アルティメットエキサイティングファイターズ・外伝 〜覆面の風来坊〜
    〜第3部・第3話 強力な助っ人1〜
    安堂不動産との談話から数日後。ウエストとサイバーに進言した通り、一時的に安堂不動産
   そのものを回収する事にした。理由は病弱なナツミAの静養を行うためである。

    安堂不動産は国内での行動が強いとあり、躯屡聖堕フリーランスと合併する事となった。
   暫くはアマギHに躯屡聖堕チームと安堂不動産の総括を担って貰う事にした。


    それから数週間後、ナツミAはイギリスへと向かった。妹のミツキは元より、家族そのもの
   と言えるウエスト・サイバー・ナッツ・エンルイも一緒だ。

    また介護の関係上、助っ人が必要になる。ここはシュリム・シュリナ・ラフィカ・ラフィヌ
   の4人をイギリスへと派遣した。この4人も何れ介護士と看護士の資格を取得するとの事で、
   今後のいい経験になるだろう。

    可愛い子供には旅をさせろという言葉があるが、まさかこういう形で海外派遣させるとは。
   実に不思議な縁であろうな。



    案の定、一時的ではあるが安堂不動産の完全回収は世論を驚愕させた。またこの機に乗じて
   フールプレジデントとフール・エンドの2社がマスコミに虚像情報を売り込みだしたのだ。
   目的はもちろん、三島ジェネラルカンパニーと躯屡聖堕フリーランスに対するマイナス面の
   印象を植え付ける事である。

    知らぬ間に水面下で一部マスコミと手を組んでいた2社は、今がチャンスと猛攻撃を開始。
   これに反論する俺達だったが、テレビやネットの情報網が発達した今日では非常に厄介な火種
   となっている。


    何れ大きな災厄として降り注ぐのは目に見えているが、ナツミAの状態からして動かねば
   後悔するのは目に見えていた。俺はこの件には徹底抗戦するつもりだ。



シューム「寂れたねぇ・・・。」
    反逆者の集まりとも言われるようになった現在。レミセンの全店舗は古参ユーザーさん以外
   は誰も来なくなった。マスコミの執拗な取材やら何やらは、躯屡聖堕チームの威圧で何とか
   押し返してはいるが・・・。
リヴュアス「エシュリオス様とエフィーシュ様が子供達の面倒を見てくれるそうです。」
ミスターT「今は仕方がないよな。2人に任せよう。」
   リュア・リュオ以下の新たに生まれた10人の娘達は、今では従姉妹となるエシュリオスと
   エフィーシュに預けた。またリュアとリュオも学校を休学してまで娘達の面倒を見ると言う。

    本来なら止めさせたい所だった。しかし母親がいない場ではリュアとリュオに絶大な信頼感
   を置き、エラい懐いている10人の娘達である。今と異なる環境であっても、双子がいれば
   安心できる。ここは母親役として活躍して貰うしかない・・・。


シューム「ナツミAちゃんって、まだ18歳なんだよね?」
ミスターT「ああ。妹のミツキも同じだね。」
シューム「幼少の頃からずっと病気がち、か・・・。」
    俺の家族は困るほどの元気さである。それ故にナツミAの心情を思うと居た堪れなくなる。
   特に5年前の企業間戦争後から介護士と看護士の免許を取得しだしたシューム。その痛みは
   痛烈に理解できるだろう。
リヴュアス「ウエスト様とサイバー様が21歳で、ナッツ様とエンルイ様が20歳でしたね。」
ミスターT「あの若さで安堂不動産の運営に携わっているんだからな・・・。俺も下手な疲労で休む
      とか言ってられないわ。」
シューム「老いて盛んな老兵、ってね。」
ミスターT「シェヴには到底敵わないけどね・・・。」
   今も最前線で戦い続けるヴァルシェヴラーム。今年96歳となる彼女が、疲労の色を見せずに
   戦っているのだ。師匠を支えるのは弟子の役目、俺も絶対に膝は折れないわな。



    嘘偽りの報道が続いている。三島ジェネカンと躯屡聖堕チームが安堂不動産を乗っ取ったと
   いうものだ。病弱なナツミAを陥れて、利益優先に動いていると。

    これに地元に住む友人・知人・近所の人達は激昂し、フルプレとフルエンに抗議文を送って
   いる。その激昂度は半端じゃなく、鎮圧にウインド達が仮出動する事態にも至った。


