アルティメットエキサイティングファイターズ 〜集いし鋼鉄の勇者達〜
    〜第44話 リアルサバイバル再び・前編〜
    総勢2160人へと登り詰めた一同。新たに追加された新陣営の面々は、まずは自己紹介を
   含むコミュニケーションを取り出した。それぞれの陣営が賑わいだし、今までの停滞気味の
   現状が馬鹿馬鹿しく感じている。それだけ660人の追加は大きなものだった。

    目立つ賑わいはターリュとミュックだろう。妹のタシュナとミュシアが誕生したといって、
   大賑わいをしている。面白い事に双子の姉達とは異なり、妹の双子の方はお淑やかであった。
   それはお嬢様といった感じである。
   ターリュとミュックが突出して元気だという事が、これを見て痛感させられる一同である。


    悪陣営のGM達もかなり大きな存在だった。代表して選ばれた面々だが、それでも存在感は
   かなり大きい。特にシェガーヴァHTHの存在は、今現在のリーダーのシェガーヴァHを超越
   するものである。

    纏める存在が大きく偉大になれば、それだけ陣営が確固たるものとなる。この悪陣営GMの
   追加は、悪陣営の行く末を左右するほどのものであった。



    悲願を達成したミスターTは、1人会場外の公園で一服している。隣にはもう1人の創生者
   たる、ミスターMも一緒だ。同じく煙草を吸う彼らは、心から安らぎを満喫している。
   ベンチではなく直接芝生に座っている事から、相当な息抜きしていると言うのが窺えた。
ミスターM「もう何も言う事はない、脱帽を超越している。君に教えたエキプロ5という切っ掛け、
      これがここまで膨れ上がるとは正直夢にも思わなかった。」
ミスターT「全ては師匠のお陰ですよ。あの時エキプロへの切符を頂けなかったら、今こうしている
      事はないでしょう。小説の方もあのまま停滞していたでしょうから。」
ミスターM「そうだね。俺も誇り高いよ。」
   最初は二人三脚で挑んだエディットの道。それから独立したミスターTが、異業である伝説の
   頂へと登り詰めた。2160人という前代未聞の人数は、正しく阿呆そのものと言える。
ミスターM「今後はどうするんだ?」
ミスターT「流れ往くままに進みますよ、本当にゆっくりですが・・・。」
   口には出していないが、この660人のエディットは渾身の行動だったのだろう。疲労の色が
   見え隠れしていた。
ミスターM「まあ後は君の創生次第だ、無理無茶はご法度だぞ。頑張れ。」
ミスターT「心得ています。ありがとうございます、師匠。」
   徐に立ち上がり、そのまま消えていくミスターM。これを窺えば彼の出現と撤退は間違いなく
   テレポーテーションを用いていると言える。
   まあミスターT自体が常識を超える行動をする事から、ミスターMの方もそれ相応の行動が
   できてもおかしくはない。



エシェラ「1人淋しく一服ですか?」
    その後も煙草を吸いながら休み続けるミスターT。その背後に忍び寄るはエシェラ。ソッと
   彼の背中に手を回し、優しく抱き付いてくる。
   本来なら彼の気配を以てすれば窺えた事であろうが、態と気付かない振りをしていたのだ。
ミスターT「今までミスターMと会話していたよ。まあ師匠が去った理由は、お前さんを気遣って
      くれたのだろうけど。」
エシェラ「フフッ、全てご存知だったのですね。」
   ミスターTが推測する通りだった。ミスターMがエシェラの気配を察知すると、彼女を気遣い
   その場を去ったのだ。ミスターTの方も後々理由を知る事になるが、この時は本当の撤退だと
   思っていたようである。
エシェラ「会場は大賑わいですよ。特にマジブレ系列が凄まじいほどの人気で、質問攻めや対戦希望
     などの方々が大多数です。」
ミスターT「ヴェアが主人公だからな。娘当然の彼女が引っ張る陣営だ、私以上の白熱した展開が
      期待できる。」
   まだ知らない設定を聞いて、エシェラが小さく驚く。特に一番驚いているのは、マジブレ系列
   主人公のヴェアことヴェアデュラに関してだろう。

