アルティメットエキサイティングファイターズ・外伝 〜覆面の風来坊〜
    〜第1部・第16話 歌姫と才女1〜
    ベロガヅィーブ事変から数週間後、2月を迎えた。今年は雪が降る回数も多い。ホワイト
   クリスマスにはならなかったが、雪の日々を喜ぶ事はできた。

    しかし実際の所は本店レミセンの前などを除雪する作業に明け暮れたが・・・。ここでも
   躯屡聖堕メンバーも大活躍している。流石としか言い様がない。



    そうそう、1月末に合唱コンクールが行われた。そこに参加したラフィナとエリシェは、
   何とプロの目利きに目が留まった。思いを寄せる歌声と演奏が最高だと評価されたのだ。

    また常日頃から努力する腕も確かだと称賛される。自分の生き様を貫き通していた彼女達、
   その努力が実ったと言えるだろう。


    その後は大規模なイベントに参加。その才能を開花させていった。間違いない、2人は確実
   にプロへの階段を駆け上がっている。



    今日はバレンタインデー。朝から各レミセンは非常に慌ただしかった。特に高校と大学の
   近くにある店舗には、男性に思いを寄せる女性が一緒に訪れてはチョコレートを渡していると
   いう。実に頬笑ましい光景だ。


エシェラ「はい、本命チョコ。」
ミスターT「真顔で言うか・・・。」
    ここ本店レミセンでも行われていた。帰宅したエシェラが頬を染めながらチョコレートを
   手渡してきた。ラッピングが雑な部分を見ると、これは彼女が自分でやったのだろう。しかも
   堂々と本命チョコだと言い切っている。何とも・・・。
シンシア「私も本命チョコです、どうぞ。」
   負けじとシンシアも本命チョコを渡してきた。こちらはラッピングをしないままだ。ここに
   ある食器を使ったようで、端から見れば粗末に見える。しかし愛が篭っているのは言うまでも
   ない。

ミスターT「2人ともありがとな。」
エシェラ「後でラフィナさんとエリシェさんも来ます。しっかり受け取って下さいな。」
ミスターT「あ・・ああ・・・。」
    そう言えば今日も練習だとか。近々コンサートホールで大々的に演奏をするという。今の
   2人は生き様を刻む事に必死だろうな。

ミスターT「2人のコンサートは何時だっけ?」
エシェラ「2月下旬ですよ。かなり大掛かりなものらしいです。」
シンシア「私達も見に行かないと。」
ミスターT「そうだな。」
    2月下旬か、まだ間に合うな。3月に入れば、マツミと約束した事を遂行せねば。トラック
   野郎としての行動を行う。約束は約束だ、必ず守らねば。



ラフィナ「あ・・これ・・・。」
エリシェ「私のも・・・どうぞ・・・。」
    数時間後、ラフィナとエリシェも来る。入るなり俺にチョコレートを渡してきた。正直には
   渡したくて仕方がなかったのだろう。顔を見れば分かる。
ラフィナ「その・・・本命です・・・。」
エリシェ「作るのに時間が掛かってしまって・・・。」
ミスターT「ありがとな。」
   一気に4つも受け取ってしまった。嬉しい限りだ。1ヵ月後のホワイトデーには何を返そうか
   悩む・・・。う〜む・・・。

ミスターT「どうだい、練習の方は?」
ラフィナ「完璧ですよ。」
エリシェ「ラフィナ様との連携もよくできています。」
    爽やかな表情で答える。この顔を見れば気合い十分だという事が窺える。まあ後数週間は
   練習に明け暮れるのだろうが。
ミスターT「コンサートはエシェラとシンシアと一緒に行くよ。最高の演奏を頼む。」
ラフィナ「お任せ下さい!」
エリシェ「一世一代の見せ場です、頑張りますよ!」
   これだけの決意なら、当日は十分だろうな。まあでも不測の事態はつきものだ。彼女達の些細
   なストレスは俺が取り除くしかない。過度の期待を寄せられては困るが・・・。



    それから1週間後。練習に明け暮れるラフィナとエリシェ。サポートにエシェラが着き、
   2人の身の回りの世話をしている。

    専ら会話を聞くのに徹しているが、それでもストレス発散には一役買っているのだろう。
   これだけでもかなりありがたいと言っていたわ。


女性1「ごめんください。」
女性2「こちらにミスターT殿がいらっしゃるとお伺いしました。」
    今日は本店レミセンにて厨房を担当している。シンシアがウェイトレス役だ。そこに見知
   らぬ女性2人が入店してくる。俺の名前を知っているという事は、誰かからの案内だろう。

    とりあえず作業が終わっていないので、カウンターに掛けてもらった。まだお客さんからの
   注文の食事が終わっていない。



ミスターT「申し訳ない、長い間待たせてしまって。」
    一区切り付くとシンシアに厨房を任せ、俺はウェイター役をしながら2人の応対をする。
   入店してから1時間ぐらい経過していた。悪い事をしてしまったな・・・。
女性1「いえいえ、お気になさらずに。」
女性2「いきなり押しかけてしまって申し訳ありません。」
   雰囲気からすると双子に近いが、髪の色が全く違う。片方はエシェラやエリシェと同じ水色、
   もう片方が紫である。それにしてもよく似ているわ。

