アルティメットエキサイティングファイターズ・外伝 〜覆面の風来坊〜
    〜第3部・第7話 後継者1〜
    ナツミA達が地元に戻ってきてからは、実に穏やかな日々が続いている。しかし裏の方では
   ウインドとダークHを筆頭に、リュリアとディルヴェズLKが2社の残党掃討に乗り出して
   いた。

    戦いはまだ終わってはいない。ジェリヴァとアビゲイルの2人と関係者を捕まえない限り、
   再び企業間抗争は勃発するだろう。やはり1対1の草の根の対話を繰り返し、基礎から築き
   上げないとダメだろうな。

    改めて俺達に置かれた立場は重要なものばかりだ。故に絶対に膝は折れない。否、折って
   なるものか。



    出所後は地元のクリーン作戦を毎日行っている。殆ど俺1人での行動だが、時間が合えば
   非番の躯屡聖堕チームのメンバーと共闘している。また娘達も手伝ってくれていた。

    本店レミセンはメアディルが切り盛りをしており、補佐としてメルデュラとシュームが担当
   している。またリヴュアスは地元の巡回を積極的に行っていた。

    俺らの行動で当てられた妻達は、今まで以上に頑張りを見せている。そして彼女達に当て
   られた娘達も奮闘しだしていた。

    この連鎖は留まる所を知らないと言えるだろう。本気になった女性ほど手強い者はいない。
   そんな彼女達を支えられる事に、俺は心から誇りに思う。



ミツキ「これで全部わぅ。」
ミスターT「ありがとね。」
    ナツミAが地元に戻ってきたため、妹のミツキも一緒に戻ってきた。ウエスト・サイバー・
   ナッツ・エンルイの3人は安堂不動産の運営に携わっており、ナツミA達は心置きなく自分達
   の行動に精を出せていた。

    今は彼女と一緒にクリーン作戦の真っ最中である。また非番の躯屡聖堕チームメンバーも
   一緒に行っている。元暴走族とは思えないほど、今の彼らは光り輝いていた。

ミツキ「姉ちゃん元気になってるわぅ。」
ミスターT「お前さんの激励もあるからね。」
ミツキ「マスターの激励もあるわぅよ。」
    最近は口癖の「わぅ」を必ず付けて喋っている彼女。これはこれで可愛いのだが、彼女も
   シューム達と同じく怒らせると怖いと周りは語っている。
ミツキ「わたも姉ちゃんと一緒に孤児院の運営に携わるわぅ。」
ミスターT「そうだな。まあまだ若いし、今は焦らず自分達の知識を身に着けた方がいい。」
ミツキ「わぅわぅ。」
   幼い雰囲気の彼女だが、これでも勉学の力は娘達を遥かに凌駕している。このノホホンとした
   外見は、態と力をセーブしているかのようにも見えた。

    彼女もまた、偉大なる母の1人となるだろう。優しさも周りに引けを取らないぐらい力強い
   ものだ。

    ナツミAとミツキは、若き日のヴァルシェヴラームとセルディムカルダートと言えるわ。
   この2人がいれば、恐れるものなど何もない。



    クリーン作戦を終えて、本店レミセンへと戻る俺達。厨房はメアディルが獅子奮迅の活躍を
   しており、カウンターではナツミAがウェイトレスとして活躍している。

    細身のナツミAだが、こう見えても筋力が凄まじいまでに高まっていると言う。腕相撲では
   身内で天下無双とも謳われるシュームを負かすと程の実力も備えている。

    カウンターに座り一服する。その俺にコーヒーを差し出してくるメアディル。そのスタイル
   はアメリカ仕込みであろう。普通にやってのける部分は流石としか言いようがない。


ミツキ「マスターの生き様はキウイ・ハズバンドわぅね。」
ミスターT「あれか。確か・・・ニュージーランドの家庭の図。」
ミツキ「そうわぅよ。」
    そんな俺達の姿を見て、ミツキがとある語句を語り出す。それは「キウイ・ハズバンド」と
   いう、ニュージーランドでの家庭の在り方を指し示すものだ。
ミツキ「日本だと男性は家事にはあまり介入はしないわぅが、ニュージーランドの男性は積極的に
    家事育児に参加するわぅよ。それを見たお子さんが大人になって、同じく家事育児に積極的
    に参加していく図式わぅ。」
ナツミA「マスターに当てはまってますね。」
ミスターT「殆ど周りに流されてもいるがね・・・。」
   ニュージーランドの男性陣の生き様には遠く及ばないだろうが、自分も13人の妻達や27人
   の娘達に積極的に手助けをしている。それは自分なりにできる事を最大限行うのみで、もはや
   当たり前といった感じになっていた。

