アルティメットエキサイティングファイターズ・外伝 〜覆面の風来坊〜
    〜第3部・第13話 ナツミEとミツキE2〜
    昼食を取った後は地元を散策した。今日1日休息しろと言っている以上、明日からの行動と
   なるだろう。

    現地ではリュアとリュオが俺の名代でナツミEとミツキEの面倒を見ている。数々の娘達を
   あやしてきただけに、2人の場合も難なく接せられるだろう。

    問題は双子の境遇にリュアとリュオが耐えられるかどうかだが・・・。まあそれは彼女達
   には又とない素晴らしい経験になる筈だ。ナツミEとミツキEには大変悪いが・・・。


    先日から面倒を見だしたウエスト達も、まるでナツミAが病床の頃のように接している。
   幼い頃から彼女の面倒を見てきただけに、何の問題はないとも言っている。

    ナツミAの時も明日とも分からない状態が毎日続いていた。それと同じ・・・いや、今回の
   方が遥かに厳しい状況だろう。ナツミA本人とミツキも一緒になって戦っている。

    この一戦は俺達の生き様を確定的にさせるものだろうな。覆面の風来坊の理はそこにある。
   どの様な状況になろうが、生き様は曲げてはならない。俺も頑張らねばな・・・。



    学園の近くを通り掛った時、中で庭園の手入れをしているナツミYUと出会った。今回も
   何処にでもいるようなジャージ姿の熟女である。しかし80歳近い年齢なだけに、以前より
   その表情は老いていた。

ナツミYU「そんな事が・・・。」
ミスターT「今は息抜きで地元を散策してますよ。」
ナツミYU「君も大変ね・・・。」
    俺の語らいで表情が曇りだすナツミYU。それにここ数週間は俺自身の覇気もあまり感じ
   られない状態である。それを鋭く見抜いてきた彼女だった。
ナツミYU「最近参ってるわよ、身体が自由に動かなくなって。」
ミスターT「シュームも同じ事を言ってたわ。」
ナツミYU「君の場合はシェヴ先輩と同じく、殆ど底無しの状態なのよねぇ。羨ましいわ・・・。」
   俺や娘達の特異体質には憧れている様子である。事実彼女の身体は確実に逝去という現実に
   向かっている。俺らの特異体質を分けてあげたい・・・。

ナツミYU「フフッ、その思いだけで十分よ。心こそ大切に、そうじゃないかしら?」
ミスターT「ハハッ、見抜かれましたか・・・。」
    案の定の対応だった。俺の内情を直ぐさま察知し、心こそ大切だと諭してきた。心こそ若々
   しくあれば、永遠の若さを保てるのだから。
ナツミYU「私と同じ名前のナツミEちゃんに、妹のミツキEちゃんもしっかりと理を抑えている。
      だからこそ限りある生命を生き抜いている。昔も今もこれからも、その理は一切変わ
      らず絶対不動よ。それこそ君のザ・レミニッセンスじゃない。」
ミスターT「そう・・ですよね・・・。」
ナツミYU「どの様な現実が到来しても膝を折っちゃダメよ。君は君らしく、覆面の風来坊を徹底的
      に演じ切りなさい。それが2人の為にもなるのだから。」
ミスターT「・・・了解です、ありがとうございます。」
ナツミYU「大丈夫よ。全ての流れには、必ず意味があるのだから。」
   俺の両手を同じ両手で掴み、自分の胸へと抱き寄せるナツミYU。そこに込められた思いは
   果てしなく深く広い。そして限りない勇気と希望を分け与えてくれた。


    シュームもナツミYUも歳相応の女傑故に、見定めた観点からのアドバイスをしてくれた。
   俺では到底考えられない物事を顕然とした態度で臨んでいる。

    ナツミYUと初めて学園の校門前で出会った事を、昨日のように思い浮かべてしまった。
   あの時から後に知り合うシュームと共に、俺の背中を最大限支え抜いてくれていたのだから。

    今を爆発的に生きよ、だな。それを再認識させられた瞬間だった・・・。



シューム「あ・・いた、大変よっ!」
ミスターT「ま・・先ずは落ち着けって・・・。」
    ナツミYUに背中を押して貰っている所にシュームが駆け付けて来た。かなり慌てている
   様子で俺の両手を掴んでくる。その言動からかなり切羽詰っている証拠だった。
シューム「ナツミEちゃんとミツキEちゃんが孤児院の庭先で同時に倒れたのよ。メルデュラちゃん
     とメアティナちゃん・メアティヌちゃんが病院へと連れて行ったわ。」
ナツミYU「先輩、場所は分かりますか?」
シューム「確か・・・シェヴ様の孤児院の近くの病院よ。」
ナツミYU「あそこですね、分かりました。私がお送りしますよ、暫しお待ちを。」
   言うか否か凄まじい勢いで走っていくナツミYU。今年74歳という老体とはとても思えない
   若々しさである。

