アルティメットエキサイティングファイターズ 〜集いし鋼鉄の勇者達〜
    〜第50話 対決〜
    ミスターTの復活により一気盛んになる一同だった。彼の存在は父でもあり母でもある。
   その彼が苦悩すれば、一同には計り知れない苦痛が流れるだろう。

    創生者としての役割をエシェラとシルフィアTLに託しているため、今の彼は一同と同じ
   一介のレスラーと同じ位置付けである。そのため再度試合を申し込んでくる面々が数多い。

    今もロスレヴとフリハトの面々が彼を引っ張りだこにしている。それは風来坊で7人の女性
   と関係を持った事に依存するだろう。つまりは2陣営にとってミスターT自身が家族のような
   扱いになるからだ。


    試合を観戦しているにも関わらず、男性陣とは酒を飲み交わす。女性陣の方は彼に心を奪わ
   れた人物だけ慕っているが、他の女性陣は普通に接している。ここが素面で対面できる男性陣
   と大きな差であろう。

ミスターT「ディーラもヘビースモーカーとは知らなかったよ。」
ディーラ「一般の煙草ではなく葉巻ですけどね。」
    ディーラの素性を知るフリハトの面々は不思議がっている。本編では喫煙はしない彼なの
   だが、今では葉巻を吸うスタイルが板に付いている。これはミスターTの普段の姿に影響を
   受けているのだろう。
トムM「マスターも一杯どうですかい?」
ミスターT「うむ、頂くよ。」
   トムMがワインをグラスに注いで勧めてきた。その姿はさながらウェイター姿に近いだろう。
   それを惜しみなく受け取り、香りを嗅いでからゆっくりと飲むミスターT。
ミスターT「風来坊では下戸以前に酒が苦手だが、この場ならそれはないからね。」
トムM「俺も風来坊に参加させて頂いてますから。」
ミスターT「ラーメン屋台の猛者だったね。」
   風来坊にて陰の存在として登場を果たしているトムM。ラーメン屋台を経営する人物として、
   その名を知らない人物はいないと謳われるほどの猛者である。
ミスターT「エキプロの世界観から離れているが、偶にはいいものだろう。」
ディーラ「そうですよ。プロレス一辺倒では飽きが来ます。現に以前同様の問題が生じ、全く動けず
     仕舞いになった時がありましたし。」
ミスターT「まあそれでもサブ要素として取り入れる程度にすべきだろうね。あまり本腰入れると
      この場が成り立たなくなってしまう。」
トムM「それは愚問ですな。」
ミスターT「フフッ、違いない。」
   全く自由に寛ぐ3人に、周りは呆気に取られるしかない。笑い合って会話し、酒を飲み交わす
   姿は大人の嗜みだろう。


ユウト「マスターは賭け事とかは苦手のようですね。」
    それからは若手に引っ張られ、ポーカーやチェスなどの相手をして回るミスターT。しかし
   頭脳的娯楽による勝率はゼロに近く、その全てが負けとなっている。連戦連敗続きの彼に、
   周りは驚くしかなかった。
ライディルM「でも一緒に過ごして頂いて感謝しています。」
ミスターT「限りある時間を大切に、だよ。」
   一服しながら語るミスターTは、やはりその瞬間を大切にせよと述べる。根底には今も悲しみ
   に包まれている彼を伺い、一同は本気で楽しめなかった。
ライア「私達はこのぐらいで、次のメンバーの元へ向かって下さい。」
メルア「そうですね。」
ミスターT「分かった、そうするよ。」
   本当は一緒にいたいのが本音であるが、彼のその瞬間を大切にという心構えから束縛は厳禁で
   あると思った一同。ここは別の人物へのコミュニケーションを優先するよう催促した。

    徐に別の陣営が屯する場へと向かっていくミスターT。その後姿は哀愁があり、見ている
   側も悲しくなってしまうほどだった。

    それでも自分の生き様を何時如何なる時でも貫き通す彼。その姿に男女問わず惚れ込んで
   しまう。ミスターTの強さはここにあるのだろう。



    次は新陣営の元に訪れる。マジブレ陣営を除いた陣営が集うこの場。一番勢力的に陰の存在
   になりやすい。しかし同時に若さの部分なら、他の陣営よりも凄まじいだろう。

