アルティメットエキサイティングファイターズ・外伝 〜覆面の風来坊〜
    〜第3部・第5話 共にある1〜
    メアディルの妊娠には驚かされたが、今までの布石を考えれば驚く事はない。それに周りは
   家族が増えると大喜びである。特にリュアとリュオが一番喜んでいた。

    2人の場合は小さくとも偉大な母と言える。シュームやリュリアを超えた、ある意味少女版
   ヴァルシェヴラームと言えるだろうか。

    齢12歳の双子が他の娘達を一手に引き受けている姿を見ると、彼女達こそ第3の偉大なる
   母と言えるだろうな。


    まあ実際に活躍しだすのはもう少し先の話。今は実践訓練を踏まえた育児を任せよう。無論
   俺の方も父親として接していかねば・・・。

    今後が大変でもあるが、毎日が充実した日々になっていきそうだ。彼女達に感謝しなければ
   ならないな・・・。



    不当にも逮捕されたヴァルシェヴラームは、東京拘置所に移された。過去に彼女と一緒に
   遊んだ憶えがある、小菅の下水処理上は直ぐ近くである。

    それと彼女自身から連絡があり、こちらは心配するなと語ってきた。それもその筈、彼女の
   存在はシークレットサービス・警察機構の元祖を築き上げた存在だ。拘置所を管理する人物達
   も彼女の事をまるで神を崇めるかのように接していると言う。

    それに不当な逮捕の方は運営陣も怒りを顕にしていた。しかし現状打開にはこの流れが強烈
   な一手を出せるとして、ヴァルシェヴラームを中心に捕まったと演じだしているという。


    その中で彼女らしいのが、他の囚人達を激励して回っているという。どの様な人でも極悪人
   は存在しない。極悪人を生み出す社会こそ極悪なのだと見定めている。

    そして社会全体を変え行くには、先ずは目の前の人から変革していかなければならない。
   それを成し得て行く時こそ、全てにおいて素晴らしい世の中に至っていくのだから。

    故に刑に服する彼らを最大限労い続けた。孤児院の覇者たる彼女からすれば、相手が大人
   でも全く関係ない。ウインドとダークHから我が子のように接している姿だと聞かされた時、
   過去の思い出が鮮明に甦っていったわ・・・。


    ヴァルシェヴラームの方は大丈夫そうだ。それに今は態と警察官に暴行を加えたとして、
   逮捕されたユリコYが彼女と共にいる。その暴行を加えられたという警察官は、あのリュリア
   の事なのだがな・・・。

    ユリコYの戦略には本当に頭が下がる思いだ。全くもってやる事が逸脱している。シューム
   もこの事には呆れていたが・・・。



メルデュラ「2社の動きは停滞気味ですね。シェヴ様の逮捕でこちらの動きを待っているようです。
      全く進展しない状態に、さぞかし腹を立てている事でしょう。」
ミスターT「シェヴを拘束する事は不可能だという事が分かっただろうね。」
    偉大なる母、そして原点回帰の存在。彼女こそ元祖風来坊と言える。そのほぼ自由奔放な
   彼女を拘束する事など不可能だわな。そんな時に怒りを顕にした俺は、フルプレとフルエンに
   踊らされた形になるだろうか・・・。
リュリア「シェヴさんが涙を流して喜んでいましたよ。貴方がウインドさんとダークHさんに矛先を
     向けて激怒した事で、自分をどれだけ慕ってくれているかと感激してました。」
ミスターT「今となってはウインドとダークHに悪い事をしてしまったよな・・・。」
リュリア「ん〜、でもないと思います。あの激昂の後、お2人が凄まじい程に肝っ玉が据わったのを
     感じましたし。今まで苛立ちを見せていた姿が一切なくなって、まるで不動明王の如く
     静かに動いてらっしゃいますから。」
ミスターT「う〜む・・・そういうものか・・・。」
   俺の殺気と闘気を目の当たりにした女性は、例外なく凄まじい力を手に入れる。シュームや
   リュリアが語っていた通り、ウインドとダークHは計り知れない程の力を手に入れたと言える
   だろう。

