アルティメットエキサイティングファイターズ・外伝 〜覆面の風来坊〜
    〜第2部・第7話 巡る盆踊り1〜
    翌日。表は快晴、盆踊りには打って付けの天候だ。シュームとヴァルシェヴラームお手製の
   朝食を満喫すると、複数によるトランプゲームに花を咲かせ大賑わいになる女性陣。

    俺は朝食を取ると、ヴェアデュラを胸に抱き一寝入りする。あれからエシェラが寝た後に
   ヴェアデュラが泣き出し、あやす事を数回行った。つまり物凄く眠い・・・。やはり慣れない
   環境が落ち着かせないのだろうな。


ヴァルシェヴラーム「膝枕でもする?」
    一瞬眠ってはヴェアデュラを確認し、再び寝るの繰り返しだ。周りの五月蝿さは気になって
   いないが、寝付けないのは言うまでもない。
ミスターT「ああ・・・お願いします・・・。」
   ソファーの端に座るヴァルシェヴラーム。胸にいたヴェアデュラを託すと、俺は頭を彼女の
   膝に乗せた。ソッと左手が俺の頬を撫でる。その心地よさに急激に眠気が襲ってきた。
ミスターT「流石シェヴさん・・・落ち着きます・・・。」
ヴァルシェヴラーム「貴方が幼い頃にも同じ事をしてあげたわね。」
   俺の胸を優しく叩きだした。以前シンシアにもしてあげた、子供を寝付かせる時の行為だ。
   凄まじいまでの心地よさと安堵感に包まれ、直ぐに夢の中へと旅立っていった・・・。



    それから数時間後の正午、俺は完全に目を覚ました。僅か数時間の仮眠だったが、その睡眠
   は心から安らいで休めた。


    俺はヴェアデュラを胸に抱き、本店レミセンの二階・三階・四階を見て回る。表から見る
   限りは存在はしているとしか把握しておらず、内部を見て驚いてしまった。

    本店レミセンの間取りは、他のレミセンでもトップクラス。つまりそのままの大きさが上部
   へと繋がる。二階の休憩室とされる部屋はエリシェの自室並で、十分に住めるぐらいだった。


    三階と四階は更に凄まじい。間取りがエリシェの事実と殆ど変わらない。周辺住宅に気を
   配って日光の差し日を配慮した大きさだが、それでも十分すぎるほどの広さを誇っている。

    二階・三階・四階もトイレ・風呂場・脱衣所・台所・リビング・寝室と、一級のマンション
   と同じ装備が揃っている。正に至れり尽せりだ。

    また屋根部分がそのまま屋上にもなっており、ここは五階とも言えるだろう。エリシェの
   自室には敵わないが、花火大会などはここからも一望できる。



シューム「レイアウトはエリシェちゃんの部屋を参考に、不自由ない配置にしたのよ。結構手間が
     掛かったって言ってたわ。」
    空気の入れ替えで窓を全て開け放つ。網戸にしているので、羽虫は入ってこないだろう。
   新築してから一度も使われていないためか、新しい匂いが立ち込めている。
ミスターT「これだけ広ければ、ヴェアが成人になるまでは十分住めるね。」
   窓際にバスタオルを引いてから、ヴェアデュラを静かに横たえる。するとまるで気に入ったか
   のようにスヤスヤと眠りだす。この様子を見れば、間違いなく大丈夫だと言える。

シューム「そうそう、私達が住んでいる家を売りに出そうと思うの。」
ミスターT「また何で?」
シューム「君が住んでいたアパート、今度新しく建て替える事になったでしょ。あそこにアパート兼
     住宅を構えるようで、そこに引っ越そうかなと。」
ミスターT「ふむ・・・。でも今住んでいる家、エシェラやお前の思い出の場所じゃないのか?」
    俺の気掛かりはそれだった。今は亡きエシェラの両親が建てた家だ。思い出が一杯詰まって
   いるだろう。それを売り払うとなると、相当の覚悟が必要になると思うが・・・。
シューム「ああ、大丈夫。実際にあそこに住みだしたのはご両親が亡くなった後。しかもあそこに
     引っ越してきただけで、思い出あるとまではいかないかな。」
ミスターT「そうか、分かった。」
   一家の大黒柱とも言えるシュームが語るのだ。既にエシェラとエシェツには相談済みだろう。
   ここは彼女に任せるべきだな。