ミスターT「・・・時が来たか・・・。」
シューム「そうなっちゃうのかな・・・。」
ミスターT「形あるもの必ず空に還る。俺達も遅かれ早かれそうなるのだから。俺達が無駄ではない
      生き様を貫けたかどうか、それが問われそうだね。」
    不思議だ。あれだけ涙を抑え切れない状態が続いていたのに、今は冷静に物事を見定めて
   いる自分がいる。傍らにいるシュームの方が取り乱している状態だ。
シューム「不思議よね。先日までは君の方が取り乱していたのに、今は私の方が取り乱してる。」
ミスターT「大丈夫さ、俺の代わりに取り乱してくれているんだろう。だからこそ2人の元へ落ち
      着いて赴く事ができる。感謝しているよ、シューム。」
シューム「う・・うん・・・。」
   俺の冷静さに驚いている彼女だが、今は彼女に俺の動揺を預けよう。ナツミEとミツキEの前
   ではとにかく冷静でいなければならない。


ナツミYU「お待たせ、行きましょう。」
    学園内から校門近くに出るとクラクションが鳴った。ナツミYUの愛車、ランボルギーニ・
   ムルシエラゴだ。この高齢の彼女が高級車を運転するのには不思議な感じがしてならない。
ミスターT「シュームもおいで。あとナツミYUさ、庭園の方はいいのか?」
ナツミYU「私が動く時はOBの教え子達が動いてくれてるわ。」
   彼女が指し示す先には数人の女性が手を振っている。以前ナツミYUの教え子だった女性達の
   ようだ。何でもフリーな時は代わる代わる庭園の手入れをしてくれているそうである。

ナツミYU「さて、パトランプっと・・・。」
ミスターT「ええっ・・・。」
    俺とシュームを車内に案内すると同時に、徐にパトランプを取り出して屋根へと装着する
   ナツミYU。それは覆面パトカーが緊急事に使うアレだ。これには驚愕してしまった。
ナツミYU「緊急事は使っていいという事になってるからね。ウインドさんとダークHさんのお墨
      付きよ。」
ミスターT「だからと言って・・・。」
ナツミYU「時間がないのよ、何振り構っていられないわ。行きましょう。」
   覆面パトカー独特のサイレンを鳴らしつつ、ナツミYUの愛車ランボルギーニは走り出した。
   また卓越した運転技術も凄まじく、とても76歳の高齢者とは思えない。

ナツミYU「あとね・・・何度も76歳とか言わないの、仕舞いに怒るわよ・・・。」
ミスターT「うへぇ・・・す・・すみませんでしたぁ・・・。」
ナツミYU「分かればよろしい。」
シューム「フフッ。」
    真剣な運転中に俺の何度となく思った年齢の事をズバリ見抜いてきたナツミYU。これには
   恐怖すら感じてしまう。俺の一挙手一投足を肌や雰囲気で感じている何よりの証拠であろう。
   そんな彼女の姿に小さく笑っているシューム。本当にこの2人は似ているわ・・・。

    しかし狭い・・・。本来は2人乗り用のランボルギーニに3人も乗車しているのだから。
   ちなみにシュームは俺の膝に座り、お姫様抱っこ状態である。これに頬を赤くしながらも、
   一時の安らぎを満喫していた。

    運転中のナツミYUからは、それに対する嫉妬の殺気を浴びせられているが・・・。


    緊急の警察車両と化したランボルギーニは街中を疾走する。物の数十分で目的地の病院へと
   到着した。どうやらここは学園のお抱え病院のようだ。だからナツミYUが場所を知っていた
   という事になろう。

    車内から出ると足早にナツミEとミツキEがいる病室へと向かった。ナツミYUとシューム
   は後から駆け付けるとの事である。



メルデュラ「あ、マスター・・・。」
    看護士さんの案内で直ぐに病室へと辿り着く。部屋の中に入るとメルデュラに迎えられた。
   その先のベッドにはナツミEとミツキEが横たわっている。
ミスターT「容態はどうだ?」
メルデュラ「意識が戻りません・・・持って数日だとの事です・・・。」
ミスターT「そうか。」
   ここでもメルデュラの方がシドロモドロになっており、対して俺は至って冷静でいられた。
   いざという時の冷静さは俺の方も持ち合わせていたようだ。

