アルティメットエキサイティングファイターズ・外伝 〜覆面の風来坊〜
    〜第1部・第7話 海水浴1〜
    盆踊りから数日後、兼ねてから言っていた海へ行く事になった。エリシェの計らいで1泊
   2日の日程に変更。彼女が用意してくれた別荘を使う事になる。悪いから構わないと告げても
   通された。ここは彼女に押し負かされた事になるだろう。


    今回別荘へと赴くのは俺とエシェラ・ラフィナ・エリシェの4人だ。お転婆姉妹、ターリュ
   とミュックは家族と一緒に国内旅行。アサミとアユミはナツミYUと実家へ帰省。ユキヤN達
   は別の日程で海へ行く事になっている。

    アマギHは副会長ではなく会長に、ユリコYは副会長に就任。一気に忙しくなったため、
   夏休みはあの盆踊りが最後となりそうだ。


    現地への移動はトーマスCに借りたキャンピングカー。それも大型トラッククラスの巨大な
   ものだ。後方にハーレーを固定できるスペースがあり、これだけで日本中を回れるだろう。

    着替えなどの道具は事前から用意していたため、直ぐに出発できた。無論車を運転するのは
   俺になる。早く3人に免許を取って欲しいものだ。



エシェラ「う〜ん、ふかふかだぁ〜。」
    後方のソファーに寝転がるエシェラ。これを移動変形させればベッドにもなるから驚きだ。
   アメリカなどの長距離移動の際は打って付けの代物だろう。

ラフィナ「これいいですね〜、何か作ってみようかな〜。」
    ラフィナは車内に装備のキッチンを見てる。彼女は料理も得意らしい。母親と交互に料理を
   担当しているようで、かなりの腕前と直感する。

ミスターT「ほらそこ、あまり飛び跳ねない。それに走行中は料理しなさんな。」
    まるで妹をしっかっているようだ。真後ろ席に座るエリシェを見習って欲しいものだよ。
   今も集中して文庫本を読んでいる。車酔いをするから止めろと言ったが、生まれてこの方一度
   も酔った事がないという。何とも・・・。
エリシェ「いいではありませんか。お2人とも嬉しそうですし。」
ミスターT「料理だけは注意してくれ。走行中に何かあったら、それこそ火の車だ。」
   カーナビに打ち込まれた目的地。それを見る限り、まだまだ時間が掛かる。高速に乗ってから
   僅かな時間だが、まだまだ掛かりそうだ。エシェラとラフィナの勢いはどこまで続く事やら。

エリシェ「そうそう、ビデオカメラとデジカメも持ってきました。」
ミスターT「それで後ろのじゃじゃ馬でも撮っててくれ。」
エリシェ「フフッ、そうします。」
    早速行動しだすエリシェ。それ見た2人は逆に嬉しそうに写りたがる。出会った頃にあった
   お淑やかさは一体どこへいったのやら・・・。

    この半ば託児所と化した車内は、別の意味で賑やか過ぎる。まあ現地に到着するまでの暇
   潰しには打って付けだが・・・。



    それから1時間後、目的の別荘へと到着する。別荘とは言ってもホテルに違いなかった。
   場所は以前ラフィナと一緒に行った神奈川は三崎の手前、三浦海岸だ。なるほど、エリシェに
   とっては運営するホテル自体が別荘とも言える。お嬢様の特権だろう。

オーナー「エリシェ様、ようこそいらっしゃいました。」
エリシェ「よろしくお願いします。」
    支配人自ら出迎えてくれている。しかも複数のメイドさんも一緒だ。この場面を見れば、
   改めてエリシェの存在が凄いと分かる。

エシェラ「うわぁ〜、凄い〜っ!」
ラフィナ「フロアに噴水がありますよ〜っ!」
    こちらはこちらでじゃじゃ馬そのものだ。まあこれだけ待遇が凄いなら、普通の女の子なら
   驚くわな。かく言う俺も圧倒され続けているが、何とも・・・。