エシェラ「あの・・・ヴェアさんは・・・貴方の本当の娘なのですか?」
    徐に語り出す言葉。それは新キャラクターの設定ではなく、ヴェアデュラがミスターTの
   娘だという事。これに過剰反応している。
ミスターT「まさか、娘だとしても義娘だよ。血の繋がりは一切ない。覆面の風来坊での外伝版で、
      孤児として赤ん坊から育てるからね。故に娘当然と言える。」
エシェラ「そうでしたか・・・。」
   彼の言葉を聞いてホッと溜め息を付くエシェラ。それを知ったミスターTは彼女の本当の内情
   を窺い知った。
ミスターT「フフッ、彼女が他の異性との間に生まれた子供だと勘違いしたか?」
エシェラ「え・・・ええ、そうです・・・。」
   エシェラは彼を好くが故に、この現実は辛いものがあると感じていたようだ。だが実際の血縁
   関係はなく、他陣営との間柄を表して娘と言っているのであった。
   また彼女はヴェアデュラがミスターTと他の女性との間の子供だと勘違いしていた様子だ。
   この驚きを窺えば本気で気にしていたと言えるだろう。
ミスターT「ヴェアがお前さんとの間の子供という設定もいいな。」
エシェラ「な・・な・・・何を仰るのですかっ!」
   冗談を踏まえて語る言葉。それはヴェアデュラがミスターTとエシェラとの間に生まれた子供
   だという設定。これには声を裏返して驚き否定する彼女だった。
ミスターT「フフッ、冗談だ。」
エシェラ「もうっ・・・からかわないで下さい・・・。」
   冗談だと分かると膨れるエシェラ。その彼女の頭を優しく撫でてあやすミスターT。この場面
   を見れば、間違いなく恋人以上そのものだと言えるだろう。否定する見方の方が難しい。


    暫く沈黙した状態が続く。木々が風でざわめく音だけしかしないこの場。ミスターTの背後
   に抱き付き、頭を肩に乗せている。お互いの頬が触れ合う感触を感じ取り、その一瞬に心が
   癒されるエシェラであった。
ミスターT「・・・これからが本当の勝負所だ。私達の生き様をどこまで刻めるか、それが今後の
      課題になる。」
エシェラ「そうですね・・・。」
   徐に今後の方針を語り出すミスターT。それに小さく頷くエシェラ。660人の追加により、
   今までの流れが覆されていくのは言うまでもない。大変革が訪れようとしているのだから。
ミスターT「お前さんには感謝している。アルエキファイタの世界がお前さんを誕生させるに至った
      のは事実。しかし諸々の切っ掛けで、今こうしていられるのだから。こればかりは私の
      一存では決められない。」
エシェラ「ありがとう・・・。本当なら創生者という位置付けから、他人との接触を一切省くのが
     通例だと思います。でも貴方は私達の中に飛び込んできてくれた・・・。感謝するのは
     こちらの方ですよ。」
   首に回す両手に力を込めるエシェラ。その彼女の右手に、自分の右手を重ねるミスターT。
   言葉での激励も重要な事だが、形あるものでの激励もまた重要なものである。



    徐に立ち上がるミスターT。エシェラも抱擁を解いて立ち上がり、身体を伸ばし始める。
   今の彼女は彼の傍にいられる事が何よりの幸せであった。それを心で感じている彼でもある。
ミスターT「さて・・・もう一度やるとしますか・・・。」
エシェラ「何をされるので?」
ミスターT「大好評で幕を下ろしたリアルサバイバルだよ。2160人全員で挑めば、それなりに
      楽しめるだろう。」
   驚きの内容を語る。先程催した鬼ごっこならぬリアルサバイバルを再び行おうというものだ。
   今回は新メンバー660人も含めた2160人での大規模なもの。前回以上に白熱した展開が
   期待される。
ミスターT「今回はチームを組んでの戦いを考えている。言わばソロでの優勝ではなく、団体での
      優勝となる。チームワークが欠ければ勝利する事は無理だろう。」
エシェラ「あの・・・今回は貴方の傍らを離れません。貴方がやられるようであれば、私の命を差し
     出します。貴方は生きて下さい。」
   先程の同イベントで味わった結末は嫌だと叫ぶエシェラ。そして己の命を差し出してでも彼を
   救うと決意新たに語る。その彼女を優しく抱き締め胸に抱くミスターT。
ミスターT「大丈夫、私もお前さんを死なせたりはしない。それに私の心を射止めてくれたた君を、
      命を賭して護れないのは愚か過ぎる。」
エシェラ「はい・・・。」
   徐に彼女に顔を近付けるミスターT、そのまま優しく口づけをした。それに驚くも嬉しがる
   エシェラ。この瞬間こそが彼女にとって幸福の絶頂といえるだろう。
ミスターT「エシェラ、愛してるよ。」
エシェラ「あ・・は・・はい・・・私も・・・。」
   口づけを終えて胸に彼女を抱く彼。そのまま耳許で吐息交じりの告白をする。それにエシェラ
   は頭の中が真っ白になった。
   口づけと告白とが交わり、この上ない快感が彼女を襲った。言わば言葉だけで向こうの世界に
   行きそうになったと言えるだろう。実際に行った場合、卒倒するのは言うまでもない。