    この時ほど泣いて喜んだ瞬間はない。彼らの姿が俺の今までの生き様そのものと言える。
   俺の存在は無駄ではなかったと・・・。

    厄介がまれてもお節介を貫き通した。周りの人々に激励と活力を与え続けた。覆面の風来坊
   として、出来得る限りの社会貢献をし続けた。その結果が今なのだ。


    この情報を知った時は丸1日泣き続けた。歓喜の涙が止まらなかったわ・・・。



    それから地元を本陣として、フルプレ・フルエン・一部マスコミと徹底抗戦をしだした。
   マスコミの面々も言葉巧みに操られているのは目に見えているが、今まで以上に利益が上がる
   と躍起になっている。

    その裏では2社による子会社の回収が続いている。俺達は目の前の戦いに精一杯で、相手の
   回収まで手が回らなかった。


    この惨状に大激怒しだしたのがウインド達だ。警察官という役割の手前、表立っての行動は
   一切できない。その事を携帯越しに大声で語っていた。

    しかし所詮は愚者の集まりだ。こちらが相手のペースに乗せられない限り、負ける事は一切
   ない。フルプレとフルエンの実態を知らない故に、奴等に荷担してしまっているのだから。



    2度目の激昂が地元で起こり、町会長を中心とした面々が直接抗議行動を起こしだした。
   一部マスコミ本社へと乗り込み、彼らの心の内を徹底的に語ったのだ。
   
ディルヴェズLK「大丈夫です?」
ミスターT「ごめんな・・・。」
    その現状がテレビ中継された。それを見だした途端、止め処なく涙が溢れてきた。そんな
   俺をディルヴェズLKが支えてくれている。
ディルヴェズLK「貴方の諦めずに植え続けた希望の種が開花した瞬間ですよ。世論がどうこうじゃ
         ない、貴方の生き様を見てきた人達が立ち上がっているのです。」
ミスターT「・・・そうだな・・・。」
   再び涙が溢れ出してくる。すると俺を背後から優しく抱き締め、ゆっくりとソファーに座ら
   せてきた。彼女の胸の中で抱かれる安堵感に、より一層涙が溢れてくる。
ディルヴェズLK「大丈夫です。今は苦しいけど、必ず光明が差しますから。」
ミスターT「・・・ありがとう・・・。」
   今はただ感情に身を任せ、心から泣き続けた。そして新たに決意する。俺の生き様は絶対に
   曲げず貫き通すと。それを心に深々と刻みつけた瞬間だった・・・。



    それから更に数週間後。躯屡聖堕チームが親身になって駆け回っていた事が基点となり、
   日本中から大反論の声が挙がり出した。

    今まで行ってきたボランティア活動は、確実に国内の人々に浸透していた。台風や地震災害
   などで、我が身を削ってまで尽くし続けている。それが開花した形となった。

    しかし一部マスコミの勢いを抑える程度にしかならず、水面下での2社による回収行動は
   今も続いていた。


    ちなみにこの激戦は日本国内でしか行われていない。海外でも2社による回収行動は行わ
   れているが、日本ほど非道くはないのだ。

    むしろ海外では三島ジェネカンとそれぞれの国の警察機構が圧倒的に強すぎて、直ぐに潰さ
   れているのだ。それにより日本で起きているこの事件が、世界中から注目されている。


    フルプレとフルエンの2社も海外での活動は縮小傾向にある。専ら日本国内での暴動に近い
   だろう。故にここまで好き勝手できる訳でもあるが・・・。



    話は変わり、各レミセンの恒例行事とも言える店舗周辺のクリーン作戦。これはリュアと
   リュオが発端となっている。彼女達が5歳の頃から行いだし、今では地元の名物行事だ。

