は止まらない。今の
   瞬間は紛れもない、俺の人生で最高の瞬間だ・・・。


    涙をハンカチで拭く娘もいれば、抱き付き甘える娘もいる。一緒になって賑わい続ける娘も
   いれば、貰い泣きをしている娘もいた。

    彼女達には俺の血も流れている。それは紛れもない血を分けた家族という証。最終課題を
   乗り越えた俺にとって、次の課題は彼女達の絶対的な幸福の確保だ。まあ先程までの悩みに
   比べたら、まだまだ甘く耐えられるものだが。


    俺の命を懸けて誓う。この13人の娘は、もれなく幸せにさせる。危険が迫れば身を呈して
   守り通す。彼女達の幸せを築くのが、覆面の風来坊の最後の務めだ・・・。



    2階の部屋に戻っていった13人の娘達。あの後1人ずつ抱き締め、頭を撫でてあげた。
   この抱擁は父親としてのものだ。今までは顔見知りの小父さんという形だったから・・・。
   満面の笑みを浮かべて胸で甘える彼女達。その表情に心の底から癒された・・・。

    3階の部屋には6人の妻とリュリアがいる。7人とも酒を飲み、先程の余韻に浸っている。
   俺は相変わらず酒は飲めず、黙々と紅茶を啜った。


リュリア「兄さぁ〜ん、よかったですねぇ〜。」
ミスターT「ああ・・・。」
    リュリアもかなりの酒好きで、他の6人に負けじと酒豪のように酒を飲みまくっている。
   この7人には先が思い遣られるよ・・・。
シューム「だぁ〜からぁ〜・・・だいじょぉ〜ぶといったでしょぉ〜。」
エリシェ「そうですよぉ〜。」
エシェラ「あの子達は・・しっかり弁えています・・・。」
   心の内を語る飲んべえ6人。支離滅裂な言葉を語ったり、途絶え途絶えの語りをする。しかし
   発言内容はどれも明確だ。
メルデュラ「これでぇ〜・・・本当に家族としてぇ〜・・・過ごせますよぉ〜。」
ミスターT「そうだな・・・。」
   周りがどうこうじゃない、今の幸せを素直に幸せと取る。それが俺のすべき事だ。俺を父親と
   して認めてくれた娘達だが、今後必ず壁としてぶち当たる事だろう。その時は命を懸けてでも
   彼女達を守る。


リュリア「私もぉ〜兄さんの子供ぉ〜欲しいなぁ〜・・・。」
シューム「おうおうっ、いいねぇ〜。あんたぁ〜、リュリアも身篭らせなぁ〜!」
ミスターT「何言い出すんだ・・この酔っ払い・・・。」
    とんでもない事を語り出したリュリア。それに便乗するシュームや周りの妻達。まるで俺を
   生け贄のような目で見つめている。このままだと遅かれ早かれ、無理矢理にリュリアと一晩
   共にしろと言いかねない・・・。
ミスターT「エシェラも何とか言ってくれ・・・。」
エシェラ「・・・許しますから、・・・家族増やしましょう。」
   うわ・・・目が据わってる・・・。普通なら冗談じゃないと突っ込むだろうに、それをしない
   所は彼女らしいと言うか何と言うか・・・。
ミスターT「流石に母娘を娶る事はできない・・・。」
シューム「結ばれたいとぉ〜シュームがぁいうのだからぁ〜、応じなさぁ〜い!」
エシェラ「母さん・・・そこリュリアと言って・・・。」
ミスターT「ハハッ・・・。」
   ダメだ・・・支離滅裂と化したシューム。また他の6人もどんどん酔いが回り、支離滅裂に
   なっていく。これ以上の会話は止めた方がよさそうだ・・・。


    俺に抱き寄ってくるリュリア。何時になく胸が当たり、野郎心をくすぐられる。それを感じ
   取っている6人も、態とくっ付けようと躍起だ。

    これで俺も酒が飲めていたら、考えただけでゾッとする・・・。周りからのアプローチに
   任され、リュリアと一晩共に過ごして無理矢理1つになるのだろう。というか6人も一緒に
   したいとか言い出すに違いない。

    しかし大家族としてお互い認め合い、子供達からも認められたのだ。もはや無粋な考えなど
   持ち合わせる必要などないだろう。だからといって押し通す訳にもいかないが・・・。



    その後も飲み会は続く。更に飲み続ける7人は、ベロベロになるまで酔いまくった。その
   姿は野郎そのもの。女性とは思えないほどの乱れっぷりだ・・・。

    だが7人の心中はよく分かる。俺が娘達に父親だと告白する事が不安で仕方がなかったの
   だから。しかし告白が無事成功し、父親として認められたのだ。この瞬間だけは彼女の好きに
   させてあげよう。

    リュリアとの子作りは拒否したいが、彼女達が許してくれるかどうか・・・。



    様子を見にきた娘達が、部屋の入り口で7人を見つめている。泥酔い状態の母親達を見つめ
   呆れ顔である。かく言う俺も娘達に苦笑いをするしかない。

    その後は13人の娘達も参加して、大賑わいしだす。酒は娘達全員飲めないが、ジュースや
   紅茶を片手に騒ぎ続ける女性陣。これはもう・・・間違いなく山賊だ・・・。



ミスターT「今この瞬間を大切に、か・・・。」
    ふと自然に呟いた。形はどうあれ、幸せな家庭を築けたのは確かだ。いや、これからも難関
   は迫ってくる。でも・・・必ず全員幸せにしてみせる・・・。

    徐に覆面を頭に装着し、今も飲み続ける7人と便乗して騒ぐ13人の娘を優しく見守った。

    俺の生き様をここに・・・、原点回帰をここに刻みながら・・・。



    ちなみに結局6人から押し通され、リュリアと身体を重ねる事になった。彼女も俺の子供を
   作りたいと躍起になっている。

    それから約1年後、リュリアに子供が生まれたのは言うまでもない。しかも恐ろしい事に
   双子の女の子だった。これで俺の娘達は15人へと膨れ上がった事になる。何とも・・・。


    全員女の子という事実から、何れは彼氏を連れて俺に結婚の申し出をしてくるのだろうな。
   その時どういった対応をすればいいのやら・・・。う〜む・・・何とも・・・。

    第2部・第14話へと続く。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

戻る