アルティメットエキサイティングファイターズ 〜集いし鋼鉄の勇者達〜
    〜第18話 異なる展開〜
    先程ライアが再び模擬試合の企画を持ち掛けてきた。ユキヤN達やライディル達が企画を
   打ち出した事に引かれてか、策士である彼女の闘士に火が付いたようだ。

    そして再びライア達が企画する模擬試合が展開される。今回はロスレヴとリタレヴとの中間
   に位置するストーリーである、「苦悩の罪・堕ち往く魔女」からの抜粋である。
   この模擬試合を了承したミスターT。しかし企画書を目にしてから苛立つ仕草を見せる。この
   行動が後に凄まじいものになる事は、誰も予想などするはずがなかった。

    では模擬試合へと移ろう。その前に、試合に入る経緯を軽く説明するとする。

    設定はリタレヴの前、まだライア達が生まれていない頃である。

    カールという青年と結ばれたレイス。幸せな家庭を築き、子供をもうける。何不自由ない
   生活をしているかに見えたが、それに納得しなくなりだすレイス。

    その後、我武者羅に私利私欲に動き出したレイス。カール達の願いとウインドも心配しても
   あり彼女を正そうとする。しかしそれは逆効果に終わり、彼女は彼らの元から姿を消した。

    数ヵ月後、レイスは戻ってきた。破壊の魔女、レイスNとしてである。

    ここからの文面は本編から抜粋するとする。また補足としてベルフォートはリックの愛機名
   であり、ダークネススターはレイスNの愛機名である。

    ウインドが世界を駆け回っている最中、避け難い現実が舞い降りた。破壊神へと変貌した
   レイスがトーベナス社に戻って来たのである。
   突然社外にレイスの愛機ダークネススターが現れ、カールや息子夫婦は驚いた。ウインドが
   告げていた最悪の状態が訪れたからだ。
    ウインドから諭されていた。それはもし危険な事があれば迷わずレイスを殺せと。しかし
   実の母親を殺せる者がいるだろうか。カールも息子夫婦もそれは同じであった。
カール「気をつけろよリック。」
リック「ああ。」
    レイスの息子リック。レイヴンとしてアリーナで戦い続けている彼が、まさか自分の母親と
   闘わねばならなくなるとは思わなかった。こんな事の為にレイヴンになったのではないと、
   リックは心中で悲しんだ。

    表で待ち続けているレイス。リックは愛機ベルフォートに搭乗し、ガレージから表に出る。
   以前アリーナで修行の一環で対戦した両者。しかし今の対峙は殺し合いの場になるかも知れな
   かった。
リック「・・・母さん、本当に母さんなの?」
   リックは内部通信でレイスに呼び掛ける。しかし応答はなく、黙ってその場に待機するだけで
   あった。
リック「・・・もし母さんが僕らを殺そうとするなら、僕も容赦しない。」
   震える声でリックは語り、愛機の武装をレイスに向ける。しかし相変わらずレイスは沈黙を
   守ったままだった。
   緊張が支配する。相手の出方が読めないリックは、ただ黙ってコクピット内部で動きを待つ。
   今まで体験した事がない程のプレッシャーがリックを襲っていた。

レイスN「・・・・・、貴様等は私を殺そうとするのか・・・。」
    どのぐらい経過しただろう、突然レイスNの声が辺りに響く。内部・外部音声を両方使い、
   リックやカール・ミキにも聞こえるようにしたのだろう。
   だが今まで聞いていたレイスNの声ではない。それはありとあらゆる憎悪が感じ取れ、その
   矛先は間違いなく自分達に向けられている。
レイスN「・・・いいだろう。その決意を抱いた事を・・・死んでから後悔するんだなっ!!!」
   ここでレイスNとリックとの対決が展開される。本来ならばレイスNにより、リックは瞬殺
   される設定である。
   負けるという設定を任されたリックは、少々やり辛そうにレイスNと指定リングへと上がって
   いく。

