アルティメットエキサイティングファイターズ・外伝 〜覆面の風来坊〜
    〜第2部・第5話 苦手なもの1〜
    7月中旬。梅雨晴れをした関東は、夏空と蒸し暑さが現れる。3年前よりも暑くなっている
   ようだ。しかし・・・蝉だけはどうにかして欲しい・・・。苦手なものは苦手だ・・・。

    相変わらず5人からは求められる。抑えの蓋を取り除いた事で、一切の柵から解放されての
   行動だ。俺はただただ応じるしかない。これも疎かにしていた責任だろうな。

    しかし交わる回数が増えていくと、彼女達はより一層美しくなっていく。周りからも羨む
   ほどの美貌と成っていった。これは素直に喜ぶべきだろうな。



エシェラ「おはよう・・・。」
    真夏の蒸し暑さで目を覚ます。胸の中にはエシェラがいる。昨晩も彼女に求められ、それに
   応じた。昨日いきなり一泊したいと申し出た時は驚いたが、その理由はこれであったようだ。
ミスターT「ここ連戦でバテ気味だよ・・・。」
エシェラ「貴方が今まで疎かにしてきたツケですよ。私も我慢できないぐらいです・・・。」
   そう言うと唇を重ねてくる。相変わらず積極的な口づけだ。その意味合いは渇きを潤す事と、
   自分だけを見て欲しいという願望からだろう。

エシェラ「あぁ・・・貴方が愛おしい・・・。」
    口づけを終えると、再び胸に顔を埋めてくる。愛情が膨れ上がり、自分でもどうしていいか
   分からないといった雰囲気だ。以前は理解できなかったが、今はしっかりと理解できる。
ミスターT「焦らずとも逃げたりしないよ。」
   彼女の頭を優しく撫でて、静かに抱きしめてあげた。肌と肌が触れ合う事により伝わる相手
   への痛烈な思い。それは俺にとっても、とても愛おしいと思えるぐらいだ。

    彼女を守り続ける事こそが、俺の本当の生き様だな・・・。



メルデュラ「お疲れのようですね。」
    本店レミセンへと出勤する。とはいってもローテーションを組んでの行動なため、本出勤
   とはならないだろう。入店してカウンターに座り一服する。俺の顔を見ると、そそくさげに
   コーヒーを渡してきた。
ミスターT「5人の心は分かるが、俺は1人なんだから労わって欲しいよ・・・。」
メルデュラ「それだけ本気でお好きだという事ですよ。」
ミスターT「まあな。」
   今だ恋路に走っていない彼女が、まるで恋路に走っているかのような発言をしてくる。やはり
   同性だから語れるのだろうな。


    格闘術大会の翌日、メルデュラを誘って外出した。彼女は電気工学系が得意で、秋葉原に
   あるラジオセンターやパソコンショップを見て回った。この時の臨時のマスターにはシンシア
   とシュームが担ってくれている。

    普段大人しいメルデュラが、この時ばかりは興奮冷めやらぬ女の子へ変貌していた。数々の
   パソコンパーツに目移りし続け、一歩間違えば手当たり次第に買うかのような勢いだった。


    話を聞く所、本店レミセンにはバイト感覚で入ったという。本当はコンピューター関連の
   会社に就職し、プロのエンジニアになりたいと語っていた。

    確かに店頭にあったパソコンで文字を打ち出したら、その荒業に近いブラインドタッチは
   目を見張るものがあった。ソフトウェアを作成する専用ソフトはなかったが、あれば何らかの
   プログラミングを打ち出していただろう。


    う〜む・・・この美丈夫が類を見ないほどのパソコンマニアだったとは・・・。しかしその
   スキルは知人を遥かに超えている。彼女以上のスペシャリストを見てみたいものだ・・・。


メルデュラ「マスターも絵を書かれていらっしゃいますが、それをPCに取り込むのはスキャナー
      ですよね?」
ミスターT「ああ。ノートからハンドスキャナーで取り込んでいる。それをオリジナルとアレンジと
      して加工して保存。RAMとかに保存してるよ。」
メルデュラ「バックアップはこまめに取るのは基本中の基本です。大切なデータの消失だけはしない
      ように。」
    この道数十年、幼少の頃からPC関連の知識を蓄えたというメルデュラ。彼女もかなりの
   スキルを持つ猛者の1人と言えるだろう。