    室内から表を見ていると、徐に背中に抱き付いてくる。眠るヴェアデュラをいい事に、過激
   極まりない行動に出始めたな・・・。でも何となくその理由は分かってしまう。
シューム「フフッ、相変わらずね。普通なら無関心な筈なのに、思い出の場所と言ってくれた。」
ミスターT「そりゃそうだろう。お前も俺も孤児だが、俺と違い過ごした家があるなら尚更だ。」
シューム「思い出は心に残せるじゃない。その場の環境変化に順応してこそ人は生きていけるのよ。
     住処が変わっても、心が変わらなければ十分よ。」
ミスターT「そうだな、すまない。」
   予測した通りのものだった。思い出は心の中に、そして心こそ大切に。それをしっかりと把握
   しているシューム。これは愚問というものだな。

    暫くそうしていると、今度は胸の中に抱き付いてくる。そしてそのまま唇を重ねてきた。
   彼女もまだまだ甘えたいのだろう。俺も彼女に心の篭った口づけをしてあげた。



シューム「ごめんね、勇気を貰ってばかり。」
ミスターT「気にしなさんな。」
    甘い一時を終えると、胸の中で余韻に浸るシューム。ソッと頭を撫でてあげて、優しく抱き
   しめてあげた。
ミスターT「お前には何度となく助けて貰ってる。俺と変わらない年頃なのに、皆の母親的存在で
      鼓舞し続けてくれる。心には大きな傷を持っているのに・・・。」
シューム「ううん・・・大丈夫、君に勇気を貰ってるから・・・。」
ミスターT「正直な話、罪悪感が一杯だ。エシェラは心に決めた人だから問題ないが、お前を含めた
      5人との関係には不安が募る。」
シューム「大丈夫よ、貴方から進んで抱こうとしなければ。もちろん本気で抱いてくれる事は嬉しい
     けど。表向きは私達から襲ってきたと思わせれば、ね。」
   この強かな戦略はヴァルシェヴラーム譲りとも言える。彼女も歳が離れていなければ、彼女達
   のように欲望に駆られて動くだろう。いや、彼女はそれを望んでいるのだろうな。偶に見せる
   俺に対しての愛情は、5人と全く変わらない凄まじいものだから。

シューム「・・・貴方を絶対に死なせたりはしない・・・。」
ミスターT「逆だな。俺がお前を死なせたりさせない。エシェラを銃弾から守ったように、俺が目に
      留まる時なら命懸けで守るよ。」
シューム「あぁ・・・ありがとう・・・。」
    泣きながら強く抱き付いてくる。その彼女を優しく抱き返した。俺にできる精一杯の労い、
   この際世間体など関係ない。彼女を癒せるのなら、心の底から応じるべきだ。
シューム「・・・愛してます。」
ミスターT「ああ、俺もだよ。」
   再び唇を重ね合う。流石にここでこれ以上の発展は無理だから、今は心の篭った口づけで勘弁
   してもらうしかない。お互いを確かめ合うような長い長い口づけは何時までも続いた・・・。



    駅ビル内部レミセンにエシュリオスとエフィーシュが訪れる。今では有名なアイドルへと
   進化した双子だけに、サプライズゲストとして大絶賛を浴びた。

    一応臨時の護衛役にリューアとテュームが着くが、双子の方も格闘術を身に着けている事
   から対して心配はしていないようだ。


メルデュラ「シンシアさんが漫画家になるために努力中ですよ。」
ミスターT「凄いな・・・。」
    今は駅前と駅ビル内部のレミセンを行ったり来たりを繰り返すシンシア。その合間に修行を
   積んでいる画力強化。その実力は目を見張るものだとメルデュラは語る。
シューム「以前絵をあげたそうじゃない。アレで感化されたようで、君がいない間ずっと練習を繰り
     返していたわ。」
ミスターT「漫画家か・・・。俺のもう1つの夢だったが、今は風来坊の方が定着してる。」
シューム「まさか・・・また旅に出るつもりなの?」
ミスターT「いやいや、それはない。ただ俺の存在としては、覆面の風来坊の方が合うかなって。」
メルデュラ「縁の下の力持ちですからね。」
   メルデュラが例えるのは、三島ジェネカン・躯屡聖堕・警察機構の例だろう。3つとも今の
   日本を支える重要な役割だ。特に躯屡聖堕の存在は、ここ3年間で爆発的に強くなった。
シューム「躯屡聖堕の総本山はアマギHちゃんとユリコYちゃんだからね。それに色々と都市伝説が
     存在して、ヤンキー・不良・ヤクザとかは関わりたくないそうよ。」
メルデュラ「犯罪も結構減ってるようです。極悪犯罪は相変わらずですが、万引や恐喝などの犯罪は
      減少にありますよ。」
   細かい犯罪が撲滅されるのはいい事だ。それが大きな火種になる前に消えるのだから。問題は
   極悪犯罪だろう。これは十分注意しないといけないな・・・。


