アルティメットエキサイティングファイターズ・外伝 〜覆面の風来坊〜
    〜第1部・第5話 花火大会2〜
    その後花火大会が開始。打ち上げられる花火は単発的だが、まだまだ序の口だろうな。
   こういう時は一服しながらが落ち着く。懐から煙草を取り出したが、何と中身がからっぽで
   あった。
ミスターT「わりぃ、煙草買ってくるよ。」
ラフィナ「分かりました。」
   エシェラもラフィナも花火に没頭している。やはり女性なのだろう。美しいものに見惚れる
   のは自然的なものか。


    しかし高いなぁ、地上30階は・・・。エレベーターがなければ凄まじい体力がいるわ。
   それに少し身体が震えている事に気が付いた。これは高所恐怖症の類だろうか・・・。

    そう言えば以前高層ビルの内側窓拭きを行ったのだが、表を見ただけで立ち眩みをした事が
   あった。これを踏まえると間違いなく高所恐怖症だろう・・・。



    俺は近くの自動販売機まで行き煙草を購入。そこで開封し一服する。口が不味い時はこの
   一服が凄まじい癒しになる。

    ちなみに近々タスポなる年齢証明書が必要になると言われている。未成年者への配慮だが、
   素直に運転免許証を使えばいいのに・・・。

    まあ免許証にもICチップなるものを埋め込んでいるという事から、タスポ代わりには十分
   なれるだろう。



    一服しながらエリシェの自宅へと戻ろうとした時、何やら言い争う声が聞こえる。この声
   には聞き覚えが・・・。声がする方へと進んでいくと、何とエリシェが複数の男性に絡まれて
   いるじゃないか。
男性1「なぁいいだろぉ〜、一緒に付き合えよぉ〜。」
エリシェ「やめて下さい・・・。」
男性2「やめて下さい〜だって、可愛いじゃん〜。」
   ・・・この手の馬鹿者はどこにもでいるんだな。ラフィナの一件を思い出すわ。彼女の一件、
   ラフィナの・・・。何だか無性に腹が立ってきた・・・。

ミスターT「おい、俺の彼女に何してやがる。」
    煙草を携帯灰皿で消しつつ進み出る。まだ初対面から時間が経っていないのだが、一応彼女
   という事で押し通そう。
男性1「何だお前ぇ、コイツの彼氏かぁ?」
男性3「失せなよ、女の相手は俺達がするんだからさ。」
ミスターT「屑共には勿体ない。屑は屑らしくゴミ箱へ行って焼却されろ。」
   エラい事になったとエリシェが慌てている。だがこちらは毎度の事だ、恐れる事じゃない。
   それにゼラエル達との一線を考えれば、まだまだお遊戯程度にしかならないわ。



    すっかり激情した男性3人は俺を取り囲み、臨戦体制に入っている。これを見ればラフィナ
   の一件の馬鹿者よりも低レベルだと確信した。嘲笑う事をしない、それだけ余裕がないのだ。

男性2「謝っても許さねぇぜ!」
    左側にいる男性が俺に殴り掛かる。だがそれをヒラリを避わし、逆に相手の後頭部に一撃を
   放つ。相手の力を利用するだけだ、ラリアットよろしくクローズラインだけでいい。それを
   喰らった男性はバランスを崩し、そのままガードレールに激突する。


男性3「テメェ!!!」
    今度は背後から俺を羽交い締めしようとする男性。しかし俺は逆に後ろへと身を引いた。
   それにより羽交い締めしようとした男性は、押し出る勢いの相殺を喰らう。大方フルネルソン
   を狙ったのだろうが、体躯が大きい俺を抑えられない。

    バランスを崩した男性の両手を掴み、そのまま相手全体を肩に担いだ。そして放り投げる
   感覚で回転させながら地面へと叩き付ける。プロレス技のF−5相当に近い。喰らった相手は
   完全にダウンしていた。


男性1「うぉらぁ〜・・・もう容赦しないぜぇ〜・・・。」
    最後の1人はズボンのポケットから折り畳みナイフを取り出す。よくある逆切れだ。それを
   見たエリシェは驚愕するが、対処法さえ分かっていれば恐れる事はない。

    両手にナイフを持って突き刺そうとする。それを買ったばかりの煙草ケースを使い、それに
   突き刺させた。丁度縦になるようにするのは難しかったが、幸運にも成功。実に運がいい。

    慌てた男性は引き抜こうとするが、その隙に相手に足払いを掛ける。ナイフを引き抜き後方
   に下がろうとしたため、これも力を利用したカウンターだ。勢い良く転倒する。

