アルティメットエキサイティングファイターズ・外伝 〜覆面の風来坊〜
    〜第3部・第14話 最終話・レミニッセンス・前編1〜
ヴァルシェヴラーム「みんな心配してるわよ。」
    ヴァルシェヴラームの言葉で我に帰った。今は彼女の孤児院にいる。中庭の花壇脇に佇む
   墓標、8ヶ月前に逝去したナツミEとミツキEが眠る場所だ。その傍らで空を仰ぎつつ一服
   していた。


ミスターT「・・・すみません、シェヴさん。」
ヴァルシェヴラーム「・・・あれから8ヶ月か、本当に早いものね。」
    俺に釣られてヴァルシェヴラームも一服をしだす。色々な思いが交差する。この双子が俺を
   劇的に変革してくれたのは間違いない。ただ今は余波が強すぎて、ナイーブになっている状態
   なのだが。
ミスターT「・・・俺は・・彼女達を支えられたのですかね・・・。」
ヴァルシェヴラーム「もちろん。最後は笑って眠ったのよ。物事は結果が全て、それが如実に現れて
          いるじゃない。」
ミスターT「・・・そうですね・・・。」
   再び涙が溢れてくる。時間が経てば経つほどに、胸に空いた穴は広がっていく。僅か数週間の
   巡り逢いだったナツミEとミツキEは、俺の全生命の一部に等しかった。人は失って初めて
   その大切さを理解する。それが痛烈に理解できた。

ヴァルシェヴラーム「とにかく、今は君の役目をしなさい。さっきシュームさんから連絡があって、
          みんな心配してるそうよ。2人を思ってくれるのは嬉しいけど、それで君が
          進む事を止めてしまっては意味がないわ。」
ミスターT「・・・そうですよね、分かりました。」
ヴァルシェヴラーム「大丈夫。君は全てを知っているし心得ている。後は一握りの勇気で前へと進む
          のが何より大切な事。それをナツミEちゃんとミツキEちゃんも望んでいる。
          そうじゃないかしら?」
ミスターT「その通りですね、了解です。」
    その場に立ち上がると右手を差し出してくるヴァルシェヴラーム。その彼女に俺も右手を
   差し出しガッチリ握手を交わした。メアティナやメアティヌが得意とする、男臭さ溢れる言動
   の1つである。ナツミEとミツキEも同じように感化されていたのが懐かしい。


    ヴァルシェヴラームに別れを告げ、本店レミセンへと戻った。ちなみに移動はナツミYUの
   影響を受け、ランボルギーニ・ムルシエラゴを購入してのものだ。

    ナツミEとミツキEを乗せた最初で最後の車として、俺の脳裏に鮮明と焼き付いている。
   この高級車の購入に周りは驚いていたが、何と賛同してくれて資金援助をしてくれた。

    最初は中古車を購入しようとしたが、エリシェやエリム・エリアの計らいで新車を入手する
   事になった。時代はエコカーとなる車種が主流になりつつあるが、そう何度も乗り回すもの
   ではないので選んだ次第である。



メルデュラ「あ、帰られましたよ。」
シューム「お帰りなさい。」
ミスターT「ただいま。」
    本店レミセンの裏手の駐車場にランボルギーニを駐車。そのままレミセンへと入る。店内に
   入るとメルデュラとシュームに出迎えられた。表情からしてかなり心配しているのが分かる。
ミスターT「ごめんね、心配掛けたよ。」
シューム「何を仰いますか。優しい貴方の事、お2人の所へ赴いたのはリュアちゃんやリュオちゃん
     からお聞きしていました。」
メルデュラ「貴方の思いが分かります。時間が経過する事で胸の穴が広がっていく。その一念は私達
      では到底補えるものではありませんから。」
ミスターT「すまない・・・。」
   メルデュラとシュームに深く頭を下げた。心の隙間を埋めるための存在と言っては大変失礼
   ではあるが、それこそが共に生きると定めた夫婦たる絆。2人はそれを強く表に出して強調
   している。それでも俺の心の穴が大きい事にも気が付いており、こればかりは時間が解決する
   しかない事を理解してくれているようだった。

シューム「私達にできる事は心半ばにして倒れられた、お2人の分まで生き抜く事。それが今を生き
     続ける私に与えられた使命でもあります。貴方はそれを十分理解なされている。だから
     こそ、今も苦しみ続けるのでしょう?」
ミスターT「・・・彼女達こそ真の覆面の風来坊、正真正銘の地より湧きでし菩薩そのものだよ。
      存在そのもので俺達を激励し奮起させてくれた。彼女達がいたからこそ、今の俺もある
      のだから・・・。」
    話している最中から涙が溢れてくる。その俺の両手を握り締め、胸へと抱くシューム。強く
   握り締めてくる事から、自分も同じだと伝えてきている。
シューム「貴方がそう仰るのなら、本当の勇者だったのでしょうね。また妻の私達が介入できない
     ぐらいの一途な愛情を感じます。本当ならヤキモチを妬く所ですが、とてもその様な思い
     には至れません。」
ミスターT「・・・すまない、お前達という心の支えを前にして・・・。」
シューム「ううん、いいのですよ。娘達もそうですが、純粋一途で愚直に突き進む姿は全く同じ。
     だからこそ娘達が生まれたのですから。そして貴方と結ばれた事も誇れる事です。」
メルデュラ「時として思いは時間と空間を超越する。そのマスターの思いは旅立ったお2人にも十分
      通じていますよ。メアティナちゃんとメアティヌちゃんが顕著じゃないですか。」
ミスターT「ハハッ、そうだったね。」
   メアティナとメアティヌの話になると、シュームもメルデュラも深く溜め息を付く。対する
   俺も釣られ溜め息を付いてしまった。