    もっとも町内会もクリーン作戦を年に何回か行っているが、レミセンクリーン作戦は1週間
   に3回とハードな内容である。殆ど1日置きに行っていると言えよう。


    このクリーン作戦のお陰で、地元はゴミ1つないほどの美しさだ。それでもポイ捨てが今も
   あるのだから、人間の内面における醜さは非道いものだわ・・・。

    まあそれでも諦めずに挑む姿勢にこそ意味がある。この恒例行事は長く続けて行く事が大切
   であろう。



    今はウインド達から新たに紹介してくれたトーマスRと一緒に、本店レミセンがある居住
   ブロック内を掃除している。地元の有志の方々も一緒である。

    う〜む・・・リュアとリュオの存在は、正しく大旋風を巻き起こすじゃじゃ馬娘達だな。
   だからこそ地元興しなどが頻繁に行われているのだから。

    2人の存在には心から感謝したい・・・。


ミスターT「トーマスRの手腕は凄まじいよな。」
トーマスR「買い被りですよ。まだまだ先輩方には及びません。」
    トーマスRが本店レミセンに赴任してきてからは、地元の人達との連携を第一としだした。
   細かい事から積み上げる事が好きなようで、こういった陰の戦いは得意中の得意のようだ。
   それでいて全く奢らないのだから、彼の真の強さがよく分かる。
トーマスR「それと先程ウエストさんからご連絡がありました。」
ミスターT「おお、それで何だって?」
トーマスR「経過は順調ですとお伝え下さい、と仰っていました。」
ミスターT「そうか、問題なさそうだな。」
   ナツミA達がイギリスへ赴いてから、既に半年が経過している。実に早いものだ。その彼女に
   付き添いでいるウエストから連絡があったようだ。

    トーマスRが語るには、向こうは向こうで色々と忙しい様子だ。ナツミAが日に日に元気を
   取り戻しているのとは別に、何やら画策している様子にも見て取れる。

    まあ20代という若さで国内最強の不動産業を営むに至ったのだ。彼らに掛かれば何でも
   可能な気がするわ・・・。


    今までは俺達が若い世代の一員となり、周りと共に戦ってきたと思っていた。しかし時代は
   過ぎ去り、今は彼らのような若い世代が主役となりつつある。

    風来坊の長旅から地元に帰ってきてから、約30年以上も経過していたんだよな。早いもの
   だわ・・・。



    一通りのクリーン作戦が終わり、駅前のコンビニの前に座り込んで休憩する。端から見れば
   不良が一服しているように見えるが、まあ迷惑を掛けるほどじゃないわ。

    それにここのコンビニは結構広く、表にはカフェテラス的な憩いの場も存在している。実に
   不思議な光景だが、これも地元興しの一環として役立っているとも。


トーマスR「ウインド先輩から役職の階級アップをしないかと何度かオファーがありましたよ。」
ミスターT「お前ならトップクラスの人物になれるだろうに。」
トーマスR「いえ・・・リヴュアス先輩と同じく、地元を固めねば意味がありません。地方の地域
      でもこういった警察官は多いといいます。それにもう時期定年を迎えるリヴュアス先輩
      の代わりに、その役を受け継ぎたいのです。」
    脱帽だわ。近々リヴュアスも年齢的に定年退職を迎える。今まで昇進の一切を断り続けて
   地元警察官として貫いてきた。その存在に今度は彼がなるというのだ。これ程嬉しいと思える
   事はない。

ミスターT「・・・俺も歳を取ったよなぁ・・・。」
トーマスR「何を仰いますか。昨年自分が赴任してきた時と全くお変わりないじゃないですか。」
ミスターT「そりゃあなぁ・・・外見が老化しない特異体質だからな・・・。」
    俺やヴァルシェヴラーム・ヴェアデュラ、そして24人の娘達。この全員が外見の老化が
   訪れない特異体質の血を受け継いでいる。特にヴァルシェヴラームは今年で96歳になった
   のだ。彼女の全く歳を取らない美貌は脅威そのものである。

トーマスR「シューム先輩が仰っていましたよ。外見は歳を取っても、心は歳を取らないようにと。
      全てを若く保つ秘訣は心の問題とも。」
ミスターT「そうだよな・・・。」
    シュームの老化が現れている現在だが、それでも20代のような若々しさを保っている。
   心こそ大切なれ、それを有言実行しているからこそ成し得るものだろう。
トーマスR「マスターの様な誰からでも慕われる存在になりたいものです。その時こそ自分が孤児院
      で育った事への恩返しができると確信していますから。」
ミスターT「お前さんも偉大だよ。」
   トーマスRも赤ん坊の頃、ヴェアデュラと同じく捨て子だった。ヴァルシェヴラームの孤児院
   に引き取られ、彼女に育てられた経緯もある。
   彼が地元から離れずに足元を固めるという事を続けるのは、恩師たる彼女達に師恩を返すため
   であろう。ヴァルシェヴラームが一番喜んでいるだろうな。