    力強くエシェラを抱き締め解放するミスターT。頬を真っ赤にしている彼女の頭を優しく
   撫でると、それに笑顔一杯で応じるのであった。


    一旦試合会場へと戻っていく2人。甘い一時を過ごせたエシェラはご満悦で、この上ない
   程の嬉しさで満ち溢れている。

    プロレスの世界観を超越した行動が目立つ現在。しかしそれらも全て自分達の生き様を示す
   大切な瞬間でもある。

    創生者たるミスターTは、エシェラの行動を通して学んでいった。根底はプロレスという
   世界観を元に、そこに各々の世界観を重ねていってもいいと。
   この流れは彼の新たな生き様になっていくのは言うまでもなかった。



    試合会場の方は大熱狂で包まれている。2つの新陣営と最終陣営、そしてGM軍団などの
   総勢660人が出現した事。これは1500人にとっては凄まじいまでの起爆剤だった。

メルア「本編から誕生していない娘達とはねぇ〜・・・。」
    リタレヴ系列所属のメルアが語る。相手は新たに追加された双子の娘、タシュナとミュシア
   である。髪の色はトーマスSと同じく緑色で、その血はエイラ達に継がれていく。
タシュナ「姉様達と年齢差は大して変わらないようですね。」
ミュシア「気迫だけは完全に押され気味ですけど。」
   ターリュとミュックの妹という設定で誕生したタシュナとミュシア。しかし性格は180度
   異なっている。お淑やかで物静か、お嬢様と言える存在である。
トーマスS「これからもよろしくね。」
タシュナ「ありがとうございます。」
ミュシア「よろしくお願いします、お父様。」
   とにかくお淑やかな双子である。しかし両親や双子の姉は感じ取っていた。それはこの双子も
   凄まじい程の力を持っていると。その度合いは自分達を凌駕しているかも知れないとも。
   生まれてまだ日が浅いタシュナとミュシアだが、その存在感は既に揺るぎないものとなる。


    フリハト陣営では、新たに追加されたラシュディアやディルヴェズ達の女性バージョンとの
   コミュニケーションが盛んである。やはり異様とも言えるのは、男性から女性へと変化した
   3人だろう。
ディルヴェズ「ラシュディアには一時期お世話になったよ。あの事変で代理で動いて貰っていた時が
       あったからね。」
ラシュディア「そうですね。」
ヴィドリーガ「それにしてはラシュ君は男性じゃなかったか?」
ヴュオリーア「馬鹿ねぇ〜、そこはマスターの趣向と言うのよ。」
   本来は男性キャラとして誕生するはずのラシュディア。ディルヴェズ達と同じく、騎士系列の
   流れを汲む美男子だったようだ。
   ところが今現在は女性として存在している。ここは創生者のミスターTが実現した、間違い
   なく趣向と言えるだろうから。
メフュレーナ「ラシュディアさんはいいとしてさ、父やディルさん・ヴィドさんが女性というのも
       おかしな話よね・・・。」
   やはり異様な現状は、ディルヴェズLK・ヴィドリーガLA・メルシェードLPだろうか。
   服装はオリジナルと全く変わらないが、怖ろしいまでの体躯は男女問わず見入ってしまう。
   特に美男子から美女へと変化したディルヴェズLK。男性陣よりも女性陣からのアツい視線が
   何とも言えない。



    最終陣営のマジブレ系列。一部既存のキャラクターがアレンジとして登場しているが、この
   陣営そのものは全く新しい。他のエルシェス達やリオデュラ達の陣営もそうだが、最終陣営
   は突出して未知の勢力とも言える。
エシェラ「マスター。マジブレ系列の方々を見る限り、かなりの猛者が集っていますね。」
ミスターT「戦闘力だけではフリハトに次ぐ強さを誇るようになったからね。それでいて未知なる
      流れを汲んでいるから、対処が厳しいだろう。」
   試合会場へと戻ってきたミスターTとエシェラ。彼女は直感でマジブレ系列が猛者の集まりと
   指摘する。規模では第3勢力だが、戦闘力では第2勢力であった。