    ナツミEとミツキEに感化されて一回りも二回りも大きく成長した。しかし同時に男臭さも
   色濃くなってしまい、今では家族内で一番男に近い存在といえた。最大の理由は女子学生に
   絶大な人気を誇っている事だ。

    自分の生き様に嘘を付くな、これは双子の母たるメアディルの永遠の指針。そしてそれは
   ナツミEとミツキEも同じ生き様を貫いていた事により、メアティナとメアティヌは誰よりも
   己自身に嘘を付かなくなったのだ。それ故の男臭さだろう。

    この2人には流石のリュアとリュオも敵わないと言い出している。お転婆でじゃじゃ馬娘を
   地で行く2人が言うのだから間違いない。末っ子はこうもワイルドに育つものなのだな。


メルデュラ「体育祭の時は本当に驚きましたよ。メアティナちゃんとメアティヌちゃんが動けば、
      まるで女優が動くかのようにファンたる生徒さん達が群がってしまう。特に女子生徒
      さん達が凄まじかったですよ。」
ミスターT「己の生き様を地で貫く、か。ザ・レミニッセンスそのものだわ。」
    カウンターに座り一服する俺。隣ではシュームも一緒に一服している。厨房はメルデュラが
   担当してくれていた。今も本店レミセンは古参のユーザーさんが数多く利用してくれている。
   殆どの方が自分で使い終えた食器をカウンターまで持って来てくれるのだが・・・。
シューム「エシュリオスちゃんとエフィーシュちゃんが言ってたわ。メアティナちゃんとメアティヌ
     ちゃんは女優が似合うって。ハスキーボイスからなる声色は、ワイルドウーマン役が十分
     担えると太鼓判を押してたから。」
ミスターT「メアディルもヒッチハイクの時は己の生き様を貫き通してたからねぇ。それに当時から
      男と見間違うような体格と声色をしていたし。態とラフな姿をする事で、自分を女性と
      見させないようにしていたぐらいだから。」
メルデュラ「でもメアディルさんがそのままの生き様を貫いていたら、今の様な姿には至らなかった
      と思います。やはりヒッチハイクを通して貴方と巡り会ったからですよ。」
シューム「私達も貴方に大きく変革させて頂きました。ともすれば、貴方はナツミEさんとミツキE
     さんに影響を受けたと仰っています。しかし実の所は、貴方が彼女達を変革させたとも
     言えますよ。」
ミスターT「そうかなぁ・・・。純粋無垢で透き通るような切れ味の双剣とも言えたよ。私利私欲で
      接しようものなら、一刀両断に処断されてしまうぐらいに。」
   胸の穴からの虚しさを除いての感想では、ナツミEとミツキEの強さは最強と言えるだろう。
   その純粋無垢な一途な一念は、絶対刃毀れをしない真剣そのものだ。無粋な一念を抱き接し
   ようものなら、直ぐに一刀両断されてしまうぐらいの威圧感であったわ。

シューム「本当にお2人がお好きなのですね、妬けてしまいます・・・。」
ミスターT「それでも・・・俺の言いたい事は大体分かるね?」
シューム「ええ、無論です。その好かれる一念は恋愛感情ではないという事。己の生き様を変革する
     ぐらいの偉大な存在故に、心から好いてしまうというものでしょうから。その部分は私も
     痛感しましたので。」
メルデュラ「あの伝説の風来坊を心から惚れさせるほどの異性ですよ。私達が束になって挑んでも、
      絶対に勝ち目はありません。」
ミスターT「フフッ、ありがとう。それでもシュームが述べた恋愛の部分の一念じゃない事は理解
      して欲しい。お前達の俺への純愛に関しては、流石の2人も絶対敵わないわな。」
    妻達の純愛に関しては痛いほど理解している。常日頃からの強い一念を受けながら生きて
   いるのだから尚更だ。この部分はナツミEとミツキEも敵わないだろう。


ミスターT「・・・生き様、か・・・。」
    再び一服しながら天井を仰ぐ。自分の生き様をも変革してくれた双子。ならば彼女達の分
   まで生きて生きて生き抜く事が最大限の報恩感謝である。
ミスターT「・・・俺は俺であるべきだよな。」
シューム「何を愚問な事を。人それぞれ価値観が異なるように、生き様も千差万別。私には貴方の
     生き様は演じられません。私なりにアレンジしての風来坊を演じる事は可能でしょう。
     しかしオリジナルたる貴方には絶対に敵いませんから。」
ミスターT「対してシュームの先見性溢れる女性ならではの視点は真似ができない、か・・・。」
メルデュラ「マスターはマスターの生き様、シューム姉さんにはシューム姉さんの生き様ですよ。
      私は私の生き様を貫いていく以外に、己を表現する手段は一切ありませんから。ほら、
      ミツキさん十八番の桜梅桃李の理ですよ。」
ミスターT「そうだな・・・。」
   2人の言葉でようやく落ち着きを取り戻していった。今もナツミEとミツキEとの死別の影響
   が色濃く残っているため、その都度妻達に慰めて貰っている次第である。

シューム「やっと落ち着きましたね。それでこそ覆面の風来坊ですよ。」
ミスターT「あらま、見抜かれてたか。まあ・・・女性の万物を見定める一念に関しては、とても
      じゃないが敵うものではないからの。俺なんか意図も簡単に見抜かれちまうわな。」
シューム「それだけ私達の貴方への純愛と慈愛を感じて頂けたかしら?」
ミスターT「ははぁ〜、恐れ入りやしたぁ〜。」
    女を甘く見るなと凄まじい目線で見入ってくるシューム。それにメルデュラもカウンター
   越しから同じように凄まじい目線で見入ってくる。その2人にまるで時代劇の御代官へ頭を
   下げるような仕草をして応じると、堪え切れずに笑い出すシュームとメルデュラであった。