シューム「君の殺気と闘気も話題になってるわよ。」
ミスターT「アレか・・・。」
    ゼラエル・ベロガヅィーブ・スカーレットといった犯罪者を徹底的に黙らせた、俺の十八番
   とも言える殺気と闘気の心当て。悪人ですら当てられて再起不能までに至っている事から、
   普通の人に行った場合は計り知れない。
メルデュラ「悪人を心の底から黙らせる、ドギツイ感情の塊。」
シューム「躯屡聖堕の中でも、君だけは絶対に怒らせないように心懸けているそうよ。」
メルデュラ「怒らせたら心を殺されるって大評判です。」
   何なんだその大評判ってのは、俺はそこまで危険人物じゃない・・・。何なんだか・・・。
   相手に対して心理戦を用いるタイプとなる俺の殺気と闘気。これは正しく悪人キラーと言える
   だろう。
シューム「そのうちライディルさんから直に依頼が来るんじゃないかな。」
メルデュラ「そうですね、悪人の心を折ってくれと。」
ミスターT「過剰な期待は止めてくれ・・・。」
   まあこれらが犯罪撲滅に一役買えるのなら担うべきだろう。が、それ以前の問題だ・・・。
   まるで俺の方が危険人物になるじゃないか・・・。
シューム「でも・・・君になら心を折られてもいいなぁ・・・。」
メルデュラ「私も思います・・・。」
ミスターT「この野郎・・・。」
   変な解釈をしだしたよ・・・まったく・・・。俺の方こそ6人に心を折られたと言った方が
   正しい。でなければ心と身体を通じ合う事などできる筈がない・・・。

    まあそれでも彼女達の心の支えになれるのなら、誠心誠意応じるのが俺らしいわな・・・。



    やはり夏場だけあって来店するお客さんは多い。俺は臨時のウェイターを担うが、それ以外
   はシュームがウェイトレスを担っている。厨房はメルデュラが担当し、今ではシンシアと大差
   ない程の熟練者となっていた。

    殆どがカウンターの隅で新聞や店内に流れるFM音楽を聞き入るぐらいだ。一服しながら
   コーヒーを啜る一時が堪らなく落ち着く・・・。


リュリア「こんちゃ〜。」
メルデュラ「いらっしゃい。」
    暫く落ち着いた一時を満喫していると、リュリアが入店してくる。タンクトップに短パンと
   いうボーイッシュな出で立ちは、何処にでもいるような女の子の色を見せている。
リュリア「お兄さん、デート行こっ!」
   そして間隔空けずに俺に対してデートをしてくれと言いだしている。最近俺に対してアタック
   が多い。まあ彼女も年頃だから仕方がないが・・・。
シューム「あまり引っ張りまわすんじゃないよ。」
リュリア「任せて〜っ!」
   シュームの肝っ玉がそのまま受け継がれ、そしてじゃじゃ馬度が増した存在。ある意味親友の
   中で一番危険な存在なのかも知れない。
   ヴェアデュラをシュームに託し、リュリアに手を引かれて本店レミセンを後にした。



    連れて行かれた先はボーリング場だった。そう言えばボーリングはここ数十年やった事が
   ない。最後にやったのは18前後だろうか。

    しかしリュリアの投球は凄まじい。荒くれ者が投げるようなものだが、それでもストライク
   を奪う確率が非常に高かった。俺はスペアこそ狙うが、ストライクの数から押されている。