    が、何とここでイレギュラーが発生した。その本編内容を覆すかのように、リックに参戦を
   申し出る人物がいた。それはこの模擬試合を了承したミスターT本人であった。
レイスN「え・・・マスター何を・・・。」
リック「話が異なります・・・。展開では自分がレイスNさんに負けるのがセオリーですから。」
ミスターT「それはシナリオを書いた私自身が痛いほど理解している。」
   試合を開始しようとしているレイスNとリック。その2人の間にミスターTが割り入り、訳を
   説明しだす。
ミスターT「だがな・・・、むざむざと彼を死なせた内容を書いたのは私でもある。それに本編とは
      一切異なるこの世界、少々だが・・・内容を変えさせてもらうぞ。」
   感情移入しているというべきか、通常の内容に違和感を感じた創生者自らが動いてしまった。
   しかもその表情は今までにない怒りの形相。これは本編を書いている最中に、彼が思っていた
   内面をこの場に出していると言ってもおかしくはない。
ミスターT「ビィルガ達に怒られてしまうな、真のGMの権限悪用といった具合で。」
ビィルガ「ハハッ、気にしなさんなマスター。我々の行う行動の根本理念は、あくまで抗争ですぞ。
     それは襲撃・試合妨害、そして加勢もある。マスター自身も仰っているではないか、一同
     を賑わす試合を頼むと。」
ミスターT「だな。個人的な私利私欲という解釈に繋がるが、本編とは異なる展開を一同に見せると
      しよう。ロスレヴ系列本編でウインドがレイスNを殺して救うように、ここでは私が
      彼女を殺さずに救ってみせる。」
   ミスターTの心境が理解できた一同。本編ではウインドに殺されて目覚めたレイスN。それを
   この場では殺さずに目覚めさせるといった展開を望んでいるようだ。

    凄まじいまでの闘気を放出し、臨戦体制に入るミスターT。意外な形で増援を得たリックは
   複雑な心境であり、またレイスNも同様であった。
   しかし異なる展開を作者自らが創り上げようとする意味合いは大きく、その展開を大いに期待
   する関係者一同であった。

    試合内容について述べよう。試合はハンディキャップマッチ、型式はワン・オン・ツーで
   タッチ交代はなし。リングはアルマゲドン、ルールはKO・ギブアップ・DQ・リングアウト
   なし。


異展開模擬試合ハンディキャップバトル登場+試合動画

    (異展開模擬試合ハンディキャップバトル終了)
    本来は負けるはずのリックだが、ミスターTが参戦した事により内容が異なった。レイスN
   の完全敗退である。しかも怒りをぶつけているのか、凄まじいまでの勢いの戦いであった。
   極め技を何度となく相手に放ち、極め付けは相手の極め技を繰り出すという荒業。

    端から見ればレイスNを徹底的に痛め付けているとしか思えない。しかし倒された彼女の
   表情は痛みの苦痛はあるものの、心の痛みは一切ないように見える。
   全力で戦ったかに見えた試合だったが、ただ一点しか見定めて戦っているとしか思えない。

    それはレイスNという本編での役柄を見つめ、そして戦ったのはその悪心。この一点集中で
   ある。

ライア「え・・・え〜と、どうしたらいいでしょうか・・・。」
ミスターT「レイスNの悪心は浄化した。この場での失命されるリック・カール・ミキ・レイスと
      いう貴い命は救われた。これで思い残す事はない。」
    申し訳なさそうに一同に深々と頭を下げるミスターT。
   グロッキー状態のレイスNをその場に立たせ、自分の指を鳴らす。直後彼女の受けたダメージ
   は瞬時に完全回復する。もちろん共に交戦しダメージを受けたリックもである。
    その後足早にリングを後にした。まるで試合を行っていない状況に陥っているレイスNと
   リック。そして一部始終を見ていた一同は、ただただ呆気に取られるしかなかった。