    起き上がろうとする男性に、俺は右平手を思いっ切り相手の喉に叩き付ける。プロレスでも
   反則に近いとされるチョークだ。まあ相手が凶器を使うのなら、このぐらいは黙認だろう。



ミスターT「何だ、他愛のない。」
    簡単な軽業だけで男性3人を撃退した。もっとも真っ向勝負だったら、今以上の力が必要と
   されるのだが。相手の力を利用したカウンターアタックが幸をそうしたようだ。
ミスターT「躯屡聖堕の面々なら、もっと面白い殴り合いができるんだが。これも何かの縁だ、彼ら
      に紹介してやろうか?」
   躯屡聖堕という言葉を聞いただけで、ダウンしていた3人は青褪める。これは凄い効果だ。
   ラフィナの一件でも相手が青褪める程だから、こういった連中には一撃必殺の特効薬だろう。

    一目散に逃げ出していく3人。その中の1人はしっかりとナイフを持って行く。どうやら
   躯屡聖堕に証拠を見られたくないのか、ただ単に愛用のものなのか。まあどうでもいい事では
   あるが・・・。



ミスターT「大丈夫か?」
    一部始終を見つめていたエリシェは呆然と立ち尽くしている。一方的で圧倒的な展開に、
   目を丸くして驚いていた。
エリシェ「・・・あ・・ありがとうございます・・・。」
ミスターT「夜に美女1人を買い物に向かわせたのが間違いだった、ごめんな。」
エリシェ「い・・いえ・・・。」
   緊張の糸が切れたのか、徐に泣き出すエリシェ。今までに体験しなかった事に遭遇したのだ。
   これが普通の女の子の対応だろう。



エシェラ「あ〜、やっぱりいた〜。」
ラフィナ「あまりにも遅いから心配になって来ちゃいました。」
    泣き続けるエリシェを抱きしめ、優しく頭を撫でて慰める。そこにエシェラとラフィナが
   駆け付けてくる。腕時計を見たが、何と30分も経っていた。心配になって来る訳だ。
ミスターT「今さっきエリシェが暴漢に襲われててね。とっ捕まえて締め上げたのよ。」
ラフィナ「暴漢って・・・あの方々ですか?」
   ラフィナが指し示す先には、何と巡回中の警察官複数に捕まっている3人がいた。しかも抵抗
   する様子もなく、本当に捕まえて下さいといった雰囲気である。
ミスターT「あらま。」
エシェラ「マンションの地下に駐在所があって、そのお巡りさんと入り口で会ったのよ。なかなか
     帰ってこないエリシェさんの事を話したら、血相変えて飛び出して。」
ラフィナ「私達も一緒に行ったのですが、そこにあの3人と会ったのです。こんな夜にナイフ持って
     いるのですから、直ぐに職務質問されていましたよ。」
エシェラ「その3人ね、どうやらシンナーやってたらしい。1人だけキレそうな奴がいたから。」
   う〜む、なるほどね。2人の会話を纏めると、意味合いはこうなる。


    エリシェが住むマンションの地下を拠点とした駐在所があり、当直の警察官複数が着任して
   いたようだ。

    彼らが巡回時間か何かの時にエシェラとラフィナに遭遇。オーナーの娘エリシェが帰らない
   とあって、急いで探しに行った時に連中と鉢合わせ。運がよかったとしか言いようがないな。



    その後警察官達とも会い、一部始終を詳しく話す。それに驚いた様子で聞き入っていた。

    男性3人はここらでも有名な悪党で、色々と問題を起こしていたようで。それがさっきの
   俺との一戦と躯屡聖堕の関与で完全に脅え、いっその事捕まえてくれとなったようである。
   それだけ躯屡聖堕の影響力が凄いという事だ。何だかな・・・。


エシェラ「エリシェさんは?」
ミスターT「絡まれていただけだから大丈夫。」
    戻ろうとした時、更に気が抜け腰を抜かす。意識はハッキリしているが、立てない状態だ。
   仕方がないので彼女を背負い、2人と一緒にエリシェの部屋へと戻って行った。



ラフィナ「何だかんだで8時半、花火大会終わってしまいましたよ。」
ミスターT「ありゃま・・・。」
    部屋に戻ってエリシェをソファーに座らせる。落ち着いて笑顔で応対しているが、まだ腰が
   抜けた状態だ。暫く休ませるしかない。