ミスターT「リーダーも大変だろう。」
デュシアE「気苦労で一杯ですが、やり甲斐はありますよ。」
    伝秘ウイブレ・一匹狼・メカノイド・流界ベルムカル・ウイスト・レジェブレを統括する
   存在がデュシアE。彼の献身的な活躍で、この陣営は異体同心を成し得ようとしていた。
   それでもマジブレ陣営には遠く及ばない事から、彼らの存在感が遠のいてしまっているのは
   言うまでもないだろう。
デュシアE「今後どうしましょうか。」
ミスターT「流れに任せるしかないが、突破口は欲しいよね。」
デュシアE「俺達の陣営から突破口が拓けるでしょうか?」
ミスターT「些細な抗争から大きな抗争に膨れ上がる場合もある。ここは本当に流れに身を任せる
      しかないだろうな。」
   色々と試行錯誤を繰り返しているデュシアEだが、思うように事が運べない。しかし周りが
   彼をサポートする部分では、他の陣営よりも優れている部分と言えるだろう。

ティア「兄さん、このプランはどうですか?」
    ミスターTとデュシアEが雑談に明け暮れていると、ティアとリュナが資料を引っ提げて
   訪れる。幼さは十分あるが、ターリュやミュックよりも大人びいている2人。何よりも知的派
   の流れを醸し出している事から、他の双子とは一線を駕している。
デュシアE「ありがとう、参考になります。」
リュナ「他にも色々と持ってきたので使って下さい。」
   リュナが指し示すは、凄まじい量の資料をカートに載せて運んできたヴィオラとパティナ。
   この2人もティアとリュナの熱意に折れて、一緒にプランを考案していたようだ。
ヴィオラ「まだまだ沢山あるよ。」
パティナ「他の皆さんに聞き回って得た回答です。」
デュシアE「ハハッ・・・。」
   この新陣営連合のリーダーはデュシアEだが、周りが彼を盛り立てていると言える。それに
   胡座をかかず精一杯努力する彼だからこそ、周りに慕われるのだろうから。

リュナ「あ、マスター。私達の陣営からの抜粋者はこの6人です。1人だけ多くなってしまって。
    大丈夫ですかね・・・。」
    今だ決まっていない総陣営抜粋ロイヤルランブル。その中で唯一登場人物を決めているのが
   悪陣営である。ようやく決めたと言った雰囲気に、デュシアEの代わりに伝えるリュナ。
   リストが掲載されたメモをミスターTに手渡し確認してもらう。
ミスターT「6人か。1人オーバーだが、そこは別陣営の1人を省く形にするよ。エシェラに詳細を
      伝えてくれれば分かってもらえる。」
リュナ「了解です。」
   リストを片手にエシェラの元へと向かうリュナ。この新陣営連合は全員が一致団結して運営を
   行っているように見える。デュシアEに重圧が掛からないように気を配っているようだ。

ミスターT「コミュニケーション以前に、忙しすぎて動けなさそうだね。」
デュシアE「大変ですが、これが現実です。しかしこれも息抜きの1つですよ。」
    新しい試合プランに目を通すデュシアE。ミスターTの言葉に応じながらも、目の前の役目
   は凄まじいまでに多い。更に他の面々も彼の手伝いをしている事から、これ以上の水差しは
   彼らの行動の妨げになるだろう。ミスターTは静かに退散するのであった。



    マジブレ陣営は1つの陣営だが、その強さはロスレヴ陣営やフリハト陣営を超越している。
   各陣営からのアレンジとして抜粋の面々が存在する事から、戦闘力は群を抜いているのがよく
   分かるだろう。

    しかし生まれて間もない彼らだけに孤立してしまうのは言うまでもない。強すぎてもダメで
   あるという現われだろう。攻守共にバランスが取れているのが、他の陣営なのだから。

