アルティメットエキサイティングファイターズ・外伝 〜覆面の風来坊〜
    〜第3部・第9話 永遠のパートナー1〜
    ジェリヴァ・アビゲイル一味は呆気なく逮捕に至った。そもそも後半は追い詰められての、
   殆ど破れかぶれな状態であった。

    あのインフルエンザ企業間抗争の時のような勢いは既になく、衰退の一途を辿っていたと
   言えるだろう。

    それでも彼らがいたからこそ得られたものも数多い。不思議な事にあれだけの出来事を引き
   起こしていながら、死亡者は全くいないというのも驚きである。まあ被害者は数多くいるのが
   実状だが・・・。

    俺達が陰ながら尽力し続けたのも1つの要因だが、それは一切踏まえないでおこう。この
   一件の勝利は日本中の、いや世界中の人々の勝利とも言えるのだから。


    それと娘達が旅立つ前に大きなイベントが残されている。アマギHとユリコYの挙式だ。
   今回の一件が終わったら式を挙げると言っていただけに、周りは大張り切りで手伝っている。

    彼らと知り合って約28年、我が弟妹のように接してきた。その2人が結婚するとあって、
   最大限の祝福をしてあげたい。



ミスターT「学園の体育館を使うとはな・・・。」
ナツミYU「お2人とも目立つ事はしたくないとあって、態々こちらを貸し切りたいと願い出てきた
      のですよ。」
    式典の運営はナツミYUが取り仕切っている。総合校長を引退したとはいえ、その手腕は
   まだまだ健在である。そして傍らで一緒に動いているアサミとアユミも見違えるように美しく
   成長したわな・・・。
ミスターT「あの大人しい姉妹が美人姉妹に変貌か・・・。」
アサミ「そう言うマスターは全くお変わりないじゃないですか。」
アユミ「私達が段々母の全盛期の姿に似てきだしたと、周りからはよく間違わられます。」
ミスターT「ナツミYUに似てナイスバディだしなぁ・・・。」
   何時もの癖の口説き文句に顔を真っ赤にして俯くアサミとアユミ。しかしその頬を染める姿
   すら美しく見える。月日が過ぎ去るのは早いものだわ・・・。

ナツミYU「む・・娘を口説かないで下さい・・・。」
ミスターT「ならお前さんならいいのかい?」
ナツミYU「そ・・それはそれで・・・困りますけど・・・。」
    娘達を口説くなとヤジを飛ばすナツミYU。今度は彼女にターゲットを向けると、案の定
   双子と同じように赤面して俯いている。本当にソックリである。
アサミ「母には何度か再婚をと語っているのですが、今のままで十分幸せだとの一点張りで。」
アユミ「そろそろ自分自身の事を労わって欲しいものです。」
ナツミYU「いいのよ、貴方達が幸せなら何もいらないわ。」
   一瞬にして母親の姿に戻る。ナツミYUの心情は、己を犠牲にしてでもアサミとアユミを幸せ
   にしたいという一念が強い。だからこそ、今もパワフルワイルドウーマンを貫けるのだろう。


ミスターT「ここだけの話だが、お前が心寂しい時は何時でも応じるよ。ただしシューム達には呉々
      も内緒にしてくれ。何を言われるか分かったもんじゃないから。」
ナツミYU「は・・はい・・・。」
    既に何度か彼女の要望で一夜を共にした事がある。純粋に癒しを求めているだけに、彼女の
   場合はエシュリオス・エフィーシュ姉妹やヴァルシェヴラームと同じだろう。
アサミ「マスターにはご迷惑をお掛けします。」
アユミ「母をよろしくお願いします。」
   アサミとアユミも、ナツミYUと俺との関係を知っている。それすらも受け入れられるという
   部分では、それだけ彼女が苦労の連続であった事が十分理解できた。

ミスターT「何かなぁ・・・俺も気苦労が絶えないわ・・・。」
アサミ「フフッ、それだけ皆さんは貴方を心から慕っていらっしゃるのです。」
アユミ「私達がマスターと初めてお会いした時。丁度母との食事がキャンセルになった時ですね。
    貴方は自分が代わりに応じると気さくに仰ってくれました。」
アサミ「あの時の嬉しさは今も忘れていません。マスターのような心の広い人物になりたいと、常々
    思い続けてきましたので。」
ミスターT「・・・流石はナツミYUの愛娘達だわ。」
    エシェラと同年代なのだが、この2人の方が遥かに大人びいている。というかエシェラ自体
   も十分大人びいているが、それを超越する形なのがアサミとアユミだろう。