ミスターT「そうか、お前も息子のような年代なのか。」
トーマスR「そうですよ。エシェラ先輩の娘さんよりは年上ですけど。」
ミスターT「エシェアとエシェナの兄か、何か釈然としないよな・・・。」
    俺が指摘するのは、トーマスRの外見を指し示す。既にライディル達と同じ身長なのに、
   年齢はまだ28歳なのだから。俺が地元に戻ってきた時と同じ年代である。
トーマスR「ヴェアデュラさんからは兄のように慕われています。マスターと同じ雰囲気があると
      言われていますので。」
ミスターT「あいつがねぇ・・・。そのうちお前を好いたとか言い出すんじゃないかね。」
トーマスR「それはないですよ。つい最近知り合ったメアデュナさんと恋仲ですから。」
ミスターT「確か・・・以前紹介してきた18歳の女の子だっけか。」
   不思議な縁である。彼女の恋仲のメアデュナも、トーマスRとは10歳差なのだ。丁度俺が
   風来坊から地元へと戻った時の、エシェラとの年齢差と言える。

トーマスR「メアデュナさんはシェヴィーナ財団という、アメリカでは三島ジェネカンに次ぐ規模を
      誇る大企業の社長令嬢でして。」
ミスターT「シェヴィーナ財団のお嬢様なのか。アメリカ遠征時に何度か世話になってるよ。」
    アメリカ遠征をしている時、色々な支援をしてくれた企業の1つである。面白い事にこの
   企業もフルプレとフルエンの2社から乗っ取りをされそうになったのだが、何と逆に回収を
   しようとまでしたのだ。これに恐怖した2社は直ぐに撤退し、日本に集中せざろう得なくなる
   という経緯もある。

ミスターT「彼女と結ばれるとなれば、警察官を辞めて社長に就任する必要があるんじゃないか?」
トーマスR「何も辞めなくても大丈夫ですよ。アメリカに赴く事になると思いますが、現地で警察官
      として動く事ができますので。」
ミスターT「なるほど、その手があったか。だがアメリカは銃社会、危険と隣り合わせの職業故に
      危ないんじゃないかね。」
トーマスR「そこは今まで戦えてきた強運と技術で押し通しますよ。」
    トーマスRの強運は凄まじいという。一歩間違えば死に至るような出来事も、紙一重で回避
   し続けているのだ。それがマグレではない事は一目瞭然で、彼には特殊な能力があると言える
   だろう。

トーマスR「日本で培った技術を活躍できる場が、アメリカでの活躍だと思います。できればここ
      地元で生涯活躍したいのですが、メアデュナさんを困らせる事はできませんので。」
ミスターT「お前は警察官の鑑だよ・・・。」
    常に前を向いているトーマスR。彼は28歳時の俺と同じであり、更に突出した存在だと
   言える。彼ならどの様な境遇になろうとも、必ず乗り越えていけるわな。
トーマスR「さて、戻りましょうか。」
ミスターT「そうだな、戻ろう。」
   休憩を終えると、掃除用具を片手に本店レミセンに戻っていった。その際に散らばるゴミは
   必ず撤去していった。あれだけ掃除しながらも再びゴミが捨てられるのだから、捨てた人間の
   気が知れないわ・・・。

    まあだからこそ、こうやって地元を上げてクリーン作戦ができるのだから。感謝もできると
   言えるだろうな。何とも・・・。



    それから数週間後、劇的な事が起こった。トーマスRが語ったメアデュナの両親が、日本
   にもシェヴィーナ財団を発てたのだ。

    今はメアデュナの姉が日本支社を取り仕切っているようだが、何れメアデュナ本人が日本
   支社を任せられる事になりそうだ。


    こうなるとトーマスRが動きやすくなるだろう。国内でのシェヴィーナ財団を守りつつ、
   地元での警察官として活躍できるのだから。

    まあ未来は予測不可能だ。実際にそこに至るかまでは推測するしかない。しかし2人なら
   確実に実現するだろうな。


    余談だが、シェヴィーナ財団と聞くとヒッチハイクの風来坊の娘を思い出す。実際に関係
   していると思われるが、はたして・・・。

    何となくだが、懐かしい再会ができそうだ・・・。

    後半へと続く。

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