ミスターT「ユリコYとの演技も見事だったよな。」
リュリア「ああ、アレですか。よく時代劇で悪代官が女性の腰帯をグルグル回すみたいな感じで演じ
     ましたよ。それを拘置所の前でやったのですから、ユリコYさんの肝っ玉は凄いです。」
    う〜む・・・目的のためなら手段を厭わず、か。流石は元暴走族・躯屡聖堕のメンバーだ。
   それに女性ならではの武器を最大限使っている。これには到底敵わない・・・。
リュリア「私達の連携を馬鹿にするなですよ。」
ミスターT「そうだな、マイナス面以外の行動なら徹底して貫いた方がいいかも知れないわ。」
メルデュラ「相手が相手ですからね、特効薬になるでしょう。」
   ヴァルシェヴラームの逮捕劇に現を抜かしている今がチャンスかも知れない。何らかの汚点を
   掘り起こせれば、そこから突破口が開けていけるだろう。だが相手も一筋縄ではいかない。
   十分注意しね行かねばな・・・。



    普段通りの生活を続ける。しかし水面下ではフルプレとフルエンの2社に対しての反転攻勢
   を巡らしていた。殆ど拠点となるのが本店レミセンで、2階のコンピュータールームは言わば
   指令部とも言える。

ナイラ「こんにちは。」
ミスターT「よう。」
    そこに平西財閥の副社長、ナイラが訪れた。本来なら護衛を付けるべきだろうが、今日は
   彼女単身である。
ナイラ「シェヴ様の一件は頭に来ますよね・・・。」
ミスターT「こちらへの揺さ振りだからね。一時踊らされたが、今は大して気にはしていないよ。」
   リュリアがカップに入った紅茶を差し出してくる。それに小さく頭を下げて飲むナイラ。その
   仕草はエリムとエリアを彷彿とさせる程の丁寧な姿である。

ナイラ「ウエスト様とサイバー様には色々とアドバイスを頂いています。私達だけでは無理であった
    部分も、的確な指摘をして下さってますので。」
ミスターT「その分、俺の方が非番が多くなってるけどね。」
    皮肉を込めて語ると苦笑いを浮かべるナイラ。最近はとにかく本店レミセンの待機が多い。
   マスターとしての活動も5人の妻達が担ってくれているため、こちらへのオファーは余程な事
   がない限り訪れない。
   新たに生まれた娘達はリュアとリュオが中心となり、エシュリオスとエフィーシュが臨時の
   母親を担ってくれていた。
リュリア「兄さん、ナイラさんの身辺警護をされては?」
ミスターT「いや、今の彼女達のお守り役はウエストとサイバーが担ってくれているよ。体術・知識
      共に優れた猛者だからね。俺の出番は殆どないわ。」
ナイラ「恐縮ながらそうなってしまいます。」
   最近、リュリアが心配している。俺が自宅待機が多いため、何らかの働き掛けを行ってくる。
   しかしそのどれもがお役ご免であるため、本当に非番が多いのだ。

ナイラ「ですが、シューム様が仰っていますよ。向こう1年はメアディル様に付き添うのだと。」
ミスターT「あ・・ああ・・・そうか、そうだったわ・・・。」
リュリア「兄さん・・・やり過ぎです。」
    ナイラが軽く茶化し、リュリアが強く茶化してくる。これには苦笑いを浮かべるしかない。
   あと数ヶ月すればメアディルのお腹も膨らんでくるだろう。それに突然の悪阻が一番の大敵と
   言える。今の非番の時こそ、メアディルを支え抜く事が大切なのだろうから。
リュリア「リュアとリュオが家族が増えるのだと喜んでましたよ。他の10人の娘さん達を一手に
     引き受けていますから。」
ミスターT「あの2人は保母か孤児院の母が似合うわな・・・。」
ナイラ「後継者がいらっしゃるのは嬉しい事ですよ。」
   第3の偉大なる母、か。リュアとリュオには十分素質はあるだろう。赤ん坊の時からも色々と
   苦労してきたが、その力が開花したとも言えるわな。

ミスターT「何かあったら連絡してくれ。直ぐに駆け付けるよ。」
ナイラ「了解です。」
    語り終えてナイラと握手を交わす。そう言えば彼女、少し大きくなったんじゃないかね。
   まあ初めて会ってから半年が経過している。まだ10代なのだから、その成長力は凄まじい
   ものだろう。
リュリア「またナイラさんの胸ばかり見てる・・・。」
ミスターT「お前なぁ・・・。」
   ナイラの体躯を見ていたら、傍らにいるリュリアからヤジが飛んでくる。それに顔を赤くして
   恥らう彼女。今ではリュリアもシュームと同じ姉御的な風格を醸し出していた。
メルデュラ「そんなに胸がいいのなら、私のを見ていればいいじゃないですか。」
   同じくメルデュラがヤジを飛ばしながら、背後から俺を抱き締めだした。態とらしく胸を背中
   に当てながら、自慢の豊満なボディをぶつけてくる。
リュリア「今夜は啜り取ってあげますから、覚悟して下さい・・・。」
メルデュラ「そうねぇ〜・・・。」
ミスターT「お・・お手柔らかに頼むわ・・・。」
   2人の妻に嫉妬されながらも、その愛情ある姿を見せ付ける。それに苦笑いを浮かべるも、
   優しい表情になっていくナイラだった。


