アルティメットエキサイティングファイターズ・外伝 〜覆面の風来坊〜
    〜第3部・第2話 脅威の存在2〜
    本店レミセンへと戻った俺とリヴュアス。グローブライナーは遠方の駐車場へ止めてある。
   あれだけの巨体を道路に長時間止めでもしたら、間違いなく駐車違反の切符を切られるわ。

    しかも身内のリュリア・ディルヴェズLK・リヴュアスからも切られる可能性も十分ある。
   おいそれ下手な行動ができないのも実状であった。


シューム「何か嫌だねぇ・・・後手に回るのは。」
ミスターT「我武者羅に動いているように見えて、物凄い慎重派だからなぁ・・・。」
アマギH「メンバーも痺れを切らせそうで参ってますよ。」
    本店レミセンに戻ると、カウンターにアマギHがいた。その隣ではシュームが一服をして
   いる。厨房は今もトモミだが、カウンターにいた娘達はいなかった。リヴュアスは3階へと
   戻り、着替えを済ませるようだ。

トモミ「乗り込めれば一番手っ取り早いんですけどね。」
アマギH「そうですよね。でも役割の手前、暴走気味の行動は自らの首を絞めかねませんし。」
トモミ「待つしかありませんかね・・・。」
    出来上がった料理をカウンターに置く。それをお客さんに運んでいくアマギH。今では完全
   に丸くなった彼は、レストランにいるウェイターそのものだ。自然的な行動は彼が今までに
   会得してきた経験から成すものだろう。


リヴュアス「トモミ様、交代します。」
トモミ「あ、はい。ありがとうございます。」
    暫くして着替えを済ませたリヴュアスが降りて来る。本店レミセンは自由な交代制で運営
   しており、こういった交代場面がしょっちゅう起きている。
   交代したトモミはそのまま3階へと上がって行く。今年出産したばかりの身体故に、あまり
   無理無茶はできないだろう。

シューム「トモミちゃんも綺麗になったよねぇ。」
アマギH「そうですよね。やはりママさんになるのは、より一層美しさに磨きが掛かるのでしょう。
     出産は女性の集大成に近いでしょうから。」
    誰彼にも敬語を貫くアマギH。全盛期の彼では考えられなかったものである。しかしそれ
   故に紳士的な人物として、より一層人気が高まっている。


ミスターT「お前さんは結婚しないのか?」
アマギH「う〜ん・・・まだ考えていませんよ。それよりも今が大変ですし、それどころじゃない
     のが実状ですから。」
    知人の中でアマギHとユリコYだけ結婚していない。ユキヤとウィン、ユキヤNとウィンN
   は既に結婚している。ディルヴェズとヴァルラームもしかりである。他のレミセンを担当する
   女傑達も同じであった。

シューム「ならさ、今回の戦いが終わったらアマギHちゃんの結婚式をしましょうよ。」
ミスターT「いいねそれ。もう50代に近いんだから、結婚はすべきだよ。」
アマギH「う〜ん・・・ユリコYが望むかどうか・・・。」
リヴュアス「長年伴侶のようにお付き合いしているのですよ。貴方からのプロポーズなら、喜んで
      お受けすると思います。」
    ユリコYの心情を察するアマギHだが、シュームとリヴュアスは結婚しろと語っている。
   俺達は現実の関係上、結婚は無理であるが彼らは異なる。あれだけ持ちつ持たれつを貫いて
   いる2人なのだから、その集大成たる結婚はするべきだと思う。


アマギH「・・・分かりました、今夜聞いてみます。」
    シュームとリヴュアスの熱の篭った誘いに、渋々折れた形のアマギH。しかし彼自身、何れ
   訪れる事だと思っていたらしい。言葉に不安さはあるものの、どことなく嬉しそうな雰囲気で
   ある。
シューム「もう一度、ウェディングドレス着たいわぁ・・・。」
ミスターT「それは何時でも叶えてあげるが、先ずはアマギHとユリコYの件を優先させないと。」
シューム「そうねぇ・・・。」
   アマギHとユリコYの件よりも、シューム自身はウェディングドレスを着たい一念が強いよう
   である。家族内で一番思い出を大切にする彼女なだけに、その瞬間の一時を誰よりも大切に
   しているのだから。