エシェラ「凄〜いっ、海を一望できるよっ!」
ラフィナ「うわ・・・ちょっと高い・・・。」
    案内された部屋は最上階の超高級スウィートルーム。部屋の飾りから家具などは超一級の
   代物ばかり。そしてエシェラが驚いているのも無理はない。部屋を出たバルコニーからは、
   目の前の海はおろか遥か水平線まで見渡せる。これは贅沢すぎないか・・・。

エリシェ「よかった、喜んで頂けて。」
ミスターT「いいのか、こんな高級な部屋を使っても。」
エリシェ「大丈夫ですよ。それにこう見えても、全部屋は格安なのです。」
    そう言うとリビングにあるテーブルに置かれている料金一覧表を手渡してくれた。それを
   見て驚く。どの部屋も一般の旅館並の値段で宿泊できるのだ。
エリシェ「これも父母・祖父母の配慮です。どんなに高級な場を設けても、それを使って頂けなけ
     れば意味がありません。それに思い出こそが最高の宝物。楽しい一時を提供できてこそ、
     私達の本当の意味があります。」
   俺は思い違いをしていた。彼女が大人びいているのは、両親や周りの環境に影響されている
   事だけではない。自分が何をすべきなのかを明確に見定めているから、大人びいた目線で物事
   を見れるのだ。彼女はしっかりと原点回帰ができている、しかも自分よりも幼いのに・・・。


    無意識に彼女を抱きしめる。そう、本当に無意識にだ。それに慌てふためくエリシェ。頬を
   赤く染めて焦っている。
エリシェ「あ・・あの・・・。」
   どうしたらいいか分からないといった雰囲気の彼女。しかし半分は俺に抱かれた事により、
   心地良さがでているようだ。顔を見れば分かる。
ミスターT「・・・君の思いは本物だ。人のために尽くしてこそ、人として最高の行動だ。俺なんか
      取るに足らない小物に過ぎない。偉大だよ、エリシェ君は。」
   俺は率直な意見を述べた。彼女こそ俺の原点回帰を彷彿とさせる。いや、生き様と言うか。
   だが彼女の方はその発言を聞くと、真剣な表情で俺を見つめてきた。
エリシェ「そ・・そんな・・・、貴方は小物などではありません。その直向きな優しさで皆さんを
     支えてくれているのですから。もっと自分に自信を持って下さい。貴方の存在は・・・、
     私の心を掴んで離さないのですから・・・。」
ミスターT「・・・ありがとう・・・。」
   優しく頭を撫でる。彼女のお陰で再度原点回帰ができた。彼女の生き様は、即ち俺の生き様と
   全く同じだ。進む道は異なれど、目指すべき場所はお互い同じである。

    人は1人では生きてはいけない。彼女を支えるという事は、俺も彼女に支えられていると
   いう事になるからだ。本当に感謝したい、ありがとう・・・。



ラフィナ「あの〜・・・。」
エシェラ「お取り込み中すみませ〜ん・・・。」
    2人に声を掛けられ我に帰る。エリシェも今の状況を再確認し、赤面しながらそそくさげに
   離れた。
エシェラ「少し目を離せばいちゃついて・・・。」
エリシェ「ち・・違いますっ!」
   あたふたするエリシェだが、俺がした厚意は理解しているようだ。それは無論2人もである。
   でなければ嫉妬深いエシェラとラフィナが黙ってはいまい。

ミスターT「・・・今の瞬間を大切に、か。ありがとうエシェラ・ラフィナ・エリシェ。」
    エリシェをからかうエシェラとラフィナ。その3人に俺は小さく頭を下げた。それに驚いた
   仕草を見せる彼女達。何故頭を下げるのかに理解できないと言った表情だ。まあこれは後々
   分かる事だろう。



    その後遅い朝食を取ってから、本命の海に入る事になった。俺自身泳ぎが苦手なだけに、
   普段着と何ら変わらない出で立ちでいる。正直海やプールはあまり好きじゃない。