    本当に妻達には迷惑を掛けっ放しだわな・・・。それでも俺に対して一途に尽くしてくれて
   いる。その彼女達に報いる事こそが、ナツミEとミツキEの分まで生き続ける事にも繋がるの
   だろうな。

    同じ同性同士故に、双子の生き様は痛感していると豪語する身内。いや、彼女達と出会った
   誰もが口を揃えて語っている。それだけ内在する生命力は半端じゃなかったのだろうな。

    もしナツミEとミツキEが病弱ではなく健康体で出会っていたら、今だかつてない程の女傑
   へと成長しただろう。それも誰も敵わないほどの史上最強の女性にだ。

    何度も言うが、真女性には敵わないわ・・・。野郎なんざ足元にも及ばない・・・。



ミスターT「・・・男に生まれればよかったのにな・・・。」
    久し振りに地元を散策しつつ、周りへの激励を繰り返す。例の企業間抗争以後はこういった
   コミュニケーションを優先的に行っていた。そんな中、メルデュラが言っていた言葉を痛感
   する。目の前には数人の女子学生に囲まれて歩くメアティナとメアティヌの姿があった。
女子学生1「えぇ〜。マスター、それは困りますよぉ〜。」
女子学生2「女のお2人にも魅力を感じているのに、これが異性だったらイチコロです・・・。」
ミスターT「そう言うもんかね・・・。」
   最近は本店レミセンや各レミセンに学園から職業訓練の一環で学びに来る学生さんがいる。
   この彼女達もそうで、今では顔馴染みになっていた。そして必ずと言っていいほど、妻達から
   色目だとヤジを飛ばされるのだが・・・。嫉妬心丸出しだわ・・・。

ミスターT「それでもメアティナとメアティヌに付き合ってくれてありがとね。こう見えても非常に
      ナイーブで落ち込むと陰で泣くぐらいだからさ。」
メアティナ「お・・親父・・・それは言わない約束でしょう・・・。」
ミスターT「あらぁ〜、女性らしい姿に可愛いなぁ〜と思っているんだがねぇ〜。」
メアティヌ「うぅ〜・・・親父には敵わないわ・・・。」
    母親のメアディルから俺に悪態は絶対に付くなと再三言われている双子。それ故に俺の何気
   ない言動に腹を立てようにも押し留まっている。これはこれで非常に可愛いのだが・・・。
ミスターT「それでも・・・ナツミEとミツキEを最後の最後まで看病してくれた事は、心から感謝
      している。今のお前達があるのも彼女達の影響なのは明白だろう。」
メアティナ「ああ、それは自覚してるよ。彼女達あっての俺達なのだと。」
メアティヌ「結果は亡くなってしまったけど、理は親父・お袋・姉貴達・俺達に受け継がれている。
      俺達が彼女達の分まで生き抜かなきゃね。」
ミスターT「そうだな・・・。」
   俺の涙脆い性格が色濃く出ているメアティナとメアティヌ。当時を思い出し、自然と涙を流し
   出していた。それに周りにいる彼女達は驚き慌てだしている。

ミスターT「ありがとう、メアティナ・メアティヌ。お前達が言っていた通り、その涙は彼女達に
      必ず伝わる。俺達が理を抱いて生き続ける限り・・・。」
メアティナ「あ・・当たり前です。あのお2人はおれた・・・私達の鏡そのものですよ。」
メアティヌ「おれ・・・私達が私達でいられるのも、お2人あっての事です。そしておや・・父さん
      にも強く影響をしている。」
ミスターT「フフッ、何時もの男言葉でいいのに。でもありがとう。彼女達の生き様は、今のお前達
      に受け継がれているからね。我ながら思うが、本当に可愛い娘達だよ。」
メアティナ「あ・・ありがとう・・・。」
メアティヌ「そ・・そう言ってくれて嬉しいです・・・。」
    滅多な事では女言葉を使わないメアティナとメアティヌの姿に、周りにいる2人を慕う彼女
   達は大変驚いている。そしてその普段とは真逆のギャップに顔を赤くしているのだが・・・。


ミツキ「勝負は一瞬、思い立ったら吉日わぅよ!」
ミスターT「うわっ・・・驚かすなよ・・・。」
    突然背後からミツキの十八番の叫び声に驚愕してしまう。何時近付いて来たのかすら分から
   なかった。その彼女の傍らにはナツミAがいる。そう言えば今日は孤児院の院長の仕事は休み
   だと言ってたな。
ナツミA「当時はメアティナさんとメアティヌさんが最前線で活躍なされたのです。ナツミEさんと
     ミツキEさんを最大限支えられた。その影響により、こちらの女性の方々を支えられて
     いるのですから。」
ミツキ「そうですよ。メアティナちゃんとメアティヌちゃんは己の身を賭して周りを支えている。
    みんな2人が好きなんですよ。」
ミスターT「改めてお願いするよ。こんな娘達だが、今後もよろしくお願いします。」
   メアティナとメアティヌを慕う女子学生達に深々と頭を下げた。彼女達あっての娘達である
   のは間違いない。今後も娘達が周りに役立ってくれる事を心から願う。


