11th 物語の真実
11th
物語の真実

廃工場最深部
「・・・・ディスティニィ・・・・」
暗闇の中に声が響く。
「ようこそ・・・アビス、待ちわびたぞ・・・。」
一斉に最深部に明かりがつく。
「!!・・・カレントリィ・・・。」
フォーチューン・タワーの横に残骸と化したリヴァース・ハングドマンがあった。
それは、カレントリィの死を意味していた。
「クク・・・・愚かな男だ・・・勝ち目が無いことを分かって私に挑んできた、貴様もそうなるか?アビス?」
「御託はいい、さっさと死ね・・・」
デス・フォ・ステアズのレーザーライフルがディスティニィのフォーチューン・タワーに向けられる。
「フッ、そう焦るな、私に聞きたいことがあるんじゃないのか?」
「・・・何故、村を襲った・・・!!」
銃口をフォーチューン・タワーに向けたまま、アビスの声が響き渡る。
「貴様の言っていることが本当ならば、村を襲う必要はなかった!!何故だ!」
「・・・・・フッフ・・ハーッハッハッハ!!」
ディスティニィの笑いがドーム状の部屋に響く。
「何がおかしい!答えろ!!」
「なに・・・少し意外だっただけだ、私の話を聞いて尚恨みの矛先を変えないお前がな・・・」
アビスに顔に若干の動揺が浮かび上がる、それを認めてしまえば自分が今、ここに居る理由は無くなってしまう、それはアビス自身も分かっていたことだった。
「フッ、まぁいい、教えてやろう・・・・奴等がお前を作りそして、我々に強化人間のサンプルとして売り渡す、そこまでは話したな・・・」
ディスティニィが冷笑を浮かべながら話を続ける。
「そうだな・・・まず、お前にはティル・ナ・ノーグの存在を知ってもらわねばな・・・ティル・ナ・ノーグとは、非合法研究組織の一つで、私の本来の所属組織だ・・・。」
「・・・本来の?ならば・・・タロットofナンバーは!?」
「上からの命令で作ったダミー組織だ、まぁ、それを知っているのは・・・私だけだがな・・・。」
「何故そんなことを・・・?」
デス・フォ・ステアズの銃口が僅かにずれる。
それを見ながらディスティニィは更に言葉を重ねていく。
「・・・クク、強化人間計画、とでも言おうか・・・その一環さ」
「強化人間計画・・・?」
「そうだ、もともとロキの奴の計画だったが・・・ある『事故』で奴は死んだことになってしまってね・・・私の計画になった、その後、私は奴等にお前を作るように頼んだわけだ・・・。」
ドーム状の天井を見上げ、一呼吸置いて、話を続ける。
「そして、奴等にお前を作らせたまでは良かったが・・・お前が出来過ぎていたのは全くの誤算だった・・・。」
一瞬だけ、ディスティニィの顔から張り付いたような冷笑が消える。
「・・・出来過ぎていた・・・だと?」
「そうだ・・・そもそも強化人間とは兵士、いや・・・兵器だ・・・だが、お前の出来は素晴らしすぎた、自分の意思を持ち、自分で判断できる・・・そんな兵器がどこにある?兵器とは、使う物が使ってこそ意味がある、確かに科学的には画期的なものだ・・・だが、兵器としては無価値だ、そこで少し予定を変更して強化人間の、お前の性能のみを確認することにした・・・」
再び、ディスティニィの目が自分を狙う銃口に戻される。
「そうだ、貴様の村、家族を目の前で殺せば貴様は間違いなく私に復讐するだろうからな・・・案の定、貴様は私の思うどうりに動いてくれた・・・ロキが生きていてくれたお陰で干渉も確認でき、強化人間について詳しく知ることが出来た、クックック・・・・だから、貴様はもう用済みだ・・・」
ディスティニィがかつてなく冷徹な笑みを浮かべ、デス・フォ・ステアズを睨んだ。
そして、フォーチューン・タワーが戦闘態勢に入る、それを見て、アビスが銃口を捉え直す。
「クク・・・・不要な玩具は捨てられるのが定石だ・・・!!」
「ク、ふざけるなよ・・・!!」
フォーチューン・タワーのミサイルが一斉にデス・フォ・ステアズを狙う。
