アルティメットエキサイティングファイターズ・外伝 〜覆面の風来坊〜
    〜第3部・第6話 反転攻勢2〜
ナツミYU「また格闘術大会を開こうと思っているんだけど・・・。」
ミスターT「何で俺に聞くんですか・・・。」
    今日は全員が各店舗に出払っているため、本店レミセンの担当は俺1人だけである。そこに
   ナツミYUが来店してくる。俺が決まって出すサンドイッチとシチューをオーダーしてきた。
   彼女もこれが大好きだと言う。
   その中で再び格闘術大会を開こうと切り出してきた。態々俺に相談する事でもなかろうに。
ナツミYU「だってさ、君に相談すればメンツ揃うじゃない。規模を拡大するには私の力では厳しい
      所もあるしさ。」
ミスターT「ご自身の年齢を考えて言ってます?」
ナツミYU「あら、シェヴ先輩やディム姉さんにはまだまだ負けないわよ。それに多少なりとも老化
      は訪れているけど、日々のトレーニングは欠かしていないからね。」
   流石に60を過ぎた辺りから、ナツミYUも初老の兆しが見え出している。今の彼女の年齢は
   63とシュームを超えている。無理無茶が厳しくなりつつある年代なのだから。

ミスターT「まあでも、今の一件が終われば考えましょう。それにアマギHとユリコYの挙式の件も
      ありますし。」
ナツミYU「なら二次会で格闘術大会はどう?」
ミスターT「言うと思った・・・。」
    アマギHとユリコYの挙式も今後の課題だ。その後の二次会に格闘術大会をと切り出して
   くるナツミYU。彼女らしい発言に苦笑いを浮かべるしかない。
ミスターT「まあ・・・上手い具合に調整しますよ。」
ナツミYU「フフッ、楽しみにしてるわね。」
   う〜む、この美丈夫も底なしのパワーを持っている。だからこそ毎日が力強くも楽しく過ご
   せるのだろう。シューム達もこのタイプなのだから、今も無類の力を発揮できるのだろうな。
   真女性には絶対に敵わない。それを改めて思い知らされた瞬間でもあった。


    ナツミYUが切り出してきた格闘術大会は、周りの女性陣に大反響だった。特にメアディル
   が一番燃え上がっている。やはり妊婦期間で動けなかったため、それに対してのいい意味での
   当て付けだろう。

    またこの格闘術大会はアマギHとユリコYの挙式の後に行う事となった。いわゆる二次会の
   催しと言えるだろうか。多分オールスターで揃う事だから、以前よりもヤバい状況になりそう
   である・・・。



    あれから世間は静かになりつつある。2社の回収行動は生活面にも大打撃を与えていた様子
   だった。それがまるで台風の通過した後のような穏やかさである。

    ウインドとダークHの追跡調査は続いている。リュリアとディルヴェズLKが陣頭指揮を
   取り、日本中を駆け回っていた。

    海外は三島ジェネカンとシェヴィーナ財団の合同で特殊部隊を編成するに至っている。特に
   海外では当たり前に懸賞金を掛けられるとあって、その追跡度は尋常じゃないほど強い。


    俺の予測だが、奴等は国内に潜伏している筈だ。海外では直ぐさま問答無用で御用となる
   ため、幾分か緩い日本内の方が生き延びる確率が高いだろうし。

    まあでも、何れ捕まるだろう。国内の警察事情を舐めてはダメだ。俺の身内が3人も参加
   している事だしな・・・。



    メアディルがマスター家業に奮闘しているため、俺の居場所が殆どない。生まれたばかりの
   メアティナとメアティヌはリュアとリュオが面倒を見ている。俺が今できる事とすれば、屋上
   の草花の面倒や地元の清掃であろう。

    各レミセン周りは非番のマスター達が掃除するとあり、俺は中央公園の中の掃除を行って
   いる。またここもゴミが多く、ポイ捨てが今だに行われているのだから。

エリム「こんな所にいらしたのですか。」
    公園内をカートを引いて歩きながらゴミ拾いをしていると、エリムとエリアが訪ねてきた。
   普段の正装の姿とは裏腹に、今はタンクトップにショートズボンと女の子の出で立ちである。
ミスターT「居場所がなくてね。ただ腐っているより、地域に貢献できれば幸いだろう。」
エリア「お父さんらしいです。」
   彼女達もカートの用具入れから軍手を取りだし身に付ける。その後俺と一緒にゴミ拾いを開始
   しだした。今では企業連合の総括も任されているのに、こういった行動をする姿はある意味
   新鮮に見える。