    再び女子学生達と会話をしながら去っていくメアティナとメアティヌ。女性らしい一面を
   目の当たりにしたためか、先程よりも気さくに語り掛けている彼女達。

    そんな彼女達を見つめ一服をする。今後は娘達の世代が活躍する事になる。その彼女達を
   少しでも支えられれば、覆面の風来坊としての役割は十二分に果たせるだろう。


ミツキ「やっぱナツミEちゃんとミツキEちゃんが2人を変えたわぅね。」
ミスターT「そうだな。男らしさもあるが、根底は女らしさが根付いている。今後は彼女達の時代。
      頑張って貰わねばね。」
ナツミA「問題ありませんよ。マスターの愛娘さん達なのですよ。それこそ愚問です。」
ミツキ「わぅわぅ。」
    今では女性力満開のミツキとナツミAの姉妹。孤児院の院長を担いつつ、多岐に渡る役割を
   担っている女傑だ。そんな彼女達に娘達が役立っているのは本当に嬉しい。

ミツキ「そうわぅ、今度みんなで旅行に行かないわぅか?」
ミスターT「また行くのか・・・。」
ミツキ「今度は真夏に行くわぅよ。海で大暴れしたいわぅ。」
ナツミA「既にヴェアさんや皆さんと打ち合わせをしています。今回は大規模なパーティーも兼ねて
     楽しみましょう。」
ミスターT「まあ・・・みんなが楽しめれば文句は言わんが・・・。海か・・・。」
    今も水に対して恐怖心が取れ切れていないため、非常に怖い事この上ない。それでも身内の
   望む事は何でもしてあげたいが・・・。う〜む・・・。
ミツキ「思い立ったら吉日わぅよ。」
ミスターT「・・・そうだな、全て任せるよ。」
ミツキ「まっかせろーわぅ!」
   一際張り切りだすミツキ。本当にこの美丈夫には頭が上がらない。ムードメーカーではリュア
   とリュオを遥かに超える存在だ。そしてナツミAがいるからこそ実現できる、か・・・。この
   双子は俺が知る女性の中で最強クラスである。


    ミツキとナツミAが打ち出した大規模な旅行に身内は大賛成の様子だった。また今まで大変
   お世話になった周りの面々も巻き込んでとなり、これは言わば社員旅行とも言えるだろう。

    実際問題、仕事の関係で全員が揃う事は厳しいと思った。しかし今回は三島ジェネカンや
   シェヴィーナ財団・躯屡聖堕チームが一丸となって補佐してくれるという。つまり代表者は
   休息を取れというものだ。

    う〜む・・・、ここぞという時に有給休暇を使うとは・・・。それだけ普段から休日を取る
   事をせず動いていた証拠だろう。だから周りから休めと言われたのだろうから。



    大規模旅行の打ち出しから3ヵ月後の7月下旬、その時はやってきた。予ねてから下準備を
   整えていたため、万全の態勢で挑めるという。

    今回は完全な旅行となるため、行きは観光バスをチャーターしての移動である。ちなみに
   この運転はナツミYUが取り仕切っていた。高齢なのによくぞまあ・・・。

    今回も身内オールスターでの集まりとなる。だがシュームやメルデュラなら分かるが、重役
   を担っているエリシェやラフィナは大丈夫なのかと心配する・・・。特にウインドとダークH
   は今も警察庁長官を担っているのに参加しているぐらいだ・・・。

    まあこの部分の根回しは十二分に行っているのだろう。でなければ生真面目な彼女達が使命
   とも言える重役を放って置く筈がない。本当に女性は二手三手先を読んで動くわな・・・。



リュア「いぇ〜いっ、海だじぇ〜!」
リュオ「道具置いてきて泳ごうじぇ〜!」
    ・・・今年27歳のリュアとリュオ、それがまるで幼子のようにはしゃいでいる・・・。
   それに釣られて動く他の娘達。彼女達もいい年なのに、よくぞまあ・・・。

ミスターT「結局は三浦海岸という訳か・・・、しかも・・・。」
シューム「私達にとっては運命的な場所よね。」
    俺の腕を掴み腕組みをするシューム。目の前にそびえるはシュームと一戦を交えた、あの
   高級ホテルである。数々の思い出で活躍した名所だが、俺の方は遣る瀬無い気分だ・・・。
ナツミYU「私もあと数十年若かったら、君をどこまでも求めるんだけどねぇ。」
アサミ「もうっ、母さんったら・・・。」
アユミ「最近は吹っ切れたようにエロ度満開ですよ・・・。」
   対して反対側の腕を掴み腕組みをしてくるはナツミYUだ。アユミが述べるように、最近は
   我慢せず甘えてくる姿が目立っている。これで77歳なのだから驚きだわ・・・。
ナツミYU「こらぁ〜、また年齢の事を思ったでしょ〜!」
ミスターT「・・・魔の千里眼だわ・・・。」
シューム「フフッ、流石ナツミYUね。」
   俺が心中で思った一念を察知して不貞腐れるナツミYU。年齢の事に関して思うと、直ぐさま
   反応を見せてくる。凄まじいまでの洞察力だ。

    しかし自分が知る女性陣の中では、ヴァルシェヴラームとセルディムカルダートを除けば
   最年長であるナツミYU。彼女は例の老化の訪れない特異体質ではないが、今だに身体付きは
   3・40代を維持しているのだから驚きである。これも心と身体を若々しく保ち続けている
   からだろうな。


    とりあえず持参した荷物などをホテル内に置く事にした。ここでも荷物運びはメルデュラや
   リヴュアスが大活躍している。最近はメルテュア・メルテュナ姉妹、リヴュミナ・リヴュミヌ
   姉妹が率先して動いてもいる。