ミスターT「殆どリーダー格だね。」
アーディン「そうですなぁ。」
    まだ本編の位置付けをされていない面々。ヴェアデュラの補佐的存在のアーディンは、一同
   の代表として動いている。不毛なリーダー争いなど眼中にないといった雰囲気で、彼に全て
   任せてしまっているというのが実情だろうか。
アーディン「我々の位置付けがなっていないだけに、単に強い存在に成り下がっているようで。」
ミスターT「ごめんな、そこまで手が回っていない。他の新陣営の面々もあやふやな行進だが、他の
      既存メンバーが引っ張ってくれているからね。ここだけは独立して動くしかないのが
      実情かな。」
アーディン「難しいですな。」
   何か強力な一押しが足りないと思っているアーディン。それはミスターTも承知済みである。
   しかしここは彼らに任せるしかない。下手に手を出せば成長を妨げてしまうからだ。
アーディン「まあ我々で何とかしていきますよ。本当に困った時はお願いします。」
ミスターT「OK、任せてくれ。」
   男の生き様を醸し出すアーディンは、まるでディーラの生き写しのようだと思うミスターT。
   ここは彼の意図してではないが、似偏ってしまう部分からの発祥だろうか。主人公ではなく
   アーディンにリーダーを任してしまうのは、彼の持って生まれた宿命とも言えるだろう。
   ここも自分の出る幕はないと確信したミスターT。雑用に明け暮れるアーディン達を見守り
   ながら去って行った。



ゼラエルG「暇そうですな。」
    色々な陣営を見て回ったミスターT。最後といえる悪陣営の面々の場所に赴いた時、丁度
   一服中のゼラエルGに声を掛けられた。
ミスターT「どこも私が心配するほどじゃなかったよ。」
ゼラエルG「全てマスターに負担を掛けさせないように心懸けているのです。エシェラ嬢も右に左に
      大忙しですし。」
   徐に一服しだすミスターT。悪役を脱ぎすてたゼラエルGは紳士そのもの。その気配りなどは
   GMに匹敵するだろう。
ミスターT「シェガーヴァHとドクターTも頑張ってるよ。」
ゼラエルG「その分俺達がゆっくりできるというものです。」
ミスターT「違いない。」
   笑い合う両者。善陣営も悪陣営も超越した存在、それがこの瞬間であろう。純粋に1対1の
   対話をする姿は、本当の親友のようである。

ブレナンD「マスター、ご質問が。」
    一服し合うゼラエルGとミスターTの元へブレナンDが訪れる。どうなら何らかの願い事が
   ある様子だ。普段の彼にしては引き気味の雰囲気であるからだ。
ミスターT「無理難題じゃなければ応じるよ。」
ブレナンD「いや〜・・・多分無理難題になるかも知れません。」
ミスターT「まあ聞こう。」
   ブレナンDが語る内容に、ミスターTは呆気に取られた。これも1つの陣営的超越とも言える
   だろうか。その内容とはAC対決をしたいと申し出てきたのだ。
ブレナンD「ユキヤ君の現形はマスターなのでしょう。ならばマスターもかなりの腕前を誇っている
      と確信します。是非お手合わせを願いたいもので。」
ミスターT「う〜む・・・ユキヤの設定はかなり無理難題に近いからなぁ・・・。私でもあそこまで
      強くはないよ。」
ブレナンD「でも可能なのでしょう?」
ミスターT「分かった分かった、応じるよ。」
   ブレナン本人は根っからの熱血漢。そして一度突っ込めばトコトン走り続ける。そう簡単には
   諦めないと思ったミスターTは、殆ど渋々といった雰囲気で折れた。

    ところがそれを遠くから窺っていた面々が駆け付けてくる。どうやらブレナンDを代表に、
   ミスターTへのアポをお願いしていたようだ。つまりは彼の提言を飲む事は他の面々も一緒に
   戦ってもいいという事になる。

    意外な一面を曝け出したミスターTに、我も我もといった気迫で押し掛ける悪陣営の面々。
   これには引いてしまうのは言うまでもない。
   しかし一度了承してしまった事を撤回するのは心が痛い。ここは彼らに応じるしかないと思う
   ミスターTであった。



    悪陣営の面々とミスターTが移動した先は、娯楽施設のアリーナ。内部は以前と異なり、
   まるで本物の戦場のような状態になっている。いわゆる空間増強法であり、彼らの願う心から
   生まれ出たようなものだ。

