アルティメットエキサイティングファイターズ・外伝 〜覆面の風来坊〜
    〜第1部・第18話 最終話・愛しい人2〜
シンシア「一緒に寝るってツーリング以来かな。」
ラフィナ「ですね。」
    エリシェの家には複数の部屋がある。その中の寝室には、怖ろしいほどの馬鹿でかいベッド
   があった。普段はここで1人で寝ているというのだ。何だか可哀想に思える・・・。

エシェラ「・・・あの、やっぱ止めましょうか?」
    何を喋ろうか思いを巡らしている。それがかえって逆効果になってしまった。俺を困らせて
   いると勘違いしたエシェラが、不安そうに問い掛けてきた。
ミスターT「あ・・いや・・・。」
エシェラ「勢いで言ってしまったので、無視して貰っても構いませんから・・・。」
   声を聞けて安心している彼女だが、表情を見れば落ち込んでいるのが分かる。だが、今の俺
   には厳しい問題だ。応えてあげたいが・・・。

ミスターT「・・・本当に添い寝だけでいいのなら構わないが。今お前さん達が望んでいるのは、
      それ以上の事なのだろう。応えてあげたいが、流石の俺もそこまでの勇気はない。」
    心の内を、本当の事を語った。それに沈黙する4人。そもそも1人だけなら応じれるが、
   4人という時点で論外だ。それが通れば、彼女達を不幸にする事になる。
ミスターT「・・・ごめんな、これが現実だ。」
   そのままバルコニーへと出て一服する。嫌な言い回しだったが、事実なのだから仕方がない。
   彼女達を不幸には絶対にしない。それが俺の断固たる決意だ。



ヴァルシェヴラーム(自分に素直なままで。私の望むものよ、それに貴方自身の為でもね。)
    脳裏にヴァルシェヴラームの言葉が過ぎる。素直な自分、それは不幸にしないという事に
   繋がらないのか。それとも不幸にしてしまうという事を言い訳に、逃げているだけに過ぎない
   のか・・・。

ミスターT「・・・俺は逃げているだけに過ぎないのですかね・・・。」
ヴァルシェヴラーム(自分自身の生き様を貫きなさい。最終判断は貴方自身だから。)
ミスターT「・・・俺にどうしろというのです、シェヴさん・・・。」
ヴァルシェヴラーム(それは貴方自身で決めなさい。私は背中を押しただけ。)
ミスターT「・・・それがどんな道であってもですか・・・。」
ヴァルシェヴラーム(大丈夫よ、貴方は既に答えを見つけている・・・。)
    自問自答を繰り返す。正確にはヴァルシェヴラームという人物を形作った俺自身が、自分に
   問い質していると言おうか。



エシェラ「大丈夫?」
    不意に声を掛けられ驚く。傍らには何時の間にか4人がいた。不安そうな表情を浮かべ、
   俺を見つめている。
エリシェ「億劫になるのでしたら気にしないで下さい・・・。」
ラフィナ「私達が望むのは貴方の幸せです。でも私達の望む幸せが貴方の不幸になるのなら、今後は
     絶対に言いません。」
シンシア「ごめんなさい、貴方の事を考えずに・・・。」
エシェラ「忘れて下さい。悲しむ貴方の姿を見たくありませんから。」
   悲しませてしまったのは俺の方だ。4人が冗談半分と本気半分で語ったのは明々白々。その
   彼女達を蹴ったも当然の事をしたのだ。

ミスターT「・・・俺は情けない奴だ。お前さん達が本当に望んでいる事も知っている。しかし世間
      の目を怖れ、自分自身を押し殺す。モラル的には当たり前の事を言ったのだが、君達を
      傷付けてしまったね・・・。」
エシェラ「そんな事ありませんよ、私達が間違っていただけです。貴方の考えは正しい。」
    俺を擁護する発言だが、今は苦痛にしか感じられない。心から愛しいと思うのなら、世間体
   の柵など論外とも言える。用はそこまで決意できるかどうかだ。
ミスターT「・・・添い寝で勘弁してくれ。」
   その言葉に4人は頷く。今現在できる最大限の行動だ。これしか今の俺には思い付かない。
   いや、実行できないのが正しい。