ユキヤ「フフッ、マスターらしい。バッドエンド的な結末を、自分が本編でモットーとしている強引
    に捻じ曲げて終わらせるとは。」
シェガーヴァ「試合開始前の本編設定では私利私欲で殺された人々がいるが、メインキャラクターに
       焦点を当てた場所は誰も死なせずに済ませている。」
ユキヤ「本編で俺達が理想と思っても出来ず仕舞いだった事なのにね。」
    徐に語りだすユキヤとシェガーヴァ。本編で一部始終を窺っているのはこの2人である。
   本編では願っても話の道筋から実現は不可能な部分が多い。しかしそれを強引に捻じ曲げた
   作者のミスターT。この場だからこそ実現できる完全なイレギュラー要素であろう。
レイスN「マスターから打撃を食らった時、悲しみの一念が感じられました。おそらくはこのような
     展開を書いた事による、己に対しての怒りや苛立ちなのでしょう。」
   戦いを通して相手の心境が理解できる。格闘家などの場合は拳を交えるだけで、相手の心境を
   理解できるともいう。レイスNは無意識にミスターTから発せられる一念を強く感じ取って
   いたと言えよう。

ディーラ「実に面白い事をなされる。これなら、我々の悲惨な結末をも変える事もできるのかな。」
ラーサー「ジャオグ達にデェルダGI様やデュウバMI・ジェイズVを殺された場面ですね。」
    一部始終を見ていたフリハト第1部所属のディーラ達が語る。彼らのストーリーにも今の
   レイスN達が変えられた内容と酷使している部分があるからだ。
ミスターT「・・・総意が黙認するならば、異なる結末をここで実現させよう。」
   再び凄まじいまでの闘気と怒りを放出し、ミスターTが語りだした。先程の試合以上に凄ま
   じいもので、この勢いなら実現させてしまうと誰もが確信した。
ミスターT「ストーリーを展開する、ジェイズVは悪いが待機してくれ。メインのデェルダGIと
      デュウバMIとで、この場での物語の内容を書き換える。」
   再び指を鳴らすと直ぐ様リングが変更されていく。その手際のよさは凄まじいものがあり、
   今までの作業が嘘のように見える。
    創生者のミスターTが本気になった姿を垣間見る一同。全てにおいて迅速かつ威圧的に事を
   進める姿に、一同は違和感を感じずにはいられなかった。

    ストーリー展開は次のようになる。

    ディーラ達が行おうとしている理想の国の作成。それに後々から間違いだと気付きだした
   デェルダGI。しかし彼女の説得も虚しく、ディーラ達は事を進めようとしていた。

    自室で休憩させられたデェルダGIは、地下からの物音に気が付く。配下のデュウバMIと
   ジェイズVと共に地下室へと向かう通路を発見、その先でジャオグ達の陰謀を聞いてしまう。

    それにより、証拠隠滅と言わんばかりに3人の始末をするジャオグ達。その詳細な状態が
   次からの内容である。

女「へぇ〜噂をすれば何とやらだね。」
男2「今の話を聞かれたからには生かしておく訳にはいかない。」
    相手側の言動にジェイズVとデュウバMIは、鞘からそれぞれサンダーソードを抜き出す。
   デェルダGIも同じくサンダーソードを手に取った。
ジェイズV「デェルダGI様、この場からお逃げ下さい。ここは私達が引き受けます!」
デュウバMI「この事をディーラ様にお伝え下さい。命に代えても奴等を倒しますっ!」
   ジェイズVとデュウバMIはデェルダGIにそう告げ、相手側に突撃しようとした。だが自分
   達の身体が金縛りにあったみたいに動かない。
   そんな3人を尻目に男性2は不気味な笑みを浮かべ歩み寄ってくる。
男2「精神束縛魔法ルードディーム、精神を麻痺させ行動を封じる魔法。逃がしはせんっ!」
   男性1は短剣を手に持ち、ジェイズの元に近付く。そして短剣を胸に突き刺す。ジェイズは
   何もできないまま、次々と胸を刺され続ける。

