アルティメットエキサイティングファイターズ 〜集いし鋼鉄の勇者達〜
    〜第42話 リアルサバイバル〜
    先程までの悩みは何だったのか、一同は吹っ切れたように動き出した。しかしこの課題は
   大きな爆弾でもある。何時再び爆発してもおかしくはない。それでも先に進む、それしか彼ら
   には何もないのだから。

    現状維持という事で、今までの事を受け継いだ状態で進む。唯一以前と異なるのは、自分が
   何をすべきかという事だろう。原点回帰さえしっかりしていれば、恐れるものなど何もない。



ミスターT「本陣決戦、か。」
    今後のプランが纏まったようだ。その資料をライアが持参し、ミスターTに見せてくる。
   その内容はそれぞれの陣営から代表者を抜粋し、総当りで対決するというもの。言わばこれも
   模擬シーズンと同じ流れだろう。
ライア「流れ的に難しいかと思いますが、逆にチャンスかも知れません。」
ミスターT「任せるよ、お前さんの好きなようにするがいい。」
ライア「いえ、今回はマスターにもご足労して頂きます。」
   主人公が一同という位置付けから、悪役が欠けている状態だった。そこにミスターTを起用
   したという事だった。どのような役割でも、そつなくこなせる事からの理由のようだ。
ミスターT「それはいいが・・・禁断覚醒状態を維持しても大丈夫なのか?」
ライア「そこは徹底的に叩き潰して下さい。ストーリー展開では負けるという事になりますが、試合
    はマスターの全勝で進みましょう。」
   本来なら善役が勝利するだろうが、このプランでは悪役が全勝するという事。全く在り得ない
   流れだろう。悪役は叩き潰されてこそ悪役なのだから。
ミスターT「・・・まあ任せるわ、追って指示を頼むよ。」
ライア「了解です。」
   公認されたという事で、嬉しそうに去っていくライア。この姿を見れば、とても4児の母親
   とは到底思えない。その後姿を見つめ、ミスターTは小さく溜め息を付いた。



ゼラエル「マスター、俺達も不意の襲撃という事で。」
ミスターT「ライアが言うには、独立した部隊という事らしいね。」
    今回の本陣決戦は、全ての面々を起用した形になる。つまりは全ての人物が登場できると
   あって、大盛り上がりになっていた。
ディヴォルガル「どういった流れで動けばよろしいのでしょうか。」
ミスターT「正直な話、私も分からない。私達は役者だからね、脚本は彼女に任せよう。」
フィルラウローム「了解です。」
   悪役という設定から、ミスターTの位置付けは悪陣営になっている。つまり悪陣営の面々は
   仲間という事だ。今までは遠巻きでしか接せられなかっただけに、ここぞとばかりにどの面々
   もコミュニケーションを取ってきた。
    ミスターTは思った。こういった部分が不足していたため、先程に至ってしまったのだと。
   コミュニケーション不足が最大の原因だったという訳だ。

ミスターT「そうか、ダークだけはこちらの所属か。」
ダーク「はい、魔剣という位置付けですので。」
    善陣営に所属するダークHは、魔剣から解放された聖剣だ。その前の彼女がダークである。
   悪心という部分を除けば、凄まじい程のお淑やかさである。
ミスターT「・・・ふむ、面白い事が浮かんだ。本陣決戦はそれぞれの世界観を表しても、面白い
      かも知れない。」
ベロガヅィーブ「正気ですか?!」
ディヴォルガル「マスターご自身が仰ったじゃないですか。それぞれの世界観を入れてしまっては、
        プロレスの枠組みから飛びでて収集が付かなくなると。」
   確かにそうだ。それぞれの世界観を入れてしまっては、プロレスの枠組みを超越してしまう。
   特に機械兵器と人間とでは全く釣り合わない。いくら魔法などが使えたとしても、規模その
   ものが異なってしまうからだ。
ミスターT「ACと魔法だけは封じる形にしようと思う。それ以外の格闘術に関する全てを用いて
      みようと考えている。」
スカーレット「それでも剣に対して、重火器で挑むのですよ。接近戦では間違いなく不利です。」
ライガス「今まで通りの流れでいいですぜ。生身の身体でぶつかった方が面白みがあるからなぁ。」
   ミスターTが語ったプランには魅力を感じる悪陣営の面々。しかし世界観が異なり、使う武器
   も全く異なる。これでは釣り合いが保てない。
   しかしミスターTの目は据わっている。これは間違いなく何かやると、一同は直感した。
ミスターT「お前さん達も十分楽しめる内容にするよ。暫くはプロレスから離れても面白い。」
   そう言うと手帳にペンを走らせ出した。こうなってしまっては止める事は不可能であろう。
   むしろその先が気になって仕方がない一同。ここはどのようなプランでも、聞いてみる価値は
   あると思った。