ミスターT「もう22だもんな・・・早いものだわ。」
エリム「そうですね。」
エリア「15・6から企業の運営に関わりだしていますので、大して気にはなりませんけど。」
    2人の自立は高校生になってからと言える。実戦訓練としてエリシェとラフィナの元で修行
   を開始しだしたのだが、それが今では右腕や左腕にもなる存在に成長していた。
ミスターT「全盛期のエリシェを思い出すよ。まだまだ遊びたい年頃だっただろうに、それすらも
      返上して人の為に戦っていたのだから。」
エリム「お母様には敵いません。しかし追い付こうと日々努力しています。」
エリア「お母様からは自分を超えていると仰られますが、私達はまだまだ未熟ですし。」
   畏まる姿はエリシェにソックリなのだが、気の強さは俺に似ているのだろうか。というか娘達
   全員が気の強さが目立っている。先日生まれたばかりのメアティナとメアティヌも、リュアと
   リュオに匹敵する程の夜鳴き娘達として有名である。ここもその繋がりがあるのだろうな。


エリム「初めてお父さんと寝た時を今でも憶えています。」
ミスターT「5年振りに地元に戻った後の、妻達からのアプローチの最中か。」
    ある程度のゴミ拾いを終えて、噴水がある近くで休憩をする。リュリアと初めて出会った
   場所の近くである。エリムとエリアは缶紅茶を啜り、俺は煙草を吸って休息した。
   その中でエリムが初めて会ってから直ぐに打ち解け、添い寝の時の事を語りだした。それに
   うんうん頷くエリア。
エリア「正直な所はうる憶えですが、暖かな胸に抱かれて眠った事だけは鮮明に憶えていますよ。」
エリム「あの時からお父さんだと確信しだしたのでしょう。知らない他所の小父さんに、この様な
    包容力がある方はお会いした事がありませんので。」
ミスターT「そうだったな・・・。ラフィカとラフィヌを除いた10人の娘達の中で、俺にいち早く
      懐いてくれたよね。」
   当時の温もりは今でも鮮明に憶えている。今のリヴュミナとリヴュミヌと同じぐらいの年代の
   2人の温もりである。それが今では大企業の中枢を担うキーパーソンなのだから。不思議な
   話であろう。

ミスターT「妻達もそうだが、お前達も含めた娘達全員を心から誇りに思う。それぞれの生き様を
      刻み、そして人の為に尽くしている。テメェの生き様を刻む事こそが、周りへの激励に
      繋がるのだから。」
    約1年間の拘置所生活は、俺の生き様と信念と執念に多大な影響を与えてくれた。今では
   大切な経験だと胸を張って言い切れる。そして家族達も奮起しだした。俺も立ち上がらねば
   意味がない。
ミスターT「改めて心から思う。生まれてきてくれてありがとう、エリム・エリア。お前達と今世に
      巡り逢えた事、そして共に戦える事。心の底から感謝しているよ。」
   目の前の大切な愛娘達に心から感謝を述べた。彼女達がいるからこそ俺も頑張れるのだから。
   俺の言葉に涙ぐむエリムとエリア。この言葉は彼女達の生き様を褒め称えた事にも繋がる。

    膝は折れないわ、絶対にな・・・。



エシェラ「眠いわぁ・・・。」
    今し方帰宅すると、カウンターで伏せているエシェラ。ここ最近彼女を含め、ラフィナ・
   エリシェ・シンシアが凄まじい活躍を見せている。更にダーク・ウィレナ・トモミもそうで
   あった。総合的に教育関係に繋がっているため、1日が死闘の連続のようである。
ミスターT「過労でぶっ倒れるなよ。」
エシェラ「大丈夫ですよ。しっかり弁えて動いていますから。」
   あの少女だったエシェラも、今年で47歳と中年層に差し掛かっている。今が一番燃え上がる
   年代だろうが、それでも老化による外見の衰えは痛々しい。
エシェラ「エシェアとエシェナがね、私の仕事を継ぐと言ってくれたのよ。辛い日々だったけど、
     戦ってきてよかったって思った。」
エリム「エシェラ伯母様の生き様に感銘されたのですね。何よりも伯母様の大切な娘様方ですよ。
    貴方の存在全てを心から誇りに思っていらっしゃいます。」
エリア「私達も負けてられません。お母様や皆様を支えられる存在として頑張らねば。それにヴェア
    お姉様と同じく、私達も透明な覆面を着けた風来坊なのですから。」
ミスターT「お前達なら何だってできるさ。」
   エリムとエリアの頭を優しく撫でる。背丈はかなり大きくなったため、若干無理があるもので
   あるが。それでも俺の労いに笑顔で見つめ返してくる2人であった。