    それぞれの愛機へと乗り込み、模擬戦場に出てくる面々。ブレナンDを筆頭にリルザー・
   ミオルム・デア・ゴリアッグ・ルボラ・ジェイア・ランドック・タシェール・スカーレット・
   ミッシェル・ヴィシュアーガ。初代AC・AC2・AC3と時代を超えた面々が出揃う。


ミスターT「また豪勢だなぁ・・・。」
    旧式から新型と幅広いバリエーションの12人のAC。全員強化人間とあり、その強さは
   他のレイヴンに引けを取らないほどだ。
ブレナンD「マスターは何の機体を用いるのです?」
ミスターT「生身のままでも問題はないが。」
ゴリアッグ「正気ですかい?!」
ミスターT「この場限りでは何だってできるよ。」
   人間が巨大兵器のACと対決すると聞いて呆れ返った12人。しかしそれを覆す行動をしだす
   ミスターT。徐に手をかざすとゴリアッグの愛機が浮き上がった。これには搭乗する本人が
   一番驚いているだろう。
ミスターT「スターウォーズのフォースに近いかな。それに迫り来る弾丸も全て止める事もできる。
      例しに打ってみなよ。」
   何でもありだと直感した一同ではあるが、恐る恐る火器兵器を発射した。どれも生身の人間
   には一撃必殺のものだ。だが彼が語った通り、弾丸は彼の直前で静止している。
   次元が違いすぎると思った一同。これには勝負の話ではないと呆れ返ってしまった。

ミスターT「まあこれは冗談にせよ、12体同時に相手をするとなると骨が折れる。ここは更に進化
      を遂げたACを使うとしよう。」
    そう語ると彼の背後に紫色のACが出現する。しかしそれは一同が見た事がない全くの機体
   構成である。徐にその機体へと搭乗するが、この時彼の愛機は意思があるかのように跪く。
   まるで我が主を迎え入れるような姿である。
ランドック「見た事がないACですが。」
ミスターT「現状を見れば多少なりともハンデを付けるしかない。これはAC4の世界観の機体。
      機体構成もスペックも各段に向上したものだ。たった1機でアームズフォートを破壊
      するほどの力がある。」
スカーレット「アームズフォート?」
ミスターT「AC2の世界観の面々なら分かるが、STAIを単機で撃破するというものか。しかも
      内部へ入らず、外部からの攻撃だけで破壊するものだ。」
   ミスターTの発言にAC2の世界観を生きるレイヴンは驚愕した。STAIの存在だけでも
   かなりのものなのに、それを超越する存在が目の前のACなのだ。


    ミスターTが搭乗する新機体の説明を受けている12人。そこに我も我もと集まる面々。
   どうやら新たな催しが開かれるとあって、試合会場にいる全員がアリーナへと足を運んだ。
   これには呆気に取られる13人だったが、既に退けない所へきているのは事実。このまま試合
   を行うしかなかった。

ミスターM「何だ、ネクストを使うのか。」
    一同が観戦者側へと回り、アリーナの観客席へと落ち着いた。その中にいるミスターMが
   ミスターTや12人に聞こえるようにアナウンスで語り掛けてきた。
ミスターT「そうでなければ張り合いがありませんよ。」
ミスターM「まあ確かに。通常のACなど一撃で下す破壊力があるからな。これぐらいのハンディが
      なければ意味がない。」
   ミスターMの発言にレイヴン役職の人物達は青褪める。今の新しい世界観は自分達が存在する
   世界観とは大きく異なっている事が伺えたからだ。
ミスターM「まあでもACFAなどに登場する一般のACとは違い、12人はスペシャリストだ。
      そう簡単にはいかないよ。」
ミスターT「師匠ほどには動けませんが、やるだけやってみます。」
ミスターM「楽しみに見てるよ。」
   語り終える2人。その瞬間から空気が張り詰めていく。フリハトや他のファンタジー世界観を
   有する面々とは異なり、一触即発の世界観が色濃いロスレヴ独特の流れが辺りを支配する。

    レイヴン職業の面々は久方振りの緊張感に身体が震えだすが、他の面々は恐怖感による震え
   が襲ってくる。それだけ近代兵器の戦闘は凄まじいものだと直感で察しているのだ。