ミスターT「どうかな、ライア。」
ライア「・・・・・。」
    本陣決戦はプロレスを中心に、世界観を織り交ぜた戦い方を展開としていた。極端すぎる
   武装などは一切表現せず、言わばマスゲームのようなものである。
   ミスターTが考えたプランは、正しくそこを突いてきた。それを目の当たりにしたライアは、
   何も言えなかった。
ライア「・・・創生者でしか思い付きませんね。」
ミスターT「オールロスレヴ系列の面々のAC名は異名、他の陣営の面々と同じ。魔法・戦闘兵器と
      飛び道具は除く武装を全員に施し、そして戦いを起こす。言わば中世の騎士の決戦と
      取って貰えればいいか。」
ライディル「しかし・・・どうやって勝ち残ったりするのですか?」
ディーラ「陣営別に分かれて戦うにしても、ただ単に殺陣だけでは張り合えませんよ。」
   チャンバラはご免だとディーラは述べる。やるからには正々堂々とした戦いを演じたいと決意
   していた。本編から騎士道を突き進む彼だからこそ、この考えになるのだ。

ミスターT「ダーク、頼む。」
ダーク「了解です。」
    彼の呼び掛けに、ダークは本編の魔剣の姿に変わる。禍々しい刀身は異様さを感じるが、
   今の彼女だと魔剣と言うには迫力が欠けていた。
   変化したダークの魔剣を手に取るミスターT。それを自らの胸に突き刺した。一瞬驚いた一同
   だったが、その剣は次元を超えて身体を貫くように見えている。つまり無傷という事だ。
ミスターT「サバイバルバトル、これしかないだろう。プロレスから離れてしまうが、これだけの
      面々が集うのだから可能だろう。」
ディーラ「しかし・・・、やられたりとかを表現するのはどうするので?」
ミスターT「武器が身体の一部に当たれば、その部分が黒くなる。両腕と両脚が黒くなった場合は
      負けとなる。また胴体と頭に当たった場合も同じく負けとなる。相手の部位を1箇所
      叩けば、負っていた傷が癒えるようにする。つまりダメージの解除だね。」
   簡単な内容に聞き入る一同は興奮が抑えられなくなる。言わば全陣営総出での鬼ごっこだ。
   これなら単純かつ大いに楽しめると、一同その気になりだしている。
ミスターT「ソロで戦ってもよし、ペアやチームで戦ってもよし。しかし勝者は1人だけという事は
      忘れないように。全ての人物が敵となるのだから。」
   胸に刺さっている魔剣を抜き、ダーク本人に戻させる。元に戻った彼女は、ミスターTの胸を
   心配そうに気遣っていた。それに大丈夫だと安心させる彼。ホッと胸を撫で下ろす仕草は、
   その行動が本当のものだと思っていた証拠だろう。



    その後全員に事の次第を語った。サバイバル鬼ごっこという、一見幼稚な催しに一同引く。
   しかしターリュやミュックを筆頭とした幼さ溢れる人物は大絶賛。やる気満々といった雰囲気
   で、行動開始を待っている。
   純粋に子供の考えを持つ者でしか楽しめない、それが今回のイベントの主旨だろう。
マイア「やられた場合は?」
ミスターT「自動的にここへ戻るようにした。応援してもいいし、試合をしていても構わない。」
ディーア「衣装とかはどうなるので?」
ミスターT「想像したものが出るようにした。あまり過激なものは厳禁だぞ。」
   全て自分の想像でまかり通る事を窺った一同。それに瞳を輝かしている。特に魔法などの世界
   を知らないロスレヴの面々は大いに盛り上がっていた。
ターリュ「武器はどうするの?」
ミスターT「思い浮かべたものが出せる。しかしそれ1本だけにしてくれ。」
リュリア「優勝したら何かあるの?」
ミスターT「無理難題以外の願いを1つだけ叶えるよ。」
   それを聞いた面々は大いに盛り上がる。だが勝利できる人物が限られている現状、優勝は非常
   に厳しいものだろう。
ミュック「全員敵になるんだよね?」
ミスターT「お前さん達の専売特許だろう。昨日の敵は今日の友、そして今日の友は明日の敵。欺き
      裏切り、昨日までの味方にさえ銃を向ける。レイヴンの本性を、本気を出すんだ。」
   その言葉にレイヴンという職業にある人物達の瞳が怪しく輝く。ACという究極の戦闘兵器が
   使えない彼らに、特別的に与えられた特権とも言える。
エイラ「マスターも戦われるのですか?」
ミスターT「もちろんだ。固体への耐久度も一同を同じだよ、安心してくれ。」
   現在の禁断覚醒の力は用いないと語る。それを聞いた一同は、彼も倒せる存在だと安心した。
   言い返せば最初の段階で危険な人物を総出で葬る、これが勝利への近道だろう。
ターリュS「後ろに気を付けてねぇ〜。」
ミュックS「真っ先に狙っちゃうよぉ〜。」
   不気味に微笑むターリュSとミュックS。間違いなくこの2人は最後まで生き残る存在とも
   言えるだろう。