    という内容になるものだった。だが男性2=ジャオグがこの発言をする前後に、ミスターT
   から今までにない闘気と殺気が放たれ、一同の行動を完全に抑制させてしまう。
ミスターT「・・・・・、己自身を恥じる。ストーリーの一内容だとは分かっている。3人や他の
      面々がその歴史を築き、その後の布石となる事も。」
   この場の試合に属するものはジャオグ・リウス・ゴルム・デュウバMI・デェルダGI、待機
   を告げられたジェイズVである。既に5人はリング上にスタンバイ中であり、試合の開始を
   待ち望んではいた。
    そこに物凄い形相でリングに上がるミスターT。先方暴君を演じていたメルシェード以上、
   間違いなく恐怖の暴君の再来である。
ミスターT「・・・あまり良くないが、この場の状況を飲んで役柄にのめり込む。」
   ジャオグ・リウス・ゴルムに対峙するミスターT。デェルダGIとデュウバMIの補佐役と
   して登場となるが、この場を見れば主役はミスターT本人であろう。
ミスターT「・・・そんな低級魔道師が使うような姑息な真似など片腹痛い。殺すつもりでやるなら
      初っ端から全力で戦え。無論、こちらも殺すつもりで挑むのは言うまでもないがな。」
   交戦者の5人と観戦する一同に寒けが走る。デュウバDの会話時の寒け以上のものが辺りを
   包んだ。それだけにミスターTの怒りと悲しみは何者をも凌駕している。

    自分の作り出した本編の内容、これに強い反感を覚えて動いている創生者は大問題である。
   だがこの絶対に味わえない現実を目の当りにして、一同は違和感と同時に歓喜も抱いている。
   本編をも揺るがす行動、それは創生者でしかできないものだからだ。

    今の現状を見れば、ミスターTは完全にイレギュラーであり悪役である。しかしこれもまた
   一同を沸かせる行動に繋がっていた。しっかりと役割を担っている彼である。

    試合内容を告げるとしよう。試合はイリミネーション・タッグ、形式はトルネード・6マン
   タッグ。場所はレイスN達が交戦したリング、アルマゲドン。ルールはDQのみ。


異展開模擬試合イリミネーション・タッグバトル登場+試合動画

    (異展開模擬試合イリミネーション・タッグバトル終了)
    前回以上に凄まじい試合となった。相手の攻撃などものともせず、ひたすら戦い続ける。
   前回も今回も掴み技を中心とせず、一方的なダウン打撃の乱打である。
   卑怯などといった概念など一切なく、ただ目の前の敵を殲滅する。この一点集中で動き続けた
   ミスターTだった。
    しかしデェルダGIやデュウバMIの補佐も行っている点は、流石は真のGMたる所以で
   あろう。

ミスターT「怒りや憎しみを抱く戦いはマイナス面になりやすい。しかし、目に留まる人物を救える
      力があれば素晴らしい事だ。無論、全ての人を救う行動も重要ではあるがね。」
    語りながら前回と同様に指を鳴らすミスターT。直後グロッキー状態の3人とダメージを
   蒙ったデェルダGI・デュウバMIを瞬時に完全回復させる。
   そして再び一同に深々と頭を下げ、素速くリングを降りていった。
ディルヴェズ「何だかなぁ・・・、マスターには似合わない行動ですよ。」
メルシェード「ま、意外性がある部分は自分達にも当てはまりますけどね。」
ディーラ「本編なら死亡が確定している3人を救って頂けた。非現実であれど嬉しい事です。」
   本編を知る面々が口々に感想を述べる。しかし異なる結末を垣間見た一同は満足げでもある。
   完全なイレギュラーバトルを観戦した一同、心中では複雑な心境を抱いているようである。