リュリア「ぷぅはぁ〜、うまうまぁ〜。」
    2ゲームを投げ終えて一服する。ジュースを一気飲みし、満足そうな笑顔を浮かべている。
   これがシュームの若かりし頃の姿だとすると、思い人の男性はさぞ苦労した事だろう・・・。
ミスターT「満足そうだな・・・。」
リュリア「まだ足りないじぇ、もう1ゲーム行こっ!」
   そう言うと再ゲームをしだす。この美丈夫は疲れを知らないのか・・・。まあ乗り掛かった
   船を途中下船はできない。ここは最後まで付き合うしかない・・・。



リュリア「ただいまぁ〜!」
シューム「おかえり〜。」
    本店レミセンへと戻る。結局あの後3ゲーム追加で、合計5ゲームも投げたのだ。元気一杯
   のリュリアとは対称的に、俺はヘトヘトのボロボロだ・・・。
リュリア「遊びに行ってくるねぇ〜。」
   挨拶もそこそこに再び飛び出していく。彼女の強さに当てられ、俺はカウンターに俯せた。
   とてもじゃないが追い付いていけない・・・。

シューム「大丈夫?」
ミスターT「パワフルすぎる・・・。」
    身体中が物凄く痛い。まあ久し振りにボーリングを5ゲームもやれば、筋肉痛になるのは
   言うまでもないわな・・・。
メルデュラ「でもリュリアさん、凄く嬉しそう。」
シューム「だねぇ〜、あそこまで嬉しい表情は見た事ないわ。」
   しかしリュリアの一時の安らぎに貢献できた事だけは誇りに思う。俺が望むのは一同の幸せ
   なのだから。
シューム「リュリアも貴方の事が好きなのよ。初めて会った時に人見知りしないで接したのだから、
     その度合いは尋常じゃないわ。」
ミスターT「ここに立派な未来像があるじゃないか・・・。」
メルデュラ「フフッ、確かに。」
   リュリアの未来の姿はシュームそのものだ。活発でお転婆でじゃじゃ馬、どこまでも純粋に
   突き進む姿は瓜二つである。
シューム「・・・今夜は寝かせないからね。」
   からかい半分で呟かれると身体中に寒けが走った。この親子は間違いなく危険すぎる・・・。
   まあ・・・なるようになれだろうな・・・、何とも・・・。



    日が暮れて、辺りが夕闇に染まる頃。中央公園では盆踊りが始まった。昨日エリシェ宅に
   集まった面々が再び集う。今度は浴衣姿での出で立ちだ。

    他の面々は色々な出店へと群がっていく。俺はシュームやウインド達、つまり控えめの性格
   の面々と一緒にいた。


シューム「こらっ、走り回らない!」
    今年中学1年になったというのに、それを感じさせないぐらい幼さ爆発のリュリア。学校内
   でも妹のように可愛がられているという。まあ言動を見ればそう思いたくもなる。
ミスターT「まあ好きにさせよう。」
リューア「陰から見守ります。」
テューム「お任せを。」
   密偵は任せろをいった雰囲気のリューアとテューム。この場合は本家の役職に任せた方がいい
   だろう。突っ走るリュリアを尻目に、遠目で彼女を見守り続ける双子の美女達。

ミスターT「こういう場合はプロに任せよう。」
シューム「でも・・・。」
    お転婆娘を気遣いオロオロしているシューム。その彼女をソッと抱き寄せ、目と目を見つめ
   合う。瞳は相変わらず何処までも澄んでいる。
ミスターT「君には俺の相手をして欲しい、ダメかい?」
シューム「あ・・・は・・はい・・・。」
   頬を染めて俺を見入るシューム。一瞬にして不安な心を払拭したと思う。あまり使いたくない
   色仕掛けだが、時と場合によっては十分だろう。

ウインド「羨ましいですねぇ〜。」
リデュアス「ホンとホンと。」
シューム「こ・・こらぁ〜!」
    からかわれて赤面しながらウインド達を追い回すシューム。彼女もリュリアと全く同じだ。
   その彼女達を見つめながら一服する。こういう一時もいいものだな・・・。



アマギH「兄貴っ!」
    盆踊りの運営部まで差し掛かった時、不意に声を掛けられる。それは町会長として参加して
   いるアマギHだ。付き添いにユリコYの姿もある。
ミスターT「よう、元気か?」
アマギH「この通り、ピンピンしてますよ。」
ユリコY「マスターもお元気そうで何よりです。」
   俺を呼ぶ口癖はそのままだが、物腰はすっかり柔らかくなっている。3年前とは見違えるほど
   である。