ミスターT「前に言っていたエンジニアとかに進めば、今より安定した収入とか得られたのだろう。
      何故喫茶店のマスターに進んだのかが理解できない。」
メルデュラ「最初は失敗したと思いました。バイト感覚で始めたのですが、貴方や皆さんと出会った
      事で自分が何をしたいのかと気付かされたのです。」
ミスターT「テメェの生き様、か・・・。」
メルデュラ「貴方は自由奔放に生きられていますが、それでも根底には人を支え助けるという大願が
      据わっている。その生き様に当てられて、私も貴方と同じ生き方をしたいと思うように
      なったのです。」
    メルデュラの発言は合っている。今も風来坊の雰囲気は抜けだせないでいるが、根底は人を
   助けるという一念は失っていない。明確な信念と執念が定まっている人ほど怖ろしく強い。
   その俺に憧れて進むと語っているのが彼女だ。これはこの上なく嬉しい。

ミスターT「世話を掛けてすまない。」
メルデュラ「とんでもない、私も色々とお世話になりっぱなしです。だからこそ負けられないのです
      から。」
    心の内を力強く語る。メルデュラもそうだが、肝っ玉が据わった女性は怖ろしく強い。自分
   をしっかりと見定めているからだろう。
ミスターT「今度FDD搭載のノートと新型デスクトップを見積もってくれないか?」
メルデュラ「あ、はいっ。お任せをっ!」
ミスターT「これは仕事ね、しっかり依頼として請け負ってくれ。」
メルデュラ「了解ですっ!」
   笑顔で応えるメルデュラ。大人の女性の雰囲気もあり、子供の一面も併せ持つ。故に無類の
   強さを発揮するのだろう。何度も言うが、真女性は強いよな・・・。



    ここ数日は何度となく原点回帰をさせられる。先日のメルデュラとの会話もそうだが、他に
   エシェラの職場の話についてもだ。人に尽くすという職業柄、どうやって相手に思いを伝えて
   いくか。それを教えて欲しいとの事。

    そもそも長年に渡って俺の生き様を窺っている彼女達。その答えはしっかりと導き出して
   いる。だが再確認と言った意味合いでの問い掛けだった。つまりは不安なのだ。しっかりと
   前へ進み、自分の生き様を刻めるのかと。

    俺は彼女達に懇切丁寧に語り尽くした。その不安を取り除き、背中を押してあげた。俺の
   風来坊としての生き様が、ここで大きく役立つ事になる。



ミスターT「クソ暑いな・・・。」
    午後の日が陰った頃に、本店レミセン前に打ち水を行う。これで幾分か涼しくなるだろう。
   それにしても暑い・・・。その分訪れて飲み物を飲むお客さんが多いのは幸いだが。

シューム「お疲れ様、一服どう?」
    店内に戻るとカウンターにいたシュームが煙草を渡してくる。彼女も合間を見ては一服する
   癖を持つ。シンシアと同じく、煙草を吸う姿は実に色っぽい。
シューム「ますます色男になってるわねぇ。」
ミスターT「それは皮肉かね。」
   紅茶を飲みながら雑談する。お客さんがくれば双方で対応し、落ち着けば再び雑談の繰り返し
   である。

    ちなみに本店レミセンでは、厨房はメルデュラが取り仕切っている。シンシアはと言うと、
   駅ビル内部の喫茶店のマスターとして動いている。デュリア・シンシアR・シェイナと一緒に
   動く事が多かった。

メルデュラ「シュームさんは目標とかはあるのですか?」
シューム「私は新たな人生を喫茶店のマスターとして捧げるわ。主婦を片手にパートをして3人を
     養っていたけど、マスターとしてなら安定して動けるし。」
メルデュラ「偉大ですよ。自分では両方はできるかどうか・・・。」
シューム「できるかどうかじゃなく、やるかやらないかでしょ。切羽詰ったら突き進むしかない。
     我武者羅に突き進め、それしか打開策がないからね。」
    シュームの原点回帰も燦然としている。己の進むべき道を明確にして、それに向けて只管
   突き進む。俺も見習いたいぐらいだ。
シューム「でもね、昔の私じゃ無理だったかな。今の私だからできるの。ミスターT君には色々と
     助けて貰ってる。だから負ける訳にはいかないからね。」
ミスターT「フフッ、ありがとな。」
   少なからず俺が背中を押している事になるのは確かだろう。それが彼女の原動力になっている
   事は、実に誉れ高い事である。俺の存在も無駄ではなかったという事だな・・・。