    極め付けはメアディル・メアティナ・メアティヌ母娘だろう。特にメアティナ・メアティヌ
   姉妹は家族内で一番の力持ちに至っている。それでいてハスキーボイスなのだから、女子生徒
   さん達に人気なのは言うまでもないわな・・・。



女性支配人「お久し振りでございます、シューム様。」
シューム「貴方もお変わりないようで。」
セルディムカルダート「あら、ここで働いていたのね。」
女性支配人「ああっ、ディム母様ではありませんかっ!」
    三浦海岸のホテルの女性支配人さんは相変わらずだった。シュームとも何度か連絡を取り
   合う仲だそうである。そして今回は彼女の母たるセルディムカルダートも一緒だという事に、
   大感激しているようだ。
ヴァルシェヴラーム「へぇ〜。ディムが話していた、やんちゃな女の子はこの方なのね。」
ミスターT「や・・やんちゃって・・・何時の事を言ってるんだか・・・。」
女性支配人「フフッ、まあそう仰らずに。私も幼少の頃はあちらの娘様方と同じように、手が付け
      られない程のやんちゃっ振りでしたよ。」
   女性支配人さんが指し示す先には、何とリュアとリュオが大広間のオブジェを色々といじって
   いるではないか。慌てて止めに掛かりオシオキヘッドロックをする母のリュリア。それに周り
   の女性陣は呆れるよりも笑ってしまっている。
ヴェアデュラ「リュアちゃんとリュオちゃんには本当に手が焼くわね・・・。」
ミツキ「でもそんな2人が可愛いわぅよね?」
ヴェアデュラ「まあねぇ〜・・・。」
ナツミA「そう言うミツキも幼い頃はああだったじゃない。」
ミツキ「それを言っちゃぁ〜おしまいわぅ〜。」
   以前ナツミAから伺ったが、ミツキも怖ろしいまでにやんちゃな娘だった。それを指摘される
   と口に右手人差し指を当てて言うなと促してくる。それに小さく笑ってしまった。本当に彼女
   はムードメーカーまっしぐらである。

アマギH「なるほど・・・兄貴お墨付きの別荘とはこの事でしたか。」
ユリコY「何度か催し事で赴いた事があるけど、実際に泊まるのは今回が初めてよね。」
ミスターT「偶にはいいものだろう。普段から私情をかなぐり捨てて動いているお前達だ。息抜きを
      しないと早死にするぞ。」
    普段から腰を下ろしての外泊はしないというアマギHとユリコY。自分達の事より周りを
   最優先に動く事をモットーにしている。躯屡聖堕フリーランスの初代総長なだけに、今では
   多岐に渡る重役を担わされているのだから。
ウィレナ「というかさぁ〜、2人はまだ若いから別の早死にをしそうな気がするねぇ〜。」
シンシア「そうだのぉ〜、若さ故の過ちって奴ですなぁ〜。」
ミスターT「・・・相変わらず下品なムードメーカー丸出しだな。」
   ウィレナとシンシアの指摘に顔を真っ赤にするアマギHとユリコY。13年前に結婚した2人
   だったが、まだ後継者育成には至っていない。これはこれでマズいとは思うが・・・。
メアティナ「親父、みんなの荷物を最上階に置いてきたぜ。」
メアティヌ「早く泳ごうぜ!」
ミスターT「・・・こっちはこっちでパワフルウーマンか・・・、何とも・・・。」
   力仕事を終えて汗ダクダクのメアティナとメアティヌ。肩に持つショルダーバッグからして、
   直ぐに泳ぎたいのだろう。この部分は男臭さよりも女らしさが色濃く出ている。やはり根本は
   女性なのだから。

    というかタンクトップが汗で濡れてしまっており、更にはブラジャーを着用していない。
   それにより巨乳から織り成す乳首がハッキリと出てしまっている。それをジェスチャーで示す
   も全く気に留めていない。

    そしてそれを一部始終窺っていた周りの母親達や俺を思う女性陣から、痛烈な殺気に満ちた
   目線で睨まれてしまう。自分の娘の両乳房を見るなという半端じゃないジェラシーである。
   俺も青褪めてしまうが、アマギHとユリコYの方が凄まじいまでに怯えていた。

    妻達や俺を思う女性陣の真の恐さはここにあるのだろう。本当に怖ろしい・・・。



    女性支配人さんとの簡単な挨拶を済ませ、一同して海岸へと向かった。夏真っ盛りになり
   つつあるため、今日は非常に蒸し暑い。海岸は数多くの来訪者でごった返している。

    身内は全員水着に着替えに向かうが、俺は遠慮させて貰った。どうせ着替えれば無理矢理に
   泳がされるに決まっている。とてもじゃないが勘弁して欲しいものだわ・・・。


    しかし海か・・・。ナツミEとミツキEが半年ほど長生きしていたら・・・、一緒に来る事
   ができたのだろうな・・・。まだまだこれからだというのに・・・。

    時として運命は本当に残酷な事をしやがる・・・。死ぬのなら俺の方だろうに・・・。何故
   幼い彼女達から命を奪ったのか・・・。考えれば考えるほど苛立ちと悲しみが募る・・・。



シューム「1人淋しく散歩?」
    不意に声を掛けられて驚く。そちらを向くと水着姿のシュームとナツミYUがいた。この
   高年齢なのに色気ムンムンの水着を着用するのには別の意味で驚くしかない。
ナツミYU「またですか・・・何度年齢に関して言えば・・・。」
ミスターT「か・・勘弁してくれ・・・。」
シューム「まあまあ、彼らしくていいじゃない。」
ナツミYU「そ・・それはそうですけど・・・。」
   ナツミYUの自分の年齢を考えるなという意味合いを理解した。それは彼女やシュームを見る
   目がイヤラシいものではなく、高齢者を見るような目を察知したからだろう。他の妻達なら
   真っ先にエロオヤジとか言ってくるのだが、ナツミYUだけは全く別である。