    会話をしながら彼らを見つめるミスターTとエシェラ。その2人に気が付くと、駆け足で
   近付いてくる人物がいた。マジブレ系列の主人公、ヴェアデュラである。
ヴェアデュラ「マスター、こちらでは初めまして。」
ミスターT「よろしくな。そして、いよいよ始動だな。デッドマン・テイムの女王・恐怖の暴君の
      異名を持つお前さんだ。どんな流れを作るか期待しているよ。」
   会話の内容から、既に面識があると直感するエシェラ。まるで親子のような会話に、嫉妬感を
   抱かずにはいられない。
ヴェアデュラ「貴方がエシェラさんですね、初めまして。」
エシェラ「よろしく。」
   ミスターTとの間柄を目の当たりにし、どうしても冷めた態度を取ってしまう。しかしその
   意味を直ぐに察知するヴェアデュラ。

ヴェアデュラ「覆面の風来坊の続編では、大変お世話になっています。年齢的には母娘の間柄です、
       恋仲では決してありませんよ。」
    間隔を空けずにヴェアデュラが語る内容、それを伺ったエシェラは驚愕する。小説からの
   反映である覆面の風来坊。これは先刻1500人に施されたものだ。また新たに追加された
   660人にも同様である。
    しかしヴェアデュラが語るは、続編と語っている点だ。つまりエシェラが知らない内容を
   彼女が語っているのである。
ヴェアデュラ「マスター、もしかして続編を皆さんに施していないのでは?」
ミスターT「アレを一同に見せるのか・・・。」
ヴェアデュラ「現に作られているじゃないですか、今更渋った所で何になりましょう。」
   2人だけしか分からない内容を窺い、今までになく嫉妬感を抱くエシェラ。そこまで彼の事を
   心から好いているという事が痛感できた。


    近くの椅子に腰を掛け、思い悩むミスターT。エシェラとヴェアデュラも同じく椅子に腰を
   掛けている。
ミスターT「・・・要らぬ反感を喰らいそうで怖い。」
ヴェアデュラ「貴方は誰なのですか。この場限りでは完全無欠の創生者なのですよ。貴方が語る事や
       決めた事は絶対です。反論する者は捻り上げなさい。」
   思い悩む彼を見かねてか、物凄く厳しい口調で語り出すヴェアデュラ。その言葉にエシェラは
   背筋に寒けが走る。彼女の言葉は決して貶している訳ではないが、ピンポイントでミスターT
   の悩み留まる部分を攻めていた。その瞬時の手際の良さには憧れの一念も抱いてしまう。
ミスターT「流石心臓収集家だな。私でさえ震え上がる発言を平気で言い放つ。」
ヴェアデュラ「全てマスターからの影響ですよ。貴方が本気になれば、それこそ凄まじい力が発揮
       できるというのに。」
   ヴェアデュラが語る言葉にエシェラは頷いてしまう。ミスターTの今までの姿は内在する力を
   態とセーブしているように見えた。計り知れない強大な力を有しているのに、それを出す事を
   惜しんでいるかのようだ。


ミスターT「・・・それ相応の力は必要か。」
    暫く沈黙が続くと、徐に語り出すミスターT。今まで思っていた事のようで、それを指摘
   されて思い立ったようである。
エシェラ「心こそ据わっていて原点回帰が成せるのなら、どの様な強大な力でも振り回されません。
     貴方にはその力があるのです。出し惜しみせずに動かれる事を期待しますよ。」
ヴェアデュラ「母さんの言う通りよ。」
   代弁をしてくれたエシェラに母と語るヴェアデュラ。それにエシェラは驚いた。更に語った
   言葉を知って、慌てて口を塞ぐヴェアデュラ。しかし時既に遅しという状態である。
エシェラ「・・・ヴェアさ〜ん、それはどういう意味なのですかぁ〜・・・。」
ヴェアデュラ「え・・・え・と・・・その・・・ご・ごめんなさい・・・。」
   怖ろしいまでの表情で迫るエシェラに、恐怖に慄いた表情を浮かべるヴェアデュラ。その彼女
   に近付き背後から優しく抱き締めるエシェラ。徐々に締め上げる両腕に、流石のヴェアデュラ
   も直ぐに詫びだした。