    そんな思いを巡らせていると、厨房にいるリヴュアスが小さく目配せをしてくる。その瞬間
   は今しかない、その思いが込められていた。

ミスターT「シューム、ご足労願うよ。」
シューム「あ、はい。」
アマギH「ウェイターは任せて下さい。」
    リヴュアスの計らいに感謝し、アマギHにウェイターを任せて本店レミセンを後にした。
   いきなりの誘いに戸惑うシュームだが、俺と2人きりで行動できる事自体が嬉しいようだ。



    訪れたのは駅前の写真館。数年前に規模を拡大した写真屋である。しかも数々の撮影用の
   衣服を保持しているため、擬似のイベントを模した写真撮影が大好評であった。

    ここを運営している店長は、ナツミYUの教え子であるセアリム=オオツカ。彼女の父は
   写真家として有名なトーマス=オオツカである。

    元シークレットサービスでも有名なトーマスO。トーマスCやライディル達の後輩に当たる
   存在でもあった。もちろんナツミYUの後輩でもある。


    シークレットサービスや警察内という一般公開されない部分を、トーマスOは写真として
   世間に広めている。一時期は同僚に非難を浴びたのだが、その時の立役者はもちろん愛しの
   母親ヴァルシェヴラームであった。

    彼女の存在は2つの機構を震撼させるほどの存在故に、トーマスOの行動は一瞬にして暗黙
   の了解で行われる事となったようだ。

    まあ元祖シークレットサービスに孤児院の覇者と伝説を打ち立てるような存在だ。罷り通る
   のは過去においての実証から成り立っているのだから。


    このタブーな行動があったからこそ、今の住民とのコミュニケーションが高く評価されたの
   である。トーマスOの行動は師匠たるヴァルシェヴラームの先見性がある行動と同じと言える
   だろうな。

    本当にヴァルシェヴラームは偉大である。彼女こそ真の風来坊と言えるだろう。その彼女の
   息子としていられる事を、俺は心から誇りに思う。



ミスターT「うぃ〜っす。」
セアリム「あら、いらっしゃいませ。」
    店舗を拡大するに当たって、エリシェとヴェアデュラに力を借りる事になったセアリム。
   先見性がある目線を大切にするのは当たり前で、この2人のアドバイスを最大限取り入れた。
   故に今の写真館が存在するのだから。
セアリム「シューム様もご一緒となると、もう一度という事でしょうか?」
ミスターT「ああ、簡単なのを頼むよ。」
   セアリムも俺達の事を把握する人物の1人。まあナツミYUの直弟子とも言えるのだから、
   こちらの内情を把握するだろうな。

    撮影スタジオの裏手にある控え室。ここは着替え室にもなっている。セアリムはカメラの
   設定などに取り掛かり、俺はシュームと共に衣服の着替えを行った。


シューム「・・・簡単に願いを叶えてくれる、嬉しい限りです・・・。」
ミスターT「いや、リヴュアスの労いでもあるんだがね。俺は2社との今後の流れを巡らせていた
      からさ。」
シューム「そうでしたか。」
    ウェディングドレスを着用する場合は、補佐に2人ぐらい必要である。しかし一度覚えた
   事に対して、シュームは凄まじい順応を見せ付けている。俺が軽いサポートをするだけで、
   着用が難しいウェディングドレスを簡単に着こなすのだから。

ミスターT「・・・正直さ、お前の姿を見るのが辛い。」
シューム「貴方や娘達と違って、老化が現れているからね。」
ミスターT「・・・本当はこれが現実なんだけどね。俺や娘達が異常すぎるんだよ。」
シューム「でも・・・貴方は私達の要望を必ず叶えてくれる。本当に嬉しいです・・・。」
    40代を過ぎた辺りから、徐々に肉体の老化が訪れてくる。今年シュームは55歳。5年後
   には還暦を向かえる事になる。老いていく12人の妻達、老いていかない俺や娘達。この差は
   非常に辛い・・・。

ミスターT「・・・お前達も肉体の老化が訪れない特異体質だったらな・・・。」
シューム「大丈夫よ。身体にシワが現れても、心にシワを作らなければいいだけだから。」
ミスターT「ごめんな・・・。」
    ウェディングドレスを纏ったシュームを優しく抱きしめる。すると蓋を開けたように涙が
   流れてきた。50を過ぎた辺りから、涙腺の締めが緩くなっているわ・・・。
シューム「大丈夫、大丈夫だから。」
   常々日々に強き給え、それを実践しているのが12人の妻達だ。最近は俺の方が弱く思える。
   些細な感情の上下があると、直ぐに涙が溢れてくるのだ。
   そんな俺を慰めてくれるのも12人の妻達である。彼女達にどれだけ心を支えて貰った事か。