メアディル「マスター・・・何をしているのですか・・・。」
    そんな俺達に嫉妬したのか、寝室から出てきたメアディルがエラい形相で睨み付けてくる。
   それに俺達は青褪めてしまった。
ミスターT「い・・いや・・・その・・・。」
メアディル「お姉様方とのスキンシップは構いません。ですが私を差し置いての行動はするなと強く
      言ったじゃないですか・・・。」
   こ・・怖すぎる・・・。その雰囲気がアメリカ人の血によるものなのか、それとも彼女独自の
   ものなのか。この嫉妬心は尋常じゃないぐらい強い。
メアディル「今日は絶対に寝かせませんから・・・。」
ミスターT「わ・・悪かった・・・。」
   う〜む、何というか・・・。俺と本当の意味で夫婦となった彼女は凄まじく強くなった。特に
   一時的に俺を独占したいという一念が強く感じる。

メアディル「・・・フフッ、冗談ですよ。」
    一気に修羅場へと発展しだしたこの場。するとメアディルが冗談だと告げた。それに俺達は
   一気に力が抜けていく。それだけ彼女の潜在能力が凄まじいという裏付けだろう。
ミスターT「お前の怖さはシュームをも凌駕しているからなぁ・・・。」
リュリア「若い故に成せるものでしょうね。」
メルデュラ「全盛期のラフィナさんを彷彿とさせますよ。」
   それぞれに感想を述べると恐縮しだすメアディル。先程の威圧は嫉妬心によるものだろう。
   元来彼女は本当に優しく大人しい女性なのだから。


ナイラ「それでもメアディル様には大変お世話になっています。まだまだ弱い私達の財閥を陰から
    色々と支えて下さっていますから。」
メアディル「それは言わない約束ですよ。私達の強く願う大願は三島ジェネカンと躯屡聖堕チームに
      回帰します。そして私達がこうして巡り会えたのも、他ならぬマスターのお陰なのです
      から。」
    ごく自然的に俺に抱き付いてくるメアディル。流石は日本人とアメリカ人とのハーフだ。
   というか言動自体が日本では考えられないものだわ。流石はアメリカ式のコミュニケーション
   と言うべきだろうな。
ナイラ「お生まれになるお子さんも、メアディル様と同じ可愛いお子さんになられるのですね。」
メアディル「いや〜どうかなぁ・・・。幼少の頃はかなりじゃじゃ馬でしたから・・・。それに男気
      も強かったので、マスターの熱血漢が前面に出ると思います。」
ミスターT「まあでも、リュアとリュオには遠く及ばないと思うわ。あの2人は俺達が束になって
      掛かっても勝ち目はないよ。」
リュリア「フフッ、言えてます。じゃじゃ馬娘まっしぐらですから。」
   自他共に認めるじゃじゃ馬娘なリュアとリュオ。その凄まじさはメアディル自身も十分認めて
   いる程だ。あの2人がリュリアぐらいの年代になったらどうなるのか。先が怖ろしくもあり、
   実に楽しみでもある。

ミスターT「今後はナイラやメアディル、それに娘達の時代だ。俺らにできる事は最後まで完遂する
      つもりでいなくてはね。」
メルデュラ「愚問です。自分自身の生き様を刻むまでですよ。」
    改めて自分達の進むべき道を振り返る。メルデュラの言葉に俺達は力強く頷いた。今後の
   俺達次第という事になるのだから。ある意味重役であろうな。



    メアディルの肝っ玉の強さには驚かされた。出産に関してはシュームは2回の経験をして
   いるが、その2回目でも多少の弱音は吐いている。またエシェラ達の場合はかなりの弱音を
   吐いていた。