ミスターT「ハハッ、数々の異名を持つヴェアでもエシェラの前では赤子だな。今の意味はそのまま
      だよ。風来坊の外伝では、お前さんと一緒にヴェアを育てる事になる。」
    まだこの場に馴染めないヴェアデュラの肩を持ったミスターT。彼女が語った意味を語り、
   今も締め上げようとするエシェラを嗜めた。
ミスターT「それにな・・・6人と関係を持つ事になる。最後は7人まで膨れ上がるが、その意味は
      自ずと分かると思う。それに追加で14人のキャラクターも作った。その意味合いが
      示す事は、察する通りだよ。」
   大体の予想は付いていたエシェラ。7人との関係という部分を伺って、今までにないほど赤面
   をしだした。それに14人のキャラクターともなれば、間違いなく後継者を指し示す。
ミスターT「でも後悔はしていない。勢いで書いてしまった部分もあるが、それでも常日頃から一同
      には世話になりっ放しだ。私からのささやかなプレゼントと思って貰えれば幸いだ。」
   ささやかなプレゼントという意味合いを通り越していると、今も赤面中のエシェラは思った。
   男女間の究極の形を示した事は、世界観や陣営を超越した事に変わりはない。
ヴェアデュラ「母さんは幸せですよ。風来坊の世界観では、マスターが心から思う大切な愛しい人は
       貴方以外にいないのですから。」
   母の温もりを感じるように、背中に回された両手を同じく両手で優しく触れる。誕生して日が
   浅い彼女は、こういった労いを何よりも大切にしているようだ。
ヴェアデュラ「本編はマジブレの世界ですが、風来坊では貴方の娘です。貴方を尊敬する気持は常に
       持ち合わせたい。」
エシェラ「ありがとう、ヴェアデュラさん。」
   ヴェアデュラの原点回帰はミスターTのように不動たるもの。表向きは多種多様な性格が見え
   隠れするが、それらも彼女を構成する大切な一部分だろう。
   案外存在だけはトップクラスの人物なのかも知れない。そう思ったエシェラだった。


    ヴェアデュラの素性を知った事により、直ぐさま打ち解けてしまうエシェラ。と言うより
   ヴェアデュラ自体がエシェラと同じ属性からか、一部を除けば瓜二つの人物とも言えた。
   端から見れば本当に母娘のように見える。
ミスターT「ヴェアはまだ知らないが、リアルサバイバルバトルを行う。今回はチーム戦闘を重視
      した、大規模な戦いだ。」
ヴェアデュラ「陣営別として戦った方がいいのですか?」
ミスターT「今回は陣営と友人などのチームも含めた形になる。詳しくは全員の前で語るよ。」
   既に動きたくてウズウズしているヴェアデュラ。彼女の性格から、戦える場所こそが己の存在
   意義を示す場とも。この部分は悪陣営の面々と通じる部分があるだろう。
ヴェアデュラ「善は急げです、直ぐにでも動きましょう。」
ミスターT「そうだな、やるか。」
   徐に立ち上がるヴェアデュラ、それに便乗するミスターTとエシェラ。一同を中央リングへと
   召集しだした。



ミスターT「再びリアルサバイバルバトルを行う。今回はチームバトルも考慮した、団体戦闘だ。
      もちろんソロでの行動も構わないが、その場合は圧倒的に不利になる。」
    一同の前で告知を開始するミスターT。再度のリアルサバイバルバトルとあり、一同は更に
   燃え上がっている。
ミスターT「扱いは殲滅戦だ。1チームもソロも1人とみなし、最後まで勝ち残った人物やチームが
      勝者となる。部位の対処だが、頭と胸・両腕両脚が斬り付けられたらアウトとなる。」
ゼラエル「ダンナ、今回の優勝者への対応は?」
ミスターT「人数が人数なだけに、今回は見合わせてくれ。その代わり再び考えている模擬シーズン
      への参加を考えてもいる。これは追って決める事にしよう。」
   代表者だけが選ばれる形になっていた模擬シーズン。それに参加できる切符を得られるとあり
   大賑わいする一同。今回は本編シーズンを超越した形の模擬シーズンとなるだろう。
ミスターT「さて、30分後に試合を開始する。660人を追加した時に、既に全員にロジックは
      施してある。想像した武器が手元に出現し、思い描いた衣装にも変われる。お前さん達
      の白熱した戦いを期待しているよ。」
   彼の言葉が発せられた後、一同は凄まじい勢いで試合会場を後にしていく。その場で武器を
   作り出す者や、衣装替えをする者もいる。大多数がそのまま表へ飛びだし、そこで準備に取り
   掛かるのが多い。