    徐に2人の傍に歩み寄る。集中治療室のような雰囲気のこの場。生命維持装置に繋がれた
   幼子は、今を生きているのが奇跡とも言える。

ミスターT「メアティナとメアティヌはどうした?」
メルデュラ「リュアちゃんとリュオちゃんも一緒に孤児院の部屋で待っているそうです・・・。」
ミスターT「分かった、ありがとう。後は俺に任せて、お前も休みなよ。」
    2人の傍に座り、それぞれの手に優しく自分の手を沿えた。その手はもはや生気はなく、
   生命力が途絶えそうな雰囲気を醸し出している。
メルデュラ「何で・・・そんなに平然としていられるのですか・・・。」
ミスターT「俺でも分からんよ。昨日までの俺なら取り乱していただろう。でも2人の手前、無様な
      姿は曝せん。2人の小父として最後まで付き添うまでだよ。」
   俺の冷静さに唖然としているメルデュラ。そこにナツミYUとシュームが入ってくる。流石は
   年の功だろう。特にナツミYUは今の俺と同じく微動だにもしていない。
シューム「後はマスターに任せて、休みましょう。」
ナツミYU「代わりに私がお付き合いしますよ。」
メルデュラ「分かりました・・・。」
   シュームに付き添われて部屋を出て行くメルデュラ。代わりにナツミYUが付き添ってくれて
   いる。近くの椅子に座ると、まるで我が子のような目線で見つめだす。


ナツミYU「アサミとアユミも幼少の頃は身体が弱くて、同じように入退院を繰り返していたわ。」
ミスターT「そんな事があったのか。」
ナツミYU「一時は10歳まで生きられないとも言われていたわ。でもシェヴ先輩の元で過ごして
      いたら、何時の間にか元気一杯に育った訳よ。」
    なるほど、だからヴァルシェヴラームに返し切れない報恩があると言っていたのか。当時は
   死活問題に至っていたナツミYUを支えていたのだ。彼女を師匠という流れは自然と至ったの
   だろうな。これを師恩と言わずとして何というのだろうか。
ナツミYU「それからはどんな事があっても動じないと決めたのよ。最初は辛かったけど、君との
      出会いが更に原点を不動にしてくれた。だから今もこうして冷静にいられる。」
ミスターT「学園の覇者を通り越して、子供達の守護者だな。」
ナツミYU「そうね、だから今も教え子達に心から接する事ができるのかもね。」
   シュームをも超える肝っ玉の据わったナツミYU。その原点回帰は燦然としている。素晴ら
   しい限りである。

ナツミYU「でもやっぱ君には敵わないかな。さっきのメルデュラさんやシュームさんの取り乱し方
      からして、先日までの君はそれ以上に慌てふためいていたと思う。でも既に心中の一念
      は据わっていたから、直ぐに立ち直る事ができた。」
ミスターT「そうかねぇ・・・。」
ナツミYU「以前私にこう言ったわよね。お前は誰なんだ、天下の結城奈津美(ナツミ=ユウキ)
      じゃないかと。その言葉の理を今の貴方にそっくりそのままお返しします。君は誰なの
      ですか、天下のミスターT=ザ・レミニッセンスじゃないですか。伝説の覆面の風来坊
      であり、その原点回帰は何人たりとも真似ができないほどの据わり様。貴方は数多くの
      男女に誠心誠意尽くし抜いていった。だから今の周りがあるのよ。」
    声色は高齢の声だが、そこに込められた一念は全盛期の彼女そのものだった。ナツミYUも
   俺の生き様に当てられて、今では天下無双の女傑と化していた。彼女の生き様は即ち俺自身の
   全盛期の姿そのものと言える。
ナツミYU「アサミとアユミが今の生き様を刻めるのも、君と初めて出会った時の一時から一変した
      と確信しています。それに私自身も不安定な時は親身になって慰めてくれた。だから
      今の私達があるのですよ。」
ミスターT「そうだな・・・。」
ナツミYU「勝負は一瞬、思い立ったら吉日。ミツキちゃんの坐右の銘であり、君の生き様でも。
      そしてその理は娘さん達が受け継いでいる。それにナツミEちゃんとミツキEちゃんも
      そうでしょう。だからこそ膝は折れないのですから。」
ミスターT「ありがとう、ナツミYU。」
ナツミYU「フフッ、やっとまともな師恩が返せた気分よ。だから気にしないでね。」
   笑顔で俺を見つめるナツミYU。その表情は全盛期の彼女のそれと全く変わらないものだ。
   心こそ大切に、それを常日頃から実践している証拠だな。学園の覇者の異名は揺ぎ無いものと
   言えるわ。