アマギH「ライディル氏から聞きましたよ。また悪党を退治したそうで。」
ミスターT「ああ、スカーレットの件か。」
ユリコY「こちらも情報提供を呼び掛けていたのですが、まさか格闘術大会に乱入するとは。」
ミスターT「まあ心を折ったから大丈夫だろう。また悪さするようなら・・・、フフフッ。」
    無意識に不気味に微笑んでしまう。それを見たアマギHとユリコYは顔を青褪めている。
   俺の殺気と闘気をいち早く知った存在なのだから、その凄さは一番知っているだろう。

アマギH「ま・・まあ、ほどほどにね・・・。」
ミスターT「お前達も無理無茶するなよ。」
ユリコY「了解です。」
    今も躯屡聖堕のメンバー全員の代表を務めるアマギHとユリコY。今は地域と社会貢献に
   心から精を出すボランティアチームのヘッドでも。
   もはやこの2人や全メンバーの活躍は、地域にとってなくてはならない存在にあるだろう。



    盆踊りの中央台。丁度踊りをしている所では、エシュリオスとエフィーシュが一緒になって
   踊っている。人気絶頂のアイドル自ら訪れたとあって、周りの人は大騒ぎだ。

    まあ双子の無言の圧力もあり、周りには迷惑を掛けず邪魔もしない程度にしている。ここは
   しっかりしてるよなぁ・・・。

ディルヴェズ「お久し振りです先輩っ!」
ミスターT「元気そうだね。」
    射的屋台の所にディルヴェズがいた。傍らには赤髪の女性がいる。雰囲気からして、彼女で
   あろう。
ミスターT「こちらは彼女かな?」
ディルヴェズ「はい・・・、ヴァルラームといいます。」
ヴァルラーム「初めまして・・・。」
   彼女の目を見て直感した。肝っ玉はヴァルシェヴラームと同じく、どこまでも据わっている。
   赤い髪の女性はリューアとテュームと同じで、知的美人風な雰囲気を出している。

ミスターT「ディルの事を頼むよ。こう見えてもナイーブだからさ。」
ヴァルラーム「は・・はいっ!」
ディルヴェズ「もう・・・何言ってるんですか・・・。」
    本来は逆の言い回しをするのだろうが、どう見てもヴァルラームの方がディルヴェズより
   年上に見えてしまう。ここは彼女に任せてしまうのは自然の流れなのかも知れない。


ヴァルシェヴラーム「あら、ヴァルじゃない。」
ヴァルラーム「シェヴさんっ!」
    不意に声を掛けてくるはヴァルシェヴラーム。ヴァルラームとの応対から親しい間柄だと
   確信した。
ミスターT「知り合いなのか。」
ヴァルシェヴラーム「ヴァルも孤児の1人よ。私自ら引き取って育てた事があって、実の娘のように
          接していたわ。」
ミスターT「なるほど・・・、シェヴを除けば同じ名前なのはその事か・・・。」
   多分名前に困っていた事を推測し、自分からシェヴを取り除いて名前にしたのだろう。俺と
   同じく、困ったら何でも使うクチだからなぁ・・・。

ヴァルラーム「もしかして・・・シェヴさんが仰っていた方って、こちらの方ですか?」
ヴァルシェヴラーム「そうよ。今は覆面の風来坊、または覆面の悪人心折とも言われてるわ。」
ミスターT「あ・・悪人心折(あくにんしんせつ)かよ・・・。」
    前者はいいとして、後者の覆面の悪人心折って何なんだ・・・。まあライディル達と親しい
   から、その流れが来たのだろうが・・・。こちらとしては困りものだ・・・。
ディルヴェズ「自分も幼い頃に助けて頂きました。」
ヴァルシェヴラーム「東京駅の件ね。風来坊になる前から人助けしてるのだから偉大だわ。」
ミスターT「全てシェヴさんの影響ですが・・・。」
ヴァルシェヴラーム「それは言わない約束よ。」
   ヴァルシェヴラーム曰く、俺の事を直系の弟子と言っている。そして次の弟子はエシェラと、
   まだ幼いヴェアデュラと。偉大な師匠がいるからこそ、俺達が成り立つ訳でもある。

    これ以上デートに水を差してはマズいと思い、ディルヴェズとヴァルラームの元から去る。
   合流したヴァルシェヴラームと一緒に、一旦噴水がある場所へと移動した。

    後半へと続く。

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