    雑踏と化したその場を見つめ、ミスターTは苦笑いを浮かべていた。だがこれから始まる
   リアルサバイバルバトルは、今までよりも更に厳しいものになると直感してもいた。



    試合開始5分前。ミスターTは会場外の階段に腰を下ろしている。既に目の前の戦場には
   各々が紛れ込んでおり、彼らを窺う事はできない。見つかれば対峙し殲滅するのが当たり前と
   なるため、誰も姿を現さなかった。
ダーク「今度は本気で戦えそうですね。」
ダークTM「ダーク共々貴方の手足となり戦います。」
   腰を下ろす彼が肩に担いでいる2本の魔剣。ダークが変化する魔剣は魔剣と言えるが、GMと
   して抜擢されたダークTMが変化するのは聖剣とも言えるだろう。
ミスターT「今回は全ての陣営のスキルを拝借した。私が持ち得る力を発揮し、最大限戦えるように
      してある。お前さん達を両手に持って戦うのもお手の物だ。」
ダーク「貴方の本気を切々と感じます。私達は一介の武器、貴方を生かすための道具ですから。」
ミスターT「道具、か・・・。私には道具ではなく、2人の女性にしか見えないな。」
   自分の事を道具と言い切り、己の存在を位置付けるダークとダークTM。しかしミスターTは
   道具には見えないと語る。それを行動で示しだした。

    ダークが変化する魔剣の柄に優しく口づけをするミスターT。それに驚愕する彼女。身体中
   に凄まじい電流が走り、一瞬にして骨抜きにされてしまう。
   またダークTMが変化の聖剣にも同様に優しく口づけをする。同じく身体中に電流が流れ、
   一瞬で骨抜きにされた。
   些細な行動が2人に壮絶な快楽を与える。それに酔い痴れるダークとダークTMだった。


ミスターT「俺の命を預けるのだ、それ相応の敬意を表さなければ失礼だよ。お前達を生かすも殺す
      も俺の一存なら、共に生き残る方を選ぶ。共に勝者となろう。」
    徐に語りながら2つの剣の柄を頬に当てるミスターT。そこから彼の心を強く感じ取った
   ダークとダークTM。骨抜きにされて動けなくなると恐れていた2人は、その行動で一瞬に
   して復活するのである。
ミスターT「我が身を預ける武器に愛着か、まあ当然の事だろう。俺の原点回帰は不動のままだ。
      昔も今も、そしてこれからも・・・。」
   徐に立ち上がり、2つの剣を両手に構える。それから感じ取れる気迫に、ダークとダークTM
   の身体に再び電流が駆け抜ける。しかし先の骨抜きのものではなく、いざ戦場へという気持ち
   がそうさせたのであった。
ダーク「貴方へ勝利を捧げるために、私達は誠心誠意戦います。」
ダークTM「貴方を絶対に死なせたりはしません。身を呈してまで守り抜きます。」
ミスターT「ありがとう。」
   すっかり心の底から彼の虜にされたダークとダークTM。素体の剣へと変化している事と、
   彼女達が元から内在する相手との心と身体の一体化。その長所を併せ持つ2人がミスターTの
   底知れぬ優しさを目の当たりにすれば、心から好いてしまうのは言うまでもない。

    エシェラ達が時間を掛けてミスターTを好いていったのに対し、ダークとダークTMは一瞬
   で彼を好いてしまう。
   自分達にとってその性格と長所故に、彼の存在そのものが罪深い事だと痛感する2人だった。


ミスターT(時間だ、用意はいいな・・・。始めるぞ!)
    意思の疎通で全員に開戦の合図を送るミスターT。それに凄まじいまでの雄叫びで応え、
   動き出した一同だった。



    2本の剣を両手に持ち、静かに瞳を閉じる。視覚を止め聴覚で辺りを窺いだす。全身での
   環境の察知は、そのままダークとダークTMにも伝わっていく。

    ダークとダークTMからの感覚もリンクしているため、凄まじい戦いの波動を感じ取る事が
   できた。武器がぶつかり合う音、甲高い雄叫びを挙げる面々。そしてやられて撤退していく。
   全てを全身で感じ取れる3人は、正しく巨大なセンサーかレーダーそのものだろう。