ミツキ「もっと誇りを持っていいわぅよ。誰が何と言おうが、マスターは立派な父親わぅから。」
ナツミA「そうよね。マスター自身はどう思われているか分かりませんが、私達からすれば素晴ら
     しい父親ですよ。」
ミスターT「う〜む・・・。」
    俺達の家庭の図式は常識を逸脱している異常極まりないもの。日本では一夫多妻は一切認め
   られていないため、いくら立派な父親であろうが根本的に異なっている。
ミツキ「マスターの考えが読めるわぅ。日本じゃ一夫多妻は認められていないので、今の自分達の
    姿からすれば異常わぅと。」
ミスターT「・・・ご推察通りで。」
ミツキ「いいじゃないわぅか。テメェの生き様を貫き通してこそ野郎たる存在わぅよ。マスターも
    確か言ってたわぅ。男は一度決めた生き様は、絶対に曲げずに貫き通すものわぅと。」
ミスターT「まあ確かにな・・・。」
   根本的に間違ってはいる道ではあるが、それでも不幸をばら撒くような事は一切していない。
   むしろ家族総出で命を削り、周りに敬い・労い・激励といった事を徹底している。これは断言
   できる。

メアディル「ミツキさんの仰る通りですよ。私達は私達の生き様を貫き通すまで。誰彼がどうこう
      ではない、自分達がどうあるべきか。それが本当に大切な事なのですから。」
ミツキ「そうわぅそうわぅ。人一倍努力しているマスターに文句言う奴は蹴飛ばしてやるわぅ!」
    半ば本気モードのミツキ。彼女を怒らせた場合、大変な事になるとナツミAは語っている。
   見定まった視点は一切動じない。彼女こそ原点回帰の塊とも言えるだろう。
ナツミA「マスターの生き様はシェヴ様やディム様のと全く同じ。そのお2人に近付けるよう、私達
     姉妹も獅子奮迅の活躍をしていかないとね。」
メアディル「大丈夫ですよ。お2人なら間違いなくシェヴさんとディムさんを超えますから。」
ミツキ「わぅわぅ!」
   う〜む、肝っ玉が据わっているのは素晴らしい事なのだが・・・。まあ今の時代は彼女達の
   ような活発な乙女が最強であろう。昔とは違うのだから。

    炎のように活発な妹のミツキ、氷のように冷静な姉のナツミA。この2人がタッグを組めば
   鬼に金棒だろう。恐れるものなど何もないわな・・・。



    ちなみにウエストとサイバーのコンピューターの知識。これは尋常じゃない事は承知済み
   だが、身内のスペシャリストのメルデュラとトリオを組んでパソコン教室を開きだしたのだ。

    これが地元で大評判となり、老若男女問わず誰でも訪れるようになる。もちろん3人とも
   趣味の一環で行いだしたので、これは躯屡聖堕チームと同じくボランティアである。

    メルデュラ自身は喫茶店のマスターとしての収入があるが、ウエストとサイバーは全くの
   ボランティアである。それでもナツミAが復活した事に対しての、周りへの報恩感謝だと言い
   切って動いていた。

    無論2人の事をアマギH達が放って置く訳がない。ウエストとサイバーは躯屡聖堕チームに
   誘われ、2人の方も断る事なく参加したのだ。ちなみにナッツとエンルイの2人もしかり。