    しかしメアディルは初めての悪阻ですら、全く弱音を吐かなかったのだ。これには12人の
   妻達は驚愕していた。それにどの様な状況であれ、自分自身の苦しみから一切逃げずに真っ向
   勝負でぶつかっている。

    メアディルの肝っ玉の強さは、ある意味リュアとリュオを超えていると言える。特に女性
   としての強さは彼女がズバ抜けていると言える。


    俺に対して全力で女性として・妻として戦うと言っていた事が脳裏を過ぎった。彼女自身が
   それを有言実行していると断言できる。

    そんな彼女の力強さに、他の12人の妻達も奮起しだしていた。流石は同性パワーだわ。



    相変わらず非番が多いこの頃。それに子供達の面倒はリュアとリュオが見てくれており、
   メアディルはメルデュラとシュームが交互に気遣いをしてくれていた。俺は屋上ハウスでの
   行動が多く、最近は就寝以外は必ずここにいる。

セルディムカルダート「こんにちは。」
ミスターT「ん・・・あら、叔母さん。」
    小さな庭園にある草花の世話をしながら午後を迎える。ヴァルシェヴラームの情報は、現地
   で潜入護衛をしているユリコYから聞かされていた。今は待つしかない。
   そこに不意の来訪者が訪れた。ヴァルシェヴラームの妹分であるセルディムカルダートだ。
セルディムカルダート「あらって・・・暢気ですねぇ。」
ミスターT「ジタバタしても、奴等の思う壺ですし。ここは普段通りの生活で、活路を見出すのが
      得策ですよ。それにシェヴもそう願っていますし。」
セルディムカルダート「それはそうですが・・・。」
   ヴァルシェヴラームとは異なり、セルディムカルダートは超が付くほどの熱血漢だ。今の現状
   に一番苛立ちを抱いている人物であろう。それに彼女は実際の血の繋がりがある姉妹同士なの
   だから。


セルディムカルダート「何か・・・姉さんの孤児院にいる気がします。」
ミスターT「シェヴとナツミYUの影響ですよ。」
    セルディムカルダートが屋上庭園を見て回る。その雰囲気はヴァルシェヴラームの孤児院と
   殆ど同じである。それに俺自身彼女の直系の弟子という事もあり、こういった部分が似偏って
   いるのだろう。
セルディムカルダート「フフッ、流石姉さんの愛弟子です。それにありがとう、何時も姉さんを心
           から慕ってくれて。」
ミスターT「彼女がいなければ俺はいません。いたとしても別の道を歩んでいるでしょう。全ては
      シェヴがいたからこそ今がある。俺の心から敬愛する恩師ですよ。」
   姉を褒められ感無量のセルディムカルダート。この部分は流石姉妹であろう。それに年齢も
   5歳しか違わない。彼女も外見の老化が30代で停止する特異体質で、この姿で91歳と高齢
   なのだから。

セルディムカルダート「私がもっと強ければ、このような事にはならなかったのだけど・・・。」
ミスターT「大丈夫ですよ。ディムはディムで自分の生き様を精一杯貫いています。それがシェヴに
      とって何よりの活力であり希望ですから。」
    珍しく弱音を吐く彼女。シュームやシンシアから聞かされるセルディムカルダート像は、
   絶対に屈しない阿修羅のような戦女というもの。しかし今の彼女はエリシェが本音を漏らした
   時と同じ雰囲気である。
ミスターT「それに貴方には言い表せられない思いがあります。シュームやシンシアを幼少の頃から
      面倒を見てくれていた。彼女達の夫としては、本当に感謝の思いで一杯です。貴方は
      俺のもう1人の大切な母ですから。」
セルディムカルダート「そう言ってくれると嬉しい・・・。」
   その場で泣きだすセルディムカルダート。本当は姉が不当に逮捕され、居ても経ってもいられ
   ない思いだろう。


    彼女と初めて会ったのは5年前のウイルス事変だが、それからまるで親子のように接して
   きている。それ以前にも何度か会っていたが、実際に親しくなったのは5年前からだ。

    流石のシュームやシンシアも、セルディムカルダートの前では赤子同然だ。2人の乳母でも
   あり、育ての親なのだから。


    それに最近窺えたのが、ヴァルシェヴラームと一緒にいる時の明るさである。実際に血の
   繋がりがあるからか、2人が揃うと非常に明るくなる。お互い心から信頼し切っているという
   のが窺えた。