ミスターT「では始めるか。試合会場の外に高大な戦場を用意した。思う存分楽しんでくれ。戦闘
      開始は30分後、それぞれ作戦を練るなり戦場を見るなりしてくれ。」
    手帳に記述された内容を黒いカードに反映する。それは一時的なもので、このイベントが
   終われば解除されるものだ。それぞれが思い描いた武器が出現し、思い描いた衣装を身に纏う
   事もできた。
    一同は我先にと表へと出て行く。息抜きを通り越したイベントに期待を抱き、童心に帰って
   進み出した。



ミスターT「ダークは行かないのか?」
ダーク「意志を持った武器が必要でしょう。」
    残り10分を切ろうとした現在。他の面々は既に戦場へと浸透していった。試合会場の外で
   静かに座るミスターT、その傍にダークが歩み寄ってくる。どうやら自分を武器として使って
   欲しいようだ。しかし彼女もまた表情は何時になく緊張気味である。
ミスターT「残り人数が少なくなったら、普通に独立して動いてもらうよ。お前さんも楽しまねば
      意味がない。それに寝首を掻く真似はしないから安心してくれ。」
ダーク「貴方がそのような無粋な事をされるとは思っていませんから。」
   ダークの発言は確信論だ。今までの経緯を窺えば、彼が卑怯な真似をする事などまずない。
   逆に危惧しているのは、自分のために犠牲になると言い出すのではという事だ。
ミスターT「ではいくか。お前さんの力、借りるとするよ。」
ダーク「お任せを。貴方は我がマスター、私の力を託します。」
   本編での台詞を語り、魔剣へとメタモルフォーゼするダーク。先程と同じ禍々しい魔剣へと
   変化する。しかし刀身の色が黒から紫に変わっている。彼女自身の心の表れとも言えた。

    変化した魔剣ダークを静かに手に持つ。その自分自身を優しく持たれた感覚に酔い痴れる。
   まるで魔剣ではない自分自身の身体を抱き締められているかのようだと、変化したダークは
   錯覚していた。

    手から伝わる彼の複雑な感情は言い表せず、心が重たくなるも躍りだしてもいる。幸せの
   瞬間と言うのはこの事を指し示すのだろう。ダークは一瞬にして彼の虜になった。

ミスターT「刀身を舐めてもいいか?」
ダーク「なっ・・・だ・・だ・・・ダメですっ!」
    自分を抱く感覚に酔い痴れるダークに、悪戯染みた発言をするミスターT。よく悪役が自分
   の武器を舌先で舐めるという事をする。それを魔剣の彼女に対して行おうと言ったのだ。
   声を裏返して断る魔剣ダーク。そんな事をされたら、今の彼女は間違いなく昇天するだろう。
ミスターT「フフッ、冗談だ。」
ダーク「もうっ・・・。」
   魔剣を額に当てて詫びる彼。額に触れる刀身から、彼の強い優しさを感じるダーク。武器に
   変化した事で全ての感覚が研ぎ澄まされていた。意思の疎通もお手のものである。
ダーク「何だか例のストーリーを構築してから、マスターの考えが変な方向性に向かってる気がして
    なりません。」
ミスターT「異性に対しての壁が若干薄らいだとも言える。俺自身の現実の現れでも。」
ダーク「・・・私を女として・・見てくれているのですね・・・。」
ミスターT「まあ・・・裏切ったら微塵切りにされるがね。」
   意思を持つ魔剣のダーク。その彼女を恋人にした場合、裏切った時は自らが相手を抹殺するで
   あろう。しかしそれ以前に自分自身を女性として見てくれている事に感謝するダークだった。
   エシェラ達がミスターTを好く理由が強く分かったのである。

ダーク「貴方になら・・・私を捧げても構いません。命を賭して守るべき存在と言えます・・・。」
ミスターT「ありがとな。」
    先の話などは全て自分を鼓舞するためのもの。緊張を和らげてもくれたのだ。ダークは彼の
   心からの労いに、本当に尽くしてもいい存在だと改めて思った。
ミスターT「さて、ぼちぼち時間だ。用意はいいな?」
ダーク「お任せを。」
   改めて魔剣ダークを手に持ち、気合を入れるミスターT。その感情は直に彼女へと伝わる。
   強い気迫に押され気味ではあったが、自分自身も勇気が奮い起こる気分のダークであった。



ミスターT(開始だ、全力で戦うんだ。)
    意思の疎通で一同に開戦の合図をする。直後戦場から凄まじい雄叫びが聞こえだし、武器
   同士がぶつかり合う激しい音が鳴り響きだした。