    あの体格の2人が本気を出せば敵う者などいない。ヴェアデュラに次ぐ恐怖の暴君として
   メンバーからは恐れられるも慕われているという。

    しかしウエストとサイバーもリュアとリュオには全く敵わないと口を揃えて語っている。
   双子のパワーは今爆発中のナツミAとミツキすらも凌駕しているのだから。


    時代は若手へと移行している。その中に俺の娘達が活躍している事に心から感謝したい。
   そして切っ掛けを作ってくれた13人の妻達に、心から敬意を表している。

    俺1人では今の環境は作れなかったのだから・・・。



メアディル「アマギHさんとユリコYさんの挙式後の格闘術大会、ウエストさんとサイバーさんが
      エラい喜んでますよ。」
ミスターT「そりゃあなぁ・・・アルエキファイタの大ファンらしいし・・・。」
    厨房でお客さんの注文を作るメアディル。カウンターにはナツミAとミツキが幾つかの資料
   に目を通している。これは来るべき調理師免許取得への勉強である。ナツミAは体力強化を
   行いつつも、ミツキと共にその後の道筋を明確に見定めていると言えた。
   そんな中、メアディルが二次会の格闘術大会に触れてきた。何でもウエストとサイバーの2人
   が一番喜んでいるらしい。
メアディル「リヴュアス姉さんも大張り切りですし。かく言う私もそうですけど。」
ミスターT「俺が拘置所にいた間に、リュアとリュオも格闘術を学びだしていたしなぁ・・・。」
メアディル「それは私が誘ったのですけどね。」
ミスターT「何とも・・・。」
   メアディルもアルエキファイタの大ファンであり、数多くの格闘術に精通している。これと
   言って極めてはいないが、オールマイティにこなせるという部分ではプロレス技に近い。
   そしてリュアとリュオにも格闘術を進めだしたのも彼女であり、それに大喜びしているのが
   双子である。今では柔道と合気道を中心に修行しているようで、この先恐ろしい女傑になる
   のは言うまでもない。

ミスターT「お前はこれといって極めつつある格闘術はないよな。」
メアディル「基本は柔道ですけど、それ以外に合気道とカンフーを少しだけかじった程度ですので。
      オールマイティに頑張られているのはリヴュアスさんですね。」
ミスターT「シュームに近い高齢なのに頑張るよなぁ・・・。」
    リヴュアスの年齢は今年で58歳。よく考えると53歳で双子の娘を出産した事になる。
   かなり厳しい年齢での出産だったが、俺との子供を産めるとあって頑張ったらしい。
メアディル「他のお姉様方も見た目の老化より10年か20年ぐらい若々しいですよ。今は学園の
      庭師であられるナツミYUさんも、実年齢とは思えない若々しさですから。」
ミスターT「う〜む・・・。女性は魔物、か・・・。」
メアディル「正直な話、貴方の方が魔物でしょう。上は25歳から下は0歳までの27人の娘がいる
      のですから。」
ミスターT「そ・・それを言われるとなぁ・・・。」
   確かに正論だ。リュアとリュオまでの13人の娘達は、今はほぼ独立に近い行動をしている。
   しかしそれ以外にも12人の娘達がいるのだ。これはどう考えても異常としか思えない。


ミツキ「こらぁ〜、まだ悩んでるわぅ!」
    俺達の会話を聞いたのか、エラい表情で怒りだすミツキ。傍らにいるナツミAも同様で、
   表には出さないが怒りの表情を浮かべていた。
ナツミA「貴方がしてきた事は紛れもない社会貢献の何ものでもありません。確かに一夫多妻は異常
     でしょうが、それを差し引いても命を削って周りを支え抜いているではありませんか。」
ミツキ「もし周りにマスターを異常者と言う奴が現れたら、こう言ってやりますよ。貴様は彼の事を
    異常者と語るのなら、貴様の方は同じように人を支えて救い続けてきたのかと。」
ナツミA「その通りです。貴方は直接的ではないにしろ、間接的に人々を救い続けているのですよ。
     三島ジェネカンしかり、躯屡聖堕チームしかり。孤児院の運営方針が一番顕著です。」
ミツキ「マスターがいなかったら姉ちゃんは死んでいたかも知れない。それを察知して社会からの
    悪口罵詈を覚悟の上で姉ちゃんを救った。マスターは私達の命の恩人なのですよ!」
ナツミA「流れは異常であれど、結果的には世界から孤児をなくすという大願に近付いています。
     貴方のしてきた行動は正しい。異常者と言えるだけの人を救う戦いをしたのですから。」
   感無量で涙が溢れ出してくる。ここにいる成人を迎えた双子の姉妹が、俺の生き様を確実に
   評価してくれていた。言わば2人の存在は俺自身と言える。

ミツキ「ヴェアさんも言ってましたよ。今の現状は社会的・倫理的に異常であっても、私達は貴方に
    対して一度もそう思った事はありませんと。特にリュアさんやリュオさんが一番激怒して
    います。」
ナツミA「誰彼がどうこうではなく、自分達がどうあるべきか。どの様に社会に貢献できたか。原点
     たる誓願はシェヴ様の語る、世界から孤児をなくす事に回帰する。」
ミツキ「大丈夫ですから。私達は死ぬまでマスターを信じ抜きます。だからマスターは何も考えず、
    ただ只管に前だけを向いて突っ走って下さい。」
ミスターT「・・・ありがとう・・ございます・・・。」
    ただただ泣くしかなかった。今の今に至って俺の生き様を評価してくれている。見定める
   のは今の現状ではなく、その遥か先の今である。故に今を生き抜き戦い続ける、それが俺や
   一同の生き様なのだから。