    ナツミEとミツキEが意識を失ってから数日が経過した。身内総出で看病に当たっている。
   病院に駆け付けた時から更に生気がなくなりつつある双子。時は近いのだろう・・・。

    ナツミYUも教え子達に庭園を任せ、今は俺と一緒に看病に当たっている。またウインドと
   ダークHも頻繁に訪れており、この病室は臨時の指令部と化していた。


    そんなある日、突然双子が意識を取り戻した。これには周りは驚愕するも、涙ながらに歓喜
   していた。俺の方はナツミEとミツキEの手前、今は泣く事はできない。ここは妻達や身内に
   代役を委せるしかない。

    しかし意識を保っているのがやっとという状態の双子。考えたくもないが、もはや彼女達の
   寿命は尽き掛けていると言えるだろう・・・。



ナツミE「小父ちゃん・・・。」
ミスターT「ん、どした?」
    ナツミYUが行っている編物の手伝いをしていると、静かに口を開くナツミE。声という
   よりは意識で語り掛けていると言えた。
ミツキE「小母ちゃんの・・・孤児院に帰りたい・・・。」
ナツミE「お庭の・・・チューリップが見たい・・・。」
ミスターT「・・・分かった、一緒に行こう。」
ナツミYU「車を用意してくるわ、表に出て待ってて。」
   意識で語り掛けて来た事から、これが最後の行動となるかも知れない。本来なら絶対安静を
   余儀なくされているのだが、俺は双子の意志を尊重して連れ帰る事にした。

看護士「ちょ・・ちょっと・・・何をなさっているのですかっ!」
    俺がナツミEとミツキEを胸に抱きかかえて病室を出ると、巡回中の看護士さんが血相を
   変えて止めに掛かって来た。絶対安静の双子を動かすのは死へと繋がる。
ウインド「ここは彼にお任せ下さい。」
ダークH「責任は私達警察庁長官自ら取らさせて頂きますから。」
   すると近くのベンチで待機していたウインドとダークHが看護士さんを説得しだす。どうやら
   俺がしたい事を直感で感じ取ってくれたようだった。警察バッジを見せて看護士さんと語って
   いるダークH、ウインドの方は俺を見て小さく頷いている。その2人に心から頭を下げた。


ナツミYU「ちょっと狭いけど我慢してね。」
ナツミE「うわぁ〜・・・スポーツカーだ・・・。」
ミツキE「夢みたい・・・。」
    俺は双子を抱いたまま表へと向かう。病院外ではナツミYUが愛車ランボルギーニと一緒に
   待機していた。それを見たナツミEとミツキEは驚いている。確かに滅多にお目に掛かれる
   代物ではない。
ミスターT「あまり衝撃を与えないように頼む。」
ナツミYU「大丈夫よ、私を信じなさい。」
   助手席に双子を抱いたまま座る。するとシートベルトを俺らに括り付けるようにセッティング
   するナツミYU。かなり窮屈なのだが、今はこれが最低限の安全確保である。そのまま一路
   孤児院へと向かって行った。



ナツミE&ミツキE「ただいま〜・・・。」
メアティナ「おかえり、ナツミEちゃん・ミツキEちゃん。」
メアティヌ「元気そうだね。」
    数十分でヴァルシェヴラームの孤児院へと到着し、双子を抱えたまま庭先まで向かう。そこ
   には家族総出で出迎えてくれていた。ウインドとダークHから連絡があったようである。
ナツミE「うわぁ〜!」
ミツキE「チューリップが一杯だぁ〜!」
リュア「君達が戻って来るのを聞いて、慌てて準備したのよ。」
リュオ「小さなチューリップフェアだけどね。」
ナツミE&ミツキE「ありがと〜!!!」
   満面の笑みを浮かべて喜ぶナツミEとミツキE。病室での表情の暗さとは雲泥の差である。
   ゆっくり地面へと下ろすと、メアティナとメアティヌがナツミEとミツキEを支えて花壇へと
   連れて行った。

    娘達と一緒にチューリップ畑を見回るナツミEとミツキE。またリュアとリュオの計らいで
   デジタルカメラで記念撮影を撮りだした。本当は健康な時に撮りたかったようだが、今出来る
   事をするまでなのだろう。