ミスターT「ミスターTと言います。貴方達は?」
女性1「今月始めに新しく警察官となりました、ウインド=サイレントと申します。」
女性2「ウインドと同じく警察官となりました、ダーク=ホーリーナイトと申します。」
    う〜む、新人警察官の2人が何故俺の所に来たのか不思議で仕方がない。まあ薦めたのは
   ライディル達だろうが、その意図が読めずにいる。

ミスターT「それで、どうしてここに?」
ウインド「はっ、本日よりこの地域を専門に担当する事になりました。」
ダークH「私共、治安維持に一役買えれば幸いと思っています。」
    とんでもない事になったな・・・。ここの地域にはしっかりとした警察官がいるのに、態々
   人員を投入してくるとは・・・。

ミスターT「俺に挨拶しに来た訳は?」
ウインド「ライディル長官に貴方の下で修行するよう命じられまして。」
ダークH「身辺警護からパトロールなどを申し付けられました。」
ウインド「今日から貴方が私達の上官です。何でもお申し付け下さい。」
    ・・・何なんだこれは。例の一件で俺達の事が心配になり、彼女達を送ったのだろうか。
   にしては全く義務的ではない。2人の雰囲気から下心がある訳でもなさそうだ。一体何なの
   だろうか・・・。


    とりあえず落ち着くためにコーヒーを入れてもらった。シンシアも不思議と不安が混ざった
   表情をしている。ここは一服して内容を纏めた方がいいだろう。

    コーヒーを啜る姿は上品だ。かといって高飛車という雰囲気じゃない。4人とは異なり、
   全くの自然体と言うべきか。それもかなり力強い、肝っ玉は怖ろしく据わっているだろうな。


ミスターT「上官と言ってもなぁ・・・。俺は警官じゃないし、それに2人の方が偉いと思うが。」
ウインド「いいえ、役割は関係ありません。人として優れた人物として、上官と言っています。」
ダークH「数々の事件を解決し、私達の模範となる行動をなされてきました。貴方は紛れもない、
     警察官そのものです。」
ミスターT「何だかなぁ・・・。」
    ライディル達は彼女達にどういった事を語ったのだろう。俺がゼラエルやベロガヅィーブの
   一件を解決した者とも。それとも躯屡聖堕の一件で社会貢献をした者とも。
   まあどれも過大評価になるが、彼らなら間違いなく言ってもおかしくない。何とも・・・。


ミスターT「1つだけ確認したい。お前さん達の進むべき道、原点回帰とは何だ?」
ウインド「人に尽くすための存在です。そのために犯罪を未然に防ぎ、平和な社会へと貢献する。」
ダークH「道は高く険しく難しいですが、必ず達成できると確信しています。現に貴方が数々の伝説
     を打ち立てているのですから。できないは筈がありません。」
    ・・・これは完敗だな。2人の肝っ玉はどこまでも純粋に据わっている。ある意味原点回帰
   の強さは、俺を遥かに上回っているかも知れない。

ミスターT「・・・了解。ウインドとダークHの決意はしっかりと理解した。俺でよければ、2人を
      立派な人材へと育てるよ。」
ウインド&ダークH「ありがとうございますっ!」
    その場に立って敬礼する。警察官という役職柄、挨拶はこれを徹底しているのだろう。直立
   不動で立つ姿は、彼女達が本当の警察官だという事が窺えた。


ミスターT「それと、頼みたい事が何点かある。」
ウインド「何なりとお申し付け下さい。」
    ウインドもダークHも直立のまま俺を見つめる。どこまでも純粋に前を見据える瞳。それは
   心の決意の表れ。しかし型に囚われては2人があまりにも可哀想だ。
ミスターT「敬礼は控えめに、周りの人達がビックリするから。また俺を上官と呼ぶのは勘弁して
      くれ、そんなに偉い存在じゃない。あくまで普通の友人として接して欲しい。周りから
      慕われる存在になれれば、君達の印象もよくなるだろうから。」
ダークH「了解しました。」
ミスターT「ほら、言ってるそばから。普通の会話でいいからさ。畏まる事もない。」
ダークH「りょ・・・分かりました。」
   言葉を選んで言う姿が可愛らしい。今の今まで英才教育を徹底されてきたのだろうか、直ぐに
   行おうとしてもシドロモドロになっている。
   まあ今後の彼女達の生活を考えると、こういった柔軟性の対応も必要だからな。

ミスターT「2人とも周りの女性達に負けないぐらい可愛いんだ。堅物になっちゃダメだよ。君達も
      女性らしく、自然にいて欲しい。」
ウインド「あ・・ありがとうございます・・・。」
ダークH「が・・頑張ります・・・。」
    頬を染めながら礼を述べる2人。何だ、女らしい姿があるじゃないか。やはり無理矢理に
   形作っていたのだろう。少しは彼女達らしくなってくれたのかもな。



    不思議な巡り合わせでウインドとダークHという警察官と一緒になった。また住み込みで
   担当する事になったため、住居探しが最優先となる。ここはエリシェに頼むしかないか。


    2人とも24と俺より4つ年下。シンシアとは1つ年上だ。しっかり者の姉ができたようで
   周りは大賑わいする。

    特に4人からは姉と慕われ、シドロモドロになるウインドとダークH。まあ4人に揉まれる
   事はいい事だ。自分らしさを磨くには充分な修行の場だろうから。


    また2人は格闘術が凄まじい。柔道・剣道・合気道・ボクシング・カンフーと、大多数の
   格闘技と精通している。今度体育館でも借り切って、エシェラ達と対峙させてみたいものだ。

    後半へと続く。

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