シューム「貴方も恋をしなさい。恋をした女ほど強い女はないわ。メルデュラちゃんも少なからず
     彼を好いているのでしょう。なら我慢する事なんかないわよ。」
ミスターT「またそっちに話を持っていく・・・。」
    メルデュラに恋をしろと断言するシューム。既に2回も恋路を体験してるだけに、彼女の
   発言は怖ろしく説得力がある。
   俺自身もエシェラや他の4人と関わる事で、ここまで心身共に強くなれた。道筋はタブーだと
   しても、経験は決して間違ってはいない。
メルデュラ「・・・私は構いませんよ。」
シューム「ほら、本人からお墨付きじゃない。ここは私に任せて、今からデートにでも行きなさい。
     そしてそのまま一晩共にしなさいよ。拒否は許さないからね。」
ミスターT「お・・仰る通りにします・・・。」
   凄みのある発言に圧倒されて、ついつい了承してしまった。端から見れば異常とも思える考え
   だが、その心はどこまでも純然だ。

    メルデュラが厨房をシュームに任せると、俺を引っ張り本店レミセンを出た。メルデュラも
   腹が据わったのか、それが行動に切々と現れている。というか彼女は積極的だったのかね。
   まあ半分以上はシュームに背中を押されての勢いではあるが・・・。



メルデュラ「ごめんなさい。こうでもしないと五月蝿かったでしょうから。」
    行く宛てもなく駅前商店街を彷徨う。その中でメルデュラが語る。先程の勢いは彼女なりの
   配慮だったようだ。
ミスターT「それは慣れてるからいいけど、お前の方はどうなんだ?」
メルデュラ「先程言った通りです。」
ミスターT「分かった、なら遠出するか。」
   俺達はエリシェが住むマンションへと向かう。そこの地下駐車場にあるハーレーサイドカーを
   使う事にした。当然免許を持っていないメルデュラはサイドカー側に、運転は俺の役目だ。



    やはりハーレーサイドカーは回りの視線を釘付けにするのは十分だった。信号待ちでは語り
   掛けてくる人までいる。ハーレーはともかく、サイドカー自体がそんなに珍しいものなのか。
   実に不思議でならない・・・。

メルデュラ「マスター、私も大型自動二輪免許を持っていますよ。」
ミスターT「何だよ、早く言ってくれればいいのに。」
    環七の長い信号待ちで待っていると、徐に語り掛けてくる彼女。どうやら免許は持っている
   ようだった。しかも大型自動二輪となれば運転できる。

    信号待ちから進み出て、近くの途端で停車する。それは例しに運転すると言い出しており、
   ここは彼女に任せてみた。


ミスターT「ほほっ・・上手いじゃないか。」
メルデュラ「でも乗ったのは2年振りですよ。」
    今度はサイドカー側に乗車してメルデュラの運転を体験する。2年振りとは言うが、その
   運転は非常に安定している。自然体での運転とも言うべきか。
メルデュラ「2年前にシンシアさんに催促されて取ってみたのです。教習所通いでしたが、卒検も
      学科も一発で合格して。」
ミスターT「凄いな・・・。俺なんか卒検前の見極めで転倒して教官を驚かせて、学科では2回も
      落ちた。2回目を落とした時は本当に落胆したよ。」
   懐かしい思い出だ。まだ風来坊に出る前の事だったな。当時の出来事は今も昨日の事のように
   憶えている。
ミスターT「これならメルデュラに甘えられるな。」
メルデュラ「もうっ・・・、あまり期待を掛けないで下さい・・・。」
   俺がエスコートするつもりで出てきたのだが、これだと彼女に任せても問題なさそうだな。
   体躯がいいメルデュラ故に、ハードな風格のハーレーをいとも簡単に操って見せている。


メルデュラ「ところで、どちらに向かいますか?」
ミスターT「このまま環七を下って葛西臨海公園まで頼む。」
メルデュラ「なるほど、了解しました。」
    俺の一言で彼女は把握したようだ。葛西臨海公園はデートスポットとしてはこの上ない程の
   場所である。過去に躯屡聖堕の一件があり、その後エシェラとデートしたのも懐かしいな。

    あれから3年が経過か・・・、本当に長いようで短かった3年間だった・・・。

    後半へと続く。

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