ナツミYU「マスター、これからもよろしくお願いします。」
ミスターT「大丈夫よ、心配しなさんな。」
    ナツミYUが深々と頭を下げてくる。その彼女の前に跪き、右手を優しく掴む。そして手の
   甲に口づけをしてあげた。
ミスターT「シュームも言っている、分け隔てない愛情をと。それを俺は一生涯貫き通していく。
      お前さんの一時の癒しも心から応じるよ。だから心配するな。」
ナツミYU「あ・・・ありがとう・・ございます・・・。」
   滅多な事では泣かないナツミYUが、涙を流しながら嬉しがっている。その母を優しく気遣う
   アサミとアユミ。この母ありてこの双子あり、これからも彼女達を支えていかねば・・・。



ミスターT「よう。」
エシュリオス「あ、お兄さん。」
エフィーシュ「お久し振りです。」
    スペシャルゲストとしてエシュリオスとエフィーシュも登場するようだ。今ではテレビ番組
   にライブに引っ張りだこの美人双子歌手である。また最近では女優にも挑戦しており、日々の
   研鑚は目覚ましいものだ。この美丈夫がエシェラの従姉妹なのだから驚きであろうな。
ミスターT「一段と美しくなってまぁ・・・。」
エシュリオス「お・・煽てたって何もしませんよ・・・。」
エフィーシュ「気を許すと何時もそれなのですから・・・。」
   言葉では難癖を付けているが、俺の口説き文句に嬉しい表情を浮かべている。ラフィナが途中
   で歌手道を断念したため、その分も2人が受け継いで戦ってくれていた。

ミスターT「ラフィナが何度も言ってたよ。自分の代わりに戦ってくれていると。自分も同じ道を
      進みたかったと口癖のように言っている。」
エシュリオス「ご存じです。エリシェ様もバイオリニストの道を断念して、今の福祉業や財閥の運営
       に携わっていらっしゃいます。」
エフィーシュ「お2人の分も頑張らないといけません。デビュー自体はお2人より早いですが、私達
       はラフィナ様とエリシェ様の名代ですから。」
ミスターT「ありがとう。」
    今では肝っ玉がエラい程に据わっているエシュリオスとエフィーシュ。初めて会った時の
   オドオド感は一切ない。こと双子の場合はお互いに協力し合うためか、成長速度は尋常では
   ないぐらいに早いようだ。


エシュリオス「それと・・・機会があれば・・・。」
エフィーシュ「また・・・お願いできますか?」
ミスターT「・・・シューム達には内緒な。」
    彼女達の陰の原動力は、こういった俺とのスキンシップである。ナツミYUと同じく自分に
   自信が持てなくなった時に、必ず俺に慰めてくれと語ってきている。
   芸能界で強者と知れる美人姉妹とも関係を持つ、か・・・。本当に熱心なファンが知ったら
   殺されるわな・・・。



    その他にも久し振りに会う人物達とコミュニケーションを取り合った。各方面で色々と活躍
   しているとあって、今は充実した時を過ごしているとの事である。

    みんな元気そうで何よりだ。その瞬間を大切に、自分自身の生き様を刻んでいって欲しい。
   まあ愚問だろうけど・・・。



ミスターT「ウエディングドレスは着ないのか。」
ユリコY「今更おめかししたって意味はありませんよ。」
アマギH「タキシード着用などの堪能はセアリムさんの写真館で何時でもできますし。」
    結婚式とはいっても、今日この場は婚姻届にサインをして指輪の交換だけだという。衣服の
   着替えによる催しは一切取らないようだ。現にアマギHとユリコYは普段着のままである。
ミスターT「まあ・・・お前さん達がそうしたいのなら何も言うまいよ。」
アマギH「むしろこっちの方を着たいと思ってます。」
   そう言うと2人してバックから衣服を取り出す。それを見て唖然とした。何と全盛期に着用
   していた、暴走族・躯屡聖堕の特攻服だった。