    かくして、サバイバル鬼ごっこが開始した。最後の1人になった人物が勝者となる。



    既に負けだした人物が出始め、試合会場へと強制返還されていく。まあフリハト系列の人物
   は一騎当千の猛者だ。戦い馴れしていない人物は獲物そのものだろう。

    ゆっくり動き出した魔剣のダークを持つミスターT。その彼の前に現れるは、先程宣戦布告
   をしたターリュSとミュックSだ。2人とも長剣を手にし彼と対峙する。
   また2人の衣装はエリディムやアニーが本編で着込んでいた踊り子の姿。戦闘衣装といった
   ものだろう。
ミスターT「いきなり襲撃か。少しは楽しめばいいのに。」
ターリュS「雰囲気から短期決戦と分かってます。だから貴方を先に倒すっ!」
ミュックS「その命貰ったっ!」
   普段の幼さが全くない。その雰囲気は本編のレイヴンと同じで、幼い修羅とも言えるだろう。
   2人同時に襲い掛かり、ミスターTを翻弄する。魔剣を構える彼も迎撃するが、相手の素速さ
   はトップクラスだった。
   相手の勢いに左腕を斬り付けられるミスターT。残りは右腕と両脚か、胸と頭だけになる。
ターリュS「ほらほらぁ〜、動かないと殺っちゃうよぉ!」
ミュックS「もっと楽しませて下さぁ〜い!」
   本気モードの双子は尋常じゃないほど強かった。今まで我慢していたものが噴き出していると
   言っていい。ある意味悪役そのものだ。苦戦するミスターTは迎撃するのが精一杯だった。

    そこに加勢する人物が現れる。タンクトップとミニスカートの出で立ちのエシェラが颯爽と
   出現。ミスターTに襲い掛かるターリュSの胸と頭にダガーを突き刺した。
   本編ではかなりの強者のエシェラ。その実力はターリュSやミュックSよりも強い。一瞬に
   してターリュSを葬った。
ターリュS「クソ〜ッ・・・悔しいぃ〜!」
   胸と頭を叩かれたターリュSは試合会場へと強制返還される。こういった流れで相手を潰して
   いく形になっていた。
ミュックS「何だよ〜、邪魔するなら潰すよ〜!」
エシェラ「・・・来な、殺してやる。」
   ブチ切れモードのエシェラがそこにあった。それに恐怖に慄くミュックS。その一瞬を狙い、
   エシェラは動き出した。瞬間的に相手の間合いへと進み出て両腕を斬り付ける。更に右脚と
   胸を斬り付け、残りは左脚と頭のみにした。
    たじろぐミュックSの背後に回り込み羽交い締めにするエシェラ。関節技を得意としている
   彼女の事、その技にもがく事すらできなかった。
エシェラ「トドメを刺しなさい、左腕のツケを清算するのです。」
   この場合は問答無用だろう。ミスターTは魔剣を相手の頭目がけて一閃した。正確に頭を斬り
   付けられたミュックSは限界に達する。
ミュックS「むうぅ〜・・・敵わないなぁ〜・・・。」
   試合会場へと強制返還されるミュックS。突然の参戦で窮地を救われたミスターT。エシェラ
   の本気モードは、間違いなく禁断覚醒の彼と同じだろう。


エシェラ「さあ、行くわよ。」
    戦闘が終わり、次の相手の狩りへと向かうエシェラ。ミスターTに催促し、共闘しようと
   いう流れになった。
ミスターT「・・・それがお前さんの本気か。分かった、今は素直に従った方がよさそうだ。」
   役割にのめりこんでいるエシェラ。目は据わっており、反論すれば斬られるのは言うまでも
   ない。まあこの役割を創生したのは彼なのだが。
エシェラ「忘れるな、貴様を倒すのは私だ。」
ミスターT「寝首を掻かれないようにするよ。」
   表情が真剣そのもののエシェラに、ミスターTと魔剣ダークは苦笑いを浮かべるしかない。
   どうしてこうものめり込めるのか不思議で仕方がなかった。



    他の戦場はディルヴェズ達が圧倒的な戦闘力で相手を薙ぎ倒していた。属性の神々が彼に
   付き従い、凄まじいまでの連携で相手を叩き潰していた。
   その彼に対峙するは、ロスレヴの主人公でもあるユキヤ達。絆の強さでは彼らを凌駕する。
   だが相手の力は雲泥の差があった。

    そこに乱入する形となったエシェラとミスターT。ここは不利なユキヤ達を利用する事で、
   ディルヴェズ達を潰す戦略を考えたようだ。
エシェラ「悪いが、死んでもらう。」
   本気モードのエシェラに、やはり周りは引いていた。本編で一緒だったディルヴェズ達を敵に
   回すのは辛いのだろうが、目標に向かって進むには障害でしかない。

    凄まじい勢いで突撃していくエシェラ。属性の神々を襲撃し、瞬く間に倒していく。本編
   ではエシェラの方が弱いのだが、この場合は気迫の問題だろう。
   その彼女に襲い掛かる属性の神々。多勢に無勢の状態では、幾ら気迫があっても厳しい。
ミスターT「借りは返さないとな。」
   襲い来る属性の神々を迎撃するミスターT。魔剣ダークを分裂させ、両手に魔剣を持っての
   戦いだ。本編という明確な部分がない彼は、ただ戦うしかなかった。
エウフェナス「なめんじゃないよ!」
   火神エウフェナスがミスターTに跳び蹴りを放つ。単に剣技だけが上手いというだけでは生き
   残れない。神々と表されるだけに、その戦闘力は凄まじいものがあった。
ダーク「甘いな。」
   放たれた跳び蹴りが、左手に握られる魔剣ダークによって弾き返される。これはミスターTの
   意思とは異なり、彼女の意思による行動である。
    隙ができたエウフェナスに容赦なく襲い掛かるミスターT。両腕と両脚を斬り付けられ、
   耐久限界を超えた彼女は強制返還されていった。