    一旦バラバラに散開する12人。しかし今回はスタンドプレイを行わない方針をコクピット
   内部で語り合う。もちろんミスターTには聞こえないようにである。

    ミスターTの方はというと、ただ静かに佇むだけだった。だが徐々に膨れ上がる闘気と殺気
   が機体より滲み出し、それを感じ取った観客席側は恐怖に慄いている。



    数分が経過するが、一向に戦闘が始まらない。どうやらどういった内容で戦闘を始めるか
   悩みだしたようだ。ミスターTの方は彼らに合わせるだけなので後手に回っている。下手に
   アドバイスをすれば自分が有利と思っているので、ここは一切口を出さない事にしたようだ。

ゼラエル「ミッション内容を説明する。内容は試作機の破壊だ。極秘に作られた新型機で、その力は
     計り知れない。ありとあらゆる手段を用いてでも破壊しろ。」
    そこに機転を利かせたのがゼラエルだった。臨時のオペレーターを買って出て、12人に
   聞こえるように語りだす。思い付く限りの内容を語っているが、その迫力は本物さながらの
   迫力である。
ターリュS「報酬は紅茶と茶菓子ですよ〜。」
ミュックS「頑張ってね〜。」
   しかしターリュSとミュックSの発言で一気にシラケてしまう。観客側は大爆笑、切り詰めた
   雰囲気が一瞬にして吹き飛んでしまった。
ミスターT「よし、その報酬を可愛いレディと楽しむとするか。」
   それに便乗しだすミスターT。しかし後手に回っていた彼が動き出したのだから、一瞬にして
   緊張感が張り詰めた。


    ゆっくりとブースターを吹かし出して進むミスターTのAC。それを目視した12人は更に
   散開する。アリーナの戦場が一瞬にして古戦場へと変化し、瓦礫や破壊された機体が現れた。
   これは12人が思い浮かべる相応しい戦場としたためだ。

    視界が開けたため、12人はミスターTを取り囲むようになる。その中心を彼が単独で動く
   形になる。
ブレナンD「見つけたぜ。」
スカーレット「あれが新型機かね、見かけないフォルムだ事。」
ヴィシュアーガ「侮るなよ。今までに追っ手を全滅させたとの連絡だ。」
ゴリアッグ「な〜に、ちょろいもんよ。」
   それぞれの役割を担って盛り上げる12人。それに観戦側のレイヴン達は唇を噛み締める思い
   だった。それだけ参加したいという現れだ。

ジェイア「仕掛けるぜ!」
    ミスターTの右側に位置するジェイアとミッシェルが攻め出した。用いる最大の火力の兵器
   を駆使して攻撃していく。しかも複数放ったとあり、回避はかなり難しい。
   だが放たれた弾丸が彼に着弾する瞬間、凄まじい勢いで前進と空中浮遊を開始する。その勢い
   は今まで見た事がないと12人は思った。無論観戦する側のレイヴン全員も同じだ。

    空中に浮かびだした相手に、今度は更に複数の機体から火器兵器が放たれる。だがそれらは
   ありえない速度の切り返しで回避された。これには既存のレイヴン達は度肝を抜かれた。
ミスターT「レディとの楽しい一時があるんでな、潰させて貰う。」
   回避に回っていたミスターTが攻めに転じだした。ありえない速度で旋回しだすと、直下に
   いる複数のACに向かって右手の武器を放った。

    弾速が尋常じゃないほどの速さだった。放たれたレーザー弾は一瞬にして直下のジェイアの
   機体を打ち抜く。直後彼の機体は爆発して飛散した。
ミッシェル「ジェイア!」
   この場の流れからして本当に戦死したのかと思ったミッシェル。しかしジェイアは例のリアル
   サバイバルバトルと同じく、観客席側に強制返還される形になった。

    その隙を見逃さないミスターT。一気に下降すると左腕からレーザーブレードを発生させ、
   それをミッシェルに向かって一閃する。まるでバターをホットナイフで切り裂いたように、
   一瞬にして真っ二つに分断する機体。爆発する以前に下ろされた形といっていいだろう。