シューム「それとミスターT君ね、彼女達を思ってあげる事は大切な事よ。でもそれが君を苦しめて
     しまっては何の意味を成さないわ。彼女達が望むのは私達・・・いえ、貴方の幸せよ。
     それを忘れないで。」
ミスターT「・・・ああ、分かってるよ・・・。」
    対してシュームは俺が亡きナツミEとミツキEを思っていた事を看破してきた。これにも
   驚くが、彼女の言葉は痛烈に胸に突き刺さってくる。
ナツミYU「貴方は十分戦いましたよ。それは私達が一番理解しています。その貴方が前を向いて
      進まないでどうするのですか。シューム先輩が仰るように、お2人は貴方の幸せを心の
      底から望んでいます。」
シューム「思いは時として時間と空間を超越する。彼女達が生まれ変わってくる時、貴方が与えた
     慈愛が大きな糧となるのは間違いありません。」
   涙が溢れて仕方がない。今だに乗り越えられない俺に対し、シュームとナツミYUが最大限の
   激励をしてくる。2人の中にもナツミEとミツキEの成そうとした志が根付いている事を痛感
   した。即ち双子は俺達の中で今も生き続けている何よりの証拠だ。

シューム「そう、その思いよ。ナツミEちゃんとミツキEちゃんは私達の心の中に生き続けている。
     私達が生き様を刻む事によって、あの子達も一緒に生き続けるのだから。」
ナツミYU「今後も分け隔てない愛情を放ち続けて下さい。それが伝説の覆面の風来坊たる役割。
      私達も出来得る限りご助力しますから。」
ミスターT「・・・ありがとう・・・ございます・・・。」
    涙ながらに礼を述べると、右手をシューム・左手をナツミYUが優しく握ってくる。そして
   力強い握手に変えてきた。そこから伝わる思いは果てしない慈愛の一念である。

ナツミYU「まあね、今後も色々と思う所があるでしょう。でもその都度私達が慰めてあげるから、
      心配しないでね。」
シューム「特に・・・あっちの方で慰めてあげるから・・・。」
ナツミYU「フフッ・・・そうですねぇ・・・。」
ミスターT「う・・・その場合はお前達から来るんだろうに・・・。」
    シュームとナツミYUが慰めると言ってくるが、その意味合いが別の意味合いにゾッとして
   しまった。そんな俺を見て不気味にニヤケる2人。リュアとリュオが得意とする、その場の
   流れを変化させる荒業。そう、それは彼女達だからこそできる荒業だろう。

    しかし2人に感謝せざろう得ない。どんな手段を用いようが、俺の胸の穴を埋めようと努力
   してくれた。これには脱帽である。

    ナツミEとミツキEの分まで生き抜かねばな。それができるのも彼女達と共に戦った俺達に
   できる最大の報恩感謝だろうから。

    アッチの事を色々と模索してニヤケ続けるシュームとナツミYU。その2人を優しく抱き
   しめ頭を優しく撫でた。それに先程とは打って変わって大赤面しだすが、直ぐに身を委ねる
   部分は流石としか言い様がない。

    この美丈夫達には今後もお世話になりそうだ・・・。まあこれを話したら、向こうでならと
   言いそうだが・・・。



    しかし凄い光景だわ。身内全員が揃っている事から、海岸が凄まじいまでにごった返して
   いる。

    芸能界からは美人女優と謳われるエシュリオス・エフィーシュ姉妹。財政界と言うのか、
   そこからは美人女社長たるエリシェ・ラフィナ。そしてその娘達、代表的だとエリム・エリア
   だろう。

    警察関連からはウインド・ダークH・リュリア・ディルヴェズLK・リヴュアス。普段から
   裏方に回って出ないとされるリデュアスもしかり。

    ありとあらゆる分野で有名になりつつある面々が海岸に現れた事で、周りの来訪者が驚愕
   している。半ば大規模イベントそのものだ。


エシュリオス「これでは泳ぐ事ができませんね。」
ディルヴェズLK「とか言いながら、サービスマンシップは忘れていませんよね。」
エフィーシュ「愚問です。ファンの方々がいらっしゃってこその私達です。無理難題以外なら何でも
       応じますので。」
    アイドルから女優へと転身しても、アイドル時代のファンを心から大切にするエシュリオス
   とエフィーシュ。この姿勢だからこそ、今も愛され続けているのだから。

ウィレナ「リヴュアスさんもお腹を出されたらよかったのに。」
リヴュアス「傷が出てしまいますから・・・。」
ウィレナ「傷も己の大切な一部分ですよ。むしろ生きた証、勲章ですから。」
    リヴュアスは胸の傷を気にしてか、レオタード風の水着を着込んでいる。対して同じ傷を
   持つウィレナはビキニを着用していた。胸にある傷を隠そうとせず、彼女が言うように勲章の
   如く見せ付けている。
ナツミYU「あら、傷なら私も一杯あるわよ。」
ウィレナ「先輩・・・それは傷というよりは老化の現れ・・・ぎゃー!」
ナツミYU「ほほぉ〜・・・ウィレナちゃ〜ん・・・いい度胸してるわねぇ〜・・・。」
   俺に対しては言葉だけで済ませるが、同じように老化の事を告げたウィレナに対しては軽くも
   激怒するナツミYU。彼女をとっ捕まえて首を締めあげていた。何ともまあ・・・。