    その後も3人でディルヴェズ達を襲撃する。ユキヤ達は他の属性の神々に返り討ちにされ、
   既に本人とウィン・ラフィナ・メルアしかいなかった。
メルア「ディルヴェズ様、一騎討ちを申し込みます。受けなさい!」
ディルヴェズ「了解、受けて立つ!」
   両手の拳にナックルガードを装備したメルアがディルヴェズに対峙する。メルアの出で立ちは
   レイヴンスーツそのもの。どうやら他の衣装を思い浮かばなかったようだ。ディルヴェズは
   本編でもお馴染みの出で立ちだ。今のミスターTと同じ雰囲気である。

ユキヤ「クソッ、やられた・・・。後は任せる。」
    複数の属性の神々に襲撃され、ユキヤは全ての部位を斬り付けられる。限界を超えた彼は
   試合会場へと強制返還されていった。
ウィン「あうっ・・・ダメだった・・・。」
   続けてウィンも部位全てを斬り付けられ限界を超える。試合会場へ強制返還されていった。
   残ったのはラフィナのみ。既に胸と両脚を斬り付けられ、頭か両腕で強制返還となるだろう。
ミスターT「傍にいな。」
ラフィナ「余計なお世話よ!」
   進んでラフィナの護衛に回ったミスターT。それを厄介がむ彼女だが、心では嬉しさで一杯で
   あった。それは模擬シーズン的小説内での役割を感じ取ったからだ。それがエシェラが思って
   いた感情なのだと、ラフィナはこの時初めて痛感した。
ミスターT「エシェラ、こいつを使え。」
   エシェラに向けて魔剣ダークを投げる。それを両手に持った。ダガーが戦闘スタイルの彼女、
   長剣の魔剣2本は明らかに邪魔である。
エシェラ「これは・・・。」
   だが予想外のものだった。まるでダガーのような軽さと取り回し。その小回りと魔剣が持つ
   意思が、エシェラに絶大な力を与えた。
   怖ろしいまでに効率化した彼女は、瞬く間に属性の神々を屠っていった。それは間違いなく
   達人の領域だ。

ミスターT「お前さんの身体を使わせて貰うよ。」
    武器がなくなったミスターTは、何とラフィナ本人を抱きかかえて戦いだした。その身体を
   まるでヌンチャクの様に扱い、相手に打撃を繰り出していった。その異様なスタイルに周りは
   引き、その隙を突いてラフィナ自身も攻撃をしだす。
    残り耐久が少なかったラフィナは相手を撃破する事で回復。ダメージは直ぐになくなった。
   既に単独で戦える状態にあったが、今はミスターTの戦術に酔い痴れるだけだ。それだけ彼の
   トリッキーな戦術が新鮮であるからだ。

ディルヴェズ「・・・相打ちか。」
メルア「見事です・・・。」
    同時に繰り出した攻撃で、胸と頭を叩かれた両者。ディルヴェズもメルアも限界を迎え、
   試合会場へと強制返還されていった。
   ディルヴェズがいなくなった事で属性の神々の士気は落ちる。そこを容赦なく襲うエシェラ。
   圧倒的戦闘力と戦況が相まって、陣営では最強と謳われた彼女達は全て倒された。
エシェラ「ふぅ・・・。」
   エシェラと魔剣ダークの大活躍で、無敵と表されたディルヴェズ達を撃退。その最中にユキヤ
   達もやられ、主力陣の総崩れが巻き起こった。これは大きな戦況変化である。



エシェラ「さて、貴方も倒させてもらう。」
    戦闘が終わり、残るはロスレヴ系列のラフィナのみ。何れ敵となるなら、この場で潰すのが
   定石だ。自分の武器を持ったエシェラは、ラフィナに襲い掛かろうとする。その彼女を庇うは
   ミスターT。長剣を片手に持ち、エシェラの攻撃を跳ね返した。
ミスターT「今はいいだろうに。」
エシェラ「始末しないと寝首を掻かれるぞ。」
ミスターT「それでも構わんさ。その時は俺の甘さと受け止めて倒されるよ。」
   自分を擁護する発言に、ラフィナは胸を躍らせる。それを感じ取ったエシェラは、物凄く嫌な
   表情を浮かべた。まるで自分が悪役みたいだと思ったためだ。
エシェラ「・・・勝手にしろ。」
   精一杯強がるが、庇われたラフィナが羨ましくて仕方がない。それがいくら役割を演じている
   としても、愛しい人の愛情には変わりなかった。
ミスターT「どうするね。彼女の言う通り、何れ対峙するならここで始末するが。」
ラフィナ「命の恩人にそのような事ができると思いますか。私の信念に反します。」
ミスターT「分かった、傍を離れるなよ。」
   彼の言葉により一層心を踊らすラフィナと、心に痛みが走るエシェラだった。それだけ彼女は
   彼を好いているという事が痛感できた。