シューム「・・・ここを選んだ訳ね・・・。」
ミスターT「ああ・・・。」
    徐に近付いてくるシュームとナツミYU。特にシュームは何時になく表情が暗く、彼女が
   発した言葉は非常に重みを帯びていた。
ナツミYU「形あるものは必ず空に還る。私達も何れは同じ流れになるのよ。そして再び同じ時代に
      巡って来る。思いは時間と空間を超越するわ。」
ミスターT「そうだな。」
シューム「何か・・普段の私みたい・・・。」
ナツミYU「そんな恐れ多い。これは先輩が常日頃から私達に教えて頂いた一念ですよ。それを今の
      私が名代で担っているに過ぎません。」
ミスターT「ナツミYUとシューム、か。年代こそ異なれど、本当の双子のようなものかもな。あの
      ナツミEとミツキEのように・・・。」
   病室での表情の暗さより各段に明るくなったナツミEとミツキE。娘達による最大限の笑顔と
   明るさに触発されたようである。特にナツミAとミツキ・リュアとリュオが目覚ましく、同じ
   属性という事から数倍以上の明るさを醸し出していた。


ウインド「笑顔が戻られましたね。」
ダークH「説得は大変でしたよ。」
    ウインドとダークHの声がした。俺達が双子を見入っていた間に駆け付けていたようだ。
   警察庁長官の肩書きに甘えた形になったが、今はナツミEとミツキEの役に立った事が何より
   嬉しいものだ。
ミスターT「ごめんな、汚れ役を押し付けて。」
ウインド「何を仰いますか。人々を支え励まし抜いてこそ警察官たるもの。お2人が渾身の願いと
     言うのであれば断る訳にはいきません。」
ダークH「私達の生き様はここにあります。それは即ち覆面の風来坊の理そのもの。そして今世に
     巡ったのも、今日という瞬間を迎えるためではありませんか。」
ミスターT「そうだな・・・。」
   ウインドとダークHと語っていると、ウエスト達やアマギH達が現れる。今を戦う新進気鋭の
   メンバーが揃い踏みであった。

ウエスト「数十年前のナツミAさんへの労い。マスターが心から労ってくれた事、俺達は決して忘れ
     ません。」
サイバー「あの時があったからこそ今がある。ナツミAさんやミツキさんが意気健康でいられるのも
     貴方がいてくれたからです。」
ナッツ「俺達への労いの結果は完全勝利したと断言できます。それは今を生きるお2人も全く同じ
    だと確信していますよ。」
エンルイ「ナツミAさんとミツキさんが同じ境遇のナツミEさんとミツキEさんを心から労い続けて
     いる。それは過去があっての今がある、ですよ。」
アマギH「ウエスト君達が爆発的に活躍しだしたのも、全てはマスターがお節介を焼いたからです。
     俺達にもしてくれたじゃないですか。」
ユリコY「どんな相手であっても親身になって尽くし抜く。これは今では躯屡聖堕チームの永遠の
     指針の1つですよ。」
    それぞれの心の内を語る6人。彼らと共に戦った歴史は、今を迎えるためにあったような
   ものである。その彼らに頭を下げ、心から感謝した。


リュア「皆さん、一緒に記念写真どうですか?」
    遠巻きに見つめているとリュアがカメラ片手に駆け付ける。チューリップ畑を背景に記念
   写真を撮ろうと語ってきた。
アマギH「いいねぇ、一緒に映ろうか。」
ナツミYU「化粧してくればよかったわね。」
シューム「女性としての嗜みを除いた姿もいいものよ。」
ナツミYU「了解です。」
   う〜む、普段のシュームに戻ったようだ。今の現状から雰囲気が暗くなっているが、根底は
   原点不動の女傑なのだから。それを窺ったナツミYUも安心している様子である。

    デジタルカメラを三脚で固定し、遠隔操作でシャッターを押すようにするリュア。今ここに
   いる全員を集めての集合写真となった。

リュア「いいですねぇ〜、全員入りましたよ。」
リュオ「よし、戻ろうじぇ。」
    デジタルカメラの位置を決めると指定位置に戻るリュアとリュオ。俺はナツミEとミツキE
   を抱きかかえ、花壇前面中央に座る。その周りを家族や身内がそれぞれのポーズで構えた。
リュア「じゃあ撮るじぇ〜。」
ナツミE「小父ちゃん・・・ありがとう・・・。」
ミツキE「みんなと一緒にいられて・・・本当に嬉しい・・・。」
ミスターT「俺もお前達と出会えて本当に嬉しいよ。」
   写真を撮る前に俺に小さく呟くナツミEとミツキE。徐に両サイドから俺の頬に口づけをして
   くれた。それを狙っていたかのようにシャッターが下りる。
リュオ「いいのが撮れたじぇ〜。」
ミスターT「ええっ・・・。」
シューム「あらあら、羨ましい事・・・。」
ナツミYU「妬けちゃうわねぇ・・・。」
リュア「もう1枚撮ろうじぇ。」
   不意を取られた形での撮影に周りは笑い合う。ナツミEとミツキEも笑っていた。そして再び
   レンズへと目を向ける双子。そしてシャッターが下ろされた。