「ご苦労だったな、アビス・・・落ちろッ!!」
すれすれの位置でミサイルを避わしてていく、しかし、一発のミサイルが左腕部に命中し、左腕半分を吹き飛ばす。
「どうした!?あからさまに動きが鈍っているぞ!!アビス!」
「だ・・・黙れ!!」
フォーチューン・タワーからの猛攻は止まることなく続けられる、ぎりぎりで避わすが僅かに、しかし確実にデス・フォ・ステアズの装甲を削っていく。
「クックック・・・焦っているな!?無理もない、今までの復讐劇が全くの無意味と帰したのだからな!」
「!!」
図星を突かれ、その刹那、デス・フォ・ステアズに隙が出来る。
その隙を突きフォーチューン・タワーの撃ち出したロケットが残った左肩に直撃する。
「しまった・・・!!」
左腕が肩ごと吹き飛ぶ。
「馬鹿め!こうも簡単に動揺するとはな!!」
最後のミサイルがアビスに向かって真っ直ぐ飛んでくる。
「これで、終わりだ!貴様が死ぬことで私の計画は完璧に終わる!!」
「こんな・・・こんな終わり方で、俺は・・・」
しかし、ミサイルは当たらなかった、コックピットに命中する筈のミサイルは、空中で撃ち落され、爆発し、消えた。
「迎撃ミサイルだと!?・・・誰が!!」
「俺だ・・・残念だったなぁ、ディスティニィ!」
「アビス!何やってるの!死にたいわけ!?」
部屋中にナイトとピースの大声が響く、迎撃ミサイルは部屋の入り口にいるセブンスチャリオットからのものだった。
「ナイトに・・・ピースか・・・何故、ここにいる・・・ロキの抹消を命じていた筈だが?」
「ハッ、冗談じゃねぇよ、あんなのと戦ってたら命が幾つあっても足りねぇよ」
ナイトがお手上げのポーズをとる、それを無視してピースが口を開く。
「何故、って?自分の胸にでも聞きなさいよ!!アビスから殆ど聞いたんだからね!」
「・・・お前等。」
デス・フォ・ステアズの近くへ移動する二機のACを見ながら、ディスティニィが呟きを漏らす。
「貴様等・・・駒の分際で・・・駒以上に成り上がるつもりか・・・小癪な・・・」
フォーチューン・タワーが再び戦闘態勢に入る。
それを見ながらアビスがいつもと変わらない無表情で二人に言った。
「・・・何故ここに来た・・・足手纏いだ・・・。」
ナイトが苦笑しながら答える。
「なぁにボロボロになりながら偉そうなこと言ってやがる、手助けしてやるっつてるんだ、ありがたく恩着やがれ。
・・・それに、どうせ戻れない道だ、最後までつきあってやる、感謝しろよな?」
更にピースが続ける。
「アビス、復讐とか、そういうのに固執する必要なんてないよ、今は自分の為に戦えばいい、それが嫌ならあたしたちの為に戦えばいい。
あたし達がアビスの『仲間』になる、ね?」
「!!・・・お前等・・・」
「そういうことだ、仲間に死なれたくなけりゃ、呆けてる暇なんてねぇからな?」
「・・・ありがとう・・・」
顔を伏せ、アビスは一言だけそう言って、戦闘態勢に入る。
「あ?・・・泣いてんのか?アビス・・・」
ナイトの意外そうな声に、慌てて顔を拭い、正面を見直す。
「・・・そんな訳ないだろう、馬鹿が・・・とっとと戦闘準備をしろ、死ぬぞ」
「なッ!・・・てめ、人が心配してやりゃ・・・」
アビスとナイトの言い合いに、ピースが割ってはいる。
「二人とも!来るよ!!」
三機のACが同時にフォーチューン・タワーに向かって、武器を向ける。
「貴様等・・・調子に乗るなよ・・・私の計画を・・・これ以上、邪魔するなッ!!」
フォーチューン・タワーのミサイルが一斉に射出される、さっきよりも遥かに大量のミサイルだった。
「来い、ディスティニィ・・・とっとと終わらしてやる・・・貴様のその狂ったシナリオをな!!」
〜投稿者 アビスさん〜

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

戻る