    隠れながら戦うという事をしなかった一同。総当りで対決したため、既に残り少なくなって
   いる。それだけ開戦時に全力を出して戦ったという事が窺えた。

エシェツ「暇だなぁ〜・・・。」
ウィン「表は誰が残っているのですか?」
    待機組となった試合会場の面々。試合をしながら暇を持て余す者や、表の戦いを観戦する者
   も多くいた。その中でウィンが表の状況を聞き出していた。相手は既に倒されたミスEだ。
ミスE「マスター・ダーク様・エシェラ様・ラフィナ様・デュシアT様・ウインド様・ダークH様・
    ライディル様・サーベン様・チェブレ様・ミスヒール様の11人です。」
   デュシアTは聖剣に変化したウインドとダークHの活躍もあり、たった1人で生き残った。
   ライディル・サーベン・チェブレは三位一体で突き進み、並居る強豪を叩き潰している。
   ミスターTはダークと共にあり、傍にはエシェラとラフィナが行動していた。ミスヒールは
   単独で勝ち上がっている。間違いなく猛者だろう。この布陣だけを見れば異様とも言える。
ターリュS「誰が優勝するか賭けようか。」
ミュックS「エシェラ姉ちゃんに1杯〜。」
ターリュS「私も姉ちゃんに〜。」
   飲み物を賭けだしたターリュSとミュックS。先程の本気モードはどこへやら。その賭け事に
   悪陣営の面々が乗り出しているのも頬笑ましい。一切を廃したこの場では、全員が家族なの
   だから。



    その後はエシェラが単独でライディル・サーベン・チェブレと対峙する。サポートに魔剣
   ダークを持っているため一騎当千化していた。
    ミスターTとラフィナはデュシアTとウインド・ダークHの聖剣と対峙する。デュシアTの
   戦闘力は微々たるものだが、サポートの2人が怖ろしいほど強い。
    そして漁夫の利で挑むはミスヒール。それも彼女の戦略で、決して卑怯ではない。最終的に
   勝利すれば勝者なのだから。

ミスターT「どうする。」
ラフィナ「三位一体ですからね・・・。」
    今は共闘して相手を叩く事に専念する一同。ラフィナと一緒に行動しているミスターTは、
   デュシアTとウインド・ダークHをどうするかで悩んでいる。
   しかし相手は考える事をせず、とにかく攻めに転じた。聖剣ウインド・ダークHを両手に持つ
   デュシアTが、ミスターTへと攻め入った。
ミスターT「またお前さんを使わせて貰うよ。」
   再びラフィナを抱き寄せ、ヌンチャクのように扱う。その彼女も攻撃する事を忘れない。2人
   の絶妙なバランスが、三位一体のデュシアTを翻弄した。

    上手い具合にラフィナの長剣がウインドに連続して当たり、それが胸と頭の部分を叩いた。
   剣の姿のまま試合会場へと強制返還される。
   今度は両手にダークHを持ったデュシアTが攻めだす。しかしミスターTとラフィナの連携は
   相手に付け入る隙を与えない。
ラフィナ「覚悟っ!」
   空中に放り投げられたラフィナがデュシアTの背後へと回る。そして着地と同時に頭と胸を
   長剣で貫いた。
   直後ダークHが人型へと戻り、油断したラフィナを攻撃しようとする。だが背後から両腕と
   両脚を斬り付けられた。ダークHの背後にはミスターTが長剣で攻撃した後だった。
デュシアT「ダメだった・・・。」
ダークH「後一歩だったのに・・・。」
   そう言うと2人とも強制返還されていく。見事な連携が三位一体の猛者を撃破したのだ。


ラフィナ「危ないっ!」
    一息付いたミスターTに斬撃が襲う。それは頭と両脚を攻撃し、相手を突き飛ばす。そこに
   割って入るラフィナ。攻撃してきた相手はミスヒールだった。
ミスターT「流石だな・・・。」
ミスヒール「・・・倒させて貰う。」
   再び攻撃を仕掛けようとするミスヒールに、今度はラフィナが対峙する。だが瞬く間に両脚を
   攻撃された。単に漁夫の利を利用していただけではない。ミスヒールの戦闘力はかなり強い。
ミスターT「無茶しやがって。」
ラフィナ「まだ借りは返せていません。隙を作ります、相手を倒して下さい。」
   そう言うと勇猛果敢に突撃を開始する。次に攻撃されれば確実に倒されるだろう。だが彼女は
   攻撃を止めない。その一途な思いにミスヒールは嫉妬感を抱き、今よりも凄まじい勢いで相手
   を攻めた。
ミスヒール「・・・終わりだ。」
   相手の武器を弾いて胸に槍を突き刺す。だがその突き刺さった槍を両手で掴み、そのまま相手
   に抱き付いた。
ラフィナ「今です、私諸共彼女を!」
   正に捨て身の攻撃だ。力の強さだけならラフィナに武があるため、ミスヒールは全く動けずに
   いた。ラフィナは渾身の叫びでミスターTに語る。その決意を知った彼は、凄まじい勢いで
   ミスヒールの両脚と両腕を斬り付けた。
   しかし両腕を斬り付けた時にラフィナの両腕も斬り付けてしまい、共倒れになってしまう。
ミスヒール「・・・羨ましい・・・。」
   そう呟くとミスヒールは強制返還される。力なく倒れたラフィナも強制返還されていく。
ラフィナ「・・・借りは確かに返しましたよ・・・。」
   頬笑みながら呟くと、彼女も試合会場へと強制返還されていった。残ったのはミスターTだけ
   になった。



