アルティメットエキサイティングファイターズ・外伝 〜覆面の風来坊〜 〜第1部・第6話 盆踊り2〜 それから数日後、盆踊り当日。朝から大規模フリーマーケットとあって、公園は人でごった 返している。エシェラ達も使わなくなった道具などを出している。というよりか、売る物より 買う物の方が多いのはご愛嬌かな。 俺の方も見て回ったのだが、こういったショップを見れば目移りしてしまうのは言うまでも ない。それに出店者さんの懐も潤うし、自然の流れで進むのが一番だろう。 ちなみにフリーマーケットの傍らに模擬店も出ていた。そこにエイラ達が簡易レミセンなる オープンカフェを出したのだ。彼女達のファン以外にも気楽に寄れるとあってか、凄まじい お客さんが来店されていた。 この簡易レミセンの案はトーマスCも呆気に取られるものだったようで、流石は女性なら ではの視点による発案だろう。 時は流れ夕方へ。公園の大広場では盆踊りが始まりだした。恒例の音楽が風に乗って流れて くる。それだけ大規模だというのがよく分かる。 数多くの子供達がごった返す会場。その姿を頬笑ましい目線で見つめながら、一服するのが 堪らなく美味い・・・。 ラフィナ「その暑苦しい姿、どうにかなりませんでしたか・・・。」 ミスターT「夏場でも長袖長ズボンはモットーだよ。」 エシェラ「いいじゃないですか、彼っぽくって。」 エシェラもラフィナも浴衣姿だ。他にターリュ・ミュック、アサミ・アユミも同様である。 ウィンNやウィレナ、ユウNとアイNも浴衣。ユキヤNは俺と同じ普段着だが、断然涼しい 格好である。 ユリコY「ナツミYUさんとシューム先輩も一緒で?」 シューム「偶には息抜きしないとねぇ。」 ナツミYU「そうですよ。」 ユリコYは普段着だが、前見たスーツ姿ではなくタンクトップにミニスカートと女らしい姿。 シュームとナツミYUも普段着だが、彼女に対抗してかミニスカートだ。張り合ったって何に なるんだか・・・。 不思議なのがナツミYUだ。年下のシュームに頭が上がらない雰囲気だ。彼女より断然年上 なのに、これは異様な光景だ。やはりシュームは只者ではない。 リュリア「遊んでくるね〜。」 シューム「ちょっと、アンタ1人で大丈夫?」 ターリュ「見張りならやるよ〜。」 ミュック「小母ちゃん任せて〜。」 小さな浴衣に身を包んだリュリアが脱兎の如く駆け出した。それに慌てるシュームだが、 ターリュとミュックが機転を利かせて付いて行ってくれた。双子の方も幼い雰囲気なのだが、 リュリアを前にしてはお姉さんそのものである。 エリシェ「こんばんは。」 公園の入り口まで行くと、浴衣姿のエリシェが待っていた。紫の生地に黄色い星が描かれた 可愛らしいもの。また長髪を後ろで束ね、それをロール状に纏めている。また普段はしない 化粧までしているためか、今までの彼女とは比べ物にならないほど美しい。 ミスターT「浴衣似合ってるよ。」 エリシェ「あ・・ありがとう・・・。」 頬を染めて礼を述べるエリシェ。普段より大人びいた姿がより一層少女を女性へと引き立た せている。 エシェラ「何よ、私には誉めの言葉も掛けないくせにっ!」 ミスターT「悪い、エシェラ君も可愛いよ。」 エシェラ「何を今更・・・。」 満更でもない、誉められれば嬉しい仕草をしているくせに・・・。これも嫉妬心だろうな。 でも嬉しい事には変わりない、素直に感謝しよう。 アマギH「兄貴も大変だなぁ。」 他の女性陣はそれぞれの出店などを満喫している。ユキヤNは思い人に引っ張りだこだが、 実に嬉しそうである。 俺はと言うとアマギHと近くの椅子に腰を掛け、出店で買った焼そばやお好み焼きを頬張って いる。こういう出店の食べ物は普段のそれと違って格別だ。 ミスターT「誠心誠意応じないとね。」 アマギH「言えてらぁ。」 言葉はまだヤンキー口調が多いが、数ヶ月前の彼とは比べ物にならないほどしっかりしてる。 自分から進んで変革を望んで実践しているため、変わる姿も凄まじく早い。 アマギH「こんな俺達の存在が役立ってる。これも兄貴があの時動いてくれなかったら、実現できな かった。本当に感謝しているよ。」 改めて当時の礼を述べられる。身体を張ったお節介な説得が、ここまで発展していくのには 驚きだろう。変革は些細な事で起こるのだから。 ミスターT「それは言わない約束だ。俺は君の背中を押しただけに過ぎない。変革できたのは、君が 強く願っていたからだよ。」 アマギH「ああ、そうだった。ありがとう。」 自分の願っていた事が実現できた。今の彼は歓喜に満ち溢れているだろう。心配無用という やつだな。 アマギH「もしかしたら町会の会長を任されるかも知れない。」 ミスターT「凄いじゃないか。」 殆ど見ず知らずの人物に、地元の町会長を任される事など在り得ない。それだけ彼の努力 する姿やカリスマ的存在が評価されたのだろうな。 アマギH「俺に担えるかどうか不安だが・・・。」 ミスターT「常々日々に強き給え、だよ。」 アマギH「だね、分かった。」 今の彼ならどの役職だろうが充分担える。