エシェラ「いぇ〜い、どうこれ〜。」
    早速現れるは水着姿の3人。エシェラは水色・ラフィナは赤色・エリシェは紫色の水着だ。
   3人とも形状はビキニ、まあ何だ・・滅茶苦茶嬉しい・・・。
ミスターT「に・・似合ってるよ・・・。」
ラフィナ「ありがとう・・・。」
エリシェ「喜んで頂けて嬉しいです・・・。」
   喜ぶも何も野郎の性、これ以上の幸せはない。何ともまあ何ともだわ・・・。

    しかし3人の中でエシェラが一番巨乳だ。その次にラフィナとエリシェが続く。一番小振り
   な胸を持つエリシェでさえ、美乳と呼ばれるほど形がいい。最近の若い女の子は発育が半端
   じゃないな・・・。



    海に入って大はしゃぎする3人。俺は浜辺の椅子に腰を掛け、煙草を吸いながら彼女達を
   見つめた。この瞬間だけは野郎の性に駆られる男としていてもいいのだろう。嬉しい限りだ。

店員「お兄さん、飲み物いりませんか?」
    俺の事をすっかり忘れて遊ぶ3人。その彼女達を見るのが実に楽しい。そんな中、海の家の
   店員に話し掛けられる。そちらに顔を向けると、野球帽を被った女の子がニコニコしながら
   立っていた。
ミスターT「あ・・ああ、コーヒーを頼むよ。」
店員「は〜い、少々お待ち下さい。」
   声からしてラフィナと同年代かそれ以上か。店員には似合わない声色だ。おそらく夏場のみの
   臨時店員だろう。しかし・・・3人を見る目線を気付かれたか、変な顔をしてもいた・・・。


店員「おまちどうさま〜。」
ミスターT「ありがとう。」
    そう言えばコーヒーを飲むようになったのは何時頃からか。それまではスポーツドリンクが
   中心だったが、知らぬ間にコーヒーに変わっている。胃がむかむかするので毛嫌いしていたの
   だが。これも成長の1つだろう。

    コーヒーを飲みながら一服する。喫茶店でもよくやるスタイルだ。これで雑紙とかあれば
   いいんだが、炎天下での読書は目に非常に負担を掛ける。ここは彼女達を見るだけにしよう。
   ずっと見てたとか言われそうで怖いが・・・。



    ふと気付くと海の家の階段の部分で、先程の店員の女の子がつまらなそうに座っている。
   その出で立ちはエシェラ達と何ら変わらない。本当は遊びたくて仕方がないように見えた。

ミスターT「・・・暇そうだな。」
店員「あ、気にしないで下さい。」
    コーヒーカップを店に置くついでに話し掛ける。気にするなとは言うが、顔はしっかり暇で
   あると述べていた。
ミスターT「夏だけの短期バイトか。」
店員「え、どうして分かるのですか?」
ミスターT「行動がギクシャクしている。喫茶店で働いているから直ぐ分かったよ。」
   会話をして直感する。属性からしてエシェラ達とウマが合う存在だと。それでもバイトに集中
   するのは、それなりの決意があればこそか。3人の方も少しは見習って欲しいものだ・・・。
店員「お〜、凄いなぁ〜。あ、私シンシア。貴方は?」
ミスターT「ミスターTだ、よろしくシンシア君。」
   話し掛けられたのが嬉しいのか、瞳を輝かしている。10年前ぐらいの俺だったら、率先して
   アタックするのだが。これも歳相応の抑制か、何だか虚しい・・・。



    彼女の傍にある柱に寄り掛かり一服。そして一時の相手になった。隣に座ろうものなら、
   エシェラ達に要らぬ嫉妬心を向けられるだろうから。

    まあ本心はサボってると思われて、減俸されたら可哀想だと踏んでの事。何気ない雰囲気で
   接するのが一番いいだろう。

ミスターT「なるほど、家計の足しにか。偉いな。」
シンシア「今週には引っ越すので、それまでにはある程度欲しいかなと思ってます。」
ミスターT「そうか、あまり無理無茶しないように。」
    彼女の境遇は俺と同じ孤児。今は駅前の弁当屋で住み込みで働いているそうだ。ある程度
   資金が手に入り、それで新たな天地へと向かうのだという。何となく風来坊に近い。