    今でも海辺、特に海岸はナンパの絶好の場とも言える。男性陣が重役を担っていない娘達に
   声を掛けようとすると、ウインドとダークHが凄まじいまでに睨み返していた。

    態とらしく腰に巻くベルトには警察官のバッジを括り付けているため、直ぐに青褪めて退散
   してしまうのだから。

ミスターT「身内だけならナンパとかありそうなんだが、治安維持とも言えるウインド達がいると
      流石に何もしてこないわな。」
ウインド「それは褒め言葉ですか・・・。」
シューム「その程度で拗ねるなら、まだまだ甘いわよウインドちゃん。」
    俺の言葉に膨れっ面になるウインドとダークH。その2人にまだまだ甘いと述べるシューム
   だった。確かにその場を楽しむとするなら、この2人の行動理念は障害の何ものでもない。
リュア「凄いじぇ〜、兄ちゃん達から何度もナンパ喰らっちまったぃ〜。」
リュオ「そんな美人じゃないんだけどねぇ〜。」
ミスターT「・・・その贅沢な口はこの口かね、リュア君・リュオ君。」
   ナンパも大変だと言い切るリュアとリュオ。そして自分の美貌を棚上げし、美人じゃないと
   言い張っている。しかし野郎からしては口説かずにはいられない逸材だ。野郎を代表して2人
   を捕まえ口元を捏ね繰り返す。直ぐさま降参する双子だが、どこか嬉しそうにする仕草には
   呆れてしまう。

アマギH「俺からしてもリュアさんとリュオさんは魅力的な女性ですよ。声を掛けない方が勿体ない
     気がします。」
ミスターT「そりゃあそうだわな。」
ユリコY「マスターはともかく・・・、アマギHは私を前にしてよく言い切るわねぇ・・・。」
アマギH「え・・ええっ?!」
シューム「あらあら、お熱い事で。」
ミスターT「何とも・・・。」
    アマギHの異性に対しての言葉に過剰反応するユリコY。正しく嫉妬心だろう。自分が妻達
   から浴びせられる嫉妬心はよく分からない部分があったが、こうして第3者から見るとその
   思い度が痛いほど理解できた。


    身内に集まる面々は大多数が男性なのだが、メアティナとメアティヌだけは異なっていた。
   
    ショートパンツとショートタンクトップに近い水着を着ている双子は、地元でも同じように
   女性陣が集まっている。どう見てもメアティナとメアティヌは女なのに、まるで男のような
   雰囲気だ。

ミスターT「こっちは相変わらずか・・・。」
メアディル「貴方の男臭さが如実に現れていますね。」
ミスターT「お前もそのクチだろうに。」
メアディル「まさか〜。娘達は姉さん達の娘さんに強く影響を受けていますよ。特にヴェアさんや
      リュアさんとリュオさんが顕著です。」
ミスターT「ヒッチハイクの時は殆どラフな姿だったのにな。」
メアディル「そ・・それはそうですけど・・・。」
    メアティナとメアティヌの男臭さ溢れる言動は、母親のメアディルの幼少の頃と殆ど同じ。
   2年ほどヒッチハイクでアメリカ大陸を風来坊で駆け巡った経緯があるため、それが娘達に
   遺伝したのだろう。確定的なのは俺の男臭さも反映されているのかも知れないが・・・。

ミツキ「メアディルちゃんは男臭さの聖地とも言えるアメリカ出身わぅ。まあ女性らしさも同じだと
    思うわぅからね。真の女性らしさは大和撫子たる日本の方が純粋かも知れないわぅ。」
ナツミA「そうね。どちらにしても、お2人から男性の強さを強く受け継いでいると思いますよ。」
    カキ氷を食べながら語るミツキとナツミA。普段はロングと長ズボンなため、今のビキニの
   出で立ちには新鮮さを覚える。特に驚いたのが身内に負けずとも劣らない巨乳度だ。
ミスターT「へぇ〜・・・ミツキもナツミAも巨乳だったとはねぇ・・・。」
ナツミA「フフッ、相変わらずですね。」
ミツキ「わた達に惚れると火傷する・・・ではなく、シュームちゃん達から集中砲火を受けるわぅ。
    現にほら・・・お隣がね。」
   ミツキとナツミAのスタイルの良さを指摘すると、傍らにいたメアディルから凄まじい殺気を
   帯びた視線で見つめられる。家族内で1・2位を争うほどの巨乳を誇るメアディルには、この
   双子を以てしても到底敵わないのだがな。

ナツミA「それでも女性として見て頂いて、ありがとうございます。マスターからの視線では、師匠
     と弟子の間柄という純粋無垢な一念しかないのかと思いました。そこには要らぬ感情は
     挟まない。真の師弟というものでしたので。」
ミスターT「まあね。お前達は真の覆面の風来坊、その理は俺のと全く一緒だ。同じ属性故に異性で
      あっても、恋愛感情などには発展しなかった。むしろ言い換えるのなら、俺の方から
      アプローチしたいぐらいだよ。」
ミツキ「進む道は異なれど、目指すべき場所は同じ。マスターも私達も生き様は全く同じですよ。
    だからこそ苦節を糧として突き進んで来られたのですから。」
    自然と寄り添ってくるミツキとナツミA。その2人の頭を優しく撫でた。この2人の一念が
   受け継がれれば、世界から孤児を無くすというヴァルシェヴラームとセルディムカルダートの
   悲願に少しでも近付く事ができるだろう。本当に素晴らしい女傑である。