自分の原点回帰が明確に定まっているのなら、達成 できない事など絶対にない。 酒ではない小さな飲み会をしていると、何やら後ろの方が騒がしい。振り返ると女の子が 5人の男性に絡まれている。このシチュエーションはエリシェの時と同じか。何とも・・・。 ミスターT「そこ、何やってんだ。嫌がってるじゃないか。」 カキ氷片手にその場へ向かう。アマギHも面白そうだと付いて来た。何なんだか・・・。 しかしこういった抗争には彼の力は打って付けだろうな。 男性2「邪魔するな!」 アマギH「そうはいかねぇ、レディに対して失礼な馬鹿野郎はぶっ潰す!」 焼そばを平らげて強く叫ぶ。彼の場合は間違った奴は徹底的に叩き潰すの意味合いだろう。 だが5人は無謀にもアマギHに殴り掛かってきた。おいおい、相手は・・・。 言わんこっちゃない。自分からは殴らず、相手の力を利用したカウンターで撃退。この方が 正当防衛と主張できるだろう。アマギHもここら辺はしっかりと考えて対応している。流石は 元最強の暴走族のヘッドだ。 男性1「クソッ・・・、テメェ憶えてろよ・・・。この辺で有名な不良グループを敵に回したんだ。 覚悟はできるだろうなっ!」 ミスターT「・・・お前さん、彼の顔に見覚えないのかね。だとしたらとんでもない相手に喧嘩を ふっかけてる事になるんだが・・・。」 男性3「だからどうしたっ!」 男性4「俺様達をなめるなっ!」 なるほど。家に帰らず社会情勢を見ていない連中もいる訳だ。不良グループなら必ずアマギH の顔と所属する躯屡聖堕の名前を知ってる筈なんだが。何だか哀れに思える・・・。 ユリコY「あ、いたいた。アマギH、躯屡聖堕のリーダー格が会いたいって連絡が。」 救世主の到来か。ユリコYが口走った躯屡聖堕という単語を聞いた5人は、案の定青褪め だした。こういった場合は本当に役に立つよなぁ・・・。 男性5「く・・くく・・・躯屡聖堕?!」 男性1「あ・・あの最凶最悪の暴走集団かっ!」 暴走集団・・・、どこでどう間違えて憶えたんだ・・・。だがそれに悪乗りしたアマギHは、 何時になく不気味な表情を浮かべている。 アマギH「な〜に心配するな、今夜出会った事は忘れないだろうよ。さあ・・・楽しもうぜ。」 あ〜あ、ヒール役まっしぐらだ。一目散に逃げていく5人。この場合は可哀想に見えるな。 しかし子供も大人も恐怖に慄く躯屡聖堕の存在。一体どういった経緯でこうなるんだ・・・。 ミスターT「大丈夫か?」 女の子「はい・・・。」 アマギH「あら、ナリカだったのか。」 ナリカ「あ、副会長さん。それにユリコYさんも。」 事が済んでから女の子の安否を気にする。だがアマギHは彼女の事を知っていた。彼女が 話す言葉から、町会関連の人物なのだと窺えた。 ミスターT「知り合いだったのか。」 アマギH「ここの町会の会長の娘だよ。」 ナリカ「あ・・・その覆面、もしかして副会長が言ってた風来坊さんで?」 ミスターT「ま・・まあ、その通りで・・・。」 アマギHが語る。女の子は雷同菜理佳。町会の会長の娘で、彼とはよく会っているとの事。 役員会議などで母親と一緒に出席しているため、その時に知り合いになったようだ。 アマギH「また何で絡まれてたん?」 ユリコY「アンタ、見る目ないねぇ〜。これだけの美人だったらナンパしたくなるわよ。」 ナリカ「ハハッ、相変わらずですね。」 天然なのかどうか、アマギHは異性に対して同性の目線で応対しているようだ。まあ彼の 彼女であるユリコYが男っぽいからなぁ・・・、そう見えても仕方がないのだろう。 ミスターT「で、いいのかアマギH君。リーダー格と会わなくても?」 ユリコY「ああ先輩、あれは嘘。私達の事を言い辛そうだったから吹っ掛けた訳よ。」 ミスターT「・・・何とも・・・。」 ユリコYなりの気配りなのだろう。彼女はアマギHと二人三脚と言える。欠点を補い合って いるからこそ、リーダーとして成り立つのだろうから。 その後アマギHとユリコYはナリカに引っ張られ、一緒に出店を回りだす。それにまるで 兄姉のように接している。その表情は穏やかで、見ている方も癒される。案外子供好きなの かもな。 俺はカキ氷を食べ終わると、そのまま先程の椅子に腰を掛けて一服。3人の間に水を差して は悪い。ここは引くべきだろう。 エシェラ「こらぁ〜、何やってるんですか〜!」 ラフィナ「やっと見つけましたよ。」 エリシェ「一緒に回りましょう。」 いや、俺にもしっかりパートナーがいた。笑顔を絶やさないエシェラ・ラフィナ・エリシェ が駆け付けてくれた。周りの明かりが彼女達の浴衣姿を照らす。不思議な魔法に掛かったかの ように、物凄く大人びいて見える。 その後は3人に引っ張りまわされる。疲れを知らないといった雰囲気で動き回り、流石の 俺でも参った。真女性の強さには敵わないな・・・。 でも構わないか、楽しい夏の一時を過ごせる事に。この場合は素直に感謝すべきだろう。 第1部・第7話へと続く。 |
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