アルティメットエキサイティングファイターズ・外伝 〜覆面の風来坊〜
    〜第2部・第6話 本当の花火大会1〜
    メルデュラを誘って外出してから2日後。今日は地元地区の花火大会だ。3年前はエリシェ
   が暴漢に襲われそうになったため、最後まで見る事はできなかった。

    今回は親しい友人などを全員彼女の自宅に招待しての花火大会観覧となる。例の如く警察官
   故に渋るウインド達は、上司のライディルに相談の上での非番とした。代理の派出所当直役は
   コウジとコウキに任せる事となる。



    しかし実に賑やかな室内だな。メンツだけでエシェラ・ラフィナ・エリシェ・シンシア・
   シューム・メルデュラ・リュリア・ウインド・ダークH・リデュアス・リューア・テューム・
   ヴァルシェヴラーム・エシュリオス・エフィーシュ、そして赤ん坊のヴェアデュラがいる。
   野郎が俺だけというのが何とも言い難い・・・。

    最近はエシュリオスとエフィーシュもよく訪れるようになった。ラフィナとエリシェの配慮
   からか、現役アイドルだが女性としての行動も目立つ。これはこれでいい事だ。


エシュリオス「今日は外泊許可を貰っていますので、安心していられます。」
ヴァルシェヴラーム「アイドルが外泊とは、回りも驚きでしょう。」
    いや、驚きなのは俺の方だ。おそらく全員泊まるとか言い出すはずだ。そちらの方が俺に
   とっては驚異的なものだ・・・。
シューム「しっかりと応じてあげたの?」
ミスターT「ええ、一応・・・。」
   俺とシュームはバルコニーに出て一服をする。喫煙するのは他にシンシアだけで、周りへの
   配慮も考えての行動だ。
ミスターT「まあ後悔の方が多いけどね・・・。」
シューム「貴方がじゃなくて、私達が構わないと言ってるから気にしないの。逆に私達の方が貴方を
     襲ってると思えばいいのだから。」
   それはそれで大問題なのだが・・・。まあ彼女達の心の癒しになれるのなら、俺は誠心誠意
   応じるべきなのだろう。難しい事だ・・・。



    暫くして花火大会が始まる。遠くの河川敷から発射された打ち上げ花火が、雲一つない夜空
   に咲き誇る。俺は一服しながら花火を観賞する。

    隣にいたシュームは何時の間にか下がり、他の面々と一緒に花火を見入っている。洋間から
   運び出した2つのソファーをバルコニーへと運びだし、そこに全員座っていた。

    飲み物片手に見入る姿はとても色っぽい。女性としての姿を曝け出している。かく言う俺は
   手摺りに持たれながらの出で立ちだ。ソファーに座った方がいいのかも知れないな。



    ソファーの一番端に腰を掛けて花火を観賞。傍らにはヴァルシェヴラームが、その隣には
   エリシェが紅茶を飲んでいる。胸にはヴェアデュラを抱き、その出で立ちは母親のようだ。
エリシェ「明日と明後日は公園で盆踊りですよ。」
ミスターT「今回は早いな。」
エリシェ「花火大会と重ならないように調整したそうです。」
   そう言えばエリシェも地元の町内会の副会長を担っている。会長はアマギH、書記はユリコY
   が担当していた。すっかり毒牙が抜かれた2人は、まるで別人のように優しく気さくだ。
エリシェ「それと、また海へ行こうと思うのですが。」
ミスターT「いいんじゃないか、そこは任せるよ。」
リュリア「やったぁ〜!」
シューム「今回は私達も一緒ですよ。」
ヴァルシェヴラーム「この子達に手を出さないように監視しないとね。」
   何を監視するんだ何を・・・。まあ全員行くのなら賑やかでいいだろう。3年前はエシェラ・
   ラフィナ・エリシェだけだったし。それに現地でシンシアと出会ったのだから。


ヴァルシェヴラーム「一応私から5人の事は話しておくわ。」
ミスターT「ウインド達の事か?」
ヴァルシェヴラーム「ええ、ライディルやトーマスCとかには顔が利くから大丈夫。」
    むむ・・・、どういった経歴で知り合ったのだろう。それに呼び捨てで述べている事から、
   顔見知りじゃなければ話せない事だ。
ミスターT「彼らとはお知り合いで?」
ヴァルシェヴラーム「草創期のシークレットサービスを担ってた事があるわ。子供達を養う上で資金
          入手が必要だったから。」
   何という事だ・・・、彼らとは昔馴染みだったと言う。それに草創期に携わり、鍛えたという
   事から師匠的人物だろう。そうなると不可解な現実が1つだけ存在するが・・・。