ミツキ「メアディルさん、あまりマスターを苛めると・・・後で承知しませんよ・・・。年上だから
    と言っても、一切容赦しませんから・・・。」
ナツミA「からかい半分でもその人にとっては心に深い傷を負うかも知れません。その事をお忘れ
     なきように。あまり酷い場合は・・・分かっているでしょうね・・・。」
メアディル「わ・・・分かりました・・・。」
    うわっ・・・、怖い・・・怖すぎる・・・。今まで見た事がないようなミツキとナツミAの
   激怒に、メアディルが完全に怯えている。それに2人のこの言動、俺の殺気と闘気と酷使して
   いた。女性ならではのドスの利いた力と言える。


    それから暫くはミツキとナツミAの恐さは前面に出たままだった。お客さんや地域の方々
   には普通なのだが、家族に対しては態と恐さをだしていた。

    しかしそれは本当の怒りや憎しみなどではない。そうする事により、本当に俺を心配して
   いると伝えているかのようである。

    現にリュアとリュオが当てられて感化されたのか、同じような殺気と闘気を放つ術を学び
   だしていた。またミツキとナツミAの激昂に他の家族達がやる気を出しだしたのだ。

    これは男の俺でも分かる。要らぬ考えを浮かべるぐらいなら、その怒りは前へ進むパワーに
   変えていけと。それを実演しているのがミツキとナツミAだろう。

    覆面の風来坊という理は、この2人によって確定的なものになりそうである。



シューム「う〜ん・・・。」
ミスターT「爆発的、か・・・。」
    ミツキとナツミAの姿に感化されて爆発的に動き出したのが先の15人の娘達である。同性
   に触発されるのが一番効果があるようだ。それでも我が子の逞しい姿に感無量の母親達の様子
   である。
シューム「ナツミAちゃんとミツキちゃんは間違いなくシェヴ様とディム様の再来となりましょう。
     見定まった一念が強い人物ほど、どの様な状況に至っても揺り動かされませんし。」
ミスターT「ある意味、覆面の風来坊は2人が一番似合うわな。」
   透明な覆面を被った風来坊としてはヴェアデュラが当てはまるが、それを超えるのがナツミA
   とミツキだろう。内面や外面の強さでは、今後リュアとリュオを遥かに凌ぐかも知れない。
ミスターT「まあでもナツミAとミツキなら、シェヴとディムの後継者としては打って付けかな。
      外見の老化が訪れない特異体質だから、100歳近くまで現役で頑張れるだろうし。」
シューム「そうねぇ。」
ミスターT「今から色々な事を学んでいって欲しいわ。若い時でしか経験は積めないから。」
シューム「そこは私達次第よ、心配する事はないわ。」
   先駆者による道標は本当に助かるだろう。俺もシェヴやディムの支えがあって、今の自分自身
   を維持できているのだから。その俺が周りを支えねば忘恩の輩と化してしまう。何があっても
   周りを支え抜くのが、俺自身の死ぬまでの生き様の1つである。

ミスターT「しかしまあ・・・メアティナとメアティヌの成長っぷりは驚きだわ。」
シューム「他の10人もそうだからねぇ〜、今時の子供は発育が凄いよね。」
    まだ生まれて数ヶ月しか経過していないのに、メアディルの娘達の成長振りは凄まじいと
   しか言い様がない。リュアとリュオ以下の10人の娘達もエラい成長速度であり、この調子
   だと2・3年後には大変な事になりそうだわ・・・。
シューム「シュリムとシュリナも見違えるように据わって来だしたし。」
ミスターT「お前ソックリになってきてるしな。」
シューム「半分は貴方の血が流れているのだから、もっと大変な事になっていくかもね。」
   ヴェアデュラ以下リュア・リュオ以上の娘達は見違えるように美しくなっている。特に1年間
   の海外修行をしていたシュリム・シュリナ・ラフィカ・ラフィヌの4人が顕著である。やはり
   可愛い子供には旅をさせろというのは十分肯けた。

シューム「・・・最期は笑って向かえたいね。」
ミスターT「・・・お前の場合は大爆笑で終わるかと・・・。」
シューム「フフッ、言えてる。」
    シュームがふと漏らした、臨終の時は笑って死にたいと。それに言葉にユーモアを踏まえて
   語る。しかし現実は残酷で彼女の老化は進んでいるのだから。
ミスターT「・・・最期の瞬間まで一緒にいるよ、命を懸けて誓う。」
シューム「ありがとう・・・。」
   俺の言葉に涙ぐむ彼女。愛しい人を失う事を人一倍気にしているだけに、俺の言葉は痛烈に
   心に響くのだろう。

    俺にできる事は何でもしてあげねば。それが俺の使命でもある・・・。

    後半へと続く。

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