エシェラ「ごめんな、足枷は残したくない。」
    そう言うと魔剣ダークの両腕と両脚を斬り付ける。丁度ライディル・サーベン・チェブレを
   共闘して屠った直後の出来事だ。つまりはダークを裏切った形になる。
ダーク「お気になさらずに、ご武運を・・・。」
   試合会場へと強制返還されるダーク。これにより戦場に残ったのはエシェラとミスターTに
   なった。
ミスターT「結局こうなるのか・・・。」
エシェラ「最後の相手が貴方とはね。」
   ミスターTとエシェラも相手を倒した事で無傷。しかし他の面々がいない現在、この戦いが
   正真正銘の一騎打ちとなる。

    ダガーを両手に持ち突撃するエシェラ。その彼女を長剣を構えて迎撃するミスターT。生粋
   の剣士であるエシェラの勢いは凄まじく、何のスキルもないミスターTは押され続けた。
   右脚と左腕、そして頭を攻撃される彼。彼女の方は全くの無傷である。



    その後は凄まじい攻防が続いた。ミスターTがエシェラの左腕にダメージを与えた事で、
   彼のダメージが回復する。しかし左腕が回復した所で、胸を突かれれば終わるのは目に見えて
   いる。決着の時は近い、ミスターTに勝ち目はなかった。
エシェラ「覚悟っ!」
   彼の長剣を弾き飛ばし、両手のダガーを胸に突き刺そうとする。それを両腕を使って止めた。
   だがそれは両腕の負傷扱いになる。右脚か胸を斬り付けられれば、彼の敗北は確定した。
ミスターT「さて・・・どうするね・・・。」
エシェラ「貴様には絶対負けない、殺してやるっ!」
   戦闘後半からは過激にヒートアップしていったエシェラ。再びブチ切れモードになった彼女、
   愛する人に心にもない事を叫んでしまう。直後彼女の胸に凄まじい痛みが走った。
   その隙を彼は見逃さない。エシェラをそのまま蹴り飛ばし間合いを取る。

ミスターT「・・・お前さんに殺されるぐらいなら、この行動が無難か。」
    だが次の瞬間、驚くべき行動に出る。近くに落ちていた長剣を手に取り、何とそれを自らの
   胸へと突き刺したのだ。その行動にエシェラは驚愕する。
エシェラ「な・・何をやってるんだっ!」
ミスターT「見れば分かるだろうに・・・、お前さんが優勝だ。」
エシェラ「こ・・こんな勝利なんか・・勝利じゃない・・・アンタは負け逃げしたんだっ!」
ミスターT「・・・これが本当の戦場なら、お前さんと対峙する前から自らの命を絶つ。そう言う
      事だよ。相手が・・愛しい君だからね・・・。」
   そう語ると最後の相手であるミスターTも、試合会場へと強制返還される。この瞬間エシェラ
   の勝利が確定した。



    試合会場は大喝采でエシェラを讃えた。だがミスターTの自決後の話までは伺えなかった。
   一番遣る瀬無かったのはエシェラ本人であろう。
ターリュS「やったじぇ〜、1杯貰うよ〜!」
ミュックS「大勝利〜!」
   誰に賭けていたのか分からないといった雰囲気の双子。しかし勝利した事には変わりない。
   ヴァスタールが運んできてくれたジュースを一気飲みする。私服の一時であろう。
ディルヴェズ「ゲリラ戦を展開すれば、もっと白熱した戦いになったでしょうに。」
メルア「まあまあ、偉大な闘士と対峙できた事に変わりはありませんよ。」
   リング上での試合ではなく、剣闘士という意味合いで対決したディルヴェズとメルア。彼と
   互角で戦ったという事は、彼女もレイヴン以外の素質があるという現れだ。
ゼラエル「何か一瞬で終わったよなぁ・・・。」
アマギDA「ミスヒール嬢、滅茶苦茶強かったし・・・。」
   悪陣営の面々は、ただ単に暴れるだけで倒されていった。楽しかった事には変わりないが、
   遣る瀬無さは残っている。だが彼らの存在意義を踏まえれば、マイナスではないだろう。

