アルティメットエキサイティングファイターズ・外伝 〜覆面の風来坊〜
    〜第3部・第7話 後継者2〜
ウインド「これだけの情報網を駆使しても発見できないとは驚きですよ。」
ダークH「隠密に関しては優れた者としか言い様がありません。」
ミスターT「まあ待つしかないさ。」
    それから数週間が経過。本店レミセンにウインドとダークHが訪れる。最近は息抜きに必ず
   訪問してくる程だ。今もジェリヴァとアビゲイル一味は捕まっておらず、2人は焦りの色を
   隠せないでいる。
   そんな彼女達にコーヒーを差し出す。今日の厨房担当は俺で、カウンターの隅ではナツミAと
   ミツキが調理師免許の勉強をしていた。

ウインド「それに不吉な情報も入手しています。連中が企業間抗争時に秘かに多額の資金を投じて、
     闇商人との取り引きをしていたというのです。」
ミスターT「ある意味テロリストに近いわな。」
ダークH「ええ。ですが、ただ単に重火器などの兵器なら全く問題はありません。我々も自衛隊の
     方々と連携を取り、最悪強行手段に投じれますから。」
ミスターT「・・・まさか・・・核じゃないだろうな・・・。」
    俺の推測に沈黙を以て答えるウインドとダークH。一般企業が闇商人と取り引きをし、核を
   入手できるものなのか。俄に信じがたいが2人の真剣な表情からして、これは十中八九確信に
   近いだろう。


ウインド「人間は何故強大な力を欲するのでしょうか・・・。それらを用いて己の力を誇示し続け
     たいのでしょうかね・・・。」
ミスターT「それが人間そのものに備わる業の1つよ。しかし強大な力でも使い手が据わっていれば
      善の力となっていく。持ち手の一念次第ではどうにでもなる。」
ダークH「マスターのような一念を抱く方が多ければ、この世から悲惨という二文字は消えるので
     しょうけどね・・・。」
ミスターT「だからこそ、俺達がしっかりしなきゃならん。」
    語りながらサンドイッチセットを2つ完成させ、ウインドとダークHに振舞った。心に悩み
   を抱えている人物に無償で提供する、各レミセンで一種のサービスである。それに驚く2人
   だが、目配せをすると小さく頭を下げて頬張りだした。

ミツキ「核弾頭は破壊の象徴わぅが、ザ・コアの映画では地球を救う強力な武器わぅね。」
ナツミA「アルマゲドンの映画でも隕石を真っ二つに割るための武器ですから。」
ミツキ「用は使い方わぅよ。」
ミスターT「お前達は核以上の強さと明るさを持ってるからなぁ・・・。」
ミツキ「わた達をなめちゃあかんわぅ。」
    今では簡単に殺気と闘気を操れるようになったミツキとナツミA。それを軽く放出すると、
   過去に苦い思い出があるウインドとダークHは青褪めだした。
ダークH「マスターの十八番を意図も簡単に・・・。」
ウインド「物凄いですね・・・。」
ミスターT「この2人に敵う奴はリュアとリュオぐらいなものかな・・・。いや・・・多分2人が
      全力で挑んでも、ミツキとナツミAには敵わないと思うわ・・・。」
   強さの次元が異なりだしているため、リュアとリュオすらも凌駕しているナツミAとミツキ。
   俺が知る女性陣の中で最強の部類に入るだろう。ヴァルシェヴラームやセルディムカルダート
   すらも敵わないかも知れない。