    その後、完全にウェディングドレスを身に纏ったシューム。俺も黒いタキシードを脱ぎ、
   白いタキシードを着用する。そして控え室を出て、写真撮影に望んだ。

    ここの写真館は2つの方法で写真撮影ができる。本来なら写真写りを良くするために化粧を
   するのだが、ここでは化粧をせずに撮影する事もできた。

    シュームもその1人であり、化粧をして望む事をしない。というか50を過ぎた辺りから、
   化粧をする事を一切止めたのだ。


セアリム「化粧をしないで美貌を維持できるのは凄い事ですよね。」
ミスターT「シュームの成せる業物だろうな。」
    50代になったシュームが化粧をしないで美しさを維持している。それにセアリムは驚きを
   隠せない。かく言う俺の方も同じである。
シューム「最近は妹達も化粧をする事を極力控えていますよ。ありのままの姿でいる事がどれだけ
     素晴らしいかを知ったようです。」
ミスターT「素顔を隠している俺とは大違いだよな・・・。」
   化粧は言わば覆面に近い。本来の自分を化粧で隠し、美しく見せようとするのだから。俺も
   覆面の風来坊と呼ばれる故に、本当の姿は何処にあるのかと思う事もある。
シューム「貴方はいいの、今のままでも十分魅力的だから。男性は化粧をしなくても高齢になるまで
     美貌を維持できるからね。その最もたる存在が貴方よ。」
ミスターT「美貌、本来の姿か・・・。」
   シュームの言葉が痛烈に胸中に響く。自分のあるべき姿は何処にあるのか。これは今までの
   人生の中で一番強く響く事であろう。


    今では覆面の風来坊の異名と容姿は完全に定着し切っている。三島ジェネカン・躯屡聖堕
   チームのメンバーでは、俺の姿を知らない人物は一切いない。

    地元だけになるが、俺の姿を知らない人物もいない。覆面を着けた人物の生き様が、根強く
   広がっているとも言える。

    しかし・・・過去に12人の妻達に言われた事がある。2人きりの時は素顔でいてくれと。
   この写真撮影もそうではないのかね・・・。

    シュームに改めて大切な事を教えられた。その時の俺のあるべき姿に戻れと。既に人生の
   半分が過ぎ去ったのだ。そしてその半分は覆面の風来坊としているのだから。


    俺は後頭部に手をやり、覆面の金具を外す。そして頭にある覆面をゆっくり取り外した。
   それにシュームは勿論の事、初めて素顔を見るセアリムは驚愕している。

ミスターT「この時は俺も化粧を外そう。ありのままの姿で望むのが、本当の姿を言えるから。」
シューム「・・・ありがとう。」
    2人の時の約束、素顔のままで。それを実践したため、感無量と言わんばかりのシュームで
   あった。
セアリム「・・・こんなに男前だったとは・・・。」
ミスターT「お嬢さん、俺に惚れると火傷するぜ。」
   顔を真っ赤にしているセアリムに口説き文句を語る。すると間隔空けずに傍らにいるシューム
   にどつかれた。
シューム「もう・・・焦がすなら私だけにしなさい。」
ミスターT「フフッ、そうだね。」
   女性に対しての口説き文句をも素直に受け止めるシューム。それだけ今のこの瞬間が心に焼き
   付いている証拠であろう。俺の方も嬉しくなるわ。


    その後写真撮影を開始。本当の結婚式の一部分としての撮影、その意味合いを込めて。俺達
   の関係上、結婚はできないのだから。

    何れエシェラ達とももう一度撮影する事になるだろう。今度も素顔の自分で挑みたいわ。
   それこそが本当の行動であろう。



    大満足といった表情のシューム。本店レミセンに帰宅した後、その変わり様に周りから驚き
   の声も挙がっている。珍しくヤキモチを妬かない他の女性陣にも驚いたが、まあシュームの
   内在する不安などの強さを理解するためだろう。