ユリコY「私達の根本はあくまでも暴走族のままです。今でこそボランティアチームですが、この
     原点は曲げずにありたいものですよ。」
アマギH「もちろん元に戻るという意味ではありません。暴走族の姿の時が、自分達の本当の有りの
     ままの姿だと確信しています。」
ミスターT「今も躯屡聖堕チームに入会ではなく、入隊と言い切っているのはそれだよな・・・。」
    元暴走族のアマギHとユリコY。しかし2人がリーダーとなって運営しているボランティア
   チームの躯屡聖堕フリーランスは、数々の人道支援を行ってきた。最初は白い目で見られて
   いたが、今は誰もが最強のボランティアチームだと語り認めている程だ。


アマギH「今日という日を迎えられたのは、ミスターTさんのお陰です。」
ユリコY「あの時お節介ながらも手を差し伸べてくれた事により、今日の私達が存在しています。」
アマギH「今日の結婚式は貴方に対しての感謝祭でもあります。その晴れ舞台にユリコYと婚姻を
     結べる事に、心から感謝しています。」
    両者の労いに涙が溢れてくる。覆面の風来坊として地元に戻ってから直ぐに2人との運命的
   な出会いがあった。あの時先を見据えて行動をした結果が今なのだ。
ミスターT「・・・俺の存在も無駄ではなかったわな・・・。」
アマギH「何を仰います。貴方は私達の大切な恩人であり師匠です。その師恩に報いるのが弟子たる
     役目。これからもお付き合いして頂きますよ。」
ユリコY「人に尽くしてこそ人を理解できる。あの拘置所での1年間もそうでした。だからこうして
     アマギHと一緒になれるのです。ミスターTさんには感謝しています。」
ミスターT「ありがとう・・・。」
   徐に2人を抱き寄せ胸に抱いた。それに慌てる両者だが、彼らも最大限の抱擁をしてくる。
   この2人とその理があれば、今後の躯屡聖堕チームの礎は完璧だ。確信を持って言い切れる。



ヴェアデュラ「ねね、どうこれ?」
    その後もアマギHとユリコYと雑談をしていると、ヴェアデュラとウエスト達が訪れる。
   しかしその出で立ちを見て唖然とした。何とアマギHとユリコYが持っている特攻服と全く
   同じのを着込んでいるからだ。
ミスターT「阿呆・・・。」
ヴェアデュラ「ひどーい、これは躯屡聖堕チームの正装ですよ。」
サイバー「最初は戸惑いましたが、これを着ると勇気が沸いてくるのです。」
ウエスト「頭の方も冴えてきまして、例のハッキングも簡単に行えましたし。」
エンルイ「流石に表に出て着る勇気はありませんが、こういったイベントでは着たいものです。」
ナッツ「俺達の決意表明とでも言いましょうか。」
ミスターT「何とも・・・。」
   ウエスト達が着込む姿は非常に様になっている。4人とも体躯が優れているため、こういった
   厳つい外見は特に似合っている。しかしヴェアデュラの方は怖い姉ちゃんと化していた。

ヴェアデュラ「そう言えばお父さんの正装は?」
ミスターT「特に拘りを持たなければ、このままでいいよ。」
    俺の普段のスタイルは、ロングにズボンにベストにコートの4つだ。そして頭には覆面を
   着用しての、完全な覆面の風来坊スタイルである。
ヴェアデュラ「その容姿もいいのぉ・・・。」
ミスターT「何だかなぁ・・・。」
   男らしさの部分ではアマギH達には到底敵わないが、俺はこのスタイルを一生涯貫き通して
   いきたいものだ。覆面の風来坊はまだまだ終わりではないのだから。



    ようやく式場の準備が整ったようだ。色々な旧友や盟友と語り合っているうちに終わった
   ようである。

    まるで普通の学業の全体集会のような雰囲気が色濃いが、これはこれでいいのだろうな。
   型破りな事を続けるのがアマギH達の心情なだけに、このぐらいは普通と取るべきだろう。


    特攻服に身を包んだアマギHとユリコY。そして躯屡聖堕チームに所属するメンバー達。
   端から見れば暴走族の集会のようである・・・。

    しかしどの面々も清々しい表情を浮かべている。あの葛西臨海公園で初顔合わせをした時の
   ギラギラした雰囲気は一切ない。己の生命・生き様を十分に楽しんでいるかのようである。