エシェラ「30年前と同じだよね。分け隔てない愛情を注ぐ姿は昔も今も変わらない。それに外見が
     当時のままだもの。」
ミスターT「エシェアとエシェナも、もう少しで全盛期のお前の姿のままで戦い続けるよ。」
エシェラ「その若さの秘訣、分けて欲しいものだわぁ。」
    エシェラもシュームと同じく、自身の老化に悩まされだしている。それを思う原因は、俺や
   娘達全員が老化が訪れない外見を有しているからだろう。特に母であるヴァルシェヴラームや
   セルディムカルダートが顕著にある。
メアディル「エシェラさん、それこそ心にはシワを作らないですよ。」
エシェラ「そうねぇ〜。」
ミスターT「メアディル流に言えば、ザ・ブレイブハートだな。」
エリム「お父さん、それはちょっと反れているかと・・・。」
エリア「何時もの事ですよ。」
   何げない言葉でも、それが違っていればフォローするエリムとエリア。この直ぐさま突っ込み
   を入れてくれる姿は、流石のヴェアデュラやリュア・リュオにはできないものだ。それだけ
   2人の知識の高さと敬う心が強い表れだろうな。

    う〜む・・・何か親馬鹿になってるようだわ・・・。何とも・・・。



    雑談を繰り返していると、来店してくる人物があった。そちらに顔を向けると、我が目を
   疑った。そこには約2年前までは病床にあったナツミAがいたのだ。

ナツミA「マスター、お久し振りです。」
ミスターT「ナツミAなのか・・・。見違えるようになって・・・。」
    初めて自宅で出会った時は、肌は色白で生気がない雰囲気だった。それがどうだろう、今の
   彼女は凄まじいまでの覇気に包まれている。
ナツミA「イギリスでの生活を開始しだした頃は、思うように動けませんでした。しかしウエストと
     サイバーをこちらに派遣した辺りから、ようやく動けるようになりまして。」
ミスターT「今では娘達を凌駕するような覇気の持ち主か。見違えたよ。」
   今年20歳になったばかりの彼女。初めて会った時から、肝っ玉の据わりは尋常じゃないと
   直感していた。それが見事に的中し、今の彼女はシューム達を彷彿とさせる強さである。
ナツミA「ですがまだまだですよ。体調の方もまだ完全とは言えませんので。今後も療養しながら、
     体力強化を図っていきます。」
ミスターT「大丈夫、お前ならやれるよ。諦めなければ0%にはならないからね。」
ナツミA「フフッ、ミツキと同じ事を仰るのですね。その言葉にどれだけ励まされた事か。」
   とにかく凄いとしか言い様がない。ナツミAの据わりの強さは計り知れず、年上のエリムと
   エリアが唖然としている程だ。2人も娘達の中では強い部類に入るのに、それすらも追随が
   できないぐらいのものである。

    ・・・なるほどな。病床の頃は身体を動かせない分、心を強くしていたのだろう。だから
   身体が本調子になるにつれて、心身一体が成し得ていったのだと思える。

    彼女の場合の努力の在り方は、ヴァルシェヴラームやセルディムカルダートを超えていると
   断言できよう。でなければこの雰囲気はそう簡単に出せるものではない。


ミスターT「今後はどうするんだい?」
ナツミA「あと1・2年は療養するつもりですが、少しずつ普通の生活に慣れようと思っています。
     不動産の運営はウエストとサイバーや皆様にお任せしてしまいますが、その分こちらの
     ウェイトレスのお手伝いができればと。」
    カウンターに座るナツミAが語る。その隣にはエリムとエリアがいるが、お淑やかさの部分
   は遥かに凌駕していた。俺は彼女の隣で紅茶を啜る。煙草は彼女にとって害になると思う。
   今は我慢しよう。
エシェラ「若さっていいわぁ・・・。」
ナツミA「何を仰いますか。貴方様も心は若々しいではありませんか。マイナス面の考えを抱くと、
     その分心が老いていってしまいます。常日頃から前向きに、そしてプラス思考こそが若さ
     を保つ秘訣です。」
ミスターT「娘と同じ年代の女の子に説教されるエシェラの図、何ともまぁ・・・。」
   ナツミAに指摘され、恐縮気味になるエシェラ。自分では分かっているつもりなのだろうが、
   周りに振り回されて愚痴を発してしまう。それが老化を促進させてしまうと断言したのだ。
ナツミA「イギリスでの精密検査で分かったのですが、私とミツキ、それにウエスト・サイバー・
     ナッツ・エンルイの4人もマスターと同じく老化が訪れない特異体質のようです。それが
     分かってからは、外見は元より心を若々しく保つ事をしないとダメだと確信しました。」
ミスターT「外見の老化が30代で止まるとは裏腹に、心は老化していくからか。」
ナツミA「その通りです。外見の老化よりも内面の老化が訪れなければ、永遠に若さを保てますよ。
     マスターが常日頃から皆様に仰っていたじゃないですか。常々日々に強き給えと。そして
     心こそ大切にと。」
   何度かの電話連絡で、最大限の激励をし続けた。それを今でも原点として胸に刻んでいる。
   ナツミAの強さはここにあった。