    あの一件を警察官へ報告している間に、既に花火大会は終了していた。楽しみにしていた
   だけに、非常に残念で仕方がない。その俺の表情を見て、エシェラが何か思い付いた様子だ。
エシェラ「そうだ、少し待ってて。」
ミスターT「おいおい外に行くのかよ、大丈夫なのか?」
エシェラ「私の強さ、お忘れじゃないですよね?」
   そうだった。エシェラの戦闘力の強さは計り知れない。躯屡聖堕メンバーと共闘できるほど。
   互角以上に張り合って大活躍し、見事ゼラエル達を撃退したのだから。
ラフィナ「私も一緒に行きます。こう見えても母からカンフーと合気道を徹底的に教わっています
     ので。」
   マジかよ・・・、そんな話聞いてないぞ・・・。これはラフィナも本気を出せばヤバいという
   事だな。肝に銘じておこう・・・。



    花火大会が終わった河川敷。ここからでは窺い知る事はできないが、向こうは帰りの客で
   ごった返しているだろう。3人と一緒に見れればよかったが・・・。
   徐に煙草を吸おうとしたが、今度は本体すらない・・・。ああ、さっき新品を串刺しにしたん
   だっけな。

エリシェ「あの・・・。」
ミスターT「落ち着いたか?」
エリシェ「はい、一応・・・。」
    俺の方に歩み寄ろうとするが、足元がふらつき倒れそうになる。その彼女を抱きかかえ受け
   止める。丁度バルコニーの中央辺りだ。支えなければ転倒していただろう。
ミスターT「これで一応ねぇ・・・。」
エリシェ「エヘヘッ・・・。」
   ニヤケ顔で微笑むが、身体はまだ震えている。暫くこうしていた方がいいか。下手なトラウマ
   にならなければいいが・・・。

エリシェ「・・・ミスターT様は強いのですね。」
ミスターT「ああ、さっきのか。あれは見様見真似、実際に格闘技なんかやった事ない。」
    俺に発言に驚愕するエリシェ。まあ驚くのも無理はない。本当に見様見真似でやっただけ。
   体躯が優れるだけで格闘技には精通していない。旅に出る前に遊んでいたプロレスゲームの
   技をやってみただけなのだから。
エリシェ「でも・・・私を助けてくれた・・・、感謝しています。」
ミスターT「お嬢様を守るのが騎士の務めだからね。」
エリシェ「ありがとう・・・。」
   頬を染めて頷くエリシェ。胸の中で甘えてくる仕草を見ると、これは少なからず好意を持た
   れた事になるか。嬉しい事には変わりないが、エシェラとラフィナに何と言えば・・・。


エシェラ「な〜にをやってるのかなぁ〜?」
    噂をすれば何とやら。突然声を掛けられ飛び上がらんばかりに驚く俺とエリシェ。どうやら
   コッソリ帰ってきていたようだ。玄関の鉄扉の開閉音が聞こえていたのだろうが、それさえも
   聞こえなかった。

    いや・・・まさか・・・。2人は分かっていて静かに入室したのか。だとしたらこうなる事
   は予測済みだったと。2人の意中にはめられた気がしてならない。何とも・・・。
エシェラ「まあいいわ、エリシェさんを癒せるのはミスターTさんしかいないのだから。」
ラフィナ「今回は多めに見ます。」
   何を多めに見るんだ何を・・・。この2人にいいように弄られているな・・・。まあ彼女達が
   嬉しそうなら構わないか。


エシェラ「これで続きをやりましょう。」
ミスターT「線香花火か。それに小さなバケツも、マメだなぁ。」
ラフィナ「それとこれもどうぞ。」
ミスターT「あ、わりぃ。ありがとな。」
    エシェラが買ってきたのは線香花火。マンションという事で大規模な花火はご法度。しかし
   小さな炎の線香花火なら、周辺に迷惑は掛からないだろう。

    それにラフィナが渡してくれたのは煙草だ。先程の一戦で潰れた事を知ったようで、花火と
   一緒に買ってくれたようだ。というかラフィナは未成年・・・、よく買えたものだ・・・。


    俺達は小さな花火大会を始めた。先程の大規模なものではなく、手の中でのもの。完全に
   落ち着いたエリシェは嬉しそうに花火を楽しんでいる。



    その後知ったのだが、エリシェは余り遠出をした事がない。このマンションの最上階から
   周りを見つめるだけのようだ。今回の夜間の外出も、かなり冒険したようだった。それで暴漢
   と遭遇するのだから、ある意味運がいいのだろう。

    また花火自体もやった事がないとの事。エシェラの機転溢れる行動に、今までになく喜ぶ
   彼女だった。


    全て冒険と経験の連続。そして己の生き様を刻む戦い。生きるというのはそういう事だ。

    エリシェも一歩先へと成長したと確信している・・・。

    第1部・第6話へと続く。

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