ミツキ「でも美しさなら、お姉ちゃん達の方が強いわぅ。」
ナツミA「そうね。お2人は日に日にお美しくなられています。やはりマスターに恋をされると劇的
     な変化が現れるのでしょうね。」
    双子の発言に顔を赤くして俯くウインドとダークH。ナツミAとミツキは2人が強くなった
   理由をしっかりと理解していた。
ミスターT「シェヴやナツミYUと同じようにならないだけマシだけどね・・・。」
ミツキ「女を舐めちゃあかんわぅよ。お2人は態と我慢しているだけわぅ。本気になったらマスター
    なんか簡単に襲われちゃうわぅから。」
ナツミA「ミツキの言う通りですよ。ウインドさんとダークHさんの内在する女としての力は、私達
     を遥かに上回っています。今は態と抑えているだけでしょう。油断すれば取って食われる
     のは言うまでもありません。」
ミツキ「まあシュームちゃんの手前、動けないでいるのも事実わぅけど。」
   この美丈夫達はシュームすらも超えているだろう。ウインドとダークHの内在する力強さを
   見極めていた。確かに日に日に美しくも強くなっていく2人は、男である俺でも理解できた。
   その思いが俺に向けられている事もしかりである。

ミスターT「でも・・・本当に望んでいるなら、俺も心から応じないと失礼だよな。」
ウインド「か・・構いませんよ・・・。」
ダークH「そ・・それは・・恐れ多くてできません・・・。」
ミスターT「フフッ、本音はそうじゃなかろうに。」
    言葉では恐縮し恐れ慄いているが、本音はしっかりと語っていた。2人の心境は言葉とは
   真逆という事だ。
ミツキ「マスターも罪な男わぅ〜。」
ナツミA「ですねぇ〜。」
ミスターT「このじゃじゃ馬娘め・・・。」
   皮肉を込めて語ると苦笑いを浮かべるナツミAとミツキ。そんな俺達を見つめ、小さく微笑む
   ウインドとダークH。この双子はムードメーカーとしても超一流の実力を持っているだろう。
   敵わない訳だよな・・・。


ウインド「とりあえず、近況は以上です。」
ダークH「何かありましたら、真っ先にご連絡します。」
    軽食を取りながら息抜きをしたウインドとダークH。そのまま本店レミセンを後にした。
   今はジェリヴァとアビゲイルの動向が気になるだろう。
ミツキ「・・・核か・・・。」
ナツミA「最悪・・・ここらで使われるかも・・・。」
ミスターT「全力を以て阻止に走るが、それでも止められない場合は宿命かも知れない。だが俺は
      お前達と共に戦っている。敵前逃亡だけは絶対にしないつもりだ。」
ミツキ「そうですね。私達が身を以て阻止してこそ、次の世代への大切な橋渡しになるでしょう。
    負けられませんよ、絶対にね。」
ナツミA「私ももっと身体を鍛えないとダメだわ。」
   それぞれの抱負を語るナツミAとミツキ。この2人の心構えなら、相手が誰であろうが負ける
   事はない。それに俺自身も頑張らないと・・・。


    身内だけにウインドとダークHの一件を語った。それに驚愕する家族達。しかしナツミAや
   ミツキと同じく、絶対に屈しない姿勢を見せている。

    確かに脅威と言える核だが、それを扱う人を阻止すれば済む事である。最後の敵と言える
   ジェリヴァとアビゲイルを阻止する事こそ、本当の意味での戦いであろう。

    もはや彼らも俺達を成長させる存在と言えた。故に彼らにも極悪にまで陥らないようにする
   事が大切なのかも知れない。

    人は憎しみ合っては生きて行けない。慈愛・友愛・敬い・労いこそが本当の道であろう。
   それを彼らは身を以て教えてくれているのかも知れないな・・・。



シューム「また負けたぁ・・・。」
    本店レミセンの3階にて、シュームがナツミAと腕相撲を取り組んでいる。しかし天下無双
   とも言えるシュームがいとも簡単に負け続けているのだ。
   ナツミAの体躯は決して丈夫とは言えない。まだ強化中であり、今が成長真っ只中とも言える
   だろう。その彼女が歴戦の猛者のシュームを打ち負かす現実は、家族内に戦慄が走っている
   ようである。
リュア「姉ちゃん強いなぁ・・・。」
リュオ「腕相撲ではお祖母ちゃんに絶対に勝てないのに・・・。」
ナツミA「全てはタイミングですよ。」
   今ではリュアとリュオはナツミAとミツキを姉と呼んで慕っている。双子同士共に属性が全く
   同じであるから、引き寄せられるものがあるのだろう。