ナツミA「そして何より大切なのが、師匠と共に生き抜く事。ウエストとサイバーから何度もお聞き
     しました。貴方がシェヴ様の不当な逮捕で死刑に遭われるかも知れないと聞いて、自ら
     共にあるべきだと乗り込んだではありませんか。普通の凡人なら、まず考えない事だと
     思います。」
    俺の原点を見定めた発言をする彼女。拘置所にてヴァルシェヴラームと共に約1年間過ご
   してきた事を明確に指摘しだした。
ナツミA「師弟と共に、それがどれだけ崇高な事か。私もシェヴ様の噂は聞いていましたが、貴方の
     ような心から師匠を敬愛する存在は知りませんでした。自らの命を投げ打ってまで恩師と
     共にあるべきだと。貴方は心から尊敬できる方です。その貴方を心から師匠と思える事、
     これが私の一番の活力であり希望です。」
   不意に涙が流れ出す。ナツミAに俺の生き様を指摘され、感極まって泣き出していた。そんな
   俺の右手を両手で掴み、そのまま胸に抱きだした。
ナツミA「貴方は自他共に認めていいほどの素晴らしい方です。素晴らしい師匠に恵まれ、その師恩
     を周りの方々に捧げていく。タブーとされながらも、娘様方を後継者育成にと誕生して
     いった事は素晴らしいと思いますよ。無論、国内情勢からは白い目で見られるでしょう。
     ですが海外では一夫多妻は現実にあります。絶対に間違っているとは言い切れません。」
エシェラ「まあ・・・いざとなったら海外移住をするけどねぇ・・・。」
ナツミA「フフッ、そこは黙ってでも押し通すですよ。リュア様とリュオ様に何度も語られた語句。
     そしてマスターの語句も。誰彼がどうこうじゃない、自分自身がどうあるべきか。それが
     最も重要なのだと。」
   ナツミAの強さは間違いなくヴァルシェヴラームと瓜二つである。セルディムカルダートの
   心の強さにも当てはまる。姉妹の長所と取れる部分を併せ持った、自分が知る中での最強の
   女性だわ。

ナツミA「数年後になりますが、勉学をしながら孤児院の運営をできればと思っています。イギリス
     でも分かりましたが、今後の行動理念は子供達を支える事にあると思いますよ。」
エシェラ「ナツミAさんの仰る通りですよ、心から賛同します。」
    今後の抱負を語りだす彼女。それはヴァルシェヴラームやセルディムカルダートと同じく、
   孤児院の運営に携わりたいと言ったのだ。それに感動しだすエシェラ。
ナツミA「もちろん孤児を無くすという事も大切です。今現在の世界情勢からして、100%達成
     できるとは言い切れません。ですが幸いにも私達は大きな力を持っている。これらを全て
     使い切ってでも、子供達の未来を勝ち取る戦いをすべきです。」
ミスターT「そうだな。お前さんの言う通りだよ。」
   ナツミAの決意と執念は、俺達と何ら変わらないものものだ。むしろ厳しい環境を生きてきた
   ため、自分のような人物を減らそうという決意が伝わってくる。
ナツミA「頑張らないとね。」
ミスターT「ああ。」
   この原点回帰であれば恐れるものなど何もないだろう。既に死闘を潜り抜けてきたのだから。
   何度も言うが、彼女の肝っ玉の据わりは娘達を遥かに凌駕しているわ。

    ある意味、ナツミAこそが孤児院の覇者や偉大なる母と謳われる存在になるのだろうな。
   彼女が真の意味で台頭する時を作るために、ヴァルシェヴラームやセルディムカルダートが
   活躍していたと言える。


    賢人の言葉だが、歴史を築くのは3代目からとも言う。ヴァルシェヴラームから俺達に、
   そして俺達からナツミA達に受け継がれていく。この流れは揺ぎ無いものだろう。

    ますます頑張らねばならないわ。ナツミA達が動き出すその時まで、俺の命を懸けてでも
   守り通し支えねば・・・。

    第3部・第7話へと続く。

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