アルティメットエキサイティングファイターズ・外伝 〜覆面の風来坊〜
    〜第1部・第18話 最終話・愛しい人1〜
    覆面の風来坊、これは俺の異名である。10年前に7年間、日本中を旅しながら回った。
   俺自身の自由な生き様で何かを残せればと思ったのが発端だ。

    各地を転々とし、その場での資金稼ぎに奔走する。そしてある程度資金が貯まれば、再び
   旅に出る事の繰り返しであった。


    それから7年後、久し振りに地元へと戻った。地元に戻った時には、まだ何もなかった。
   あるのは己の存在と、今まで培った数多くの経験である。

    殆どゼロからのスタートとも言える。自身しか存在がなく、これから新しい生き様を刻む
   戦いを行うだけである。

    この第2の人生のスタート、そこからが俺の転機が続いていった・・・。



    過去に出会っていたエシェラとの再会。この時はまだど忘れしていたが・・・。

    心の安息を求めて彷徨っていたアマギH達、躯屡聖堕チーム。その彼らを救った事も。

    相手を想って修行を申し出たラフィナ。その彼女を貶した連中への、凄まじい激怒も。

    修学旅行先で風邪を引き、寝込んだエシェラもあったな。懐かしい・・・。

    花火大会を見るのだと押し掛けた先で、大企業の社長令嬢エリシェとも出会った。

    盆踊りではアマギHと一緒に、地元のワルを撃退した事もあった。

    海水浴ではシンシアとの出会い。彼女の背中を押した。その後の再会も運命的だった。

    ツーリングでは5人して箱根まで足を運んだ。サイドカーの旅はよかったな。

    体育祭ではディルヴェズと再会する。あの少年が美男子になっていたのには驚きだった。

    交流教室ではエシェツがカシスに告白。相思相愛で見事に円満となった。

    ヴァルシェヴラームとの再会も懐かしい。相変わらずの人だが、優しい母でもある。

    シンシアと一晩共にした事も。寄り添っただけの一夜だが、3人からは嫉妬の嵐が。

    ラフィナとエリシェの行く末を決めるエシュリオス・エフィーシュとの出会いもあった。

    クリスマスには絵をプレゼントした。日頃からの努力が報われた瞬間だ。

    愚者に掴まった事もあった。だが己の原点回帰を見据えた瞬間でもある。

    ラフィナとエリシェがプロデビューもした。その後の将来を決める瞬間だったな。

    そして3年間のアメリカへ。4人との別れでもあった。そして帰還・・・。



    たった1年間で、俺自身の生き様を左右する経験を得た。数々の出会いと思い出が、今の
   俺の糧となっている。

    俺の生き様は間違ってはいなかった。今はハッキリと言い切れる。我武者羅に突き進んで
   きてよかったと・・・。

    そしてこれからも己の生き様を刻み続ける。みんなと一緒に・・・。



    今は本店レミセンで小さな飲み会を行っている。今日は夜から貸し切りにし、それぞれの
   手料理を振舞った。

    4人とも成人を迎えたという事で、適度な酒を飲みながら語らう。俺は酒は飲めず、他の
   飲み物で付き合った。


ミスターT「・・・どうだ?」
    そんな中、スケッチブックにペンを走らせる。今は絵ではなく、俺の1年間の行動と3年間
   の布石を認めた詩だ。それを4人に見て貰った。

エリシェ「・・・素晴らしいです。」
ラフィナ「これは歌詞になりますね。」
    音楽に精通するラフィナとエリシェは、その詩の良さを讃えてくれた。歌にまで出来ると
   あり、かなり本格的に考えているようである。



エシェラ「あれから4年経つんだね・・・。」
ミスターT「早いものだよな・・・。」
    コーヒーを飲みながら呟くエシェラ。風のように現れて旋風を巻き起こしてから4年が経過
   した。本当にあっと言う間の出来事だった。

エリシェ「貴方と出会わなかったら、今こうしてはいないでしょう。躯屡聖堕の一件もなかったで
     しょうし、私達の関係も全くなかったでしょうから。」
シンシア「ですよね。私も貴方と出会わずここに訪れなかったら、今も地方で何気ない生活をして
     いたかも知れません。」
ラフィナ「告白を貶された時、貴方がいなかったらトラウマになっていたでしょう。その私を心から
     支えてくれたのですから。」
エシェラ「孤児院出身じゃなければ、私や皆さんとはお会いにならなかったでしょう。赤の他人と
     して過ごし、そのまま一生を終えていたかも知れません。」
    4人がそれぞれの過去を振り返る。殆どが彼女達の人生を左右する決定打と言えるだろう。
   そのターニングポイントに俺が関われている事は、本当に幸運で嬉しい限りなのだろうな。
ミスターT「俺の方こそ4人からは色々な事を学んだよ。本当に言い表せないほど感謝している。
      ありがとう・・・。」
   俺自身を支えてくれた。半ば強引的ではあったが、それでも背中を支えてくれた事には間違い
   ない。今の俺があるのも4人のお陰なのだから・・・。



エシェラ「・・・アマギHさん達を救った後。座って物思いに耽っていた時に言った言葉を、今も
     覚えていますか?」
    暫く沈黙が室内を漂うと、徐にエシェラが語り出す。それは彼女と共にアマギH達を救った
   後の事だ。今も胸中に刻まれた原点回帰の1つでもある。
ミスターT「ああ、覚えている。行動で示せ、だったよな。」
エシェラ「なら話は早いです。私達が望むのは言葉よりも行動です。」
   う・・・背中に悪寒が走る。間違いなく4人とも別の事を望み誘っている・・・。表情が何時
   になく不気味である・・・。


ミスターT「・・・酒なら付き合うよ。」
エリシェ「お酒は飲めないでしょうに。」
    酒なら付き合うという事を語った。俺自身も絶対に飲めないという訳ではないが、それでも
   スルーされた・・・。

ミスターT「・・・競馬とかパチンコなどに行くか。」
シンシア「十分稼いでいるので間に合ってます。」
    娯楽施設に赴き、賭け事をしようと語る。しかし今の4人は自給自足だ。ストレス発散自体
   が仕事に向けられている。これもスルーだな・・・。

ミスターT「・・・コンサートでも行こう。」
ラフィナ「プロがここにいますよ。」
    そりゃそうだ。目の前にはプロの歌姫と演奏家がいるのだ、これはスルーされて当然だ。
   逆に彼女達を挑発させてしまう事になる・・・。

ミスターT「・・・添い寝なら付き合うが・・・。」
エシェラ「ん〜・・・。」
    ダメだ・・・冗談を言ってもスルーされる。この後切り出す言葉が浮かんで来ない・・・。
   しかも物凄い厳しい表情だ。間違いない、別の考えを期待している。しかも4人とも同時に。

エシェラ「・・・分かったわ、添い寝で勘弁します。4人で寝ましょう。」
ミスターT「勘弁って何だよ・・・。」
    何とか言い包めたが、それでも4人同時に添い寝は無理だろ。それ以上の事になりそうで、
   この上なく怖い・・・。



    本店レミセンを閉店する。その後4人に引っ張られ、向かうはエリシェの家だ。誰もいない
   という事から選んだのだろう。

    この後の展開が怖くて何も話せずにいる。下手に刺激しては悪影響になりかねない。ここは
   任せた方がいいのか・・・。それとも言うべきか・・・。

    後半へと続く。

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