    数枚写真を撮り終えるとドッと湧き上がる面々。だが俺の胸の中にいるナツミEとミツキE
   からスッと力が抜けていく。身体は俺の胸にもたれ掛かるようにして身を委ねていた。

ミスターT「・・・よく頑張ったよ・・お疲れ様・・・。来世・・・必ず巡り逢おう・・・。」
    堪えていたものが爆発的に吹き上がる。眠る双子に語り掛けるように呟いた後、蓋を空けた
   ように号泣してしまう。それに周りは静まり返った。その時が来た事を知ったからだ。

    そんな俺の前に歩み寄って屈み、同じく涙を流しながら胸の中にいるナツミEとミツキEの
   頬を優しく撫でるナツミYU。
ナツミYU「本当に最後までよく頑張ったわね・・・。女性としての、人間としての戦い・・・。
      その生き様を私、結城奈津美は一生涯忘れません・・・。」
   その場に立ち上がり敬礼をする彼女。それを見たウインドとダークHも同じく敬礼をしだす。
   元シークレットサービスのナツミYU、現警察庁長官のウインドとダークH。生きている道は
   異なれど、目指すべき場所はどちらも同じ。この敬礼が物語っていると言える。

    そこにメアティナとメアティヌが傍らに近付き、ナツミEとミツキEを優しく抱きかかえ
   だす。一瞬驚いたが、今は娘達に双子を委ねた。
メアティナ「親父、後は任せてくれ。」
メアティヌ「ナツミEちゃん・ミツキEちゃん、もう少し一緒に花壇を見よう。」
   メアティナがナツミEを、メアティヌがミツキEを優しく胸に抱く。そのままチューリップ
   花壇に歩み寄り、一緒に花々を見だした。それに同調して娘達全員が同じ行動をしてくれた。


ナツミA「マスター、ありがとうございました。」
ミツキ「ナツミEちゃんとミツキEちゃん、最後はマスターの胸の中で笑って眠ったようです。」
    傍らに近付き、それぞれ俺の肩に優しく手を置くナツミAとミツキ。その2人を抱き寄せ
   胸に抱いた。まるで大きくなったナツミEとミツキEを抱いている錯覚をしてしまう。
ミスターT「・・・俺らが彼女達の分まで生き抜けばいいだけか・・・。」
ナツミA「そうですよ。理は全て覆面の風来坊に生き続けています。それはマスターが生き様を刻む
     事で繋がっていきますから。」
ミツキ「ここに集ったみんなが2人の思いを継いで生き様を刻む。それが報恩感謝だと思います。
    否、それこそ私達にしかできない最善の行動ですよ。」
ナツミA「ナツミEちゃんとミツキEちゃんは私達の名代でした。2人の分まで生き抜き、その荒波
     を突き進んだ生き様を語っていく。そこに私達の総意が込められていますからね。」
ミツキ「彼女達こそ、真の覆面の風来坊でしょう。私達も負けずに頑張らねば。」
   涙ぐみながらも胸の内を語るナツミAとミツキ。この2人こそ本当の覆面の風来坊だと思って
   いるのだが、その彼女達はナツミEとミツキEこそ本当の覆面の風来坊とも断言している。

    だがナツミAとミツキの一念、これぞ正しく追い求めてきた真の覆面の風来坊だと俺は確信
   している。この2人の生き様があれば、世界から孤児を無くすという大願と誓願に一歩近付く
   事ができるわ。


ミスターT「・・・ウエスト達の徒名をナツミEとミツキEを称えて、ナツミツキ四天王としたい
      ものだね。」
ウエスト「それいいですね、使わさせて頂きますよ。」
ナッツ「泣く子も黙るナツミツキ四天王、躯屡聖堕チームで大活躍しそうです。」
サイバー「負けずに突き進み、ブイブイ言わせてやりますよ。」
エンルイ「面白くなりそうですね。」
    逝去したナツミEとミツキE、そしてその志を受け継ぎ今を生きるナツミAとミツキ。この
   2組の双子を心から支え抜いた、ウエスト・サイバー・ナッツ・エンルイ。彼らを最大限に
   称え、ナツミツキ四天王と語った。それに同調して闘志を燃え上がらせる4人。