ミスヒール「見事でしたよ、ラフィナさん。」
ラフィナ「い・・いえ・・・、ごめんなさい。」
    自分が行動した事に罪悪感を感じているラフィナ。その彼女を慰めるミスヒール。役割を
   徹底して演じきったという事に、彼女は賛嘆の意を表し続けた。
ミスヒール「愛する者へ何が残せるのか、実に大切な事ですよ。」
ラフィナ「貴方もそうじゃなかったのですか。マスターと一騎打ちまで行っていたら、彼と同じく
     自決する覚悟だったのでしょう?」
   ミスヒールの心中を鋭く見抜いたラフィナ。思い人への一途な思いは同じである。本編とこの
   場を超越した意識は、紛れもない己自身の存在という証なのだから。
ミスヒール「フフッ、見抜かれましたか。流石です。」
ラフィナ「でも・・・エシェラさんには敵いませんけどね・・・。」
   遅れて試合会場に戻ってきたエシェラを、周りの面々は大拍手で讃えた。その彼女を遠巻きに
   見つめるラフィナとミスヒール。だがエシェラの表情は凄まじいまでに暗かった。



ミスターM「面白いイベントを考えたものだ。」
    手帳の内容を封印していくミスターT。その彼の元にミスターMが現れる。彼もまた枠から
   飛び越し、普通に出て来るようになっている。それだけ変革があったという事だ。
ミスターT「ちょっと難しい部分がありましたけどね。」
ミスターM「まあ武器での剣劇なら、パワーバランスは保たれている方かな。それぞれの世界観を
      出していたら、間違いなく収拾が付かなくなっていたがね。今回は素直に誉めよう。」
ミスターT「ありがとうございます。」
   全く思い付かない事にミスターMは感嘆している。普通ならプロレス形式一辺倒で済ますの
   だろうが、こういった思いも寄らぬ発想に驚いているようだ。
ミスターM「あまり多用はするなよ。今回はこれで済んだからいいが、次からは別の流れを考えて
      動く筈だ。予想外の展開に収集が付かなくなったら一大事だからね。」
ミスターT「大丈夫ですよ。既に先程のプランは封印しました。再びイベントを起こす時は、再度
      構築しないといけませんので。」
ミスターM「なら心配はないな。」
   今後の流れを予測しての安堵感なのだろう。今や彼も一同と同じ、この場に列する闘士の1人
   なのだから。


    そこにリアルサバイバルバトルの勝者エシェラが来る。相変わらず表情は暗く、先程の内容
   が納得いかない様子だ。
ミスターM「おめでとう。」
エシェラ「・・・嬉しくありません。」
ミスターM「ごく自然な行為だと思うがね。彼は君を思う気持ちは変わらない。君が彼を潰そうと
      した罪悪感を、自ら背負って負けたんだ。」
エシェラ「・・・納得がいきません!」
   ミスターMが言う通り、エシェラは先程の行為の意味を知っている。しかし純粋に勝負に転じ
   れない事に苛立ちを隠し切れずにいた。
ミスターM「納得しようがしまいが、これが現実だ。それを受け入れるか否か、全て君次第だ。」
エシェラ「・・・・・。」
   何も言い出せないエシェラ。ミスターMの言っている事は、ごく自然な物事である。だが彼女
   はそれを認められずにいた。その心中を察知したミスターTが、徐に口を開く。
ミスターT「素直に認めれば済むのは分かっている。しかし納得がいかないのも分かっている。もし
      お前さんが同じ立場に至った場合、どういった選択を選ぶ?」
エシェラ「・・・マスターと同じです。」
ミスターT「なら素直に認めなよ。それがお前さんにとって一番楽な方法だ。」
   認めざろう得ない。一番楽な方法を述べられては、それを選ばずにはいられなかった。今だに
   拒むのは、彼に対する思いが原因でもある。それを除けば、これほど幸運な事はない。

ミスターM「次の展開を期待しているよ。」
ミスターT「過度の期待はしないで下さい。」
    ミスターTの肩を叩きながら、ミスターMは去っていく。初登場時の雰囲気はすっかり消え
   失せている。曝け出されて出て来たのは、生粋の熱血漢という姿だ。
   ミスターTは直感した。近々ミスターM自身も戦いに参加するという事を。神の技術を持つ男
   という異名以外は、自分達と同じファイターなのだから。



ミスターT「さて、どうする。まだ納得できないなら、もう一度サシで勝負するか。今度は禁断覚醒
      状態で挑ませて貰う。お前さんが本気を出していたのだから、こちらも本気を出さねば
      釣り合いが保てない。」
    今も俯いているエシェラを見かねて、ミスターTが再戦を言い渡す。納得できない場合は
   徹底抗戦に限る。それがプロレス世界の定石だ。
エシェラ「・・・分かりました。シングル形式で再戦をお願いします。」
   禁断覚醒状態のミスターTでは話にならないが、それでも純粋にぶつかり合う事に意議がある
   と考えている。試合こそが己の存在を示す場なのだから。
ミスターT「優勝決定戦という事だから、敗者は勝者の命令を聞く事。」
エシェラ「了解です。」
   ミスターTが何を言い出すのか不安になる彼女。間違いなく勝者は彼なのだから、その内容に
   不安を隠し切れない。しかし再戦を告げてくれた事には感謝していた。



    周りはリアルサバイバルバトルの興奮冷めやらぬ状態。このまま次のチャンピオンバトルの
   方へと移行していく。

    そこで再び動き出すはビィルガとデュウバD、そして悪陣営の面々。やはりあるべき姿は
   原点であった。

    第43話へと続く。

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