ウエスト「そんな貴方達にナツミツキ四天王は最大限力になりますよ。」
    焼そばを頬張りながら現れるウエスト・サイバー・ナッツ・エンルイの4人。彼らも水着
   着用だが、まるでプロレスラーのような出で立ちである。今ではナツミツキ四天王の異名で
   知られ、特に躯屡聖堕では脅威の四天王として恐れられている。
ミスターT「いや、俺達よりはナツミAとミツキの専属の四天王でいて欲しい。」
サイバー「それは愚問ですが、生き様が同じマスターやご家族を守るのもまた同じもの。」
ナッツ「用は全て纏めて守り通せば済む事ですぜ。」
エンルイ「目標は大きく抱いてこそ成長できます。それはマスターの生き様を見れば一目瞭然かと。
     娘様方が顕著じゃありませんか。」
ミスターT「まあなぁ・・・。」
   今も砂浜の男性陣に声を掛けられている娘達の姿を見つめ、先が思いやられると深い溜め息を
   付いてしまう。彼女達こそ俺の生き様そのものなのだから。

ミツキ「みんな輝いているわぅ。女は異性を魅了してこそ真価を発揮するわぅよ。そして謙虚な一念
    があってこそ、更に燦然と輝きを増すわぅ。マスターの娘さん達はそれをしっかりと理解
    してるわぅからね。」
ミスターT「我ながら思うが、本当に可愛い娘達だよ。」
    徐に一服しつつ、娘達の今を大いに生きる姿に感謝した。彼女達がいるからこそ、俺の存在
   も役立つというものだ。持ちつ持たれつ、それが親子としての生き様だろう。
ウエスト「さて、ホテルでパーティーをやるとの事です。自分達は一足先に赴いて準備のお手伝いを
     してきますね。」
ミスターT「流石は縁の下の力持ちだわ。でもあまり無理無茶するなよ。」
ウエスト「愚問です。俺達が倒れたら、この2人に何を言われるやら・・・。」
ナツミA「分かってるじゃないさ〜。」
ミツキ「油断したら蹴飛ばすわぅよ?」
   凄まじい気迫で無理はするなと楔を打つナツミAとミツキ。それに青褪めつつも、そこに込め
   られた一念を察知して頷くナツミツキ四天王。そのままホテルへと戻って行った。

    後から駆け付けたリュアとリュオに引っ張られるナツミAとミツキ。一番親しい姉として
   慕っているため、何時もこの流れは変わらない。


    その後も海岸を散策すると、海の家の方から手招きをしてくるエリシェとラフィナ。炎天下
   だが紅茶を勧められたので、一緒に付き合う事になった。

ミスターT「なあエリシェ、今日パーティーをやるとは聞いていないんだが。」
エリシェ「フフッ、仰ったら絶対渋ったでしょう。だから言わずに進めました。」
ラフィナ「貴方は賑わう場所は苦手ですからね。」
    上品に紅茶を啜りながら語るエリシェとラフィナ。紫色のビキニを纏うエリシェに、赤色の
   ビキニを纏うラフィナ。学生の時に一緒にここに訪れた時と全く変わらない出で立ちだ。
エリシェ「何ですか、色目使いですか。」
ミスターT「言うと思った・・・。」
ラフィナ「相変わらずですねぇ。」
   案の定の流れに。さっと彼女達の身体を見入ったのを察知し、直ぐさまヤジを飛ばしてくる。
   しかし昔とは異なり顔を赤くはせず、シュームやナツミYUみたいに堂々とした佇まいをして
   いた。これは正しく年の功だろうな。

ミスターT「もうお前達も還暦を過ぎてるんだよな、早いものだわ。」
エリシェ「そうですね。ですがシェヴ母様やディム叔母様と同じく、90を過ぎても現役で頑張り
     続けますよ。できる限り動き続けますから。」
ラフィナ「表向きの引退で娘達に譲りますが、個人的な引退はまだまだ引きませんよ。現に貴方が
     矢面立って動いてなさってるではありませんか。」
ミスターT「まあな・・・。」
    生涯現役を貫くエリシェとラフィナ。俺も老化の訪れない特異体質を最大限活かし、各方面
   のオブザーバーとして動きに動いている。俺にできるのはこのぐらいしかない。
エリシェ「それも全て貴方が心から支えて下さるから動けるのですよ。私だけではとても今の地位を
     維持する事などできません。」
ラフィナ「私も同じです。娘共々、貴方の限りない愛情があればこそ成し得るもの。これからもその
     分け隔てない愛情をお願いします。」
ミスターT「委細承知さ。それこそ風来坊たる俺の生き様だからの。」
   紅茶を啜りながら一服をする。再びエリシェとラフィナとで誓い合った。これからも生涯現役
   で動き続けようと。ただ俺やヴェアデュラ・娘達・ナツミAとミツキ姉妹にナツミツキ四天王
   はまだしも、他の身内は老化が訪れる身体だ。あまり無理無茶して欲しくない所だが・・・。


    今も夏日を満喫している一同を尻目に、俺は先にホテルへと上がった。みんな本当にその
   瞬間を満喫している。見ている俺の方も嬉しくなるわ。

    ただその一時の幸せを感じる時ほど、ナツミEとミツキEの事を思い出してならない。彼女
   達の事を思い浮かべれば涙が溢れてくる。彼女達と共に戦えたら、どれだけ幸せだったか。

    涙を堪えつつ、宿舎となるホテルへと急いだ。この場で涙を見せては、覆面男が異常な行動
   をしているとクレームが来てしまう・・・。

    後半へと続く。

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