アマギH「お2人の旅立ちの時は躯屡聖堕フリーランスが総力を挙げて執り行います。彼女達の生き
     様は俺らと何ら変わらないもの。お2人の意志を俺達も継いで行きますよ。」
エリシェ「三島ジェネラルカンパニーも心から賛同しご助力を致します。マスターが心から愛して
     いらっしゃったナツミE様とミツキE様、お2人を最後まで支え抜く事こそ私達の原点
     です。」
メアディル「シェヴィーナ財団も賛同します。それにメアティナとメアティヌが見違えるように強く
      も優しく成長した。これはナツミEさんとミツキEさんがいらっしゃったお陰です。」
    アマギH・エリシェ・メアディルの魂の叫びに涙が止まらない。僅か数週間の付き合いで
   あったナツミEとミツキEを心から労ってくれている。2人が己の命を通して大切な事を、
   原点を教えてくれた。これは紛れもない彼女達が生きた証そのものだ。

    泣き続ける俺の頬をハンカチで拭うエシェラ。彼女も涙一杯の表情だが、その目は今までに
   ないほど据わりを見せている。
エシェラ「人間は何れ必ず空に還る時が訪れる、故に今をどう生き抜いて行くかが勝負となるのだ。
     そうでしたよね。」
ミスターT「ああ・・・その通りだね。」
エシェラ「ならば生も歓喜・死も歓喜ですよ。人間はおろか生命体には必ず訪れる生老病死。これを
     苦痛と取って逃げ回る生き様を晒すのか。それとも苦痛をも糧として喰らい尽くし、前へ
     突き進む生き様を刻むのか。貴方が私達に何度も仰ってくれたものじゃないですか。」
ミツキ「勝負は一瞬・思い立ったら吉日、ですよ。」
ナツミA「突き進みましょう、彼女達の分まで。」
   エシェラの魂の語りやナツミAとミツキの労いで落ち着きを取り戻していく。今も涙は止め
   処なく溢れてくるが、心の方はより一層落ち着いていった。
セルディムカルダート「元祖覆面の風来坊は君にこそ相応しいのかもね。」
ヴァルシェヴラーム「そうよね。理は君を中心に回っている。それを命で表現し続けたのがナツミE
          ちゃんとミツキEちゃんよ。」
セルディムカルダート「私達もまだまだ負けられないわね。ナツミAちゃんとミツキちゃん以上に
           獅子奮迅の戦いをしないと顔向けできないわ。」
   100歳を超えるヴァルシェヴラームにセルディムカルダートだが、その心中の据わりは乙女
   のような純粋さを醸し出している。そしてナツミAとミツキが彼女達の後継者だという事を
   改めて痛感した。この2組の姉妹は本当によく似ているわ。


    僅か数週間の付き合いであったが、ナツミEとミツキEは己の命を賭けて教えてくれた。
   人としてどう生き様を刻んでいくか、という根本的で簡単かつ一番難しい理を。

    勝負は一瞬・思い立ったら吉日、この双子にこそ相応しい言葉だろう。燃え尽きていく命を
   目の前に自分達が何をすべきか、いや・・・どう生きていくかを伝えてくれた。

    まだ10歳未満という年代だったが、彼女達こそ俺達の師匠的存在だったのかも知れない。
   師弟は時として年代を超越する。年上のナツミYUが年下のシュームを慕うように。

    俺も負けられない。胸の中で息を引き取ったナツミEとミツキEの分まで、生きて生きて
   生き抜いてやる。それができるのも俺でしかできない事だから・・・。



    数日後。躯屡聖堕フリーランスが総力を挙げて、ナツミEとミツキEの通夜と告別式を執り
   行ってくれた。とは言うものの友人葬に近いため、身内だけのものであったが。

    荼毘に付した双子の遺骨は孤児院のチューリップ畑の隣に埋葬した。常に共にあり、それを
   忘れないと心に決めて。

    彼女達の存在は覆面の風来坊そのものだ。それを名代として、これからも俺は覆面の風来坊
   を貫き通していく決意である。





    墓前にチューリップを供えてある場に意識が戻る。本当にあっと言う間の出来事であった。
   風のように現れて風のように去っていったとも言える。本当に彼女達は実在したのだろうかと
   思うぐらい、劇的な出会いと別れであった。

    しかし彼女達は確かに存在した。俺達の生命を変革させて次の世へと旅立っていったのだ。
   幼さなんか関係ない。双子は俺の心から敬愛する師匠であり、そして正真正銘の地より湧き
   でし菩薩そのものである。