ヴァルシェヴラーム「私の歳の事は言わないでよ。」
ミスターT「言わないも何も分かりませんよ・・・。」
    彼女の実年齢は幾つなのだろう・・・。トーマスCでさえ40代中盤だ。その彼が弟子と
   なるなら、ヴァルシェヴラームの実年齢は60代以上となる。
リュリア「小母ちゃんシワないねぇ〜。」
ミスターT「それは聞いちゃダメだ。」
   俺の本心の代弁と言いたげに、リュリアがヴァルシェヴラームの頬を撫でだした。要らん事を
   しだしたよ・・・。竹箆返しが怖そうで、慌ててリュリアを抱きかかえて膝に下ろす。
ヴァルシェヴラーム「いいのよ、周りからも疑われるほどだから。私ね、特異体質みたいなのよ。
          実年齢は71歳なんだけど、外見の若さは30歳前後らしいの。医者からは
          驚かれているわ。」
   俺も素直に驚きたい・・・。71歳で俺達と変わらない美貌を維持している。リュリアが言う
   通り、シワが1つもない。また彼女の発言に周りは驚愕の表情を浮かべている。その美貌は
   正しく異常なまでの美しさだ。

ミスターT「無垢な心を持っているからだと思いますよ。」
ヴァルシェヴラーム「フフッ、ありがと。」
    常識では考えられない現実だ。だが目の前にはそれが存在する。変な理屈や詮索など無用、
   素直に驚けばそれでいい。
ヴァルシェヴラーム「貴方からすれば母なのに、心から好いているのはおかしいわよね・・・。」
ミスターT「心こそ大切なれ、そう仰いませんでしたか。若さを保つ秘訣は、心にシワを着けない
      事です。だからシェヴさんは今の状態を維持できる。」
ヴァルシェヴラーム「フフッ、本当に優しいね。皆さんが好かれる訳だわ。君も心にシワを着けない
          ようにね。」
   そう語ると俺の顔を両手で掴み、そのまま唇を重ねてくる。膝にリュリアがいると言うのに、
   大胆極まりない行動だ。優しくも強い口づけに、暫しの安らぎを満喫するしかない。


リュリア「あ〜、私も〜!」
    ヴァルシェヴラームとの口づけを終えて唇を離す。そこに半ば強引にリュリアが唇を重ねて
   来た。まだ幼さが残る彼女故に、その言動は実に怖ろしい・・・。
リュリア「エヘヘッ、ファーストキスあげちゃったぁ〜。」
ミスターT「こいつめ・・・。」
   勢いで口づけをしただけのようで、濃厚なまでではなかった。まあそこまで真剣な口づけを
   彼女はまだ知らないだろう。

    というか2人の美女から口づけをされた事に、俺と関わりがある6人は物凄い目線で睨んで
   来る。場の流れを把握して貰いたいものだが、多分通用しないだろう・・・。何とも・・・。



    その後の観賞の後、花火大会は幕を閉じる。最後の乱れ打ち上げは凄まじく、夜だという
   のに昼間のような明るさになったぐらいだ。最高峰の見世物と言えるだろう。

    終わった後は恒例と言うべきか、線香花火による手の平の花火大会が始まった。ソファーを
   片付け、一同バルコニーに集まる。そして線香花火片手に真夏の風物詩を満喫しだした。

ミスターT「・・・このまま時間が止まればいいのにな。」
    ふと俺は本音を洩らす。今の瞬間が停止して、永遠と言える時を過ごせれば幸せであると。
   だがそれは不可能でもあり、停滞は己の破滅を導く事になる。
ヴァルシェヴラーム「それこそ心こそ大切なれ、よ。私達の心を何時までも若く保てれば、死ぬまで
          の間は永遠を保てるわ。」
ミスターT「ですね・・・。」
   手の中で静かに光る線香花火を見つめ、俺は一時の安らぎと幸せに感謝した。今その瞬間を
   大切に。正しくその通りである・・・。

    今も続く小さな花火大会を、その一時を心の記憶の1ページに深く焼き付けた・・・。



ミスターT「しかし・・・広いな・・・。」
    小さな花火大会を終えて、一同室内へと戻る。リビングの広さもそうだが、各部屋の数も
   普通では考えられないほど多い。風呂も3つあり、まるでホテルを彷彿とさせる。
エリシェ「ここ最上階は二部屋構成なのですが、父が専門家に依頼して1つにくっ付けたのですよ。
     お陰で1人で住むには広すぎで・・・。」
シンシア「私が住ませて貰ってる部屋も広いしねぇ・・・。」
   下位の部屋にシンシアが住む。ここの半分の広さだが、それでも十分な広さである。


ウインド「そう言えば、マスターがお住いのアパート。耐久性の問題で解体されるとか?」
ミスターT「ああ、来月強制立ち退きになるよ。ヴェアと一緒に住む場所を考えないとね。」
    自分が住んでいるアパートは取り壊されるとの事。今後はそこに新しいマンションを建築
   するらしいが、自分は新たな場所を探さねばならないだろう。
ミスターT「ヴェアが大きくなりさえすれば、後はどこでも不自由なく過ごせるだろう。今から大凡
      16歳前後までは一緒に過ごさないとね。」
   高校進学頃から独り立ちすると予測できる。それにナツミYUの女子高はバイトはOKとも。
   ここに進学しだす頃には、ある意味自立はできるだろうな。