ミスターT「すまないな。」
    一旦休憩に入る一同。その中で何度も詫びるミスターT。自分の行動が間違いだとは思って
   いても、己の中の読者側からの観点はそれを許さなかった。それが彼のイレギュラーな行動に
   繋がったと言える。
ジャオグ「気にしないで下され。」
リウス「私達が戦えるのは、マスターのお陰なのですから。」
デェルダGI「これもいい余興の1つですよ。」
   誰一人として彼を責める者はいない。特に今の彼の状況を突いて行動を起こそうともできる
   ビィルガ達もである。それだけミスターTが真剣に介入したという事に繋がるであろう。
ビィルガ「我々はただ単に邪魔をする存在にしかなれない。マスターの本編を捻じ曲げるという行動
     ができるのは羨ましい限りです。」
ヴェルザス「その場に流されがちな俺達。それを根底から覆す行動は、なかなかできるものではない
      ですよ。」
ミスターT「フフッ、そう言ってくれると助かる。」
   一服しながら笑顔で応対するミスターT。先程までの勢いはどこへやら、今は穏やかな彼が
   その場にいた。
リュウジ「待ったなしで動けるのはマスターだけですよ。我々はマスターが敷いてくれたストーリー
     というレールの上を走り続けるしかない。縦横無尽に動けるのは羨ましい。」
ミスターT「各々で本編とは異なるストーリー展開を行うというのも構わない。私が今さっき行った
      身分だから反対は出来ない。ただ1つ言えるのは、一同を沸かせられる試合をと言う
      事だけだ。な、ビィルガ。」
ビィルガ「その通りで。」
   笑いながら語るビィルガ。その他の面々も同意見だと、同じく笑い合っている。

    今までは本編での敷かれたレールに沿って物事を考えていた一同。それを根底から覆した
   ミスターT。つまりは自分達も覆すような行動を行っても構わないという事に繋がった。
   更に言うなればミスターTの無謀な行動が、新たなる道を開拓したと言っていいだろう。

ミスターT「この際、柵に囚われるのはなしにしよう。一同が納得できる試合が展開できれば、私
      としても嬉しい限り。一同の意表を突いた行動に期待するよ。」
    彼の言葉に大きく叫ぶ一同。独自に試合を展開できる事はそうそうできるものではない。
   最大の壁とも言えるストーリーの壁を打ち破れるようになった事に、それぞれの陣営に所属
   する面々は諸手を挙げて喜んだ。

    その後陣営別に分かれた面々は、独自の試合を開始しだす。いや陣営という概念も払拭し、
   動き出したと言っていい。
   5大陣営に分かれる面々は陣営という概念から外れ、誰とでも組んでの試合を開始しだしたの
   である。

エシェラ「マスターどうぞ。」
ミスターT「ありがとな。」
    各々で独自に試合を展開しだした面々。しかしあくまでも流れに沿って動くという面々も
   いる。その傾向が強いのはフリーダムハートの面々であろう。
   そんな中、試合を行わないエシェラがコーヒーを両手にミスターTの元を訪れる。1つを彼に
   手渡し、徐にコーヒーを啜りだす。
エシェラ「不思議ですよね。この場が設けられなかったら、私は存在すらしていなかった。マスター
     の気まぐれの行動に本当に感謝しています。」
ミスターT「ん〜、その場合はエシェツとディルに感謝してくれ。お前さんや他の面々を創生した
      のは事実だが、先駆者が存在しなければその後の発展は一切なかった。」
エシェラ「その先駆者を創生したのも、マスターご自身ですよ。」
   回りくどい言い方だと呆れるエシェラだが、彼らしいと黙認するしかなかった。その流れは
   女性苦手のディルなどを始め、リュウジなどの不器用さにも影響している。
エシェラ「今度一緒にお手合わせできれば嬉しい限り。無論相手もそれ相応の人物を選ばないと、
     割に合いませんが。」
ミスターT「ハハッ、戦いの一点に執着すると性格が変わるよな。」
   ミスターTが述べた通り、戦いの構想をした瞬間のエシェラは凄まじい闘気を放出していた。
   自分でも無意識といったようであり、我に返って頬を染める仕草が可愛らしい。
ミスターT「あれだけの型破りの試合をしたんだ、暫くは隠居気味になる。本来なら表立っての試合
      はタブーなんだがね。」
エシェラ「でもマスター。あの型破りをしたのであれば、真のGMという概念を払拭するのも型破り
     だと思います。マスターも心中では願っている事でしょう。」
ミスターT「実情はお前さんの言う通りなんだがね。」
   一同と同じく試合に参戦したいのがGM軍団の本音である。真の悪役やビィルガ達も存在的
   にはGMに近く、本来ならば表立っての戦いは控えるべきであろう。
   これらを踏まえれば、ミスターTが表立って交戦するのは何らおかしい事ではない。
エシェラ「目的がなければ動けないというのであれば、私がそれを担いましょうか?」
ミスターT「私を狙う、という意味合いか。」
   考え込んだ彼に間隔空けずに語るエシェラ。その真の内容を直ぐさま察知し、ミスターTは
   彼女に告げだす。心中を見透かされて驚くエシェラだが、面白い役割りだとそれを望んでいる
   ようだ。
エシェラ「お礼の一環です。私はマスターのお力になれるなら、悪役でも何でも喜んで担います。」
   自信を持って提言するエシェラ。その表情は明るく、目的が彼女を強くさせているという表れ
   であろう。