    そこに現れるは、エシェラ・ラフィナ・エリシェ・シンシアの4人だ。他にはシューム・
   メルデュラ・リュリア・ミスヒール。ミスヒールを除く7人は、風来坊での彼と縁がある女性
   達である。
エシェラ「今回は一緒に戦わせて貰います。」
ミスヒール「今度は勝利を分かち合える、これほど素晴らしい事はありません。」
   7人ともフリハト系列の衣装に衣替えしている。美しくもいやらしいような出で立ちは、見る
   者を虜にする戦略の1つだろう。
    ミスターTの方はと言うと、何と一同の目の前でタキシードに衣替えをする。黒い上下の
   スーツに相変わらずの覆面を纏っている。それを見た9人は心を躍らせた。誠意ある対応と
   いう部分を垣間見たような気がしてならなかった。
ミスターT「お前達の命、確かに預かった。共に勝利を分かち合おう。」
   彼の叫びに10人は叫び返す。ダークとダークTMは剣に変化した状態での応じなだけに、
   その叫び声は異様とも思える。



    その彼らの元に現れるは、何と悪陣営の主力メンバー総出だった。これには流石の彼女らも
   引いたが、ミスターTは彼ららしいと笑っている。
ゼラエル「今回は直接対決と行こうじゃないか。ACが操作できないからといって、なめて掛かると
     痛い目見るぜ!」
ジャオグ「肉弾戦ならお手のもの。マスターと言えど、そう簡単にやらせはしません!」
   ゼラエル達の力強い発言に、この場での役割を徹し抜いていると直感するミスターTだった。
   その彼らに応じるべく、同じく役割に徹しだす7人の女性陣。
シューム「面白い、ハーズダント決戦と同じ感じだな。こちらも全力で戦えるというものだね!」
メルデュラ「片っ端から叩き潰してやるよ!」
   シュームの戦闘スタイルは本編同様、両腕に装着されたナックルガードによる肉弾戦だ。相手
   の武器を受け止め、直接殴り付ける戦術を得意とする。
   対するメルデュラはロスレヴ系列出身のため、固定された武装はない。しかしフリハト系列の
   オーガに近しい体躯のため、武装は身丈以上もある巨大な大剣を持っていた。


    先に攻め出したのは悪陣営。夥しい数でミスターT達を攻め入る。ハイレベルまで高まった
   戦闘力は団結力と相まって凄まじい力を有していた。

    対するミスターT達は連携で相手を迎撃しだす。ミスターTとダーク・ダークTMを除く
   8人は凄まじいまでに戦いを繰り広げる。勢いだけで攻め入っているように見えもするが、
   そのどれもが無駄な動きは一切ない。

    ミスターTはと言うと、一同を驚愕させる動きを見せていた。両手に持った魔剣と聖剣を
   我が手の如く振り回し、相手を次々と薙ぎ倒していく。一瞬にして部位を叩かれ、撤退して
   いく悪陣営の面々。その強さには一切の迷いが感じられない。



    数分後、悪陣営の面々は壊滅した。圧倒的戦闘力で凌駕され、為す術なく試合会場へと返還
   されていった。

    ミスターT達の方はメルデュラ以外は無傷である。彼女は右腕を負傷していた。それでも
   軽傷な事から、彼らの戦闘力が凄まじい事は自ずと窺える。

シンシア「いいウォーミングアップね。」
エリシェ「まだ相手は沢山いますよ。油断しないようにしないと。」
    女性陣は肩慣らし程度にしか感じていなかったようだ。それでもこの結果は彼女達が有する
   戦闘力の裏返しである。
ミスターT「メルデュラ、お前さんの身体を借りるぞ。」
   ミスターTは精神体をメルデュラに移動させる。それに周りは驚き、何をするのかと窺って
   いた。彼は彼女の身体を使い、何とミスターT自身の左腕を斬り付けたのだ。
メルデュラ「な・・何をしているのですか?!」
メルデュラ(ミスターT)「お前さんの傷の部分を癒した。私の身体を斬り付ければ、負傷した部位
             の回復は図れる。」
   再び精神体を自らの肉体に戻すミスターT。今の行為で彼の筐体は左腕に傷を負った状態に
   なった。
メルデュラ「マスター自身が傷付いてどうするのですか!」
ミスターT「お前さんを傷付いたままにさせて置く訳にはいかない。男女問わず癒しを、俺はその為
      に自らの身体を差し出す。当然の事じゃないか?」
   彼女達は思う。覆面の風来坊の内容を一同に施してから、ミスターTの相手に対する見方が
   完全に変わっている。いや、本来のあるべき姿に戻ったとも言うべきか。