ナツミYU「静粛に。ただ今より、新郎・東山天城氏と新婦・米山由利子氏が婚姻届けにサインを
      行います。」
ミスターT「相変わらず堅いなぁ・・・。」
    スーツ姿のナツミYUがマイク片手に開会の音頭を取り出す。しかし長年からくる性格から
   して仕方がないのだが、彼女の喋り方は堅物としか言い様がない。それに彼女を知る面々は
   苦笑いを浮かべている程だ。
ナツミYU「な・・なら・・・貴方が取り仕切って下さい・・・。」
ミスターT「ご用命とあらば・・・。」
   俺の言葉に膨れっ面になる彼女。その普段は決して見せない表情に、周りは呆れつつも微笑
   ましい視線を送っている。彼女からマイクを受け取り、そのまま開会の音頭を取り仕切った。

ミスターT「新郎アマギHと新婦ユリコYの婚姻式を始めます。本来ならば正式な結婚式として盛大
      に式を挙げたいのですが、2人たっての希望とあり現在の流れになりました。」
シンシア「キスはまだぁ〜?」
ウィレナ「アツいディープキッスを希望ぅ〜。」
ミスターT「こらそこ、ヤジを飛ばさない。」
    こちらを気にしてか、シンシアとウィレナから見事なヤジが飛んでくる。それに間隔空けず
   に突っ込み返す。この夫婦漫才風な流れは普段のものだ。それに周りは爆笑している。


ミスターT「その前に少しお時間を。昔を振り返ると、本当に不思議な流れだと思います。躯屡聖堕
      と言えば日本では誰もが知っている最凶の暴走集団と言われていました。それが今では
      世界中にその名を知らない者はいないとされる、躯屡聖堕フリーランスという未曾有の
      ボランティアチームに至っています。」
    過去を振り返りつつ、自分と出会った頃の雑談を始めた。それに草創期から関わっている
   メンバーはウンウンと頷いている。

ミスターT「俺が切っ掛けとして目覚めたとアマギHとユリコYは言いますが、自分はそうは思い
      ません。2人の心中には止めたいという一念が強かったと思います。またこれは全ての
      メンバーにも当てはまるでしょう。無意味に爆音を掻き立て暴れまくる、それに嫌気が
      差していたと確信できました。」
    久し振りに地元に戻ってきての出来事なだけに、この一件は本当に印象深く脳裏に残って
   いる。それは全メンバーもしかりであろう。

ミスターT「俺という存在が無駄ではなかったという事が痛感できました。お節介ながらも目の前の
      人を支え抜いていく。それが今のこの場なのですから。皆さん在っての自分自身だと
      確信もしています。」
    一同からアマギHとユリコYの方に向く。それに驚く2人だが、照れ臭そうに笑い出しても
   いた。

ミスターT「今日ここに集い会えた事は、俺自身の一生涯の宝としたい。この2人がお互いを永遠の
      パートナーとして信頼し合う事を心から願う。楽しい時も辛い時も決して膝を折らず、
      テメェの生き様を貪欲な限りに貫き通していって欲しい。」
    テーブルにあった紅茶のグラスを手に持つと、それを2人に向けて高らかに掲げた。そして
   最後の一声を語る。

ミスターT「おめでとう、末永く幸せに!」
    俺の一声に周りも続いていった。体育館に轟くような祝福コールが響き続ける。耳が痛い
   ほどであった。


    そのまま手に持っているグラスを一気に飲み干した。が、とんでもない事実が判明した。
   その内容物は何とワインだったのだ。

    酒に滅法弱い自分は、この一気飲みで瞬時に酔い潰れていく。それに気付いたメルデュラが
   咄嗟に駆け付け、俺を支えだしている。


メルデュラ「あれだけ貴方には紅茶にしろと言ったのですが・・・。」
ミスターT「ハハッ・・・まあ一生に一度ぐらいはね・・・。」
    俺の泥酔を目の当たりにしているメルデュラだからこそできた行動だろう。それにアマギH
   達はもちろん、周りの面々は一瞬にして青褪めてしまっている。
ミスターT「俺の事は・・・気にしなくていいから・・・続けてくれ・・・。」
   酒の回りが早いのは体質なのだろうか。数分前に飲んだワインにより、一気に頭がクラクラ
   状態に陥っていった。その俺を支え体育館の外へと運んで行ってくれるメルデュラ。


    新郎新婦の周りは一気にシラケたが、ムードメーカーたるシュームやシンシア・ウィレナが
   場を和ませだしている。それにリュアとリュオ・ナツミAとミツキが更に盛り上げていた。