シンシア「何かお兄さんと会えたの、偶然じゃない気がする。」
ミスターT「ハハッ、気のせいだよ。」
シンシア「ううん、きっとそう。こんなに胸がドキドキした事ないもの。」
    何だかなぁ・・・。まあでも、彼女に一時の思い出をプレゼントできたのは光栄だろうな。
   それに風来坊に近い性質なら、一時の思い出は何よりも大切にさせてあげたい。俺が風来坊で
   生き続けていたからよく分かる。

ミスターT「絶対に自分自身に負けるなよ。」
シンシア「ありがとう、頑張るよ。」
    笑顔で微笑む彼女、その表情を見るとこちらも嬉しくなる。彼女にはこれからも頑張って
   欲しいものだ。その背中を押せた事に誇りに思う。


ミスターT「む・・・、みんなが呼んでる。」
シンシア「うん、ありがとね〜。」
    遠くで俺を呼ぶ3人。シンシアに別れを告げ、彼女達の元へと向かった。シンシアも一緒に
   遊べたらいいのに。可哀想だ・・・。



ミスターT「どしたん?」
エシェラ「いやさ、一緒に泳がないのかなって。」
エリシェ「ミスターT様は多分、泳げないと思います。」
ミスターT「あら・・・気付かれてたか・・・。」
    抜け目がないとはこの事だ。どうやら海を見る目が引いている事を察知しているようだ。
   凄い洞察力だが、逆を言えば監視されていると言えるか・・・。

ミスターT「俺の事は気にせず遊んできなよ。」
ラフィナ「後でサンオイル塗って下さいね〜。」
ミスターT「じ・・自分達で塗りなさい。」
エシェラ「またまた〜、本当は嬉しいんでしょ〜。」
    この3人のペースには実に参り気味だ。いいように弄ばれている気がしてならない・・・。
   それに身体が濡れてより一層色っぽくなる3人を直視できない。それを彼女達は分かっていて
   接しているのだろう。何ともまあ・・・。

    再び海に向かう3人。俺は近くの砂場に座り一服をする。海の家の方を見ると忙しくなった
   のか、慌ただしく動き回るシンシアがいる。負けずに頑張れよ・・・。



    結局サンオイルを塗る羽目になった。実は嬉しいのだが、どうも奥手が目立つ。こういった
   事の経験のなさが悔やまれる。

    先にエシェラとラフィナを塗り終え、最後はエリシェに塗る。先の2人は気持ちよさそうに
   眠っていた。人の気も知らないで・・・。

エリシェ「何か気になる事でも?」
ミスターT「あ、いや・・・。」
エリシェ「相談に乗れる事なら何でも乗ります。遠慮しないで仰って下さい。」
    実に鋭い、俺の深層に思う感情を察知された。エリシェは対人話術などに長けるのかも知れ
   ない。だから三島ジェネカンを引っ張るほどの実力を持っているのだろうから。

ミスターT「明日には帰るんだっけ?」
エリシェ「はい。宿泊は1泊2日の日程で考えました。それにナツミYU様が仰るには、近々学校
     全体で交流教室という企画を打ち出すとか。その打ち合わせに出席しますので。」
ミスターT「交流教室か・・・。」
    彼女が語るには、小中高大のクラスをそのまま移動させるといった凄まじい計画だった。
   というか小学生が大学生とトレードしても、話の内容に付いて行けるのかね・・・。
エリシェ「できましたら・・・、私のサポートをして欲しいのですが・・・。」
ミスターT「ふむ・・・。まあ帰ってから考えよう、今はこっちを楽しまなければね。」
エリシェ「はい、分かりました・・・。」
   う〜む、この美丈夫の肩には凄まじい重圧が掛かっている。それを少しでも支えられれば、
   どれだけ楽になる事か・・・。
エリシェ「・・・あっ・・・く・・くすぐったいです・・・。」
ミスターT「わ・・わりぃ・・・。」
   肩から間違って脇の部分を触ってしまい、くすぐったそうにするエリシェ。まあ何だ、スゲー
   嬉しいには変わりないが・・・。野郎の性は悲しい・・・。

    後半へと続く。

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