    今もアマギHがウェイターで活躍している。俺より10歳ぐらい年下の彼が、まるで20代
   のような出で立ちを醸し出している。訪れた女性のお客さんは必ずと言っていいほど顔を赤く
   していた。


    そんな中、不意に携帯が鳴り響く。持っていた携帯を上着のポケットから取り出し応対を
   した。相手はウインドからだった。

    長話になりそうだったので、店舗から2階へと上がっていく。そこにはシンシアがマンガ家
   として奮闘中であり、迷惑にならないように端の方で会話を続けた。

    ウインドの話し方からして、少々問題が起きているようである・・・。



シューム「・・・何かあったのですか?」
    ようやく連絡を終えて溜め息を付くと、傍らにシュームとメルデュラが座っていた。何時の
   間にと思ったが、それだけ電話に対して真剣な会話をしていたのだろう。
ミスターT「平西財閥は知ってるよね。その財閥のスポンサーの1つに、安堂不動産という日本一の
      不動産屋があるんだが。フルプレとフルエンに乗っ取りを掛けられたそうだ。」
メルデュラ「安堂不動産っと。」
   今では小さな移動に関してもノートパソコンを持ち歩くメルデュラ。パソコンを起動させて
   安堂不動産を検索しだした。

シューム「日本一の不動産屋が回収されたとなれば、幾ら土地の所有権が私達にあったとしても回収
     される可能性がありますよね。」
ミスターT「ああ、奴等ならやりかねないな・・・。」
    5年前の企業間戦争では新型インフルエンザを助長させるような悪道をした2社だ。今回も
   人々を苦しめて楽しんでいるのだろう。阿呆な存在だ・・・。
メルデュラ「見つかりました。安堂不動産、日本を代表する不動産屋。今現在は2人の姉妹が運営を
      行っているようですが、姉の方が病気がちで捗っていないそうです。」
ミスターT「そこをフルプレとフルエンに目を付けられたか・・・。」
   社長に位置付けられる姉の方がダウンしている所を狙う、か・・・。この情報網の広さは敵
   ながら天晴れと言うしかないな。

メルデュラ「・・・あら、安堂不動産のメインオフィスは地元にあるようですよ。」
ミスターT「灯台下暗しか・・・。」
    更に検索をしていくメルデュラが、安堂不動産の所在を発見したようだ。しかも俺達が住む
   地元にメインオフィスを構えているという。完全に灯台下暗しだわ・・・。
ミスターT「直接赴くかね。」
メルデュラ「私の方は他にも調べてみます。シュームさん、お手伝い願えますか?」
シューム「分かったわ。」
ミスターT「役職の関係上、リヴュアスにご足労して貰うか。」
   本格的に調査という事で、メルデュラとシュームはサーバーマシンがある場所へと移動する。
   この2階の一角はコンピュータールームかと思うぐらいに、かなりのパソコンが並んでいた。
   言わば本店レミセンには高性能な頭脳があると言っていいだろう。


    調べものは2人に任せ、俺は1階に戻りリヴュアスに理由を告げる。するとアマギHが厨房
   とウェイターを担ってくれると語ってくれた。

    アマギHとユリコYも調理師免許を持っており、こういった非常時には活躍できるよう心懸
   けていた。しかも彼らの作る手料理は若者に大絶賛されているという。

    あの躯屡聖堕リーダーの彼が喫茶店のマスターか。臨機応変に応じれる部分は、流石日本一
   のボランティアチームを引っ張るだけの存在とも言える。


    再び正装を纏ったリヴュアスと共に外出した。今回は地元とあり、移動はサイドカーでの
   行動となった。安堂不動産のメインオフィスの所在地は、メルデュラを通して携帯に送るよう
   にして貰っている。