エシェラ「もっとも・・・マスターが応じるほどの肝っ玉が据わっていれば話は別ですが。」
    早速悪役気味た発言をしだすエシェラ。それを聞いたミスターTは苦笑いを浮かべる。
   しかし次の瞬間、その場から消え失せた。
   何処に行ったのかと慌てて周りを探すエシェラ、そんな彼女を背後から優しく抱きかかえる。
   そして一瞬油断した小柄のエシェラを一気に肩に乗せるのである。
ミスターT「お嬢さん、私を本気にさせてはダメだよ。」
エシェラ「ハ・・ハハッ・・・。」
   一瞬の出来事に驚くエシェラ。今の動きが攻撃面であれば、確実に張り倒されていただろう。
   しかし自分を抱き上げる彼の目は鋭くはなく、自分を気遣ってくれた事に対しての敬意の現れ
   である。
エシェラ「やはりマスターには敵いません。」
ミスターT「実際に勝負したら互角か、お前さんの方が強いだろう。しかしストーリーという内容
      では、こうでもしないと盛り上がらないからね。」
エシェラ「フフッ。」
   実力では自分に多少なりとも武があっても、存在感では到底敵わない。エシェラはそう思わ
   ざろう得ない。
    しかしどんな状況であれ、相手を敬う姿勢は絶対に崩さないミスターT。そこに多少なり
   とも惹かれていくエシェラ。
   女心というものは非常に複雑ではあるが、男心のそれよりも白黒がハッキリしている。逆を
   言えば男心の方が優柔不断の場合が多いだろう。

ターリュ「あ〜、ずる〜いっ!」
ミュック「私も肩に乗りたい〜っ!」
メルア「こらっ!」
    ミスターTの肩に乗ったままで会話をするエシェラ。そんな姿にヤキモチを焼いてか、お騒
   がせ姉妹のターリュとミュックがヤジを飛ばす。そんな2人を捕まえて懲らしめるメルア。
   こちらも存在感では凄まじいものがある。ある意味ミスターT以上のものだろう。
ミスターT「ハハッ。ターリュとミュックを肩に乗せたら、そのままスリーパーホールドを食らう
      ハメになるよ。」
   冗談を踏まえて語るミスターT。心中を的確に見抜かれたターリュとミュックは舌打をする。
    だがこの言葉にせかされたエシェラ。代理と言わんばかりに肩に乗ったまま、彼の首を脇に
   挟んでスリーパーホールドを繰り出した。
   この場合は完全に意表を突かれた形となり、参ったとばかりに降参するミスターT。その姿を
   見てターリュとミュックが大笑いしていた。

    さしものミスターTも、この美丈夫達には敵わない。改めて再認識させられるのである。

    第19話へと続く。

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