    一瞬にして2機のACが破壊され、残りは10機となった。その目にも留まらぬ早技に、
   10人のレイヴン達は驚愕するしかない。
ミオルム「散開するよ!」
タシェール「四方八方からの攻撃に耐えられるかい?!」
   纏まって攻撃していた10人が、再び円を描くように散開する。そして一斉に攻撃を開始。
   それは正に一斉射撃といえる。

    しかし放たれた先にいるミスターTのACは、再びありえない速度で動き出す。AC2以降
   から機体に搭載されたオーバードブーストを発動させ、爆発的な推進力を纏った。
   突進する先にデアとゴリアッグのACがいたが、体当たりを喰らって吹き飛ばされた。そこに
   容赦なくレーザー弾が放たれ、2機のACは爆発飛散する。

    普通のACの仕様であればオーバードブーストが行える時間はせいぜい10秒前後。AC2
   シリーズでの特権であるリミッター解除を行えば30秒前後は動ける。
   しかしミスターTの機体は今も周りを旋回し続けている。更には進行速度が尋常じゃない。
   それは音速の壁を超えた速度であり、8人が放つ弾丸はどれも着弾しなかった。


リルザー「チキンレースしかないぜ!」
    オーバードブーストが搭載されていない旧式ACのブレナンD・リルザー・ミオルムは、
   ミスターTの速度に全く付いていけない。思い浮かぶ戦術としては、零距離射撃しかない。
   殆ど捨て身になるが一矢報わねば話にならないといった雰囲気が強かった。

    目の前に迫り来るミスターTのACにブレナンD達を筆頭に、他の5人も纏まって一斉射撃
   を繰り出した。もはや目の前に迫る彼を撃破するにはこれ以外に思い浮かばない。

    一斉に攻撃する8機のAC。そこに迫り来るミスターTの機体。彼の機体が目の前に迫った
   瞬間、眩い閃光と共に大爆発を巻き起こす。観客席側はミスターTが駆る機体を撃破したの
   だと思った。

    だが実際には異なっていた。爆炎とも言える緑色の爆発が収まった時、他の8機のACの
   姿はどこにもない。あるのはミスターTの紫色のACのみ。何が起きたか全く分からないと
   いった雰囲気で、8人のレイヴン達は観客席側に強制返還させられていた。



ミスターM「APの半分以上を奪うアサルトアーマーを直撃すれば、旧式のACは一撃の下に破壊
      される。これも時代の流れとしか言いようがない。」
    徐に今の内容を語り出すミスターM。全く知らない用語が飛び出し、意味が分からないと
   いったレイヴン達だった。
ミスターT「これがネクスト同士の対決だと、プライマルアーマーを減らし合っての対決ですよね。
      アサルトアーマーを喰らわなくても、プライマルアーマーが剥がされますし。」
ミスターM「STAIよりも小型ではあるが、コジマ兵器の塊とも言えるアンサラーも脅威だよ。
      特大のアサルトアーマーもAPを根刮ぎ奪っていくからね。」
ミスターT「従来のAC2AAでセラフなどを相手に修行している時の方が充実してましたよ。」
   2人の会話は現実世界での延長線上のもののようである。それに一同は呆気に取られている。
   しかしレイヴンと名乗る面々はその話が理解できているようだ。
ミスターT「やはり生身の身体で戦った方が充実しますね。」
ミスターM「この世界観は崩れはしないさ。」
   ミスターTのACが静止し、徐に片膝を着く。機体内部から彼が現れ地面へと降りると、主を
   降ろしたACはテレポーテーションをしたかのように消えていった。


    ミスターTと12人のレイヴン達が戦った事により、他の全レイヴンの心に火が灯った。
   リングでの試合そっちのけでAC対決を開始する彼ら。その勢いは留まる所を知らない。

    他のACバトルを知らない面々も、本編回帰の戦いを見て火が灯る。アリーナの隣にある
   闘技場へと赴き、そこでそれぞれの剣劇を開始しだした。

    些細なACバトルから大きな息抜きとも言える娯楽へと発展していくこの場。プロレスの
   世界観はどこへいったのかと、ミスターTは呆れつつも彼らに付き合うのである。