    しかし・・・社長がダウンしている隙を突いての乗っ取りか・・・。この間違った先見性の
   力は計り知れないわ・・・。



    驚く事に安堂不動産のメインオフィスはナツミYUが運営していた総合学園の裏にあった。
   これも灯台下暗しと言えるだろう・・・。

    しかも驚くのは社長の名前、ナツミYUと同じ名前なのだ。う〜む・・・見事な一致とも
   言えるだろうな・・・。


    ちなみにオフィスへのアポは移動中にリヴュアスが行ってくれた。過去に受付嬢を担って
   いただけに、その話術力はかなり高い。

    リヴュアスの存在は、家族内で社交に向いた存在と言えるだろう。地元で只管に警察官を
   担ってきただけに、コミュニケーションの力は凄まじいわ。



ミスターT「・・・本当に灯台下暗しだわ・・・。」
    総合学園の裏手に6階建てのビルが存在していた。これが安堂不動産のメインオフィスだ。
   日本一の不動産屋の本社がここにあるとは、本当に驚きだわ・・・。
リヴュアス「エリシェ様も薄々は気に掛けていらっしゃったそうですよ。資金援助などを行っていた
      そうですが、直接回収に至るとは思っても見なかったようで。」
ミスターT「今からでも遅くないから、足元を固める事をするか・・・。」
   三島ジェネカンに関しては日本よりは世界中に支社が存在する。むしろ海外の方が勢力図は
   大きいとも言えるだろう。ちなみに現在はエリシェの妹2人が海外支部を纏め上げており、
   エリシェとラフィナが国内の運営に携わっている。


執事「ようこそリヴュアス様。サブリーダーのウエスト=マーヴェラスと申します。こちらは同じ
   サブリーダーのサイバー=グロリアスです。」
サイバー「よろしくお願いします。」
リヴュアス「リヴュアス=ハーズダント・・・いえ、リヴュアス=ザ・レミニッセンスと申します。
      こちらは夫のミスターTです。」
ミスターT「よろしく、ウエスト君・サイバー君。」
    若い・・・。ウエストとサイバーの出で立ちはライディル達と同じレスラークラスだが、
   顔が実に若々しい。それに雰囲気からして、まだ30代だろうか。この若さで国内の不動産業
   を牽引もしているのだろうな。

    しかし・・・リヴュアスが言い直したフルネームには驚いた。自分のセカンドネームである
   ハーズダントを語らず、俺のセカンドネームのザ・レミニッセンスを語ったのだから。まあ
   確かに今となっては夫婦と豪語しても何ら問題はないが・・・。



    ウエストとサイバーの案内で社長室に向かった。室内に入室すると、社長室に似合わない
   医療器具が立ち並んでいる。

    そして応接間の端にあるベッドに横たわる女性。こちらに気付くと重い身体をゆっくりと
   起こしてきた。


女社長「ようこそ、ナツミ=アンドウと申します。病弱な身体故に失礼な格好ですが、ご了承を。」
    胸が締め付けられる思いになる。目は燦然と輝いているが、身体は色白く痩せ細っている。
   長年病床にあるが故の代償と言えるのだろうか・・・。
副社長「妹のミツキ=アンドウと申します。姉の身近なお世話をしています。」
リヴュアス「リヴュアス=ザ・レミニッセンスです。こちらは夫のミスターTと申します。」
ミスターT「よろしく、お嬢さん方。」
   現状が現状なだけに口説き文句が一切出て来ない。相手が異性なら自然と出てくるのだが。
   それに過去に風来坊で旅をしていた時、臨時で介護に関する仕事を請け負った事がある。その
   当時の状況が脳裏を過ぎり出していた。

ミスターT「フルプレとフルエンの2社から、回収を受けそうになっていると伺いましたが?」
ナツミA「はい。発端は国内の子会社から回収を受けました。家族のウエスト・サイバー・ナッツ・
     エンルイが阻止に走りましたが、相手の勢力が強く一進一退を繰り返しています。」
リヴュアス「今の所は大丈夫のようですね。」
    平西財閥の例と全く同じだ。先ずは傘下となる子会社から回収を開始し、そして一気に本社
   を乗っ取りに掛かる。ユキナ達の場合はエリシェやラフィナの助けにより事なきを得たが。
ミツキ「こちらはウエストさん達のお力で持ち応えていますが、今以上の回収を受ければ潰される
    のは目に見えていますし・・・。」
ミスターT「そこは俺達に任せて下さい。三島ジェネカンや躯屡聖堕チームの力で何とかします。」
ナツミA「・・・お言葉に甘えさせてもよろしいのですか?」
ミスターT「三島ジェネカンの総括エリシェや、躯屡聖堕チームの総括アマギHも自分と同じ事を
      必ず言います。今の自分達の使命は出来得る限りの平和な世界の確立です。恩師の悲願
      である世界から孤児を無くすという信念にも十分当てはまりますから。」
   ヴァルシェヴラームの世界から孤児を無くすという大願。これは世界平和とは若干異なるが、
   未来の大切な子供達を助けるという事が世界平和に繋がるとも言える。俺も彼女の信念と執念
   に同調し、こうやってオブザーバーを行っているのだから。