ミツキ「ただいま〜わぅ。」
メアティナ「おかえりなさい。」
    彼女達への報告も兼ねての献花を終えると孤児院を後にした。そのまま本店レミセンへと
   戻る。厨房ではシュームとメアディルが切り盛りをしており、カウンターではメアティナと
   メアティヌがウェイトレスをしていた。
ミスターT「お前達が手に入れてくれたチューリップを置いてきたよ。」
メアティヌ「ありがとう。本当は俺達も行きたかったんだけど、親父こそが相応しいと思って。」
ミスターT「お前達も今度行ってあげてくれ。娘達の中で一番接した時間が長い。お前達からすれば
      妹のような存在だったのだから。」
メアティナ「うん、そうするよ。」
   男言葉は相変わらずだが、心の据わりは雲泥の差になった。ナツミEとミツキEに出会う前と
   出会った後では本当に違う。これほど劇的に変革したのは驚くも素晴らしい事だわ。

ミツキ「メアティナちゃんとメアティヌちゃんも、わたの大切な妹わぅからね。その2人がナツミE
    ちゃんとミツキEちゃんを妹のように接してくれた。感謝感謝わぅ。」
ナツミA「年代なんか関係ないよね。メアティナさんとメアティヌさんは、ナツミEさんとミツキE
     さんの姉なのだから。その貴方達の姉としていられるのは本当に幸せです。」
メアティナ「ありがとうございます・・・。」
メアティヌ「今後もよろしくお願いします・・・。」
    ナツミAとミツキに褒められ、頬を赤くして礼を述べるメアティナとメアティヌ。ナツミA
   とミツキも男臭さが色濃いためか、異性からの労いに取れたためだろう。同性からの労いでは
   絶対に頬を赤くしないのだから。


ミスターT「ナツミEとミツキEも大きくなっていたら美人になっただろうなぁ・・・。」
ミツキ「そうわぅねぇ。わた達以上のべっぴんさんになってたわぅよ。」
    カウンターに座り一服しながら、別の未来であった姿を思い浮かべる。傍らでは紅茶を啜り
   ながら同意するミツキ。ナツミAは厨房でコーヒーメーカーをいじっていた。
ミツキ「マスターもあの2人に口説き文句を言ってあげるべきだったわぅ。」
ミスターT「場が場なだけにね・・・。」
ミツキ「女性はどんな時でも異性からの労いに心をときめかせるわぅよ。それが活力となり推進力と
    なっていくわぅ。」
ミスターT「まあなぁ・・・。」
   あの当時ではとてもじゃないが口説き文句は出せなかった。しかしミツキが指摘した通り、
   もし口説き文句を言っていれば別の流れに至っていたのかも知れない。まあタラレバの世界
   ではあるが。
ミツキ「今後も誰彼構わず、女性が現れたら口説くわぅよ。それこそマスターらしさわぅから。」
ミスターT「殺気立った視線や雰囲気を浴びせられなければいくらでもやるよ・・・。」
ミツキ「フフッ、そうわぅねぇ〜。」
   案の定カウンター先では殺気立った雰囲気を出しているシュームとメルデュラがいた。最近は
   特に俺の一挙手一投足に直ぐさま反応し、痛烈な茶化しを入れてくるのだから・・・。

ミスターT「・・・偶には一杯やるかね。シューム、ビールを頼む。」
ミツキ「珍しいわぅね、ならわたも相席するわぅ。」
ナツミA「私も頂こうかな。」
メルデュラ「だ・・大丈夫なのですか・・・。」
    突然酒を飲むと語り出すと驚愕するシュームとメルデュラ。特にメルデュラは俺の酒の弱さ
   を痛感しているだけに、大丈夫なのかといった表情を浮かべていた。しかしそれに同調しだす
   ミツキ。厨房にいたナツミAも同調し、カウンターに座り酒を求めだしている。
ミスターT「偶にはいいものさ。それにこれは偲び酒でもあるからね。」
メルデュラ「・・・分かりました。シューム姉さん、厨房を任せてもよろしいですか?」
シューム「分かったわ。貴方も一緒に飲みなさいな。」
   メルデュラも同席しだすと語り、厨房をシュームに任せだした。その心意気を察知し、一言
   返事で応じる彼女。代わりにメアティナとメアティヌが厨房に立ちだした。そう言えば最近は
   調理師免許を取るとか言い出している。この厨房やカウンターでの立ち回りが今後の礎になる
   のは言うまでもない。

    カウンターに座る俺とミツキ・ナツミA・メルデュラ。時刻はまだ午後2時を回った頃なの
   だが、早いお酒という事になりだした。ナツミEとミツキEを心から偲んで・・・。


    彼女達の思いは常に共にある。何時如何なる時でも一緒だ。俺達の生き様を大いに刺激して
   くれたのだから。貴方達の思いは今後も必ず継いでいって行く。

    ナツミE・ミツキE、生まれてきてくれてありがとう。短い間だったが、本当に感謝して
   いる。君達の分まで、俺は徹底的に生き抜いていくぜ・・・。

    第3部・第14話へと続く。

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