    住居先の事や未来への展望を繰り広げていると、エリシェがこちらに近付き真剣な眼差しで
   見つめてくる。
エリシェ「で・・でしたら、こちらにお住まい下さい。ヴェア様の面倒も見れますし・・・。」
   幾分か頬が赤くなっているが、それでも表情は真剣そのものだ。これには驚くが、彼女の熱意
   が切々と伝わってくる。するとそれに反論しだすは周りの女性陣だ。
エシェラ「ずる〜いっ、私の家も空きがあるからおいでよっ!」
シンシア「私の部屋も広すぎて淋しいのです、よかったら一緒にどうですか?」
ラフィナ「大学進学と共に一人暮らしをしています。住むスペースなら十分ありますよ?」
メルデュラ「あの・・・狭いですが、一緒に過ごしませんか?」
   怖ろしいまでの勢いで迫ってくる。まるで俺を取り合うかのようだ・・・。女性と一緒という
   のは非常に嬉しいが、何とも・・・。


シューム「な〜に誘惑してるのよ、本店の二階が空いてるじゃないの。休憩スペースの場所だけど、
     貴方とヴェアちゃんが住むには十分すぎるわ。」
    俺に詰め寄り懇願してくる5人。応対次第では大変な事になりかねない。どうしようかと
   悩んでいると、シュームが助け船をしてくれた。彼女だけは普通の応対をしてくれている。
   だが実際には本音は一緒にいたいのが実情だろうが、ここは素直に彼女の配慮に賛成だ。
ダークH「そうですね。皆さんとは一番近場ですし。」
ヴァルシェヴラーム「それにあそこのオーナーは君なんだし。」
ミスターT「は?!」
ウインド「知らなかったのですか。本店を建て替える時に私達で相談したのですよ。誰を家主にする
     のかと。トーマスC先輩からのアドバイスで、マスターを選んだ方がいいという事に。」
   これは不在の3年間の間に決まった事だな。本店レミセンの建て替えの件は、俺がアメリカに
   赴いている時にあったのだから。

シューム「四階建てと屋上付きいう計画にしたんだけど、いざ建て上がると誰も住まない事が判明
     してね。君が帰ってきたら聞こうと思ったんだけど、チャンスがなかったからさ。」
ヴァルシェヴラーム「トーマスCが言うには、本店レミセンの土地から建物までの全権は全て君に
          任せてあるそうよ。よかったじゃない、住む場所があって。」
ミスターT「何とも・・・。」
    本店レミセンの所有権は全て俺にあるという事だ。トーマスCが貯めていた資金を全て投入
   してまで建て替えたもの。それを完全に譲る形でいるとも語っている。
リュリア「私もお兄さんと一緒に住むよ〜。」
シューム「だ〜め。」
リュリア「え〜、いいじゃん〜。」
   今年中学生になったばかりなのに、まるで小学校低学年のような発言だ。それはそれで可愛い
   のだが、外見は全く見合っていない。今の彼女の勢いなら襲われかねないな・・・。


ミスターT「シューム、二階の休憩室はそのままで。俺とヴェアは三階か四階に住むよ。」
シューム「それでいいの?」
ミスターT「ヴェアが成人になるまで、しっかりとした環境を維持しないとね。俺はオマケだし。」
    そう語った直後、より一層気迫の篭った表情でエシェラが詰め寄ってくる。それは住居の
   問題ではないのは一目瞭然だった。
エシェラ「馬鹿言わないでよ、貴方はオマケじゃない。今も私の心は貴方一色で染まっているのよ。
     それをオマケと言うなら私達の心もオマケじゃないのよっ!」
ミスターT「悪かった、すまない・・・。」
   彼女は自身を見下すなと懇切込めて語る。それに他の面々も同じように頷いていた。俺の存在
   は凄まじい所まで膨れ上がっている。それを否定するのなら、彼女達をも否定する事になる
   だろう。


エシェラ「・・・まだ私達の愛が足りない証拠かな。」
シューム「そうねぇ〜・・・。」
    う・・・何か嫌な予感がする・・・。2人とも俺を見つめる目線が輝いて見える。今さっき
   の発言は、彼女達にチャンスを与えてしまった事になるか・・・。
ミスターT「・・・ヴェアを風呂に入れてくる。エリシェ、風呂借りるわ。」
エリシェ「あ、はい。こちらへ。」
   上手い口実を見つけて逃げた。それにエシェラとシュームは小さく舌打ちしている。とは言う
   ものの、勢いでヴェアデュラを風呂に入れると語ってしまった。これは押し通すしかないな。

    後半へと続く。

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