    今は彼女達に任せよう。今の俺は何もできない状態に陥っているのだから。



メルデュラ「迂闊でした・・・。」
ミスターT「気にしなさんな・・・。」
    体育館から離れ、ナツミYUが手入れしている庭園へと足を運ぶ。そこは寝転べるほどの
   スペースがあり、俺のコートを引きその上に座るメルデュラの膝枕の厄介になっていた。
メルデュラ「あの時と同じですね。でも今回のは一気飲みでしたから、酔いが早く回ったかと。」
ミスターT「酒はダメだなぁ・・・。」
   俺がアマギH達に何度か飲み会に誘われても断り続けてきた事を、彼らはしっかり理解して
   くれただろうか。メルデュラは俺の泥酔は把握しているが、他の家族達や友人・知人達は今日
   初めて知ったのだろうから。

メルデュラ「でも・・・貴方のスピーチ、感動的でした・・・。」
ミスターT「殆ど武勇伝に近かったけどね・・・。」
    俺の頭を優しく撫でてくる。その手に自分の手を合わせた。今年51歳という熟年に達した
   メルデュラだが、その眼差しは全盛期の彼女そのものである。
ミスターT「・・・本当に美しいよな・・・。」
メルデュラ「な・・何を突然・・・。」
ミスターT「シュームとは7歳しか離れていないのに・・・あれから全然歳を取っていないような
      雰囲気だよ・・・。」
メルデュラ「こう見えても努力はしています・・・。若く見せるように日々のストレッチから笑うと
      いう行動も・・・。」
ミスターT「ああ、そうだったね・・・。」
   メルデュラの容姿は常々の努力の賜物だ。シュームもそうだが、毎日のストレッチは欠かさず
   行っている。だから今もワイルドウーマンを貫き通せるのだから。

メルデュラ「・・・貴方も魔物です、初めてお会いした時から全く容姿が変わりません・・・。」
ミスターT「まあなぁ・・・。」
メルデュラ「何れメルテュアとメルテュナも外見の老化が止まると思います。羨ましいですよ。」
    シュームも最近語っていたが、俺達の外見の老化が訪れない特異体質に強い憧れを見せて
   いる。それだではないというのが事実なのにな・・・。
ミスターT「ここが老いなければ、永遠の若さを保てるよ・・・。」
   重い右手を持ち上げ、彼女の両乳房の間に置いた。心こそ大切なれ、それが永遠の若さを保つ
   何よりの秘訣である。その俺の手に自分の右手を重ねるメルデュラ。
メルデュラ「・・・失言でした。」
ミスターT「フフッ、大丈夫さ。全て分かっているから・・・。」
   メルデュラ自身も不安なのだ。自分達の命には限りがあり、来世に巡っても自分という生命体
   ではなくなる事を。だからその瞬間を命に焼き付けているのだから。

ミスターT「分け隔てない愛情、これからも続けて行くから心配するな・・・。」
メルデュラ「分かってます・・・。」
ミスターT「本当かなぁ・・・。」
    どこか上の空に近い彼女の応対に、疑問染みた返しをする。それに膨れ顔になり、俺の頬を
   軽く抓ってきた。
メルデュラ「馬鹿にした発言は・・許しません・・・。」
ミスターT「お前が可愛いからな・・・。」
   反論してくる彼女だが、口説き文句の返しをすると顔を真っ赤にする。そう来たかと呆れては
   いるが、目線は何時になく優しさが込められていた。
ミスターT「大丈夫さ・・・大丈夫・・・。」
   急激に眠気が襲って来だす。それを感じた彼女が優しく肩を叩いてくれた。その安堵感により
   夢の中に旅立っていく。

    そう言えばアメリカから5年振りに地元に戻った時も同じに近かった。メルデュラに無理
   矢理酒を飲まされて、泥酔に近い状態に至った。その後休んで何とか持ち直したが、結局は
   エラい眠気に襲われ続けていたわ。

    眠れない場合などに少量の酒を服用するのもいいかも知れないが、それを窺い知った妻達に
   何をされるか分かったもんじゃないわ・・・。

    俺がメルデュラの膝で休んでいる最中、体育館の方では大盛り上がりの様子であった。まあ
   アマギHとユリコYの新たな門出である。ここは大いに盛り上がって貰いたいものだわ。

    後半へと続く。

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