ミスターT「力の押し出るタイミング、か・・・。確かにそれを熟知しているなら、ナツミAには
      絶対に勝てないわな。」
ミツキ「身体から腕を通して、そして腕から相手の腕へとの力の繋がり。その流れに同期できる事が
    姉ちゃんは得意らしいわぅ。」
ナツミA「物心が付いた頃から病弱で、身体の自由が一切利きませんでした。その分、心の強化と
     戦いに関してのイメージトレーニングなどを毎日行いました。多分それがこのような力の
     受け流しに繋がるのだと思います。」
    う〜む、これはシュームやナツミYUなどの歴戦の猛者には特効薬なのだろう。ナツミAの
   戦術は、俺の後手側心理戦闘と全く同じである。

ナツミA「それでもマスターには足元にも及びません。私の力強さもマスターと初めてお会いして
     から、私なりに覆面の風来坊をイメージして構築したものですから。」
ミツキ「わたも姉ちゃんと同じくマスターの強さをイメージしていったら、何時の間にか殺気と闘気
    を出せるようになってたわぅ。」
ミスターT「モンスターだな・・・。」
    ナツミA・ミツキ姉妹の相手の力を模写して身に付ける特技を知った身内は驚愕している。
   特にシュームなどは長年修行して今の力を付けただけに、それを簡単に追い抜かす双子には
   唖然とするしかないだろう。
ナツミA「でも皆さんが本当に羨ましいです。皆さんは私達にはないものをお持ちです。お母様方は
     マスターを共通の夫として、娘様方はマスターを共通の父として。私達の年齢からすれば
     娘と同じ間柄ですが、心から慕える偉大な師匠ですので。」
ミツキ「桜梅桃李わぅ。桜には桜・梅には梅・桃には桃・李には李の良さがあるわぅ。わた達には
    ないものをみんなは持ってるわぅから。羨ましいわぅ。」
ミスターT「桜梅桃李、か・・・。」
   それぞれ特徴あるべき存在の個々人。それは俺達全てに当てはまっている。それを端的に指し
   示した言葉が“桜梅桃李”であろう。


リュア「ナツミAさんとミツキさんも父ちゃんの娘だったらよかったのになぁ・・・。」
リュオ「そうだねぇ・・・。」
    自分達と同じ属性であるナツミAとミツキを羨ましがり、姉妹であればよかったと語り出す
   リュアとリュオ。それに他の娘達も自然と頷いていた。一番の長女であるヴェアデュラもだ。
ミツキ「大丈夫わぅよ。血は繋がっていなくても家族の契りを交わさなくても、内に秘める大願と
    誓願が全く同じならば立派な家族わぅ。リュアちゃんとリュオちゃんも、わたの大切な妹
    わぅよ。」
ナツミA「そうよね。続柄や血縁なんか関係ないわね。目指すべき大願と誓願が同じ生き様を刻んで
     いるのなら、私達は深く強い絆で結ばれた大切な家族そのものよ。」
ミツキ「それこそ誰彼がどうこうじゃない、自分達がどうあるべきかわぅ。自分達の一念次第では、
    どうにでもなるわぅからね。」
   う〜む・・・この双子は俺が知る女性陣を超越していると言える。見定まった観点は凄まじい
   ものであり、あのヴァルシェヴラームやセルディムカルダートを遥かに超えているだろう。

ミスターT「永遠の師弟、か・・・。」
ミツキ「わた達を舐めるなってんだわぅ!」
ナツミA「私達が見定まった一念を揺るがさなければ、絶対に負ける事はありません。そして相手を
     憎むのではなく労わり敬う。今も逃亡中のジェリヴァ氏やアビゲイル氏もそうだと確信
     しています。」
ミスターT「そうだな。」
    ナツミAとミツキの目線は遥か先を見通している。もちろん今現在の問題も大切ではある。
   だが未来を見通した千里眼を持つ者ほど強い者はいない。この姉妹の存在は俺達が長年追い
   求めてきた究極の存在のようである。