ナツミA「・・・分かりました。お言葉に甘えさせて頂きます。」
ミツキ「よかったわぅ!」
    深々と頭を下げるナツミA。その姿を見てホッと胸を撫で下ろす俺とリヴュアス。しかし
   傍らにいるミツキが場違いな喋り方をしだした。これに一瞬にして場が凍り付く。
ミツキ「・・・ご・・ごめんなさい・・・。」
ナツミA「ミツキは普段から語末に“わぅ”を付けるクセがありまして。気が抜くと何時もこうなる
     次第で・・・。」
ミスターT「ま・・まあ可愛いからいいのでは・・・。」
ミツキ「ありがとわぅ!」
   子供の様な目でこちらを見つめてくるミツキ。リュアやリュオよりも幼く感じるが、それでも
   瞳は怖ろしく据わっている。ターリュとミュックにリュアとリュオを掛け合わせた感じとも。


    簡単な会話を終えて社長室を出る。少し苦しそうな表情を浮かべだしたので、途中で切り
   上げて引き上げた。

ミスターT「聞きそびれたんだが、ナツミA嬢の病名は?」
ウエスト「いいえ、病気ではありません。幼少の頃から身体が弱い体質でして、殆ど寝た切りの生活
     が続いています。」
    う〜む、ナツミAの症状は病気とは言い難いものか。ガンや心臓病などの重度な病気なら、
   それなりの手術を受けねば延命できないが・・・。
サイバー「静養だけに集中すれば、今よりは回復は早くなると思いますが。何分不動産を運営するに
     当たって、彼女そのものが必要ですから。」
ミスターT「ふむ・・・。」
   やはり今は回復を優先させた方が彼女にとって得策だろうな。かといって社長業務が疎かに
   なると、安堂不動産自体が2社に回収される可能性がある。


ミスターT「う〜む・・・一時的に安堂不動産そのものを三島ジェネカンに回収できないか?」
ウエスト「ここを・・・ですか・・・。」
ミスターT「ナツミA嬢に完全な静養が必要なら、今担っている業務がなくなればいい。彼女自身の
      存在が会社全体の存亡に関わっているのなら、直接会社を完全回収すれば今は降りる事
      ができるから。まあこれは一時的暫定処置で、彼女が復活したら元に戻そうと思う。」
サイバー「なるほど・・・。」
    ナツミAを社長業務から遠ざける方法は、会社そのものを回収すれば可能になる。傘下と
   いう話ではなく、安堂不動産を三島ジェネカンに完全回収させるのだ。
   まあこれはナツミAが完全回復するまでの暫定処置だ。実際に回収するつもりはない。彼女の
   体調が完全に回復すれば、元の流れに戻すのだから。
サイバー「ナツミAさんが完璧とは言えなくても、今より自由に動けるまでの暫定処置ですね。」
ミスターT「今の国内ではマスコミが五月蝿いだろうから、アメリカかイギリス辺りで静養する形が
      いいかも知れない。それに三島ジェネカンは世界中に支社があるから、バックアップは
      完璧だろう。」
ウエスト「分かりました、ナツミAさんに相談してみます。」
   平西財閥が今の戦いのキーパーソンのように、安堂不動産もキーパーソンだと確信している。
   ナツミAには大変悪いが、今は完治の方を優先して貰うしかない。



    正門玄関でウエストとサイバーに見送られて、俺とリヴュアスは本店レミセンに戻った。
   今後の流れは不透明な部分が多いが、今はナツミAの完治も大切だろう。

    こんな状況と知っていながら、回収沙汰に発展させているフルプレとフルエンの2社だ。
   間違いなく日本はおろか全世界の災厄となる存在だな。


    俺に出来る事は三島ジェネカン・躯屡聖堕チーム・平西財閥・安堂不動産と共に、この2社
   と徹底抗戦をするのみだ。負ければ今以上に最悪な世の中になってしまう。

    何が何でも勝たねば・・・。全ての人の幸せも懸かった戦いなのだから・・・。

    第3部・第3話へと続く。

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