    ヴァルシェヴラームもそうだが、セルディムカルダートも大切な恩師であり母親である。
   彼女も支えていかねば失礼極まりないだろう。



セルディムカルダート「・・・姉さんが言ってた事が分かりました。貴方といると心が安らぎます。
           それは貴方に内在する深い慈愛の一念からなるものでしょう。」
ミスターT「まあ・・・今は周りに引っ張りだこですがね・・・。」
    流石はもう1人の恩師である。泣く所は徹底的に泣き、立ち直る所は直ぐさま立ち直るの
   だから。この部分はヴァルシェヴラームにはない長所と言えるだろう。
セルディムカルダート「貴方が本気で相方さんを愛したら、相手は一生涯貴方の元から抜け出せなく
           なると思います。貴方が常日頃から自分の生き方を貪欲なまでに力強く貫き
           通しているからこそ、周りが愛して止まないのです。だからこそ貴方を心
           から慕っているのですから。」
   静かに立ち上がると、そのまま俺の胸に抱きついてくる。この一瞬の隙を見せる姿は、姉と
   全く同じであろう。その彼女を優しく抱きしめ返してあげた。
セルディムカルダート「シュームもシンシアも見違えるように強くなりました。それに玄関先で応対
           してくれたメルデュラさんやメアディルさんも、吸い込まれるかのような
           優しい雰囲気に満ち溢れています。それも全て貴方がいらしたからです。」
ミスターT「ありがとう。」
   胸の中で甘えつつ、静かに語るセルディムカルダート。その甘える仕草はヴァルシェヴラーム
   より強く、幼少の頃は甘えん坊だったのだろうと推測できた。それを面と向かって語ったら
   殺されそうで怖いが・・・。

セルディムカルダート「・・・私は甘えん坊ではありません・・・。」
ミスターT「え・・・み・・見透かされましたか・・・。」
    突然の発言に驚愕した。今思っていた事を見事に見透かされたのだ。自分のマイナスになる
   事に対してエラい反応を示す女性陣を超越している。
セルディムカルダート「何時頃からでしたか、姉さんとは異なる能力が出始めたのは。姉さんとは
           異なり、私は超越した能力はありませんでした。姉さんは見たものを直ぐに
           学べる特質でして、スペースシャトル以外の免許取得も一発で合格を成して
           います。許可さえ下りればスペースシャトルも取れると思いますが。」
ミスターT「なるほど、模写の強さはそこが起源でしたか。」
   俺もプロレスゲームから発端となり、それを見様見真似で繰り出せる力がある。また他の事も
   一度見れば出来るといった長所もあった。母親似という事が十分頷ける。
セルディムカルダート「ですが私は昔から相手が思っている事を把握する事ができます。それにより
           対人関係がギクシャクし、表立っての仕事に着けない状態でしたが。」
ミスターT「でも赤ん坊や小さな子供達の考える事も理解できる。それを長所と取り、孤児院の運営
      をしだした。そうですよね?」
   俺の言葉に絶句するセルディムカルダート。こちらの言葉が的中した事を意味するだろう。
   この相手の考えや出方を読めるのは、ある意味彼女の能力も備わっていると言えるかな。

ミスターT「確かシェヴから聞いた事があります。ディムから孤児院の運営をしないかと持ち掛け
      られたと。それに最初は難癖を付けていたという事でしたが、貴方の一度決めたら必ず
      成し遂げるという一念に同調したのだとも。」
    言葉を失うセルディムカルダートだが、その彼女の頭を優しく撫でると頬を赤くしだす。
   この仕草はヴァルシェヴラームと全く同じである。そう考えると自然と笑みがこぼれる。
ミスターT「自分はシェヴがいたから存在しますが、ディムがいなかったら自分すら存在していない
      と思います。貴方の英断には心から感謝しています。」
   最大限の優しさと敬い、そして感謝を込めての抱擁をする。それに一気に心ここに非ずという
   状態に陥っていくセルディムカルダート。ヴァルシェヴラームでさえ簡単に同じ状態に陥るの
   だから、その妹の彼女なら尚更であろう。

ミスターT「ディムはディムらしく、ありのままの姿で。そして誰彼がどうこうではなく、自分自身
      がどうあるべきか。それが本当の生き様なのですから。」
セルディムカルダート「はい・・・。」
    無意識にこちらに顔を向ける彼女。それは妻達との一時を過ごしてきた俺にとっては直ぐに
   理解できた。静かに唇を重ね合わせる。そこに最大限の労いを込めて・・・。

    後半へと続く。

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