エリシェ「ナツミA様とミツキ様を三島ジェネカンの終身名誉会員としたいものです。これほど我々
     と同じ生き様を持たれている方は類を見ません。」
ミツキ「何か安くなったりとか特典あるわぅか?」
    エリシェの言葉にユーモアを踏まえた発言をするミツキ。それに周りは爆笑しだす。しかし
   2人とも彼女の述べたい事を理解したようで、その場で正座をして深々と頭を下げだした。
ミツキ「喜んでお受け致します。名誉ある称号で私達の活動がより一層活発になれれば幸いです。」
ナツミA「エリシェ様が私達を見込んで仰られた事、お顔に泥を塗らないように恥じない生き様を
     貫いていきます。」
エリシェ「ありがとうございます。」
   自分の生き様を誉め称えられ、感無量のエリシェである。また彼女と連携を取って動いている
   ラフィナもしかりである。

ミスターT「俺の宿命はナツミAとミツキ、それにウエスト君達と出会う事だったようだ。その為の
      覆面の風来坊たる生き様を貫いて来れたんだと思う。」
    後頭部の留め金を外し、覆面を取り除く。それは俺が心から敬意を表した証そのものだ。
   今では家族の全員がその厚意を心から理解してくれている。それを今度はナツミAとミツキに
   心から示した。
ミスターT「ナツミAさん・ミツキさん、生まれてきてくれてありがとうございます。貴方達と今世
      に巡り会えた事を、自分の最大の誉れとしたいのです。」
   俺の言葉に泣き出すナツミAとミツキ。普段から気丈な2人には到底想像できない仕草に、
   周りの女性陣は驚いている。そんな2人を優しく抱き寄せ、胸の中で泣かせてあげた。
ミスターT「ヴェア達、ナツミAとミツキを心から支えてあげてくれ。この2人こそ俺達が長年追い
      求めてきた、“覆面の風来坊”そのものだ。」
ヴェアデュラ「お任せ下さい。お父さんが心から信じられているお2人を、命を張って守り通す決意
       です。ナツミAさんとミツキさんは私の生き様と全く同じです。守り通さなければ、
       シェヴ母さんやディム母さんから頂いた師恩を返すとは言えません。」
エリム「ヴェア姉様と同じです。私達にできる事なら何でも致します。」
エリア「ナツミA様とミツキ様は紛れもない、私達の共通の師匠ですから。」
   娘達を代表して、ヴェアデュラ・エリム・エリアが言葉を述べる。姉妹の中で一番大人びいて
   いるのが3人なだけに、その言葉は明快に今の理を述べていた。

ナツミA「ありがとうございます・・・。」
ミツキ「どんな事があっても負けずに頑張ります・・・。」
    落ち着いた頃を見計らって、ナツミAとミツキが感謝の意を述べだした。まだ20歳という
   若さだが、この2人は遥か先を見通して動いているのだから。
ミツキ「・・・マスターの素顔、素敵わぅね・・・。」
   しかし場を和ます事も忘れてはいない。ミツキが俺の素顔の感想を言った事で、再び周りは
   爆笑しだした。この2人は間違いなく大物になるだろう。


    不思議な縁である。覆面の風来坊としてこの地に戻ってきた時から、今に至る布石が静かに
   始まったと言えるのだから。

    俺の戦いも終わったのではなく、今正に始まったばかりと言えた。まだまだ老いさらばえて
   いくなと言う事だ。


    ナツミAとミツキ、そして陰で支え抜いたウエスト・サイバー・ナッツ・エンルイの4人。
   この6人は俺の人生そのものと断言できるだろう。

    心から感謝したい。今世で巡り逢わせてくれてありがとう、と・・・。

    第3部・第8話へと続く。

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