シンシア「こんな布団で眠ってみたかったぁ〜。」
    ベッドの上で子供のようにはしゃぐシンシア。普段から使う下位の部屋にも同じものがある
   だろうに。そう言えば着るパジャマは自前か。ここに来る時は何も持っていなかったが。
ミスターT「パジャマも用意とは、前々からやる気満々だったという事か。」
シンシア「これはエリシェさんのですよ。本当にこうなるとまでは予想していなかったので。」
ミスターT「はぁ・・・、つまり半分は俺にも責任があるという事か・・・。」
   4人ともパジャマを着込んでいる。俺はというとエリシェの父親のものを使わせて貰った。
   少々小さいが、間に合わせには十分だろう。それに自分にも原因があるという事で、罪悪感が
   薄らいだ気がした。

ミスターT「あくまで添い寝というだけでいいよな?」
エリシェ「構いませんよ。これ以上我が侭を言えばバチが当たりますから。」
ラフィナ「一時の安らぎを頂ける事で、どれだけ励みになるか。」
エシェラ「十分すぎるほどの癒しです。」
    そうか、3年の長い月日は淋しかったのだろう。言葉はタブー気味たるものだが、4人が
   本当に望むのは癒しの時間なのだ。それを意識しすぎて暴走したのは俺の方だったな・・・。



    俺は後頭部にある覆面の留めを外す。そして徐に覆面を取り外した。前髪を振り払い、素顔
   を曝け出す。

    一部始終を窺っていた4人は今までにないほど驚いている。特にエシェラ以外は俺の素顔を
   一度も見ていない。完全に声を失っていた。

ミスターT「添い寝だけで勘弁してくれたお礼だよ。」
    俺の素顔を見つめ、ラフィナ・エリシェ・シンシアは顔を赤くしている。そんなに美男子
   じゃないのだが・・・。一度目撃しているエシェラも顔を赤くしていた。何とも・・・。

シンシア「あぁ・・・想像していた通りの顔・・・。」
エシェラ「よく見ると本当に懐かしい・・・、あの時から全く変わってないですね。」
ミスターT「ディルみたいに美男子じゃないがね。」
ラフィナ「そんな事ありません、私の中では最高です・・・。」
エリシェ「もっとよく素顔を見せて頂けませんか・・・。」
    マジマジと俺の顔を見入る4人。これはこれで恥ずかしいのだが・・・。まあ添い寝と素顔
   で勘弁して貰ったのだから、ここは身を委ねるしかない。


シンシア「あの・・素顔でキスしてくれませんか?」
ラフィナ「ずる〜いっ!」
エリシェ「私も・・お願いします・・・。」
エシェラ「私も真剣にお願いしようかな。」
    早速バトル開始だ。エラい騒ぎになりだし、仕舞いには枕投げにへと発展していった。結局
   の所は騒ぎたかっただけなのだろう。何だかなぁ・・・。

    そんな彼女達を見つめながら、俺は心中で礼を述べた。何だかんだで4人の笑顔を見ている
   時が一番幸せだと気が付いたからだ。

    俺の故郷は彼女達がいる場所なのだ。それを改めて気付かせてくれた・・・。



    不意に俺の顔に枕が当たる。その勢いは結構強く、そのままベッドへと倒れ込んだ。それを
   見た4人は一瞬止まる・・・。
ミスターT「・・・こらぁ〜!」
   起き上がりながら軽い激怒をすると4人は軽い悲鳴を挙げる。顔に当たった枕を彼女達に投げ
   返し、逆に相手からも枕が投げられる。

    更には肉弾戦にまで発展していき、相手を捕まえ擽るまでになった。俺には積極的に捕まり
   には来ない。というか彼女達は触られたくてウズウズしているのではないかね・・・。

    まあ・・・もういいわ、今夜はトコトン付き合おう・・・。


    今も騒ぎまくっている4人に便乗して俺も騒ぐ。だが心では深く溜め息を付いた。この4人
   の面倒はとにかく参る・・・。でもまあ、偶にはいいものだな・・・。



    エシェラ・ラフィナ・エリシェ・シンシア、俺の大切な愛しい人・・・。

    この4人を守り抜いてこそ、俺の本当の生き様なのだろう。それこそが俺の原点回帰なの
   だから・・・。

    第1部・完

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