    彼の意外な行動とその真意を知ったメルデュラは、頬を赤くして喜んでいる。風来坊の本編
   では彼と関係がある以上、その延長線上の出来事とも感じれた。
ミスターT「俺自身を偽っても何にもならない。今テメェが思う事を実行する、それが俺の生き様。
      別に異様でも何でもない。相手が男性だろうが女性だろうが変わりはないよ。」
   一旦2本の剣を地面に突き刺し、徐に煙草を吸い出す。もはや自然体の彼は自由人まっしぐら
   である。それでも彼の自然体な姿に、10人の美女は心を躍らせていた。



シューム「エシェラさんが惚れる訳だね。私も身体の芯からゾクゾクって来ちゃったわ。」
    ありのままの姿を貫き通しているミスターT。それに便乗したシュームは彼に近付き、全く
   躊躇せずに抱き付いた。まるで恋人が甘えるような仕草である。
エシェラ「な・・・何をしているのですかっ!」
シューム「あら、当然の事よ。小説本編の続編では、私達は関係を持つのでしょう?」
   薄々感じ取っていたシューム。他の6人は今初めて聞かされ、今までにないほど赤面しだす。
シューム「私がエシェラさんなら、一切の柵なんか考えずに接したい。女としての本来の姿を曝け
     出すのよ。決しておかしな事じゃないわ。」
ミスターT「そうだな、シュームの心構えは見習いたい。私は今の今まで一同とは一歩引いて接して
      いた。それでは真のコミュニケーションとは言えない。それを教えてくれたのは紛れも
      ないエシェラ自身じゃないか。」
   彼が発言する内容に、エシェラを除く女性陣は頷いている。彼女が一歩前へと進みでて、役割
   を演じ切っている彼に接しだした。何度も繰り返す行動に折られた彼がいたからこそ、外伝的
   ストーリーである覆面の風来坊が完成したのだから。
シューム「フリハト本編だけなら、私はただの母親という脇役でした。ですがマスターは風来坊の
     本編に私を抜擢してくれた。私の全ては貴方に委ねられています。生かすも殺すも貴方
     次第。どの様な結果になっても、私は絶対後悔しません。」
ミスターT「ありがとう。」
   エシェラと同じ属性を持ちつつ、母親という存在でもあるシューム。語られる言葉には凄みが
   あり、リアリティに富んでいる。他の女性陣は流石としか思いようがなかった。


ミスターT「これはささやかなお礼だよ。」
    胸の中で余韻に浸るシュームの顔を持ち上げ、優しく唇を重ねるミスターT。それに彼女は
   驚き、身体が硬直する。風来坊本編では身を委ねて甘い一時を過ごしているのだが、フリハト
   本編の流れが強い彼女にそれはなかった。

    しかし風来坊の色が濃くなりだしている現在、シューム自身もその影響を受け出している。
   愛しい人となるミスターTの意外な行為に、自然と身体がリンクしていった。



    口づけを終えるミスターTとシューム。心ここに非ずという状態であり、今も彼の胸の中で
   余韻に浸っている彼女。
   他の女性陣は彼の意外な行動を見て呆気に取られている。特に一番彼を好いているエシェラは
   唖然とした表情を浮かべていた。
ミスターT「フフッ、シュームの亡きダンナに怒られるわな。」
   ミスターTが指摘するのは、フリハト本編でのシュームの主人の事だ。リュリアの父親でも
   ある。ミスターTはこの行為自体がその相手を怒らせる事になると危惧した。
シューム「え・・・い・・いえ、実際には存在しないのでしょう?」
ミスターT「まあ確かに。形だけの意味では存在した事になるが、誰かまでは示していない。」
   彼女達の細かいプロフィールを作るのは、目の前のミスターT自身だ。どの様な経緯でも彼の
   一存で直ぐに変更は可能である。
シューム「でも・・・ありがとうございます、気遣って頂いて・・・。」
ミスターT「お節介焼きの世話焼きだからな。」
   どの様な経緯を経ても、周りへの気遣いは絶対に忘れない。心労の種ともなる行動を率先して
   行うのが彼であった。
   今もミスターTの胸の中で甘えるシューム。彼女も彼の虜になったのは言うまでもない。


    その後体制と整えるミスターT達。そして徐に動き出した。目指すは目の前のフィールドに
   散らばっている、他の面々との直接対峙である。

    以前とは異なり、徹底抗戦の姿勢を見せるミスターT。今の彼ならば、相手が誰であろうが
   叩き潰す事だろう。

    第45話へと続く。

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