アルティメットエキサイティングファイターズ・外伝 〜覆面の風来坊〜
    〜第1部・第17話 別れと再会1〜
    3月へと入った。来月で帰郷してから1年が経つ。長いようで早かった・・・。


    ラフィナとエリシェはプロへの階段を登り出した。先輩格のエシュリオスとエフィーシュに
   指導を受けながらも、4人で一緒に己の生き様を刻みだしている。

    エシェラも子供好きという事を活かすため、保育士という資格取得に動き出した。彼女も
   明確な目標を持ったため、今までにないほど力強い。

    シンシアは多岐に渡る料理を研究しだす。喫茶店という概念を超え、全ての料理ができる
   ように修行を始めた。その勢いは全レミセンに影響し、他のマスター達も努力に勤しむ。



    もう彼女達の背中を押さなくてもいいだろう。丁度いい踏ん切りも着けられる。俺も自身も
   約束を守らねば・・・。



マツミ「丁度3年間アメリカに渡って貰う事になります。現地での運送の指揮を取って下さい。」
ミスターT「了解。」
    マツミが指揮する運営会社へと足を運んだ。以前約束した、長距離トレーラーの運転手の
   引き受けだ。大型自動車と牽引の免許が役立つ時が来た。

マツミ「・・・本当は日本に居たいでしょうに。」
ミスターT「周りの人物の背中は最大限押しました。後はみんなが先へ進むだけです。今現在の俺の
      役割は終わりました。今度は新天地での活躍が、俺の新たな原点回帰です。」
マツミ「ありがとう・・・。」
    俺の右手を両手で握り締める。その両手に左手を重ねた。俺の新たな目標は海外だ。国内は
   仲間達が上手くやってくれると確信している。だからこそ先に進めるのだから。

リュウジN「日本の事は任せてくれ。」
アフィ「彼女達の事は陰から見守るよ。」
ミスターT「よろしくお願いします。」
    リュウジNとアフィとも握手を交わす。面識は少ないが、お互いを心から信頼できる程だ。
   これもみんなのお陰だろう。



トーマスC「そうか、分かった。」
ライディル「日本の事は任せて下さい。」
    警察庁本部へと足を運んだ。自分がいない間の周りの面倒を依頼してきた。あの一件から
   統率力が優れ、凄まじいまでの団結力で動いている。まるで躯屡聖堕の全盛期みたいである。

ミスターT「あまり無理無茶しないように。」
トーマスC「分かってるさ、ほどほどにやってるよ。」
    トーマスCとガッチリ握手を交わす。またトーマスKやライディル達とも握手を交わした。
   今生の別れじゃないのに、ライディル達は泣いている。ここまで思ってくれている事に心から
   感謝した。今までの俺の行動は間違ってはいない、燦然たる証拠だ。



    最後に孤児院へと向かった。自分がいない間のエシェラ達を守ってもらうために。まあ彼女
   が面倒を見なくても問題はなさそうだが。

ヴァルシェヴラーム「そう、アメリカへ・・・。」
ミスターT「はい。できましたら、エシェラ達の事をお願いします。」
    院長室へと赴き、別れの挨拶をする。彼女だけには伝えたかった。今まで迷惑ばかり掛けて
   いたからなぁ・・・。
ヴァルシェヴラーム「エシェラさん達には挨拶しないで行くのね。」
ミスターT「ええ、別れが辛くなりますから。」
ヴァルシェヴラーム「分かったわ。私が命を賭けて守るから安心して。」
   話を終えると、徐に俺の胸へと抱き付いてくる。その彼女を優しく抱きしめてあげた。俺の
   母親的存在だが、それを覗けば大切な女性の1人である。

ヴァルシェヴラーム「本当の事言うとね・・・、貴方の事が好きだった・・・。自分の事を考えず、
          周りを鼓舞する存在。その貴方に惹かれていった・・・。母親という存在から
          いけないと思ってたけど・・・、でも・・貴方を心から愛している・・・。」
ミスターT「俺もです。シェヴさんには言い切れない恩がある。貴方の愛には応えられないけど、
      行動で示す事で代えさせて下さい。」
    彼女の顎をソッと持ち上げ唇を重ねた。諸々の概念など一切ない、今は誠心誠意の行動を
   するまで。自分の愛しい人には変わりないのだから・・・。

ヴァルシェヴラーム「・・・ありがとう。」
ミスターT「みんなには内緒ですよ。」
ヴァルシェヴラーム「大丈夫、私から襲ったとでも言っておくから。」
    恐ろしい事を言うものだ。しかしそれも彼女らしい。胸に甘えるヴァルシェヴラーム、その
   彼女を優しく抱きしめ続けた。


    
    その後アパートへと戻る。既に準備は整っており、後は道具を持って出発するだけだった。
   挨拶だけはした方がいいか・・・。しかし別れが辛くなるのも事実。ここはあえて言わずに
   去ろう。風来坊らしい旅立ちだ。

エシェラ「やっときた〜。」
ラフィナ「遅かったですね。」
エリシェ「空港への移動はお任せを。」
シンシア「お弁当作ったから持っていって下さい。」
    ・・・だが既に部屋に4人がいた、というか知っていたのか・・・。これでは別れが辛く
   なってしまう・・・。

ミスターT「暫く日本を離れる、ごめんな・・・。」
エシェラ「何を言ってるのですか。満足するまで思う存分戦ってきて下さい。」
ラフィナ「貴方がくれた掛け替えのない思い出。その思いを糧として、私達の生き様を貫きます。」
エリシェ「財閥の方でもサポートします。世界中に支社があるので容易ですから。」
シンシア「今度は私が貴方の背中を押す番です。自分自身の生き様に誇りを持って。」
    彼女達が背中を押してくれている、これほど嬉しい事が他にあるだろうか。無意識に頬を
   涙が流れる。徐に寄り添ってくる4人。その4人を両手を広げて抱きしめてあげた。
ミスターT「ありがとう・・・。」
   それぞれの愛しい人に、優しく心の篭った口づけをしてあげた。俺ができる最大限のお礼だ。
   そして再び抱きしめてあげる。気付けば4人とも涙を流していた。

エシェラ「・・・行かないで・・傍にいて・・・。」
ラフィナ「・・・私達を・・何時までも支えて欲しい・・・。」
エリシェ「・・・愛しています・・絶対に負けないで・・・。」
シンシア「・・・あの時の貴方は・・この気持ちだったんだ・・・。」
    それぞれが俺を引き止めようとする。しかし俺の決意も知っている様子。渋々俺から離れ、
   泣きながら握手を求めてくる。俺は4人に力強い握手をしてあげた。俺の勇気を彼女達に分け
   与えるかのような思いで・・・。



    表で待っていたリムジンに乗り込む。エリシェが手配してくれた、空港までの移動手段だ。
   見送りはしないでくれと4人に告げる。これ以上泣かれては俺自身の決意も揺らいでしまう。
   それを察知して自粛してくれたようだ。運転手さんに催促し、一路成田空港へと向かった。


    一時の幸せをありがとう。その力を糧として、俺は前へと突き進む。

    俺の原点回帰、それはここにあるのだから・・・。

    後半へと続く。

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