ミスターT「お前さんは本編回帰しないのか?」
ダーク「ターリュSさんとミュックSさんの代わりに茶菓子をご一緒しようかと。」
    中央庭園で一服するミスターTとダーク。先程勝者には紅茶と茶菓子をご馳走すると語って
   いたターリュSとミュックSだが、2人は我を忘れてACバトルに精を出している。
   代わりにダークが紅茶セットを片手に彼と一服しているのであった。
ダーク「近代兵器の凄まじさは怖ろしいですね。」
ミスターT「極限状態にまで高めた戦闘力だけにね。でも重大な欠点はあるよ。」
ダーク「と言うと?」
ミスターT「究極の力に近いACを操るべく、人体改造を行って人を捨てる事になる。強化人間と
      いう技術でね、人間の神経や器官などを人工物に置き換えて強さを増すんだ。その分
      精神異常を来たして心が壊れるレイヴンも数多い。特に新型ACでもあるネクストを
      操る新型レイヴンことリンクスは、コジマ粒子の影響を受けて汚染させるんだ。」
ダーク「つまり・・・寿命が縮まるという事ですか。」
ミスターT「それは簡単な言い方かな。もっと悪く言えば、放射能以上の汚染物質を撒き散らして
      動くというものか。あの世界観のレイヴンは、正しくデストロイヤーそのものだ。」
   究極の力を持つ故に、その見返りが人を捨てる事。更には周りにも悪影響を及ぼし、周りに
   死を撒き散らす存在になる。
   ダークが本編で自身の力が呪われた力だと思っていたが、それ以上の事がロスレヴ系列の面々
   には存在するというだ。これに彼女は無意識に身体が震えだしてしまう。
ミスターT「世界観的に安定しているのが、私が一番好きなタイトルのアナザーエイジだろう。先程
      AC2AAと語ったものだね。ただ単にミッションをこなしてくシステムだが、純粋に
      力量アップに繋がる。」
ダーク「複雑な心境です。」
ミスターT「フフッ、お前さんはフレームグライドで騎兵との相性が抜群かもね。」
   紅茶を飲みながら茶菓子を頬張るミスターT。自然体でいる彼に心を奪われるダークだが、
   ACの世界観を知りすぎて不安の色を隠せない。またFGの世界観を知りたいという願望も、
   徐にではあるが出だしている。

ミスターT「まあそれでも、本編回帰してしまえば独立した世界観に戻ってしまう。プロレスという
      世界観に順ずるからこそ、私達が次元と世界観を超越して集い合えるのだから。」
ダーク「そうですね。」
    やはり今の一同の原点回帰はプロレスの世界、エキプロの世界観になる。でなければ本編に
   回帰した方が純粋な戦いができるだろう。しかし単に惰性に流されるだけの虚しいものだ。
ミスターT「息抜き程度には用いるが、本命は肉弾戦だからね。」
ダーク「私達次第という事になりますね。」
   紅茶を飲み終え、茶菓子を全て平らげるミスターTとダーク。使い終えた紅茶セットは具現化
   させるもの故に、ダークが願うと直ぐに消え失せていく。
ミスターT「次は悪陣営の3大ロイヤルランブルか。他にも抜粋ロイヤルランブルがあるが、先に
      3大側を終わらせるのが無難だろう。」
ダーク「直ぐにでも開始できるとの事です。後はその時が来れば始まりますよ。」
ミスターT「今は一同に便乗して息抜きするかね。」
   徐に寝っころがるミスターT。その彼の頭を優しく持ち、自分の膝に乗せるダーク。恋人同士
   の膝枕とはこの事だろう。
ミスターT「暫く休むよ。何かあったら起こしてくれ。」
ダーク「はい、お休みなさい。」
   右手でダークの頬を優しく撫でると、目蓋を閉じて眠りだすミスターT。これと同じ場面が
   風来坊の最終話であったと、ダークは心中で思うのだった。


    息抜きしすぎ・プロレス街道から反れすぎだと思うミスターT。いや、他の面々も同じ事を
   思っている。しかし寄り道を忘れてしまえば、義務的な流れと化してしまうだろう。

    複雑な心境を抱きながらも、目の前の娯楽に精を出す一同。その瞬間を大切にと願いつつ、
   己の生き様を立てていくのであった。

    第51話へと続く。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

戻る